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十三章 乙女ゲームじゃなくって‥
2.嫉妬心から恋心に気付くってパターンですね。
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(side サラージ)
「ヨシカワって誰」
気が付いたら
聞いてた。つい‥っていうか、「口が勝手に」動いてた。
慌てて「悪い、ちょっと口が滑っただけだ」ってごまかせばよかったのかもしれないが、‥なぜか俺はそれをしなかった。
聞いてしまったんだから、ヒジリの答えを聞こう。
じゃないと‥俺は気になってこれからの仕事も手につかなくなりそうだ。
ヒジリは、キョトンとした顔を一瞬すると
「誰って、俺の同僚。それ以外の何者でもない」
迷う様子もなく、即答した。
恥じらう様子とか、照れる様子とか、まったくゼロって感じ。
あからさまにほっとした俺がいて‥
自分で自分んが嫌になる。
気を良くしたから、か
「何とも思ってないのか? 」
笑顔で「揶揄うみたいに」質問を重ねる。
さっきみたいな緊張感はそこにはない、ただ、「ちょっと確認したかっただけ」「確認して安心したかっただけ」って感じ。
「なんなんだよ、やけにつっこんでくるな」って小声で言って、ヒジリは‥首を傾げてる。
「何とも思ってないって」
そういって、ちょっと首をひねった。「いや‥」
「何とも‥なんとも思ってないことはないな‥」
「え! 」
俺は勢いでヒジリをガン見してしまった。
ヒジリは
「だって、同僚だしな。あの研修も一緒に頑張った思い出があるわけだし。本社時代はなかなか周囲に馴染めなかった田舎者の俺に「あいつだけは」馬鹿にしたりとかせず‥普通に接してくれたし。
一番仲が良かったのは、間違いないと思う。
感謝してる。
なのに‥そのせいで‥俺と一番仲がいいって上司に認識されてたせいで‥俺の巻き添えを食って一緒に今の支社に移動になったのは‥悪いことしたと思ってる。
俺は俺の体質のこともあって‥家族が引っ越し先にも付いてきてくれたけど、あいつは単身で引っ越して‥。
それなのに、俺に恨み言一つ言わないんだ。あいつは。
あいつは俺と同じ年とは思えない位しっかりしてる。そういうところ、尊敬も‥してる」
真顔で「ヨシカワ」を褒めまくった。
そう、真顔で。
‥好きな奴って感じではなさそうだ。好きなやつの話をするときは、多少なりとも頬を染めて話したり‥するよな? さっきも、赤面してたし。
「‥つまり、一番の友達ってわけだな‥? 」
おれは、ほっと息をついた。
‥なに安心してるんだ。俺。関係ないだろ?! ヒジリはラル兄の婚約者! ‥ああそうか、ラル兄の婚約者が不貞を働いてたら困るから‥俺は注意しておく必要があるってことだよな。
‥我ながら苦しい言い訳だな。
別に「なぜか気になる」自分の心に「言い訳」とかどうでもいい。それほど、俺はガキじゃない。
そういうこともある。割り切れない感情を持つことも、ある。人間の心は複雑なんだ
それ自体は仕方が無い。問題はその後、それを自分の本能のまま突き進むか否かってことだ。
不倫とか、婚約破棄させるとか‥俺は絶対そんなことさせない!
それは別問題だ。
そうじゃない。俺は、そうじゃない。
婚約者のいる者が「気になる」位、‥別に不思議じゃない。
なぜって、婚約者がいるくらい「魅力的な女性」だからだ。
好きとかじゃない。綺麗! 魅力的! って思うこと位、別に問題ない!
俺は大人だから、そう理解できる!
