リバーシ!

文月

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九章 ナツミというただの女の子

11.ナツミの話、続き。

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 運命の出会いって言って、それは断じて!(断じて! 大事なことだから二度言った)恋愛感情を伴うそれじゃない。
 一目惚れした。とかそういう浮わついた感じのものじゃない。
 ‥少なくとも、あの時はそんな感じじゃなかった。

 真剣味が違う。

 っていうか、‥ガチ度が違うって感じかな。言うなれば嗜好品と食事、徹夜明けの睡眠とちょっとした昼寝位、違う。‥重みが違う。
 あの時のカタル様はあたしにとって恩人だったんだ。
 カラカラに乾いた砂漠で野垂れ死にそうになっていたとき水を差しだしてくれた。川で流されそうになった時腕を差し出してくれた。
 それくらいの感じ。
 ‥それほど、あの時あたしの精神状態は「ギリギリ」だったんだ。

 そんなあたしに手を差し伸べてくれた。

 あたしがカタル様を「救世主」のように思ってしまったのも、‥あの時の精神状態を思い出せば「無理もないかな」って思う。
 あの頃はつらかった。
 二度とあの時には戻りたくないって思う。

 あの時のことは、まるで昨日のことのように鮮明に覚えている。
 あの後
「ところで‥
 さっきから気になっていたんだけど‥魔石商人の口車に乗って‥ってどういう経緯でそんなことになったんだい? 
 魔石商人との出会い‥切っ掛けはどうあれ‥キミは思慮深いし友達想いだ。魔石商人と金銭的なやり取りで友達を売った‥とは思えないんだけど‥」
 カタル様は首を傾げてあたしに尋ねた。
 会ったばかりのあたしをまるで理解してくれてるかのような(← 普通だったら有り得ない)口調や、必要な情報を探るための誘導尋問の様な質問でさえも、あの時のあたしは不自然だと思わなかった。
 それどころか「あたしの事わかってくれるんだ! この人は! 」って感動さえした。

 ‥「君はそんな子じゃない」あたしがあの時、一番欲しい言葉だった。

 「友達(ヒジリ)を金で売った」
 誰にもそんなこと言われなかった。だって、城がすぐに隠ぺいに走ったからヒジリが殺されかけた事さえ誰も知らなかった。そして、その事件にあたしが関わっていることも。‥そもそも、あたしには‥あたしには心配してくれる様な親しい友達なんていなかった。
 だけど、「金で売った」「裏切った」「騙した」って誰かにそう言われたらどうしようって‥ただ怖かった。誰よりも‥特にヒジリの両親に‥会うのが怖かった。

 ヒジリの両親に責められるかもしれない‥って思って怖かったんだ。

 わかってるよ? 誰かにそう言われるのが怖いっていうより先に友達の事心配しろって思うよね? ‥でも、あたしのなかではヒジリのことは「城にいるから安心」って完結してたんだ。

 子供なんてそんなもんだ。

 自分のせいで友達が大変な目にあった。どうしよう。大変なことをしてしまった。‥怖い。
 そう思うのと同じくらい、
 他人に怒られたり、嫌なことを言われるのが怖い。
 自分にはそんな気はなかったのに‥なんでこんなことになったんだろう。
 なんであたしがこんな目にあってるんだろう‥。なんであたしがこんな怖い思いをしなきゃならないんだろう。
 ‥あたしだって被害者じゃないか。
 寧ろ、守られてるヒジリよりあたしの方が‥ずっとかわいそうじゃないか。
 あたしは‥あたしの周りには誰もいないんだから。
 って‥逆恨みしたりもした。

 あの頃のあたしは子供で純粋だったけど、‥別に100%「いい奴」じゃなかった。(あたしが思うに「天使のようないい子」なんて実際にはいないって思う)
 でも、自分の事「いい奴じゃない」って思いたくはなかったんだ。
 
 昔のあたしは‥今思えば随分自己中心的で‥被害妄想な子供だった。

 (会ったばかりだというのに)カタル様は「君はそんな子じゃない」って言ってくれた。
 それでもうあたしのカタル様に対する信頼度はMAXになった。
 きっと、あの時カタル様がああいったのは「そういわなければ、あたしがつむじを曲げる」って分かってたからだ。情報を聞き出すのにあたしがつむじを曲げたら具合が悪いから。‥別にカタル様もホントにあたしの事100%悪くないなんて思ってなかっただろう。
 
