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十二章 ヒジリと地球の仲間たち
8.喋ったら命の保証がない系の秘密ってわけですか?
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(side ヒジリ)
知らない方がいいってことがこの世界にはあるって話ですかね‥。
‥よくあることだけど、良くないことだよね。
井の中の蛙大海を知らず。
日本の諺だ。
井戸の中にしかいないと、狭いところののことしか知らない。見識が狭いよ~って意味。
「この国に住んでいる大半の国民はこの国しか世界を知らない。だから井の中の蛙ってことですよね」
俺がぽつり、と呟くと、う~んってナラフィスさんが首をひねる。
「そうだね? 」
って「取り敢えず」って感じの返事をする。
だから、何?
って思ってるだろう。
俺が急にこんな話を始めた意図が分からないって。
そんなわけないだろ、って思う。
「‥何も知らない国民にはそのままでいいってことですか? 」
ふう、ってナラフィスさんがため息を着いた。
「それは‥地球の諺で、この国には当てはまらないよ。だって、この国の人間と地球の人間は余りにも違うんだから」
「違う? 」
俺はナラフィスさんを見た。
いつも通りの飄々とした顔。
ナラフィスさんは、人畜無害で天真爛漫な「学者馬鹿」って感じを装ってるけど、‥やっぱりそうじゃない。
ナラフィスさんは、‥結構「狸」だ。
ラルシュの友達って感じする
「うん。違う」
「この国の人間は‥王も含めて、蛙にしかなれない。大海を知ることは出来る。だけど、大海に出ることは出来ない。‥それは、ヒジリも同じ」
「‥どういうことですか? 」
ナラフィスさんの顔を‥そういえば初めてこんなにしみじみ見た気がする。
透き通った浅黄色の瞳の瞳孔だけが茶色い。
山奥で見つけた池みたいな感じの瞳。
そんな場合じゃないのに、なぜかその瞳から目が離せなかった。
そうやって、じっと見つめる俺にナラフィスさんは困った様な顔になって、‥だけど、視線を逸らすことはしなかった。(だって、これは戦いだから。目をそらしたら負けだよね)
男と男の真剣勝負だ。
(あ、違うか)
「王家の人間は、きっと、魔法やなんかで「大海に出ていける術」を身に着けたところで、出ていくことはない。王家の仕事は、井戸の中にいて、井戸の整備をすることだから。
井戸の中から出られない「ただの蛙」の生活環境を常に整えて、生活できる環境を作ることだ」
うん、それが王家の使命だよね。王家が国民を裏切って置き去りにしたりとかしちゃダメだよね?
俺は頷く。
「使命だから、って以外に、種族的にムリなんだ。魔法やなんかの「大海に出ていける術」は、言うならば船やら防護服。そうやって、何かが無ければ海に入れない。淡水生の蛙は海水には入れない。
そうやって、常に防護しながら暮らしていくのは、果たして「暮らしている」って言えるのかどうか」
う~ん。人間が宇宙に行くような感じかな?
宇宙服を着ていくことは出来るけど、宇宙服が破れたりとかしたら、もうそれだけでアウトって感じ。
だけど、魔法が解けたからっていって、地球には空気がないわけじゃない‥別に死ぬわけじゃないんじゃ?
首を傾げる俺の気持ちを読んだのか(俺は全部顔に出るらしいから)ナラフィスさんはふふってまた笑って
「魔力枯渇した時、死にそうにならなかった? 」
‥なった!
水の中でおぼれて息が出来ない様な感じになって、その後、急激に吐き気が襲ってきて、‥もう気分が悪すぎて悪すぎて「いっそ、殺してくれ!! 」って思った。
あれは‥食中毒になって、嘔吐と下痢でトイレから一日出られなかった時を凌ぐ気分の悪さだった。
「地球で適応状態にない。つまり、魔力枯渇したら‥ああなる。ヒジリは、こっちに帰ってこれたから死んでないけど、あのまま地球にいたら、確実に死んでた」
食中毒は「いっそ殺して!! 」だけど、あれは‥ホントに死んでたかもな奴だったってわけ。
‥苦しみ抜いて死ぬとか‥無理!! ‥よかった。ラルシュ様、ナラフィス様は命の恩人です! (本気で)
しかも、あのまま死んだら、細胞も残らず消滅したらしい。う~ん‥べつに、それはどうでもいい。死体を残さないとか、寧ろいいよね。
「‥‥‥」
あ。また顔に現れてましたか。
そんな可哀そうなものを見るような目で見ないでください。
ナラフィスさんは、ふう、と一度大きくため息をついてその場の空気をリセットして‥また深刻な空気を作る。今は、真剣な話をしている時なんだ。(反省‥)
「僕たちはここからは絶対出られない。
「行く術を用意できる状況にある」王家ですらそれは変わらない。
そうだったら、絶対に行くことがかなわない国民に、大海への夢を語るのがいいのか、大海に「仮に」出て知識を吸収してきて、それを井の中で活用する方がいいのか。
答えは明らかだよね? 」
「‥はい」
国民に与える情報を厳選して「知らなくてもいいこと(= 大海への夢の類)」を取捨選択してるだけ。別に、情報隠蔽してるわけじゃない、人聞きの悪いことをいうな。
彼の眼はそう語っていた。
怖ぇ。普段大人しい人の「目で語る」怖ぇ。
「だから、ヒジリも発言には注意して? ラルシュもヒジリが将来王族になるからって前提で話してることもあるんだから。
だけど、知ってるからっていって、話してはいけない。例え親でも、だ。
これからは、分からなかったら僕に聞いて? その為の家庭教師でしょ? 」
ナラフィスさんは、「その為の家庭教師」だったんだ‥。
俺、もうなんにも首挟まない。何にも喋らないから、‥将来王族とか勘弁してもらえないかな。
‥王族怖すぎるよ!!
