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十一章 特別な人
6.王の結婚相手
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(side ラルシュ)
「王妃は異世界からのリバーシが多いんだ」
兄がニコニコしながら話し始めた時、
すぐさま‥
逃げなきゃって思った。
これは聞かない方がいいやつだ。
ややこしい話になるだろう。
というか‥「聞いたらダメな奴だ」
って思った。
私には普段そういう「野生の勘」みたいなものはないんだけど、あの時は直感的に「これはダメな奴だ」って思った。
王の結婚。
王本人以外、‥家族内でもすべては知ることが無い最大の秘密。
秘密というか‥語られることが無かった話。
というか、誰も口を出していいもんじゃない‥って思って来た。
だって、そういうのは神の采配‥じゃないけど、王が「引き当てて」来る‥領域だから。
(言うなれば)凡人が口をだせるもんじゃないよね、って。
‥というのは建前で、結局‥
面倒なことは王に全部任せて、自分たちは「これ以上の」面倒ごとに関わりたくないっていうのが‥本心。
王が勿論一番仕事も責任も多いんだけど、他の王族だって結構なもんだ。
これ以上‥
面倒事には関わり合いたくない。
兄に任せておけば間違いが無い。
兄の言う通りにしたら上手くいく。
という「信頼」に見せかけた「丸投げ」。
私とサラージは完全に‥兄に甘えていたんだ。
「‥兄上の結婚は、すべて兄上と父上のお心のままに。その決定事項に対して我々になんの異論もあろうはずがございません。勿論、私自身の結婚についても、です」
私はいつもより丁寧に頭を下げて、いつもより平坦な口調で言った。
‥そういうことは、兄弟の問題じゃない。家や国の問題だから。
王族に限らず高位貴族たちはほぼ、政略結婚が常だ。
‥ファー将軍はそんな中、そんな慣例なんて知らないとばかりに、幼馴染と恋愛結婚している。あの人は、いろんな意味で凄い人なんだ。
そういうのは、ホントに稀だし、‥王家では100%在り得ないっていってもいい。
だけど、王はさっき言ったみたいに「当たりがいい」から、国にも自分にもピッタリな相手を探し当てるし、王が「この人がいいだろう」って決めた、息子たちの相手もまた「当たりがいい」んだ。(私が「引き当てる」って言ったのはそのせいだ)
まさにチートだね。
実は、その運任せに適当に選ばれている(と皆が思っている)お后様にはただ一つの傾向がある。
それは、異世界人が多いってことだ。
だけど、それは「異世界人だから」ではなく、たまたま「王が異世界人にお后様に求める理想(基準? )」が合致しやすいから、だけだ。
どういう基準か‥なんて勿論我々には分からないんだけど(寧ろ知りたくない。だって(以下同文))兄は今それを話そうとしているのではないか?
‥お許し願いたい。これ以上の面倒事は‥っ! ‥お許し願いたい。
直感や、天啓じゃなかったんだ‥。やっぱり「基準にのっとって」選んでたんだ。そんな素振りなんてちっとも見せないし、父上なんて「一目惚れだった♡」なんて言ってるけど、やっぱり‥!
