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十二章 ヒジリと地球の仲間たち
10.言わないけど‥
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(side ヒジリ)
「王家の秘密だから知らなくても普通です。僕は、例外なんです。そして、今から、ラルシュローレ殿下から家庭教師としてヒジリに「全部を」教える命を受けて、ヒジリに「他言無用の話」をします」
ナラフィスさんが俺の耳元で、
ちょっと声のボリュームとトーンを落として話す。
それはいかにも、重要な秘密って感じがして‥
「いえ、聞きたくないです」
俺は、
即答した。
聞きたくない。
本当に! 切に!
「無理です。聞いてください」
‥ナラフィスさん、顔は笑ってるけど、目が笑ってない。
これ、マジな奴か~。そうだよな~ラルシュの事、殿下とか言ったし‥。
友達として、じゃなく、臣下として、ってこと。
「‥はい」
そして、俺も「聖の心を捨てきれない似非地球人」じゃなく、「取り扱い注意人物の夜の国国民ヒジリ」として、話を聞かなければ「いけない」。つまり、義務だ。
俺に拒否権はないってわけ。
俺はしぶしぶ頷く。
ナラフィスさんは満足そうに微笑むと、話しやすいように、椅子を俺の横に持ってきて、横並びになった。
小声で話が続けられる。
「白の思想と黒の思想はご存じですか? 」
また知らない単語だ。‥でも、もう今更だ、知らないことは知らないって言っちゃえ。
俺はもう、なにかと色々諦めた。
「知りません。あと、‥普通にしゃべってください」
「はは、分かった。
じゃあ、白の思想と黒の思想から説明するね」
ラルシュさんは嬉々として説明し始めた。
曰く、
白の思想っていうのは、簡単に言うと、「全体でみんなの幸せを願う」っていう考え方。
「個人の利益のみを追求して、弱きを助けない考えは悪の所業。老若男女、強きものは弱きものを助ける。弱きものや生まれが貧しい者も、平等に幸せになる権利がある。助け合い‥相互扶助こそ世界の平和」って利己主義的な印象がある黒を忌諱する傾向にある。
黒の思想って言うのは、簡単に言うと「個人主義て」合理的な思想。
「努力した人間が得をするのは当たり前。たとえ生まれのせいでその後の獲得年収に差が出来たとしても、それは運命‥自分の持って産まれた「運」ってもんだから仕方が無い」って、仲良しこよしで横並びな印象のある白を貶しているところがある。
らしい。
「社会主義‥共産主義? と、資本主義って感じ? 」
俺が聞き返すと、
「う~ん。政治的な思想じゃないから、あくまで「そういう考え方」としか言えない‥かなあ」
ナラフィスさんは首をひねって言った。
主義思想ではなく、「そういう性格」に近い、って感じかな?
そういう性格をした人がいるよ、ってだけで国がどちらかの思想を政治的思想としているわけでも、それどころか、支援してるとかでもない。
ただ、そういう二つの考え方がこの国の主流としてある、ってこと。
王家は、どちらかというと「白寄り」だけど、それは「ちょっと白の方が強いかな~」程度で、「白の思想主義国家」とは違うらしい。
‥よくわからないけど、それは「地球人の感覚で考えたらそうだろうね」ってことらしい。
「この国の人間と地球人は違う。人種的な違い程度じゃない。この前も言ったように、海水魚と淡水魚ほど違う」
らしいから。
そして、それは、身体の構造の違いだけじゃない。
「考え方も全然違うんだ。ここの人間は‥考え方に柔軟性がほとんどないんだ。だって、ごりっごりの「井の中」育ちだから」
自分の暮らしが全てだって思ってるし、自分の考え方が唯一だって思ってる。
そして、
「それとは別に、生まれっつき、ホントに天性って感じで、もう性格が固定されちゃってる人たちがいるんだ。
頑固とかそういうレベルじゃない。
他の人たちが、白っぽい、黒っぽいだったら、その人たちは、「純粋な白」、「純粋な黒」。
白っぽい人たち、黒っぽい人たちのカリスマ的存在。