知らない方がいいってことがこの世界にはあるって話ですかね‥。
‥よくあることだけど、良くないことだよね。
井の中の蛙大海を知らず。
日本の諺だ。
井戸の中にしかいないと、狭いところののことしか知らない。見識が狭いよ~って意味。
「この国に住んでいる大半の国民はこの国しか世界を知らない。だから井の中の蛙ってことですよね」
俺がぽつり、と呟くと、う~んってナラフィスさんが首をひねる。
「そうだね? 」
って「取り敢えず」って感じの返事をする。
だから、何?
って思ってるだろう。
俺が急にこんな話を始めた意図が分からないって。
そんなわけないだろ、って思う。
「‥何も知らない国民にはそのままでいいってことですか? 」
ふう、ってナラフィスさんがため息を着いた。
「それは‥地球の諺で、この国には当てはまらないよ。だって、この国の人間と地球の人間は余りにも違うんだから」
「違う? 」
俺はナラフィスさんを見た。
いつも通りの飄々とした顔。
ナラフィスさんは、人畜無害で天真爛漫な「学者馬鹿」って感じを装ってるけど、‥やっぱりそうじゃない。
ナラフィスさんは、‥結構「狸」だ。
ラルシュの友達って感じする
「うん。違う」
「この国の人間は‥王も含めて、蛙にしかなれない。大海を知ることは出来る。だけど、大海に出ることは出来ない。‥それは、ヒジリも同じ」
「‥どういうことですか? 」
ナラフィスさんの顔を‥そういえば初めてこんなにしみじみ見た気がする。
透き通った浅黄色の瞳の瞳孔だけが茶色い。
山奥で見つけた池みたいな感じの瞳。
そんな場合じゃないのに、なぜかその瞳から目が離せなかった。
そうやって、じっと見つめる俺にナラフィスさんは困った様な顔になって、‥だけど、視線を逸らすことはしなかった。(だって、これは戦いだから。目をそらしたら負けだよね)
男と男の真剣勝負だ。
(あ、違うか)
「王家の人間は、きっと、魔法やなんかで「大海に出ていける術」を身に着けたところで、出ていくことはない。王家の仕事は、井戸の中にいて、井戸の整備をすることだから。
井戸の中から出られない「ただの蛙」の生活環境を常に整えて、生活できる環境を作ることだ」
うん、それが王家の使命だよね。王家が国民を裏切って置き去りにしたりとかしちゃダメだよね?
俺は頷く。
「使命だから、って以外に、種族的にムリなんだ。魔法やなんかの「大海に出ていける術」は、言うならば船やら防護服。そうやって、何かが無ければ海に入れない。淡水生の蛙は海水には入れない。
そうやって、常に防護しながら暮らしていくのは、果たして「暮らしている」って言えるのかどうか」
う~ん。人間が宇宙に行くような感じかな?
宇宙服を着ていくことは出来るけど、宇宙服が破れたりとかしたら、もうそれだけでアウトって感じ。
だけど、魔法が解けたからっていって、地球には空気がないわけじゃない‥別に死ぬわけじゃないんじゃ?
首を傾げる俺の気持ちを読んだのか(俺は全部顔に出るらしいから)ナラフィスさんはふふってまた笑って
「魔力枯渇した時、死にそうにならなかった? 」
‥なった!
水の中でおぼれて息が出来ない様な感じになって、その後、急激に吐き気が襲ってきて、‥もう気分が悪すぎて悪すぎて「いっそ、殺してくれ!! 」って思った。
あれは‥食中毒になって、嘔吐と下痢でトイレから一日出られなかった時を凌ぐ気分の悪さだった。
「地球で適応状態にない。つまり、魔力枯渇したら‥ああなる。ヒジリは、こっちに帰ってこれたから死んでないけど、あのまま地球にいたら、確実に死んでた」
食中毒は「いっそ殺して!! 」だけど、あれは‥ホントに死んでたかもな奴だったってわけ。
‥苦しみ抜いて死ぬとか‥無理!! ‥よかった。ラルシュ様、ナラフィス様は命の恩人です! (本気で)
しかも、あのまま死んだら、細胞も残らず消滅したらしい。う~ん‥べつに、それはどうでもいい。死体を残さないとか、寧ろいいよね。
「‥‥‥」
あ。また顔に現れてましたか。
そんな可哀そうなものを見るような目で見ないでください。
ナラフィスさんは、ふう、と一度大きくため息をついてその場の空気をリセットして‥また深刻な空気を作る。今は、真剣な話をしている時なんだ。(反省‥)
「僕たちはここからは絶対出られない。
「行く術を用意できる状況にある」王家ですらそれは変わらない。
そうだったら、絶対に行くことがかなわない国民に、大海への夢を語るのがいいのか、大海に「仮に」出て知識を吸収してきて、それを井の中で活用する方がいいのか。
答えは明らかだよね? 」
「‥はい」
国民に与える情報を厳選して「知らなくてもいいこと(= 大海への夢の類)」を取捨選択してるだけ。別に、情報隠蔽してるわけじゃない、人聞きの悪いことをいうな。
彼の眼はそう語っていた。
怖ぇ。普段大人しい人の「目で語る」怖ぇ。
「だから、ヒジリも発言には注意して? ラルシュもヒジリが将来王族になるからって前提で話してることもあるんだから。
だけど、知ってるからっていって、話してはいけない。例え親でも、だ。
これからは、分からなかったら僕に聞いて? その為の家庭教師でしょ? 」
ナラフィスさんは、「その為の家庭教師」だったんだ‥。
俺、もうなんにも首挟まない。何にも喋らないから、‥将来王族とか勘弁してもらえないかな。
‥王族怖すぎるよ!!
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