異世界の見目麗しく聡明で純粋な乙女と若き王が出会って、お互い一目で恋に落ちて、(紆余曲折あったりした後に)結婚して、異世界人の知恵やなんかでさらに国が栄えて皆幸せ‥。
(サラージじゃないけど)吟遊詩人が彼らの「出会い」それから「結婚」をロマンチックにドラマチックに脚色して「運命の恋」に仕立て上げるわけだけど、‥あんなのはただ国民向けの娯楽だ。
彼らの結婚には、そんなロマンもドラマもない。
そもそも、王の結婚に紆余曲折があるか。
王が「結婚する」って言えば結婚することになる。
決定権は全て王にあるからだ。
だから紆余曲折は、「周囲に反対されて」の類であるわけがない。
では、本人同士の話‥ってことなんだけど、こっちに渡って来る異世界人は「ロマンとは無縁な不思議ちゃん」が多い。その法則に母は全く一致しているし、父もロマンチストとは無縁だ。
絶対、「100%作り話」に違いない。
ただ、母はリバーシだからか美人だし、父も歴代の王と同じく秀麗な顔立ちをしている。
美男美女って言うのは、間違いはない。
それに
あの二人に愛が全くないとは思わない。
普通に仲も良さそうだ。
だから、それで「いい」のだろう。
‥激しい愛情とかロマンチックとは無縁ってだけで、「政略結婚で愛もなく、無理やり」「結婚は形だけで夫婦仲は冷めきって‥」ではないし、十分に及第点だと思う。
‥ああ、今は両親の話じゃなかった。兄の結婚の話だった。
何の話をしていたっけ。
たしか、「王妃は異世界からのリバーシが多い」そして、今異世界から来ているリバーシはミチルだ。
つまり
「異世界人のリバーシという条件にあう「王妃」が今回はたまたま同性であったってだけのことです。別に私は気にしないです。
ミチルは頭もいいし、いい奴です。今までは友と思っておりましたが、兄上が婚約者にとお考えなら、私も対応を改め「次期王の婚約者」として接するようにします。そして、ご結婚後は、私はミチルを姉と呼びます」
兄は、そういうことを言いたいんだろう。
私が笑顔で言うと‥
「は? 」
‥兄が固まった。
兄のこんな‥鳩が豆鉄砲を食ったような表情‥初めて見た。
きっと、私に反対されるって心配されていたんだろう。
大丈夫です! 私は、兄の忠実な家臣です。家族である前に、私は‥私とサラージは、国王と次期国王の一番の家臣です!
「大丈夫です! 私は別にそういうのに偏見はないし、兄上の決定に全て従います。兄上をいつも尊敬しています。そんなことで軽蔑したりとか‥在り得ないです! 」
ちょっと力を入れて‥念を押した。
兄は、ほっとしたように‥
‥ん? 呆れたようにため息を着いた‥?
「ラルシュローレ‥何を言っているんだ。そもそも、男同志で結婚して子供はどうするつもりだ」
ああそういうことを心配していたのか。
こども‥子供ねぇ。
それは‥
「それは‥まあ、魔法で何とか? 」
そのうち、そういう魔法も研究しよう。出来ないことは無いに違いない。
なんていっても、私は国で一番の魔法使いですし!
「なるか! 落ちつけ。そんな話はしていない‥」
頭痛ですか。お気をつけください‥。顔色も悪いですよ。
人を呼ぼうとしたら、止められた。
で、椅子に深く背中を預けた珍しく疲れ切ったご様子の兄が言うには
王妃に異世界人が多いのは、「この世界の人間じゃなく、客観的にこの国を見れる人間っていう条件に合いやすいから」であって、別に異世界人じゃなきゃダメなわけでもない。
過去に結婚相手にならなかった異世界人のリバーシは、王の協力者として国の発展に力を貸してくれた、ミチルにはそれを期待している。
ってことらしい。
そして、私にはミチルに「そういう意思があるか」ってことの確認と、あるならば諸々の説明等を任せたい‥らしい。
‥ああ、面倒事を‥聞いてしまった。避けてたかったのに‥。「協力要請」と「ミチルの教育」ってことか‥。やっぱり厄介でしかなかった‥。
ともかく‥ミチルは協力者‥婚約者にと考えてるんじゃなかった。いや、表向きはそういうことにしておいて‥実は‥?
