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十一章 特別な人
3.自分ばっかり悔しい思いしてきたって思ってた。
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(side ラルシュ)
リバーシと関わるのは、本当のことを言うと‥嫌だった。
魔力が足りなくていつももどかしい思いをしてきた私は、魔力が多い弟・サラージがずっと羨ましかったから。
弟が‥リバーシだったから。
「私が‥ですか? 同じリバーシのサラージではなくて? 」
兄に聞き直したら、兄は
「ラルシュローレで間違いないよ。きっとラルシュローレの為になると思うよ。私の我儘を聞いてくれないかい? 」
って微笑まれて、「お願いだよ」って付け加えられた。
兄が言うなら‥それは「お願い」じゃなく、絶対だった。
兄は次期国王で、「絶対」だったから。
‥私の為って何だろう。
我慢することを覚えろってことだろうか。‥私は‥
今までだって我慢してきた。‥それが兄上には「我慢してるのが表面に出ちゃってる。まだまだだな」って‥いう風に見えたんだろうか。
恥ずかしい。
それなら、もっと精進しなければいけない。
そう思ったんだ。
リバーシと関わるのは大変だった。
国家公務員として働いている「教育研修済み」のリバーシじゃない。
子供のリバーシだ。
10歳の「お披露目」を済ませたばっかりの子供。‥それでも私より年上なんだけど。
年上だっていっても、‥私の方が子供だっていっても「普通の子供」は私の事を「王子様」として扱う。学校でも、親からもそう教わって来るからだろう。だけど、リバーシはちょっと違う。
なんていうか‥子供のリバーシはリバーシで、子供ではない。
リバーシとしての誇りをもっている。嫌な言い方をすると、もう、いっぱしのリバーシぶってる。
私を王子様と扱わず一人の魔法使いのように扱う。
「王子様が運命の相手をお決めになるときには、僕をお選びになるといいですよ。王子様の魔法は素晴らしい。きっと、魔力がたくさん必要ですよね。僕はたくさんの魔力をもっているからきっと王子様のお役に立てると思いますよ」
権力にすり寄って来るんじゃない。リバーシはそういうの興味がない人間が多いんだ。
‥(嫌な言い方をすると)完全に上から「してやってもいい」って言ってくる‥。リバーシとして「そうでもない」子程‥そういう傾向がある。
リバーシは苦手だ。
だって、馴れ馴れしいし、なんかおせっかいな子多いし、‥何考えてるか分からないし、自分が何でもできるって思ってる。
魔力だって自分で努力して得られたわけでもない「天からの授かりもの」だのに、「僕にはこれがあります。だから僕にお任せください」って‥大きな顔をする。博愛主義者も多いしいい子たちなんだろうって思うけど、「お前のじゃないだろ。生まれつき運が良かっただけだろう?! 」って僻み心を抱いてしまう。私たち魔法使いはそんなこと言わない。
わざわざおせっかいなんか焼かないし、持ってるもの(魔力)をやすやすと他の者に分け与えたりなんてしない。(そもそも持ってないし)
リバーシは魔法使いとは全然タイプが違うんだ。
(私も魔法使いだから分かるっていうのもあるんだろうが)子供の魔法使いはもっと「何を考えているか」分かりやすい。それこそ「王子と知り合いだったら何かと得」っていう損得勘定がダイレクトに見て取れるし、「有名な魔法使いだっていう王子なら珍しい魔法を知っているだろう。何か一つでも覚えよう」って‥凄く知識欲が旺盛だ。
魔法の発展は、「誰かの役に立つために」っていう社会的に崇高な目的ではなく、魔法使い自身の知的好奇心を満たすためだとか、「新しい魔法を発表して世間をあっと言わせたい」っていう欲求の結果だって思う。(表向きには、尤もらしく社会貢献とか言っているけれど、だ)‥それ以前に、リバーシに対するアピールっていう意味が大きいって思う。魔力は少ないけど、自分たちにはこれほどのことが出来る。‥リバーシなんて所詮魔力が多いだけだって言いたいんだろう。
ちょっとね、魔法使いには卑屈なところがあるんだ。だからこそ、頑張れるってのもある。
「魔法を使う欲求を自らの魔力不足によって完全に果たせないという‥フラストレーションのたまった状態を何とかするために努力研鑽」とリバーシに対する対抗意識。
研究のモチベーションをあげていくため、「リバーシは宝の持ち腐れ」って自分に言い聞かせてるんだ。