勿論この間サラージはずっと表情を変えてないし‥ヒジリはこの間一度もサラージの表情なんて見ていないのだった。
「一番の友達? ‥一番かどうかはわからないが、かなり親しいって思ってるぞ」
‥多分、うん、多分かなり。
小さくヒジリが‥自身なさげに付け足した。これは、自分に言い聞かせたんだろう。
「お‥俺の一方通行じゃないよな。吉川も一番の友達だって思ってくれてるよな? ‥あいつ、友達少なそうだし‥でも、あいついい奴だから、友達‥多いかもしれないな‥でもあれだ‥見かけは表情筋死んでるし、口も悪いし、愛想も良くないし‥でも、女性には優しいよな‥
‥俺だけだったらどうしよう。親しい友人だって思ってるの俺だけだったらどうしよう‥」
‥なんか、ぶつぶつ言ってる。
なんか随分拗らせてるな~。
そいつと‥何かあるの?
そいつ、どんなやつなの?
「‥そいつ、頭いいの? 」
ぽつりと、「つい」聞いた俺に、ヒジリが顔を上げて‥俺を見る。
上目遣い‥
ち、とつい舌打ちしたくなる。
ちぇ‥なんでこんなに可愛いんだ。髪の毛切って自分の事俺とか言っていようとも、スリーピングビューティーやっぱり可愛いな。
ヒジリが首を傾げる。
上目遣いで首を傾げるとか‥リスか?? リスみたいだぞ??
「頭? 頭はいい方だと思うよ。少なくとも俺よりパソコンとか上手に使いこなしてるし、人と話してるの見てても切り返しとか早いな~って思うし、言葉の使い方とかもうまいよね。計算とか間違ってるの見たことないよ。多分、ちゃんと見直す癖がついてるんだろうね」
指折り「ヨシカワのいいところ」を数えながら話すんじゃない。
「そいつ、‥強いの? 」
「喧嘩とか‥あの国に居たらする機会とかない。だけど、心は強いと思う。
いい奴だし、芯が通ってる。
間違ったこと言って逃げるくらいなら、正面からぶつかっていこうってタイプの‥いい意味での馬鹿」
ふふ、って笑う。
嬉しそうに。
やめて。
‥腹が立つから。
「‥やけに褒めるな‥」
‥嫉妬で、ヒジリのこと
抱きしめたくなるから。
気が付いたら、
抱きしめてた。
ヒジリの身体は、おもってた以上に細くって柔らかくって‥
いい匂いがした。
ダメだ。俺‥
ヒジリのこと‥自分で自分をごまかせない程好きになってる。
「ヨシカワって誰」
気が付いたら
聞いてた。つい‥っていうか、「口が勝手に」動いてた。
慌てて「悪い、ちょっと口が滑っただけだ」ってごまかせばよかったのかもしれないが、‥なぜか俺はそれをしなかった。
聞いてしまったんだから、ヒジリの答えを聞こう。
じゃないと‥俺は気になってこれからの仕事も手につかなくなりそうだ。
ヒジリは、キョトンとした顔を一瞬すると
「誰って、俺の同僚。それ以外の何者でもない」
迷う様子もなく、即答した。
恥じらう様子とか、照れる様子とか、まったくゼロって感じ。
あからさまにほっとした俺がいて‥
自分で自分んが嫌になる。
気を良くしたから、か
「何とも思ってないのか? 」
笑顔で「揶揄うみたいに」質問を重ねる。
さっきみたいな緊張感はそこにはない、ただ、「ちょっと確認したかっただけ」「確認して安心したかっただけ」って感じ。
「なんなんだよ、やけにつっこんでくるな」って小声で言って、ヒジリは‥首を傾げてる。
「何とも思ってないって」
そういって、ちょっと首をひねった。「いや‥」
「何とも‥なんとも思ってないことはないな‥」
「え! 」
俺は勢いでヒジリをガン見してしまった。
ヒジリは
「だって、同僚だしな。あの研修も一緒に頑張った思い出があるわけだし。本社時代はなかなか周囲に馴染めなかった田舎者の俺に「あいつだけは」馬鹿にしたりとかせず‥普通に接してくれたし。
一番仲が良かったのは、間違いないと思う。
感謝してる。
なのに‥そのせいで‥俺と一番仲がいいって上司に認識されてたせいで‥俺の巻き添えを食って一緒に今の支社に移動になったのは‥悪いことしたと思ってる。
俺は俺の体質のこともあって‥家族が引っ越し先にも付いてきてくれたけど、あいつは単身で引っ越して‥。
それなのに、俺に恨み言一つ言わないんだ。あいつは。
あいつは俺と同じ年とは思えない位しっかりしてる。そういうところ、尊敬も‥してる」
真顔で「ヨシカワ」を褒めまくった。
そう、真顔で。
‥好きな奴って感じではなさそうだ。好きなやつの話をするときは、多少なりとも頬を染めて話したり‥するよな? さっきも、赤面してたし。
「‥つまり、一番の友達ってわけだな‥? 」
おれは、ほっと息をついた。
‥なに安心してるんだ。俺。関係ないだろ?! ヒジリはラル兄の婚約者! ‥ああそうか、ラル兄の婚約者が不貞を働いてたら困るから‥俺は注意しておく必要があるってことだよな。
‥我ながら苦しい言い訳だな。
別に「なぜか気になる」自分の心に「言い訳」とかどうでもいい。それほど、俺はガキじゃない。
そういうこともある。割り切れない感情を持つことも、ある。人間の心は複雑なんだ
それ自体は仕方が無い。問題はその後、それを自分の本能のまま突き進むか否かってことだ。
不倫とか、婚約破棄させるとか‥俺は絶対そんなことさせない!