まだぐるぐると考えている(← 考え事で頭の容量が一時的にパンクした感じ)私の心を読んだかのように、兄はにやり、と人の悪い笑顔を私に向けて
「あと、‥どうしてもラルシュローレがミチルと結婚したいなら、ヒジリのこと(婚約破棄的なこととか)は私から父上に言っておく。サラージもいるわけだし(ヒジリはサラージの婚約者になってもらってもかまわないし)。大丈夫だ。私にもそういう偏見はない」
って言ったんだ。
「違います!!! 」
柄にもなく、「即ツッコミ」を入れた私だった。
「王妃は異世界からのリバーシが多いんだ」
兄がニコニコしながら話し始めた時、
すぐさま‥
逃げなきゃって思った。
これは聞かない方がいいやつだ。
ややこしい話になるだろう。
というか‥「聞いたらダメな奴だ」
って思った。
私には普段そういう「野生の勘」みたいなものはないんだけど、あの時は直感的に「これはダメな奴だ」って思った。
王の結婚。
王本人以外、‥家族内でもすべては知ることが無い最大の秘密。
秘密というか‥語られることが無かった話。
というか、誰も口を出していいもんじゃない‥って思って来た。
だって、そういうのは神の采配‥じゃないけど、王が「引き当てて」来る‥領域だから。
(言うなれば)凡人が口をだせるもんじゃないよね、って。
‥というのは建前で、結局‥
面倒なことは王に全部任せて、自分たちは「これ以上の」面倒ごとに関わりたくないっていうのが‥本心。
王が勿論一番仕事も責任も多いんだけど、他の王族だって結構なもんだ。
これ以上‥
面倒事には関わり合いたくない。
兄に任せておけば間違いが無い。
兄の言う通りにしたら上手くいく。
という「信頼」に見せかけた「丸投げ」。
私とサラージは完全に‥兄に甘えていたんだ。
「‥兄上の結婚は、すべて兄上と父上のお心のままに。その決定事項に対して我々になんの異論もあろうはずがございません。勿論、私自身の結婚についても、です」
私はいつもより丁寧に頭を下げて、いつもより平坦な口調で言った。
‥そういうことは、兄弟の問題じゃない。家や国の問題だから。
王族に限らず高位貴族たちはほぼ、政略結婚が常だ。
‥ファー将軍はそんな中、そんな慣例なんて知らないとばかりに、幼馴染と恋愛結婚している。あの人は、いろんな意味で凄い人なんだ。
そういうのは、ホントに稀だし、‥王家では100%在り得ないっていってもいい。
だけど、王はさっき言ったみたいに「当たりがいい」から、国にも自分にもピッタリな相手を探し当てるし、王が「この人がいいだろう」って決めた、息子たちの相手もまた「当たりがいい」んだ。(私が「引き当てる」って言ったのはそのせいだ)
まさにチートだね。
実は、その運任せに適当に選ばれている(と皆が思っている)お后様にはただ一つの傾向がある。
それは、異世界人が多いってことだ。
だけど、それは「異世界人だから」ではなく、たまたま「王が異世界人にお后様に求める理想(基準? )」が合致しやすいから、だけだ。
どういう基準か‥なんて勿論我々には分からないんだけど(寧ろ知りたくない。だって(以下同文))兄は今それを話そうとしているのではないか?
‥お許し願いたい。これ以上の面倒事は‥っ! ‥お許し願いたい。
直感や、天啓じゃなかったんだ‥。やっぱり「基準にのっとって」選んでたんだ。そんな素振りなんてちっとも見せないし、父上なんて「一目惚れだった♡」なんて言ってるけど、やっぱり‥!