それが白のインフルエンサーと黒のインフルエンサーだ」
ナラフィスさんは、「黒寄りの人」で、インフルエンサーではないらしい。インフルエンサーは自分の事を黒寄りだとか、白寄りだとは言わないらしい。
自分では分からないから。
「インフルエンサーについてはまだよくわからないけど‥白の思想と黒の思想があるってことは分かった。じゃあさ、この国の人全員は白寄りか黒寄りの人いずれかってこと? 」
「いいや? 白寄りの人、黒の寄りの人と、「他の何者でもない人」。他の何者でもない人が多いよ。
白寄りの人、黒寄りの人は「多少なりともこの国の在り方‥政治や宗教に興味関心が有る者」‥政治家や神官になる人が多いね。で、「他の何者でもない人」は政治に全く興味関心がない者だ。
「他の何者でもない人」は、政治に特に興味はないが「この国の決まりだから」それに従って生きているに過ぎない人々だ」
俺が聞くと、ナラフィスさんが即答した。少したりとも考えるそぶりも見せずに、だ。
つまり、インフルエンサー、黒か白の思想家、無関心のいずれか。
‥俺の両親も無関心派だな。父さんが政治について熱く語る姿なんか想像できない。
‥それをいうなら、俺もだけど。
俺もそういうことを深く考えたことはない。(← 生まれ的天性の「純粋な白(白のインフルエンサー)」だから。だけど、本人はまだ無自覚)
「白のインフルエンサーと黒のインフルエンサーのもとに「白寄りの人」と「黒寄りの人」が集まって、二つの勢力みたいな感じになる」
それを喧嘩にならないように、どちらかに偏ったりしないように調整するのが王(マスター)の役目。
「白と黒って‥オセロみたい」
真面目な話なのに、
つい笑ってしまった。
なんでだか、ふっと‥「決して白に変わらない盤の角に置いた黒」と「決して黒に変わらない盤の角に置いた白」が勢力争いをしてる‥。そんな様子が頭に浮かんだんだ。
「そう、オセロゲーム‥リバーシだ」
ふ、とナラフィスさんが笑い‥なぜか「オセロ」を「リバーシ」と言い換えた。
ああそうか‥オセロは日本のゲームだったっけ。
外国の人たちには「リバーシ」」の方が馴染みがあるのかな?
ナラフィスさんの声が、より一層小さくなる。
「‥リバーシゲームには勝ち負けがあるけど、このゲーム(政治)には勝ち負けはない」
‥(勝ち負けが)あってはならない。
多分、俺に聞かせる気なんかなかった‥「独り言」だろう。
ナラフィスさんは俺を見ていなかった。
勝ち負けの無いゲーム。
そりゃな‥。
「‥もしかして、白と黒の思想家(要職者)がスタッフってこと? 」
思い付きで聞いてみると、ナラフィスさんが頷いた。
どうやらあっていたようだ。
「白はリバーシが多い、黒は魔法使いが多いって言われてるね。魔法使い気質、リバーシ気質って言われるあれね」
言われているが、そうばかりでもない。その証拠に、ナラフィスは黒寄りのリバーシだし、サラージもそう、らしい。つまり、俺もどっちか‥ってことか。‥今まで資本主義国家で育ってきたから、多分俺も黒寄りなのだろう。
因みに‥魔法使い気質とリバーシ気質っていうのは‥
魔法使い気質
魔法使いは魔力が少ないから、いつも焦燥感を抱いている。
魔法のセンスなど、誰よりも恵まれているのに「初めから持っているもの(魔法)」は当たり前と思ってそれをありがたいって思わないで、常に「もってない物」を求める。
求めて、持っている者を羨んで、恨んで。‥孤独になる。
常に前を向き何かを常に求める気持ちは、向上心であり、強欲である。
魔法使いの周りに集まる人間は彼の向上心に触発された者たちか、彼の立場に擦り寄る者たちだ。
いずれの者たちも、魔法使いを信用しているわけでは無い。
魔法使いは、頭が良くて、利己的で、疑い深いから。
魔法使いも、彼ら(魔法使いの立場に擦り寄る者たち)を信用していない。
リバーシ気質
魔力量が多くて、魔力を軽んじがち。
魔法は使えないが状態異常とスキルに秀でた者が多い。
自分の持っている者に慢心し、努力を怠る者が多いが、人がいいので、人に頼られたら実力以上の努力をする(煽てて育てろリバーシと言われる所以)
