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十三章 乙女ゲームじゃなくって‥
12.‥友達想いなんですよね? (八割)
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(side ナツカ)
「どうしたもんか‥」
一瞬、私の心の声が口に出てしまったのか? って思ったが、そんなわけない。
声に出した覚えもないし、声は明らかに他方から聞こえて来た。
声は、ナラフィス様だった。
気が付けば、二人はもう帰った後で、残っているのは私とナラフィス様だけだった。
リバーシではない私は、毎日ヒジリの監視をしているわけでは無い。
そんなことしてたら、いつ寝るんだ‥って話になるから。
今日の勤務体制は、この後2時間仮眠をとって、ラルシュ様の侍従として夜8時まで勤務してそのまま休憩時間となり、翌日朝7時からの通常勤務となる。
ヒジリの監視は週二回の「夜勤」って感じですね。勿論お休みもありますよ。無理をして身体を壊したら意味がないですからね。
ラルシュローレ様にリバーシの侍従はいないから、皆で無理のないように分担してるって感じ。
じゃあ(サラージ様の)リバーシの侍従がヒジリの監視につけば? っていうわけにはいかないのはわかりますよね?
‥仲のいい御兄弟だけど、ヒジリのことについてはライバルですからね。
「ゆっくりと見守ってたら、ミチルに盗られそうだな~。でも、‥急いては事を仕損じるっていうからね‥」
ナラフィス様がため息をつきながら呟く。
はじめは独り言を言っているのかと思ってたけど、‥どうやら私に話しかけている様だ。(ちらちらと私の方に視線をよこしている‥)
話しかけるっていうか、「独り言を拾って欲しがってる」って感じ?
分かるけど‥どう拾えって言うんだ‥。
私は心の中で苦笑いして、いままでヒジリとナラフィス様が座学をしていた机の後片付けをしながら、こちらも何気ない様子を装って
「ヒジリのことですか? 」
って聞いてみた。
「そ~。僕はね、親友のラルシュ君に幸せになってもらいたいの。それに、一国民として、この国は平和でいて欲しいの」
にこ、って笑ってナラフィス様が言う。今度はしっかり私の顔を見て。
だから、私も手を止めてナラフィス様を見る。
リバーシなのに美形ってわけでもないナラフィス様の笑顔は何というか‥素朴で「安心する笑顔」だ。
‥ミチルなんかと違って、普通の‥「黒くない」‥うさん臭さのない笑顔だ。(この人も、大概「黒い」んですけどね)‥友達のことを思ってるってのは、本当ってことだろう。
私より少し早くからラルシュローレ様とサラージ様の傍に「友達として」いた方‥。そして、ラルシュローレ様たちがもっとも信頼なさっている方‥。
「ナラフィス様は、‥どういうお考えなんですか? その‥ヒジリ様とラルシュローレ様の結婚‥。
‥応援しておられるんですよね? 」
ナラフィス様のさっきの言葉だと、そういうことになると思うんだけど、
今までのナラフィス様の行動が「そういう」行動だったかは‥思い返しても不明‥なんだ。邪魔してるわけでもないけど、積極的に協力してるわけでもない、って感じ。
因みに、恋愛ではなく結婚‥と言ったのはわざとだ。
王族の結婚は、恋愛とイコールではない。
例え本人たちの気持ちが別の誰かの方に向いていようとも‥王族は「国にとって為になる人」と結婚するのが望ましい。
ヒジリとラルシュローレ様が結婚することは、国にとって「望ましい」。
「勿論さ! 国民としてはこれ以上いい縁談はないって思ってるからね。だけど、ヒジリと出会って、友達としてもこのまま押してもいいな‥と思う位は、ヒジリのこと気に入った」
まるでお日様の様に笑う。
こういう貴族らしくない笑顔をするから、私は貴方のことを貴族だって思わなかったんですよ‥。
でも、高位貴族で「陛下の後ろ盾があった」から好き勝手出来たのかもな、‥とも思う。
勿論制限付きの自由だけど‥。
「‥そうですか」
‥気に入った、か。
どういう意味だろ‥。人柄がってことかな? 王子妃としての「適正」があるって意味かな?