異世界の見目麗しく聡明で純粋な乙女と若き王が出会って、お互い一目で恋に落ちて、(紆余曲折あったりした後に)結婚して、異世界人の知恵やなんかでさらに国が栄えて皆幸せ‥。
(サラージじゃないけど)吟遊詩人が彼らの「出会い」それから「結婚」をロマンチックにドラマチックに脚色して「運命の恋」に仕立て上げるわけだけど、‥あんなのはただ国民向けの娯楽だ。
彼らの結婚には、そんなロマンもドラマもない。
そもそも、王の結婚に紆余曲折があるか。
王が「結婚する」って言えば結婚することになる。
決定権は全て王にあるからだ。
だから紆余曲折は、「周囲に反対されて」の類であるわけがない。
では、本人同士の話‥ってことなんだけど、こっちに渡って来る異世界人は「ロマンとは無縁な不思議ちゃん」が多い。その法則に母は全く一致しているし、父もロマンチストとは無縁だ。
絶対、「100%作り話」に違いない。
ただ、母はリバーシだからか美人だし、父も歴代の王と同じく秀麗な顔立ちをしている。
美男美女って言うのは、間違いはない。
それに
あの二人に愛が全くないとは思わない。
普通に仲も良さそうだ。
だから、それで「いい」のだろう。
‥激しい愛情とかロマンチックとは無縁ってだけで、「政略結婚で愛もなく、無理やり」「結婚は形だけで夫婦仲は冷めきって‥」ではないし、十分に及第点だと思う。
‥ああ、今は両親の話じゃなかった。兄の結婚の話だった。
何の話をしていたっけ。
たしか、「王妃は異世界からのリバーシが多い」そして、今異世界から来ているリバーシはミチルだ。
つまり
「異世界人のリバーシという条件にあう「王妃」が今回はたまたま同性であったってだけのことです。別に私は気にしないです。
ミチルは頭もいいし、いい奴です。今までは友と思っておりましたが、兄上が婚約者にとお考えなら、私も対応を改め「次期王の婚約者」として接するようにします。そして、ご結婚後は、私はミチルを姉と呼びます」
兄は、そういうことを言いたいんだろう。
私が笑顔で言うと‥
「は? 」
‥兄が固まった。
兄のこんな‥鳩が豆鉄砲を食ったような表情‥初めて見た。
きっと、私に反対されるって心配されていたんだろう。
大丈夫です! 私は、兄の忠実な家臣です。家族である前に、私は‥私とサラージは、国王と次期国王の一番の家臣です!
「大丈夫です! 私は別にそういうのに偏見はないし、兄上の決定に全て従います。兄上をいつも尊敬しています。そんなことで軽蔑したりとか‥在り得ないです! 」
ちょっと力を入れて‥念を押した。
兄は、ほっとしたように‥
‥ん? 呆れたようにため息を着いた‥?
「ラルシュローレ‥何を言っているんだ。そもそも、男同志で結婚して子供はどうするつもりだ」
ああそういうことを心配していたのか。
こども‥子供ねぇ。
それは‥
「それは‥まあ、魔法で何とか? 」
そのうち、そういう魔法も研究しよう。出来ないことは無いに違いない。
なんていっても、私は国で一番の魔法使いですし!
「なるか! 落ちつけ。そんな話はしていない‥」
頭痛ですか。お気をつけください‥。顔色も悪いですよ。
人を呼ぼうとしたら、止められた。
で、椅子に深く背中を預けた珍しく疲れ切ったご様子の兄が言うには
王妃に異世界人が多いのは、「この世界の人間じゃなく、客観的にこの国を見れる人間っていう条件に合いやすいから」であって、別に異世界人じゃなきゃダメなわけでもない。
過去に結婚相手にならなかった異世界人のリバーシは、王の協力者として国の発展に力を貸してくれた、ミチルにはそれを期待している。
ってことらしい。
そして、私にはミチルに「そういう意思があるか」ってことの確認と、あるならば諸々の説明等を任せたい‥らしい。
‥ああ、面倒事を‥聞いてしまった。避けてたかったのに‥。「協力要請」と「ミチルの教育」ってことか‥。やっぱり厄介でしかなかった‥。
ともかく‥ミチルは協力者‥婚約者にと考えてるんじゃなかった。いや、表向きはそういうことにしておいて‥実は‥?
まだぐるぐると考えている(← 考え事で頭の容量が一時的にパンクした感じ)私の心を読んだかのように、兄はにやり、と人の悪い笑顔を私に向けて
「あと、‥どうしてもラルシュローレがミチルと結婚したいなら、ヒジリのこと(婚約破棄的なこととか)は私から父上に言っておく。サラージもいるわけだし(ヒジリはサラージの婚約者になってもらってもかまわないし)。大丈夫だ。私にもそういう偏見はない」
って言ったんだ。
「違います!!! 」
柄にもなく、「即ツッコミ」を入れた私だった。
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