皆と一緒って言葉に安心し、皆平等って言葉が好き。
目立つのは好きじゃない。
やたら記憶力がいいタイプが多いが、応用力に優れた者は少ない。(ミチルやサラージはレアケース)
リバーシの周りに集まる人間は、人柄に惹かれた人間か「ほっとけない守らなきゃ」って人間と、単純に顔に惹かれた人間。
リバーシはそういう人間(周りに集まる人間)を無下にはしないが、「どうせ」と冷めた目で見ており、信用はしていない。
リバーシは「皆を平等に愛している」がその実「誰一人をも信用していない」
っていう感じ。勿論、「そういう傾向」にあるってだけで、皆がそうってわけではない。勿論、例外もある。
「だけど、黒のインフルエンサーは魔法使い、白のインフルエンサーはリバーシにしかいない」
ナラフィスさんが俺を見る。「ここ、試験に出るからメモとっとけ」ってことですね。重要なんですね。
俺はごくり、と唾を飲み込んだ。
黒のインフルエンサーと言われる魔法使いは、普通一般的な魔法使いとは違う。
一般的な黒寄りの魔法使い同様、彼の向上心は、周りを触発し、経済や文化を向上させる。
ただ違うのは、黒のインフルエンサーの周りは、彼の思想に共感し彼を「先生」と慕う信者が勿論大半なんだが、同時に過保護なリバーシも多い。それは白寄り、黒寄り関係なく‥だ。「魔法使い特有の欠点(魔力が少ない)」が彼らの庇護欲を刺激するらしいのだ。
「魔法使い様を守らなきゃ! 」
って感じの過保護なファンって思ってもらえればいい。
彼らは、黒のインフルエンサーの「魔力供給源」志望で、別に黒のインフルエンサーの思想の信者ではないことが殆ど。つまり、有り余る魔力を貢ぎたい~♡って感じのおめでたいタイプだな。
魔力の少ない魔法使い可哀そう‥とかいう同情ではない。「守って上げたくなるわ~」「あたしたち~魔力だけは多いから~気にしないでぇ~」タイプだな。
彼らは「魔法使い様を守りたい」要員(通称、「守り隊」)と呼ばれるらしい。
「こいつのカリスマ性を利用して一儲けを狙ってやれ」って輩を密かに排除しているのは、こういう「守り隊」だ。
これは、黒のインフルエンサーの魔法使い特有のもんだな。白のインフルエンサーのリバーシは自身も魔力が余ってるから。そういう取り巻きはいない。
「ん~‥分からんでもない‥かな? 推しってやつ? 推しだから貢ぎたいってやつ? 」
ヒジリがナラフィスに確認をとると、ナラフィスも「多分そう」って頷き、「次は白のインフルエンサーの場合ね」と話を続ける。
白のインフルエンサーの取り巻きの傾向は、「お前は危なっかしくて見てられない! 」っていう過保護勢一択って感じ。白のインフルエンサーの主義思想っていうより、性格・人柄に惹かれて集まって来るタイプ。
基本的に、白のインフルエンサー大好きなヤンデレ傾向の過保護勢が「俺たちで幸せに暮らそうぜ! 」って感じなのに対して、白のインフルエンサーが「皆(世界全体)の幸せを求めないでどうしますか! 」って反論する‥感じ。
‥乙女ゲームの「ぬるいハーレム」みたい‥。
みんな「ヒロインちゃん大好き♡」で、ヒロインちゃんは凄く性格良くって可愛くって、でもって、やたらチートで皆に好かれてる‥。だけど、ウルトラ鈍感で彼らのloveには気付いてない。そして「皆の幸せを祈ってます! 」っていう、嘘みたいな話‥。
しかし、「ぬるいハーレム」‥。
「これは‥ないわ~」
ドン引きするヒジリに「アンタ多分、いずれそうなっていくよ(ってか、結構今でもそうだよ)」とは言えないナラフィスだった。
「王家の秘密だから知らなくても普通です。僕は、例外なんです。そして、今から、ラルシュローレ殿下から家庭教師としてヒジリに「全部を」教える命を受けて、ヒジリに「他言無用の話」をします」
ナラフィスさんが俺の耳元で、
ちょっと声のボリュームとトーンを落として話す。
それはいかにも、重要な秘密って感じがして‥
「いえ、聞きたくないです」
俺は、
即答した。
聞きたくない。
本当に! 切に!