それは別問題だ。
そうじゃない。俺は、そうじゃない。
婚約者のいる者が「気になる」位、‥別に不思議じゃない。
なぜって、婚約者がいるくらい「魅力的な女性」だからだ。
好きとかじゃない。綺麗! 魅力的! って思うこと位、別に問題ない!
俺は大人だから、そう理解できる!
勿論この間サラージはずっと表情を変えてないし‥ヒジリはこの間一度もサラージの表情なんて見ていないのだった。
「一番の友達? ‥一番かどうかはわからないが、かなり親しいって思ってるぞ」
‥多分、うん、多分かなり。
小さくヒジリが‥自身なさげに付け足した。これは、自分に言い聞かせたんだろう。
「お‥俺の一方通行じゃないよな。吉川も一番の友達だって思ってくれてるよな? ‥あいつ、友達少なそうだし‥でも、あいついい奴だから、友達‥多いかもしれないな‥でもあれだ‥見かけは表情筋死んでるし、口も悪いし、愛想も良くないし‥でも、女性には優しいよな‥
‥俺だけだったらどうしよう。親しい友人だって思ってるの俺だけだったらどうしよう‥」
‥なんか、ぶつぶつ言ってる。
なんか随分拗らせてるな~。
そいつと‥何かあるの?
そいつ、どんなやつなの?
「‥そいつ、頭いいの? 」
ぽつりと、「つい」聞いた俺に、ヒジリが顔を上げて‥俺を見る。
上目遣い‥
ち、とつい舌打ちしたくなる。
ちぇ‥なんでこんなに可愛いんだ。髪の毛切って自分の事俺とか言っていようとも、スリーピングビューティーやっぱり可愛いな。
ヒジリが首を傾げる。
上目遣いで首を傾げるとか‥リスか?? リスみたいだぞ??
「頭? 頭はいい方だと思うよ。少なくとも俺よりパソコンとか上手に使いこなしてるし、人と話してるの見てても切り返しとか早いな~って思うし、言葉の使い方とかもうまいよね。計算とか間違ってるの見たことないよ。多分、ちゃんと見直す癖がついてるんだろうね」
指折り「ヨシカワのいいところ」を数えながら話すんじゃない。
「そいつ、‥強いの? 」
「喧嘩とか‥あの国に居たらする機会とかない。だけど、心は強いと思う。
いい奴だし、芯が通ってる。
間違ったこと言って逃げるくらいなら、正面からぶつかっていこうってタイプの‥いい意味での馬鹿」
ふふ、って笑う。
嬉しそうに。
やめて。
‥腹が立つから。
「‥やけに褒めるな‥」
‥嫉妬で、ヒジリのこと
抱きしめたくなるから。
気が付いたら、
抱きしめてた。
ヒジリの身体は、おもってた以上に細くって柔らかくって‥
いい匂いがした。
ダメだ。俺‥
ヒジリのこと‥自分で自分をごまかせない程好きになってる。
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