まさか‥研究対象として‥じゃないだろうな‥。
「ヒジリはああ見えて、結構苦労人だ。
だけど、明るいし、優しいし‥そこはまあ‥白のインフルエンサーだからだろうけど‥
‥それに、綺麗だよね。王子妃として問題ないと思うよ」
白のインフルエンサー‥。知識としては知っていたけれど、初めて実際に聞いたぞ‥。あれ、ホントに実存したんだ‥。
彼女が‥白のインフルエンサー‥。
白のインフルエンサーは、多くはリバーシだから、容姿に優れて、優しく公平‥まるで天使のような‥
そういわれると、なるほど‥って思える。(ヒジリも、顔だけ見れば天使と言えないでもない。性格は少年みたいだけど)
それに、確かに公平で優しい。
だけど‥
「‥確かなのですか? 」
「何が? 」
「ヒジリ様が白のインフルエンサーって‥」
「う~ん。確かめる術ってのは、ないからね。確かかって言われると困る‥かな。でも、確かだと思うよ」
‥なんとなく、説得力ある。
人間的にはよく分からない人だけど、学者としては、これほど信用できる人もいないよね。
「インフルエンサーが王族に仲間入りすることって‥」
「今までは無かったね。だけど、それはダメってわけでもない。選んでインフルエンサーと婚姻を結ばなかったわけでは無く、たまたまインフルエンサーと婚姻した例がなかっただけだ。
普通のインフルエンサーなら、王子妃にとは思わないだろうけど‥ヒジリは特別だからね~」
黒のインフルエンサーを中心とした「取り巻き」は経済や商業の最先端グループだったりするし(しかも、ちょっと利己的で「黒い」)、白のインフルエンサーを中心とした「取り巻き」は治療や救済を施す「奇跡の聖人」集団で、緩いハーレム。
‥人間的に問題は無くても、無理だよね。
取り巻き居たらね‥。
「ヒジリはインフルエンサーだけど、地球で学んだ知識がある。‥それがどう作用するかわかんないけど、歴代の地球出身のお后様みたいに、国を良い方に導いてくれる‥って思う」
地球で産まれたリバーシではないけど、地球で「育った」リバーシだ。
全く新しい「特別なリバーシ」
そのヒジリがラルシュと協力したら、きっと国はいい方に発展していくって思う。
未知だけど、楽しみなんだ。
だから、どうしてでも‥
「だから、ゆっくりと時間をかけて‥だよ。ラルシュもヒジリも脳筋でヘタレで恋愛音痴だから。ラルシュは最近ヒジリのことを意識し始めたみたいだよ。‥何があったのかは分からないけど」
※ お兄さんにヒジリを盗られかもしれないって誤解した、が正しいんだけど、そんなこと、ナラフィスもナツカも知らない。
嬉しそうに‥でも、ちょっと「含みのある」笑みを浮かべるナラフィス様。
八割「友の幸せ」二割「研究的な興味」て感じですかね? (まさか反対では‥ないですよね? 八割「研究的な興味」‥)
「でも、昔からラルシュローレ様はヒジリ様の事「愛そう」と努力なさってましたよ? 」
ヒジリの方にアプローチは必要だと思うけど、ラルシュローレ様に対してそういうのはいらない、かと‥。
私が首を傾げると、ナラフィス様は苦笑いした。
「努力するもんでもないんだよね。恋愛なんて。好きって言い聞かせれば好きに成る程‥人の心は単純じゃない」
そりゃあ、まあね。
でも、ラルシュローレ様なら、「自己暗示」で何とかしそうですけどね?
ラルシュローレ様は普通の方とは違いますからね。
納得できかねる‥って私の気持ちが伝わったのか、ナラフィス様は苦笑いしたまま‥小さくため息をついた。
「ラルシュには‥心から誰かの事好きになってもらいたいって思ってた。それで、ヒジリに会って「この子ならいいか」って思った。妥協できるなって思った。
正直ね。王族に「唯一無二」の出会いを求めることは無理だ。だけど、妥協できるか出来ないかは、大きな違いだ」
呟くように小声で言ったナラフィス様の口調からは、友を想う気持ちが伝わってきた。
「そして、それを決めるのは、ラルシュ本人ではなく、ラルシュを良く知る人間‥ラルシュを大事に思う人間であるべきだ、って思う。‥ラルシュは‥国の為ってはじめっから我慢しちゃうでしょ。そうするしかないけど、それだけでは双方にとって良くない。最初から「誰でもいい」って思われて、それ以上の興味を持たれないって、相手の方にも失礼でしょ。
他人の方がいいんだよ。それも、信用のおけるね。
だから、大親友の僕が直接会ってやろ! って思ったわけ。本来なら、サラージなんかがいいんだけど‥サラージはこの件では、‥あの通り「木乃伊取りが木乃伊になる」でヒジリloveになっちゃってるから‥」
それね~。
まったく、サラージ様ときたら‥。(きっと初恋なんだろうな~。あの人も恋愛音痴だから‥)
私はそっとため息をつく。
と、ナラフィス様はにやりっと黒い笑いを浮かべる。
「ま。サラージでもいいんだけどね。王族だから。
でも、せっかくの膨大な魔力、無駄なく使いたいじゃない? 」
やっぱり、ナラフィス様って、(リバーシなのに‥)黒寄りだな~って思う(同じく黒寄りの)私だった。
「どうしたもんか‥」
一瞬、私の心の声が口に出てしまったのか? って思ったが、そんなわけない。
声に出した覚えもないし、声は明らかに他方から聞こえて来た。
声は、ナラフィス様だった。
気が付けば、二人はもう帰った後で、残っているのは私とナラフィス様だけだった。
リバーシではない私は、毎日ヒジリの監視をしているわけでは無い。
そんなことしてたら、いつ寝るんだ‥って話になるから。
今日の勤務体制は、この後2時間仮眠をとって、ラルシュ様の侍従として夜8時まで勤務してそのまま休憩時間となり、翌日朝7時からの通常勤務となる。
ヒジリの監視は週二回の「夜勤」って感じですね。勿論お休みもありますよ。無理をして身体を壊したら意味がないですからね。
ラルシュローレ様にリバーシの侍従はいないから、皆で無理のないように分担してるって感じ。
じゃあ(サラージ様の)リバーシの侍従がヒジリの監視につけば? っていうわけにはいかないのはわかりますよね?