「無理です。聞いてください」
‥ナラフィスさん、顔は笑ってるけど、目が笑ってない。
これ、マジな奴か~。そうだよな~ラルシュの事、殿下とか言ったし‥。
友達として、じゃなく、臣下として、ってこと。
「‥はい」
そして、俺も「聖の心を捨てきれない似非地球人」じゃなく、「取り扱い注意人物の夜の国国民ヒジリ」として、話を聞かなければ「いけない」。つまり、義務だ。
俺に拒否権はないってわけ。
俺はしぶしぶ頷く。
ナラフィスさんは満足そうに微笑むと、話しやすいように、椅子を俺の横に持ってきて、横並びになった。
小声で話が続けられる。
「白の思想と黒の思想はご存じですか? 」
また知らない単語だ。‥でも、もう今更だ、知らないことは知らないって言っちゃえ。
俺はもう、なにかと色々諦めた。
「知りません。あと、‥普通にしゃべってください」
「はは、分かった。
じゃあ、白の思想と黒の思想から説明するね」
ラルシュさんは嬉々として説明し始めた。
曰く、
白の思想っていうのは、簡単に言うと、「全体でみんなの幸せを願う」っていう考え方。
「個人の利益のみを追求して、弱きを助けない考えは悪の所業。老若男女、強きものは弱きものを助ける。弱きものや生まれが貧しい者も、平等に幸せになる権利がある。助け合い‥相互扶助こそ世界の平和」って利己主義的な印象がある黒を忌諱する傾向にある。
黒の思想って言うのは、簡単に言うと「個人主義て」合理的な思想。
「努力した人間が得をするのは当たり前。たとえ生まれのせいでその後の獲得年収に差が出来たとしても、それは運命‥自分の持って産まれた「運」ってもんだから仕方が無い」って、仲良しこよしで横並びな印象のある白を貶しているところがある。
らしい。
「社会主義‥共産主義? と、資本主義って感じ? 」
俺が聞き返すと、
「う~ん。政治的な思想じゃないから、あくまで「そういう考え方」としか言えない‥かなあ」
ナラフィスさんは首をひねって言った。
主義思想ではなく、「そういう性格」に近い、って感じかな?
そういう性格をした人がいるよ、ってだけで国がどちらかの思想を政治的思想としているわけでも、それどころか、支援してるとかでもない。
ただ、そういう二つの考え方がこの国の主流としてある、ってこと。
王家は、どちらかというと「白寄り」だけど、それは「ちょっと白の方が強いかな~」程度で、「白の思想主義国家」とは違うらしい。
‥よくわからないけど、それは「地球人の感覚で考えたらそうだろうね」ってことらしい。
「この国の人間と地球人は違う。人種的な違い程度じゃない。この前も言ったように、海水魚と淡水魚ほど違う」
らしいから。
そして、それは、身体の構造の違いだけじゃない。
「考え方も全然違うんだ。ここの人間は‥考え方に柔軟性がほとんどないんだ。だって、ごりっごりの「井の中」育ちだから」
自分の暮らしが全てだって思ってるし、自分の考え方が唯一だって思ってる。
そして、
「それとは別に、生まれっつき、ホントに天性って感じで、もう性格が固定されちゃってる人たちがいるんだ。
頑固とかそういうレベルじゃない。
他の人たちが、白っぽい、黒っぽいだったら、その人たちは、「純粋な白」、「純粋な黒」。
白っぽい人たち、黒っぽい人たちのカリスマ的存在。
それが白のインフルエンサーと黒のインフルエンサーだ」
ナラフィスさんは、「黒寄りの人」で、インフルエンサーではないらしい。インフルエンサーは自分の事を黒寄りだとか、白寄りだとは言わないらしい。
自分では分からないから。