 あたしの欲しい言葉を、カタル様は一瞬で分析し、くれた。
 それだけのことだ。

 本当に‥カタル様は聡明でいらっしゃる。

 あの時‥あたしは何て答えたっけ‥
 ‥いや、忘れられるはずがない。
 あたしは‥
「魔石商人は‥あたしに「友達を救える方法はあるよ」って言ったんです。「単純なことさ。単純な方法で友達を救える。そして、あたしも得をする方法さ」って。
 ‥最終的には「騙された」としか言いようがないのですが‥あの時は、確かにあたしも納得して「それならヒジリを救えるかもしれない」って思ったんです」
 (この期に及んでの)完璧な自己防衛‥言い訳をしたんだ。
 でも、カタル様はそれを指摘することはなかった。
 そして、ただあたしが話しやすいように誘導してくれた。
「君も納得したんだね。‥その方法はどういう方法だったんだい? 」
「単純なことでした。でも、あたしは‥あの時のあたしには思いつきもしなかったような‥逆転の発想でした」
「うん」
 この期に及んで(自己防衛から)言い淀むあたし。はっきり言って、往生際が悪い‥というか、イラつく態度だ。だけど、カタル様は焦れた様子を見せなかった。
 じっと‥あたしが話し始めるのを根気強く待ってくれた。
 だから‥あたしは「観念した」んだろう。(せかされてたら、あの頃のあたしなら絶対つむじを曲げてた)
「魔石商人は言ったんです「今まで通りさ。この子の余剰にある魔力を魔石で吸い取ってしまえばいいんだ。今までだって、君はそうして来たんだろう?
 余分にあるからこの子が他の子から恐れられる‥将来爆発する恐れがある。だから、そうならないように‥吸い取って魔石に込めればいい。そして、あんたはそれをあたしに売って、あたしは客に売る。みんなハッピーじゃないか」って。あたしは暴走することを恐れていた。だけど、暴走しないようにすればいいって‥単純なことなのに‥考えてもいませんでした。
 たしかにそうすれば、ヒジリにも利があるし、あたしにも利がある。そして、良質の魔石が手に入る魔石商人も利がある。
 魔石商人にも利益がある‥って魔石商人が言ったからあたしは信頼できた。
 もし、「あたしには何の得にもなりゃしないがね」なんて‥商売人が言ってたら‥あたしは絶対信頼なんてしなかった」
 話し終わった時には、周りは暗くなりかけていた。
 ‥思えば、今まで自分の話をこんなにゆっくり聞いてくれた大人なんて周りにいなかったし(貧乏な両親は忙しかったからね)‥、あたしも周りの大人にこんなに自分の話をしたことなんてなかった。
 話し切ってほっとした‥っていうのと、ちょっと疲れたって気持ち。
 それと‥今まで感じたことのないような満足感を感じた。
 カタル様は「頑張ったね」ってあたしを労わってくれて
「そりゃそうだね」
 あたしの意見に同意してくれた。
 あたしの行動に納得してくれたのではなく、あたしが納得したってことに同意してくれた。

「無償の善意なんて在り得ないものね」
 って。
「君が納得させられたのもわかるよ」
 って。ってまるで子守歌か何かのように‥酷く落ち着く口調で付け加えてくれた。

 ヒジリみたいな世間知らずの「恵まれた子」には分からないだろうが、世の中はそういうもんだ。
 あたしなんかに騙されて‥ヒジリってちょっと馬鹿じゃないのかなって思う。
 単純でお人よしで‥人にあげることを惜しいって思わない程‥恵まれてる。
 ‥恵まれてるんだから、いいじゃないか。
 やっぱり、あたしは‥そう悪くないんじゃないか?
 それにあの場合、仕方が無かったんじゃないか?
 相手は騙しなれた大人で、あたしは子供だったから‥
 って‥思ってちょっとこころが軽くなったんだ。