‥仲のいい御兄弟だけど、ヒジリのことについてはライバルですからね。
「ゆっくりと見守ってたら、ミチルに盗られそうだな~。でも、‥急いては事を仕損じるっていうからね‥」
ナラフィス様がため息をつきながら呟く。
はじめは独り言を言っているのかと思ってたけど、‥どうやら私に話しかけている様だ。(ちらちらと私の方に視線をよこしている‥)
話しかけるっていうか、「独り言を拾って欲しがってる」って感じ?
分かるけど‥どう拾えって言うんだ‥。
私は心の中で苦笑いして、いままでヒジリとナラフィス様が座学をしていた机の後片付けをしながら、こちらも何気ない様子を装って
「ヒジリのことですか? 」
って聞いてみた。
「そ~。僕はね、親友のラルシュ君に幸せになってもらいたいの。それに、一国民として、この国は平和でいて欲しいの」
にこ、って笑ってナラフィス様が言う。今度はしっかり私の顔を見て。
だから、私も手を止めてナラフィス様を見る。
リバーシなのに美形ってわけでもないナラフィス様の笑顔は何というか‥素朴で「安心する笑顔」だ。
‥ミチルなんかと違って、普通の‥「黒くない」‥うさん臭さのない笑顔だ。(この人も、大概「黒い」んですけどね)‥友達のことを思ってるってのは、本当ってことだろう。
私より少し早くからラルシュローレ様とサラージ様の傍に「友達として」いた方‥。そして、ラルシュローレ様たちがもっとも信頼なさっている方‥。
「ナラフィス様は、‥どういうお考えなんですか? その‥ヒジリ様とラルシュローレ様の結婚‥。
‥応援しておられるんですよね? 」
ナラフィス様のさっきの言葉だと、そういうことになると思うんだけど、
今までのナラフィス様の行動が「そういう」行動だったかは‥思い返しても不明‥なんだ。邪魔してるわけでもないけど、積極的に協力してるわけでもない、って感じ。
因みに、恋愛ではなく結婚‥と言ったのはわざとだ。
王族の結婚は、恋愛とイコールではない。
例え本人たちの気持ちが別の誰かの方に向いていようとも‥王族は「国にとって為になる人」と結婚するのが望ましい。
ヒジリとラルシュローレ様が結婚することは、国にとって「望ましい」。
「勿論さ! 国民としてはこれ以上いい縁談はないって思ってるからね。だけど、ヒジリと出会って、友達としてもこのまま押してもいいな‥と思う位は、ヒジリのこと気に入った」
まるでお日様の様に笑う。
こういう貴族らしくない笑顔をするから、私は貴方のことを貴族だって思わなかったんですよ‥。
でも、高位貴族で「陛下の後ろ盾があった」から好き勝手出来たのかもな、‥とも思う。
勿論制限付きの自由だけど‥。
「‥そうですか」
‥気に入った、か。
どういう意味だろ‥。人柄がってことかな? 王子妃としての「適正」があるって意味かな?