「インフルエンサーについてはまだよくわからないけど‥白の思想と黒の思想があるってことは分かった。じゃあさ、この国の人全員は白寄りか黒寄りの人いずれかってこと? 」
「いいや? 白寄りの人、黒の寄りの人と、「他の何者でもない人」。他の何者でもない人が多いよ。
白寄りの人、黒寄りの人は「多少なりともこの国の在り方‥政治や宗教に興味関心が有る者」‥政治家や神官になる人が多いね。で、「他の何者でもない人」は政治に全く興味関心がない者だ。
「他の何者でもない人」は、政治に特に興味はないが「この国の決まりだから」それに従って生きているに過ぎない人々だ」
俺が聞くと、ナラフィスさんが即答した。少したりとも考えるそぶりも見せずに、だ。
つまり、インフルエンサー、黒か白の思想家、無関心のいずれか。
‥俺の両親も無関心派だな。父さんが政治について熱く語る姿なんか想像できない。
‥それをいうなら、俺もだけど。
俺もそういうことを深く考えたことはない。(← 生まれ的天性の「純粋な白(白のインフルエンサー)」だから。だけど、本人はまだ無自覚)
「白のインフルエンサーと黒のインフルエンサーのもとに「白寄りの人」と「黒寄りの人」が集まって、二つの勢力みたいな感じになる」
それを喧嘩にならないように、どちらかに偏ったりしないように調整するのが王(マスター)の役目。
「白と黒って‥オセロみたい」
真面目な話なのに、
つい笑ってしまった。
なんでだか、ふっと‥「決して白に変わらない盤の角に置いた黒」と「決して黒に変わらない盤の角に置いた白」が勢力争いをしてる‥。そんな様子が頭に浮かんだんだ。
「そう、オセロゲーム‥リバーシだ」
ふ、とナラフィスさんが笑い‥なぜか「オセロ」を「リバーシ」と言い換えた。
ああそうか‥オセロは日本のゲームだったっけ。
外国の人たちには「リバーシ」」の方が馴染みがあるのかな?
ナラフィスさんの声が、より一層小さくなる。
「‥リバーシゲームには勝ち負けがあるけど、このゲーム(政治)には勝ち負けはない」
‥(勝ち負けが)あってはならない。
多分、俺に聞かせる気なんかなかった‥「独り言」だろう。
ナラフィスさんは俺を見ていなかった。
勝ち負けの無いゲーム。
そりゃな‥。
「‥もしかして、白と黒の思想家(要職者)がスタッフってこと? 」
思い付きで聞いてみると、ナラフィスさんが頷いた。
どうやらあっていたようだ。
「白はリバーシが多い、黒は魔法使いが多いって言われてるね。魔法使い気質、リバーシ気質って言われるあれね」
言われているが、そうばかりでもない。その証拠に、ナラフィスは黒寄りのリバーシだし、サラージもそう、らしい。つまり、俺もどっちか‥ってことか。‥今まで資本主義国家で育ってきたから、多分俺も黒寄りなのだろう。
因みに‥魔法使い気質とリバーシ気質っていうのは‥
魔法使い気質
魔法使いは魔力が少ないから、いつも焦燥感を抱いている。
魔法のセンスなど、誰よりも恵まれているのに「初めから持っているもの(魔法)」は当たり前と思ってそれをありがたいって思わないで、常に「もってない物」を求める。
求めて、持っている者を羨んで、恨んで。‥孤独になる。
常に前を向き何かを常に求める気持ちは、向上心であり、強欲である。
魔法使いの周りに集まる人間は彼の向上心に触発された者たちか、彼の立場に擦り寄る者たちだ。
いずれの者たちも、魔法使いを信用しているわけでは無い。
魔法使いは、頭が良くて、利己的で、疑い深いから。
魔法使いも、彼ら(魔法使いの立場に擦り寄る者たち)を信用していない。
リバーシ気質
魔力量が多くて、魔力を軽んじがち。
魔法は使えないが状態異常とスキルに秀でた者が多い。