その上で「リバーシは所詮魔法使いの魔力の電池」って貶めることによって、自分の自尊心を守って‥いつかはその「卑屈な自尊心」が増大して、リバーシを下に見るようになる。
魔法使いは葛藤の結果、リバーシは生まれつき‥
お互いを「下に見てる」ってことだ。
魔法使いはリバーシが羨ましくて(時々憎い)が、リバーシは魔法使いを相手にしていないって思ってた。
だけどヒジリの話‥リバーシも魔法使いの事羨ましいって思う‥って聞いて驚いた。
それどころか、時間にも魔力にも「恵まれてるリバーシ」が、「普通の人間」さえ「羨ましい」って思ってるんだなんて‥。
「眠る」っていう普通の人や魔法使いが当たり前にしている、ホントに当たり前の行動が出来ないから。
「夢ってさ、自分の想像力の外にあるものだろ。いっぱい時間があって、ずっと考えてても、所詮は自分で考えてるだけだから、「なるほど! 」「それは考えもしなかった! 」って考えは出てこないよ。
夢の「新しい考え方」にしたって、実は自分が忘れていた記憶だったりするのかもしれない。‥悩みの答えはさ、結局は自分の中にあるらしいから、時間をかけて自分と向き合えば、いつかは答えが出てくるかもしれない。だけど、‥僕は夢を見ることが出来る全ての人がうらやましくてならないんだ」
って、昔ナラフィスが言ってた。
「記憶だとか知識だとかを書類に例えて‥普通の人は夢によってそれらの書類を整理してもらってる状態だと思うのね。だけど、自分なんだけど、「無意識な自分」が整理してるわけだから「あの書類どこ行った! 」ってことがあったり、無意識に「これは隠しておこう」って書類を隠してくれたりとかがある。
だけど、リバーシはそれがない。夢を見ないから。
ごちゃごちゃした書類を片付けるのも自分。
「勝手に捨てられた! どこ行った」って言える相手もいない。
寂しいもんだよ」
とも‥。
あの時、ナラフィスはどんな気持ちであの言葉を言っていたんだろうか。
ろくに、「ナラフィスの気持ち」なんて考えなかった。
‥そんなに切実に思ってるって‥思ってなかった。
だって、たかが夢だから。
夢に頼ってどこ行ったか分からないことがあるより、自分で出来るならその方がいいじゃないか。
そんな「大層なことじゃない」って。
ナラフィスは「夢を見るのが羨ましい」以前に、‥
眠れることが羨ましいって言ってたんだな。
羨ましいのは、魔法使いだけじゃなかったんだ‥。
リバーシと関わるのは、本当のことを言うと‥嫌だった。
魔力が足りなくていつももどかしい思いをしてきた私は、魔力が多い弟・サラージがずっと羨ましかったから。
弟が‥リバーシだったから。
「私が‥ですか? 同じリバーシのサラージではなくて? 」
兄に聞き直したら、兄は
「ラルシュローレで間違いないよ。きっとラルシュローレの為になると思うよ。私の我儘を聞いてくれないかい? 」
って微笑まれて、「お願いだよ」って付け加えられた。
兄が言うなら‥それは「お願い」じゃなく、絶対だった。
兄は次期国王で、「絶対」だったから。
‥私の為って何だろう。
我慢することを覚えろってことだろうか。‥私は‥
今までだって我慢してきた。‥それが兄上には「我慢してるのが表面に出ちゃってる。まだまだだな」って‥いう風に見えたんだろうか。
恥ずかしい。
それなら、もっと精進しなければいけない。
そう思ったんだ。
リバーシと関わるのは大変だった。
国家公務員として働いている「教育研修済み」のリバーシじゃない。
子供のリバーシだ。
10歳の「お披露目」を済ませたばっかりの子供。‥それでも私より年上なんだけど。
年上だっていっても、‥私の方が子供だっていっても「普通の子供」は私の事を「王子様」として扱う。学校でも、親からもそう教わって来るからだろう。だけど、リバーシはちょっと違う。
なんていうか‥子供のリバーシはリバーシで、子供ではない。
リバーシとしての誇りをもっている。嫌な言い方をすると、もう、いっぱしのリバーシぶってる。
私を王子様と扱わず一人の魔法使いのように扱う。
「王子様が運命の相手をお決めになるときには、僕をお選びになるといいですよ。王子様の魔法は素晴らしい。きっと、魔力がたくさん必要ですよね。僕はたくさんの魔力をもっているからきっと王子様のお役に立てると思いますよ」
権力にすり寄って来るんじゃない。リバーシはそういうの興味がない人間が多いんだ。
‥(嫌な言い方をすると)完全に上から「してやってもいい」って言ってくる‥。リバーシとして「そうでもない」子程‥そういう傾向がある。
リバーシは苦手だ。