まさか‥研究対象として‥じゃないだろうな‥。
「ヒジリはああ見えて、結構苦労人だ。
だけど、明るいし、優しいし‥そこはまあ‥白のインフルエンサーだからだろうけど‥
‥それに、綺麗だよね。王子妃として問題ないと思うよ」
白のインフルエンサー‥。知識としては知っていたけれど、初めて実際に聞いたぞ‥。あれ、ホントに実存したんだ‥。
彼女が‥白のインフルエンサー‥。
白のインフルエンサーは、多くはリバーシだから、容姿に優れて、優しく公平‥まるで天使のような‥
そういわれると、なるほど‥って思える。(ヒジリも、顔だけ見れば天使と言えないでもない。性格は少年みたいだけど)
それに、確かに公平で優しい。
だけど‥
「‥確かなのですか? 」
「何が? 」
「ヒジリ様が白のインフルエンサーって‥」
「う~ん。確かめる術ってのは、ないからね。確かかって言われると困る‥かな。でも、確かだと思うよ」
‥なんとなく、説得力ある。
人間的にはよく分からない人だけど、学者としては、これほど信用できる人もいないよね。
「インフルエンサーが王族に仲間入りすることって‥」
「今までは無かったね。だけど、それはダメってわけでもない。選んでインフルエンサーと婚姻を結ばなかったわけでは無く、たまたまインフルエンサーと婚姻した例がなかっただけだ。
普通のインフルエンサーなら、王子妃にとは思わないだろうけど‥ヒジリは特別だからね~」
黒のインフルエンサーを中心とした「取り巻き」は経済や商業の最先端グループだったりするし(しかも、ちょっと利己的で「黒い」)、白のインフルエンサーを中心とした「取り巻き」は治療や救済を施す「奇跡の聖人」集団で、緩いハーレム。
‥人間的に問題は無くても、無理だよね。
取り巻き居たらね‥。
「ヒジリはインフルエンサーだけど、地球で学んだ知識がある。‥それがどう作用するかわかんないけど、歴代の地球出身のお后様みたいに、国を良い方に導いてくれる‥って思う」
地球で産まれたリバーシではないけど、地球で「育った」リバーシだ。
全く新しい「特別なリバーシ」
そのヒジリがラルシュと協力したら、きっと国はいい方に発展していくって思う。
未知だけど、楽しみなんだ。
だから、どうしてでも‥
「だから、ゆっくりと時間をかけて‥だよ。ラルシュもヒジリも脳筋でヘタレで恋愛音痴だから。ラルシュは最近ヒジリのことを意識し始めたみたいだよ。‥何があったのかは分からないけど」
※ お兄さんにヒジリを盗られかもしれないって誤解した、が正しいんだけど、そんなこと、ナラフィスもナツカも知らない。
嬉しそうに‥でも、ちょっと「含みのある」笑みを浮かべるナラフィス様。
八割「友の幸せ」二割「研究的な興味」て感じですかね? (まさか反対では‥ないですよね? 八割「研究的な興味」‥)
「でも、昔からラルシュローレ様はヒジリ様の事「愛そう」と努力なさってましたよ? 」
ヒジリの方にアプローチは必要だと思うけど、ラルシュローレ様に対してそういうのはいらない、かと‥。
私が首を傾げると、ナラフィス様は苦笑いした。
「努力するもんでもないんだよね。恋愛なんて。好きって言い聞かせれば好きに成る程‥人の心は単純じゃない」
そりゃあ、まあね。
でも、ラルシュローレ様なら、「自己暗示」で何とかしそうですけどね?
ラルシュローレ様は普通の方とは違いますからね。
納得できかねる‥って私の気持ちが伝わったのか、ナラフィス様は苦笑いしたまま‥小さくため息をついた。
「ラルシュには‥心から誰かの事好きになってもらいたいって思ってた。それで、ヒジリに会って「この子ならいいか」って思った。妥協できるなって思った。
正直ね。王族に「唯一無二」の出会いを求めることは無理だ。だけど、妥協できるか出来ないかは、大きな違いだ」
呟くように小声で言ったナラフィス様の口調からは、友を想う気持ちが伝わってきた。
「そして、それを決めるのは、ラルシュ本人ではなく、ラルシュを良く知る人間‥ラルシュを大事に思う人間であるべきだ、って思う。‥ラルシュは‥国の為ってはじめっから我慢しちゃうでしょ。そうするしかないけど、それだけでは双方にとって良くない。最初から「誰でもいい」って思われて、それ以上の興味を持たれないって、相手の方にも失礼でしょ。
他人の方がいいんだよ。それも、信用のおけるね。
だから、大親友の僕が直接会ってやろ! って思ったわけ。本来なら、サラージなんかがいいんだけど‥サラージはこの件では、‥あの通り「木乃伊取りが木乃伊になる」でヒジリloveになっちゃってるから‥」
それね~。
まったく、サラージ様ときたら‥。(きっと初恋なんだろうな~。あの人も恋愛音痴だから‥)
私はそっとため息をつく。
と、ナラフィス様はにやりっと黒い笑いを浮かべる。
「ま。サラージでもいいんだけどね。王族だから。
でも、せっかくの膨大な魔力、無駄なく使いたいじゃない? 」
やっぱり、ナラフィス様って、(リバーシなのに‥)黒寄りだな~って思う(同じく黒寄りの)私だった。
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