自分の持っている者に慢心し、努力を怠る者が多いが、人がいいので、人に頼られたら実力以上の努力をする(煽てて育てろリバーシと言われる所以)
皆と一緒って言葉に安心し、皆平等って言葉が好き。
目立つのは好きじゃない。
やたら記憶力がいいタイプが多いが、応用力に優れた者は少ない。(ミチルやサラージはレアケース)
リバーシの周りに集まる人間は、人柄に惹かれた人間か「ほっとけない守らなきゃ」って人間と、単純に顔に惹かれた人間。
リバーシはそういう人間(周りに集まる人間)を無下にはしないが、「どうせ」と冷めた目で見ており、信用はしていない。
リバーシは「皆を平等に愛している」がその実「誰一人をも信用していない」
っていう感じ。勿論、「そういう傾向」にあるってだけで、皆がそうってわけではない。勿論、例外もある。
「だけど、黒のインフルエンサーは魔法使い、白のインフルエンサーはリバーシにしかいない」
ナラフィスさんが俺を見る。「ここ、試験に出るからメモとっとけ」ってことですね。重要なんですね。
俺はごくり、と唾を飲み込んだ。
黒のインフルエンサーと言われる魔法使いは、普通一般的な魔法使いとは違う。
一般的な黒寄りの魔法使い同様、彼の向上心は、周りを触発し、経済や文化を向上させる。
ただ違うのは、黒のインフルエンサーの周りは、彼の思想に共感し彼を「先生」と慕う信者が勿論大半なんだが、同時に過保護なリバーシも多い。それは白寄り、黒寄り関係なく‥だ。「魔法使い特有の欠点(魔力が少ない)」が彼らの庇護欲を刺激するらしいのだ。
「魔法使い様を守らなきゃ! 」
って感じの過保護なファンって思ってもらえればいい。
彼らは、黒のインフルエンサーの「魔力供給源」志望で、別に黒のインフルエンサーの思想の信者ではないことが殆ど。つまり、有り余る魔力を貢ぎたい~♡って感じのおめでたいタイプだな。
魔力の少ない魔法使い可哀そう‥とかいう同情ではない。「守って上げたくなるわ~」「あたしたち~魔力だけは多いから~気にしないでぇ~」タイプだな。
彼らは「魔法使い様を守りたい」要員(通称、「守り隊」)と呼ばれるらしい。
「こいつのカリスマ性を利用して一儲けを狙ってやれ」って輩を密かに排除しているのは、こういう「守り隊」だ。
これは、黒のインフルエンサーの魔法使い特有のもんだな。白のインフルエンサーのリバーシは自身も魔力が余ってるから。そういう取り巻きはいない。
「ん~‥分からんでもない‥かな? 推しってやつ? 推しだから貢ぎたいってやつ? 」
ヒジリがナラフィスに確認をとると、ナラフィスも「多分そう」って頷き、「次は白のインフルエンサーの場合ね」と話を続ける。
白のインフルエンサーの取り巻きの傾向は、「お前は危なっかしくて見てられない! 」っていう過保護勢一択って感じ。白のインフルエンサーの主義思想っていうより、性格・人柄に惹かれて集まって来るタイプ。
基本的に、白のインフルエンサー大好きなヤンデレ傾向の過保護勢が「俺たちで幸せに暮らそうぜ! 」って感じなのに対して、白のインフルエンサーが「皆(世界全体)の幸せを求めないでどうしますか! 」って反論する‥感じ。
‥乙女ゲームの「ぬるいハーレム」みたい‥。
みんな「ヒロインちゃん大好き♡」で、ヒロインちゃんは凄く性格良くって可愛くって、でもって、やたらチートで皆に好かれてる‥。だけど、ウルトラ鈍感で彼らのloveには気付いてない。そして「皆の幸せを祈ってます! 」っていう、嘘みたいな話‥。
しかし、「ぬるいハーレム」‥。
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