だって、馴れ馴れしいし、なんかおせっかいな子多いし、‥何考えてるか分からないし、自分が何でもできるって思ってる。
魔力だって自分で努力して得られたわけでもない「天からの授かりもの」だのに、「僕にはこれがあります。だから僕にお任せください」って‥大きな顔をする。博愛主義者も多いしいい子たちなんだろうって思うけど、「お前のじゃないだろ。生まれつき運が良かっただけだろう?! 」って僻み心を抱いてしまう。私たち魔法使いはそんなこと言わない。
わざわざおせっかいなんか焼かないし、持ってるもの(魔力)をやすやすと他の者に分け与えたりなんてしない。(そもそも持ってないし)
リバーシは魔法使いとは全然タイプが違うんだ。
(私も魔法使いだから分かるっていうのもあるんだろうが)子供の魔法使いはもっと「何を考えているか」分かりやすい。それこそ「王子と知り合いだったら何かと得」っていう損得勘定がダイレクトに見て取れるし、「有名な魔法使いだっていう王子なら珍しい魔法を知っているだろう。何か一つでも覚えよう」って‥凄く知識欲が旺盛だ。
魔法の発展は、「誰かの役に立つために」っていう社会的に崇高な目的ではなく、魔法使い自身の知的好奇心を満たすためだとか、「新しい魔法を発表して世間をあっと言わせたい」っていう欲求の結果だって思う。(表向きには、尤もらしく社会貢献とか言っているけれど、だ)‥それ以前に、リバーシに対するアピールっていう意味が大きいって思う。魔力は少ないけど、自分たちにはこれほどのことが出来る。‥リバーシなんて所詮魔力が多いだけだって言いたいんだろう。
ちょっとね、魔法使いには卑屈なところがあるんだ。だからこそ、頑張れるってのもある。
「魔法を使う欲求を自らの魔力不足によって完全に果たせないという‥フラストレーションのたまった状態を何とかするために努力研鑽」とリバーシに対する対抗意識。
研究のモチベーションをあげていくため、「リバーシは宝の持ち腐れ」って自分に言い聞かせてるんだ。
その上で「リバーシは所詮魔法使いの魔力の電池」って貶めることによって、自分の自尊心を守って‥いつかはその「卑屈な自尊心」が増大して、リバーシを下に見るようになる。
魔法使いは葛藤の結果、リバーシは生まれつき‥
お互いを「下に見てる」ってことだ。
魔法使いはリバーシが羨ましくて(時々憎い)が、リバーシは魔法使いを相手にしていないって思ってた。
だけどヒジリの話‥リバーシも魔法使いの事羨ましいって思う‥って聞いて驚いた。
それどころか、時間にも魔力にも「恵まれてるリバーシ」が、「普通の人間」さえ「羨ましい」って思ってるんだなんて‥。
「眠る」っていう普通の人や魔法使いが当たり前にしている、ホントに当たり前の行動が出来ないから。
「夢ってさ、自分の想像力の外にあるものだろ。いっぱい時間があって、ずっと考えてても、所詮は自分で考えてるだけだから、「なるほど! 」「それは考えもしなかった! 」って考えは出てこないよ。
夢の「新しい考え方」にしたって、実は自分が忘れていた記憶だったりするのかもしれない。‥悩みの答えはさ、結局は自分の中にあるらしいから、時間をかけて自分と向き合えば、いつかは答えが出てくるかもしれない。だけど、‥僕は夢を見ることが出来る全ての人がうらやましくてならないんだ」
って、昔ナラフィスが言ってた。
「記憶だとか知識だとかを書類に例えて‥普通の人は夢によってそれらの書類を整理してもらってる状態だと思うのね。だけど、自分なんだけど、「無意識な自分」が整理してるわけだから「あの書類どこ行った! 」ってことがあったり、無意識に「これは隠しておこう」って書類を隠してくれたりとかがある。
だけど、リバーシはそれがない。夢を見ないから。
ごちゃごちゃした書類を片付けるのも自分。
「勝手に捨てられた! どこ行った」って言える相手もいない。
寂しいもんだよ」
とも‥。
あの時、ナラフィスはどんな気持ちであの言葉を言っていたんだろうか。
ろくに、「ナラフィスの気持ち」なんて考えなかった。
‥そんなに切実に思ってるって‥思ってなかった。
だって、たかが夢だから。
夢に頼ってどこ行ったか分からないことがあるより、自分で出来るならその方がいいじゃないか。
そんな「大層なことじゃない」って。
ナラフィスは「夢を見るのが羨ましい」以前に、‥
眠れることが羨ましいって言ってたんだな。
羨ましいのは、魔法使いだけじゃなかったんだ‥。
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