87 / 248
九章 ナツミというただの女の子
9.集団心理
しおりを挟む
反政府組織はそう少ない構成員でもない。
その中の多くは「インフルエンサーに触発された」だけの、多少『意識』が高いインテリ層だろう。
現状に不便しているわけでは無いが、なんとなく変化を求める‥とか、自分はもっと「上を目指せるはずだ」って思う向上心高めなタイプだとか。
つまり、そういう活動に参加することに意味がある。‥自分の「何か足りない」「何かするべき」「変わるべき」って意識を発散させる場として、まるでサークル活動の様に参加しているってタイプ。
インフルエンサー(カタル)や組織の旗印であるリーダー(ネル)に近く、その境遇に共感しその理論に憔悴している「熱狂的な信者」ってのはそう多くはない。
だから、彼らには辛うじて団結力はあるかもしれないが、「責任感」っていうのは薄い。
集団に属している限り、その集団が持続されていなければいけないから団結する‥って意識は強いんだけど、「俺は責任者ってわけじゃないし‥」って他に丸投げな気持ちがあるのは否めない‥ってところかな。
「‥集団ってのは、怖いね。赤信号皆で渡れば怖くない的な怖さがあるね」
ふう、ってミチルが今日何度目かのため息を着く。
ホントに‥頭が痛くなる。
「赤信号皆で渡れば怖くない。‥なにそれ、地球のスローガンか何か? っていうか‥赤信号って「止まれ」を意味する地球の交通標識だよね。集団で来られたら「止まれ」も効力を失いますよ~。通ってオッケーですよ~。数の勝利的な意味かな? 大多数の意見っていうのは、得てして通りやすいよね」
ナラフィスが肩をすくめて「やれやれ」みたいなポーズをする。
‥なんだそりゃ、そんなわけあるかい!
ぷ、とヒジリが噴き出す。ミチルは眉を寄せて、‥ちょっと微妙な表情をし
「全然違う。‥集団になると一人でやるより罪の意識が薄れるから怖いよねって感じの言葉遊び‥? なんて言えばいいかわからんが、有名な言葉だ」
有名だし、皆が変に納得するいいまわしだけど‥ことわざとかじゃないぞ。
‥社会的に認知されてないぞ。
言って、ついでとばかりに一言二言独り言のような口調で付け加える。
「悪いことだって分かってても、これだけ同じことをする人間がいれば何でもできる! って気持ちになる‥ってこと?
こんだけいれば、捕まっても一人じゃないから怖くない。
自分という個人ではなく、自分たちっていう集団になることで気持ちが大きくなる‥」
ぼそり、とラルシュが呟いた。
「集団心理って奴だな」
ミチルが頷く。
「自分の意見や自分の「好き」に共感して行動を同じくする集団は「仲間」って言える。友達とは違う「仲間」。
学校の様に決められた年齢になったら行かなければいけない場所ではなく、自分で選んだ特別な場所。
自分が選んだ場所で、高尚な話をする仲間。
他とは違うっていう優越感。
偉くなって、特別な存在であると感じる。
自分が‥自分たちは集団になることによって‥「自分たちはこの平凡な社会に一石を投じる存在だ」って考えるようにる。集団だからこそ、の心理だ」
仲間‥集団‥
だけど、その実中身はかすかすで、構成員同士の繋がりもそう強くない。
「烏合の衆って程でもないけど、狂信的信者の集まりってわけでもない。それ程の結びつきはない。‥だけど、催眠と違って各自、自分の意思で動いて‥集まっている。それがこの集団の怖さだろうね」
だけど、社会ってのは得てしてそういうものかもしれない。
ふう、とヒジリはため息を着いた。
ナツミは‥どんな気持ちでそこにいるんだろう。
一人じゃないってことに安心したいから?
それとも、反政府組織の考えにどっぷり浸かってるの? もしかして、洗脳までとはいかなくても孤独に付け込まれて‥離れられなくなってるの?
そもそも、‥ナツミは孤独だったの?