「君は納得して魔石商人の提案に乗ったんだね。それで、具体的に君は何をしたの? 」
 カタル様の口調は優しかった。
 あたしを責めたり絶対にしない‥優しい口調。話を聞く前から「あんた、なにしたんだい」って聞いてくる母さんとは大違い‥。
 だから、母さんの時と違って
「いつも通り余分な魔力を吸い取る魔石をヒジリに渡したの。それは、魔石商人から受け取ったブレスレットについていた。ブレスレットは‥魔石が外れちゃわないようにするための固定具だって言ってた。
 それをヒジリに渡して「今回は少し多めに抜くね。そうしたら、ヒジリも普通のリバーシ位になれるかもしれない。‥きっと、今までより楽になるよ」って言ったんだ」
 あたしはうんと饒舌になっている。
「ほら、キミはちっとも悪くない。‥何も悪くないんだ。悪いのは君を騙した男だ」

 そう、あたしはちっとも悪くない。

 まさか‥ヒジリが死んでしまう程、あの魔石が魔力を吸い取ってしまう‥なんて思ってもいなかった。
 だから、ブレスレットが腕に触れた瞬間‥ぐったりとしていくヒジリを見て、私は焦った。
 ブレスレットはあたしがヒジリに着けなくても、自然にヒジリの腕に吸い寄せられたんだ。
 あたしは焦って、あたしのつくった魔道具をヒジリの腕とブレスレットの間にかました。
 効果とかは考えてなかった。ただ、とっさにそうした。

 その後、偶然通りかかった王子にヒジリのことを任せたのは、王子なら、必要な医療をヒジリに受けさせてくれるって思ったから‥。
 あとはさっき言った、魔力の相性の事ね。
 そして、ヒジリを王子に任せると、私はあの魔石商人を探した。だってそうでしょ? あの男はヒジリを殺しかけたんだから。‥あたしを騙して‥。
 でも会えなかった。
 ‥きっと、事の大きさに怖気づいて逃げだしたんだろう。
 さっきまでは確かにそこらへんにいたのに‥だ。きっと、ヒジリが倒れたら攫って行くつもりだったんだろう。何人かの仲間の気配があった。ヒジリを魔石生産機にするために、はじめっから計画していたんだろう。
 だけど、思わぬ邪魔が入った。
 ‥王子が通りかかったことと、あたしが咄嗟に王子にヒジリを預けたことだ。
 だから‥
 城が動き出す前に逃げ出したんだろう。
 あたしは、奴らを探していただけで‥逃げたわけでは無い。
 ‥だけど、もしかしたら‥城はあたしが犯人と関わりがあるって思ったかもしれない。
 あたしのことを城が探しているって噂で聞いて‥捕まったらきっと殺人未遂犯で捕まるって思った。

 ヒジリを王子に預けて、「ここは任せた! あたしは犯人を追う! 」って勝手に役割を買って出た気になっていたけど、‥城の人たちはそうは思っていなかったんだ! ‥そうだよな、確かに怪しいよね‥。
 ‥普通なら、その役目は城の兵士がするよね‥。
 そりゃ、あたしが(王子の出現で)立場の悪さに気付き、とっさに逃げたって思われても仕方ないよね~‥。
 って今更「自分の状況の悪さ」に気付いた。

 そして、街の噂で聞いたことはもう二つ。
 ヒジリが眠ったまま目覚めない。
 ヒジリは「最初から」ヒジリの力が覚醒するのをおそれた王家に飼い殺しにされる予定だったってこと。

 ‥城はヒジリにとって安全な場所じゃなかった! 
 だのに、私はヒジリをそこに‥。

 ああ‥あたしは‥
 カタル様に話を聞いてもらって‥あたしは
 大事なことを思い出した。
 自分の現状(追われてて怖い。とんでもないことをしてしまった怖い。誰かに何かを言われるのが怖い)にいっぱいいっぱいになってて忘れてた大事なこと。

 ‥あたしは、ヒジリを閉じ込めようとしている王家が許せない。

 そのことを思い出して‥
 あたしは改めて城に対する怒りを思い出した。‥怒りを募らせた。
 ぎゅっと手を握りしめて怒りに燃えていると、
「どうかした? 調子が悪いの? 」
 あたしを覗き込んだカタル様の瞳があんまりにも近かった。
 突然視線に飛び込んできた至近距離の超美形に‥
 ちょっと意識が飛びかけた。
 ‥カタル様‥やっぱり‥心臓に悪いです‥。
 
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