俺は、‥ナツミのことが何も分からない。
今まで分かっているつもりだったのに‥
今となっては、何もかもが分からない。
その中の多くは「インフルエンサーに触発された」だけの、多少『意識』が高いインテリ層だろう。
現状に不便しているわけでは無いが、なんとなく変化を求める‥とか、自分はもっと「上を目指せるはずだ」って思う向上心高めなタイプだとか。
つまり、そういう活動に参加することに意味がある。‥自分の「何か足りない」「何かするべき」「変わるべき」って意識を発散させる場として、まるでサークル活動の様に参加しているってタイプ。
インフルエンサー(カタル)や組織の旗印であるリーダー(ネル)に近く、その境遇に共感しその理論に憔悴している「熱狂的な信者」ってのはそう多くはない。
だから、彼らには辛うじて団結力はあるかもしれないが、「責任感」っていうのは薄い。
集団に属している限り、その集団が持続されていなければいけないから団結する‥って意識は強いんだけど、「俺は責任者ってわけじゃないし‥」って他に丸投げな気持ちがあるのは否めない‥ってところかな。
「‥集団ってのは、怖いね。赤信号皆で渡れば怖くない的な怖さがあるね」
ふう、ってミチルが今日何度目かのため息を着く。
ホントに‥頭が痛くなる。
「赤信号皆で渡れば怖くない。‥なにそれ、地球のスローガンか何か? っていうか‥赤信号って「止まれ」を意味する地球の交通標識だよね。集団で来られたら「止まれ」も効力を失いますよ~。通ってオッケーですよ~。数の勝利的な意味かな? 大多数の意見っていうのは、得てして通りやすいよね」
ナラフィスが肩をすくめて「やれやれ」みたいなポーズをする。
‥なんだそりゃ、そんなわけあるかい!
ぷ、とヒジリが噴き出す。ミチルは眉を寄せて、‥ちょっと微妙な表情をし
「全然違う。‥集団になると一人でやるより罪の意識が薄れるから怖いよねって感じの言葉遊び‥? なんて言えばいいかわからんが、有名な言葉だ」
有名だし、皆が変に納得するいいまわしだけど‥ことわざとかじゃないぞ。
‥社会的に認知されてないぞ。
言って、ついでとばかりに一言二言独り言のような口調で付け加える。
「悪いことだって分かってても、これだけ同じことをする人間がいれば何でもできる! って気持ちになる‥ってこと?
こんだけいれば、捕まっても一人じゃないから怖くない。
自分という個人ではなく、自分たちっていう集団になることで気持ちが大きくなる‥」
ぼそり、とラルシュが呟いた。
「集団心理って奴だな」
ミチルが頷く。
「自分の意見や自分の「好き」に共感して行動を同じくする集団は「仲間」って言える。友達とは違う「仲間」。
学校の様に決められた年齢になったら行かなければいけない場所ではなく、自分で選んだ特別な場所。
自分が選んだ場所で、高尚な話をする仲間。
他とは違うっていう優越感。
偉くなって、特別な存在であると感じる。
自分が‥自分たちは集団になることによって‥「自分たちはこの平凡な社会に一石を投じる存在だ」って考えるようにる。集団だからこそ、の心理だ」
仲間‥集団‥
だけど、その実中身はかすかすで、構成員同士の繋がりもそう強くない。
「烏合の衆って程でもないけど、狂信的信者の集まりってわけでもない。それ程の結びつきはない。‥だけど、催眠と違って各自、自分の意思で動いて‥集まっている。それがこの集団の怖さだろうね」
だけど、社会ってのは得てしてそういうものかもしれない。
ふう、とヒジリはため息を着いた。
ナツミは‥どんな気持ちでそこにいるんだろう。
一人じゃないってことに安心したいから?
それとも、反政府組織の考えにどっぷり浸かってるの? もしかして、洗脳までとはいかなくても孤独に付け込まれて‥離れられなくなってるの?
そもそも、‥ナツミは孤独だったの?
俺は、‥ナツミのことが何も分からない。
今まで分かっているつもりだったのに‥
今となっては、何もかもが分からない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる