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十三章 乙女ゲームじゃなくって‥
0(閑話).マリアンの話。
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(side マリアン)
昔から私は恋愛小説が大好きだった。
実際の恋愛は‥だけど苦手だった。
男の人と話すのは緊張するだけだ。何を話していいのか分からない。
女の子同士で好きな小説の話をするのは楽しいのに、実際に‥っていうと、うまくいかない。
だけど、別にうまくいかなくてよかったんだ。
私が「うまくいくこと」を望んでなかったから。
お話のような素敵なロマンスはお話だから素敵なのだ。私は、空想の世界に遊ぶのが好きで、「私が主人公のお話」を望んでいるわけではないのだ。
出来れば一生このままこうしていたい。
‥貴族だからそんなこと出来ないのは分かっている。結婚しない娘なんて外聞が悪い。娘を結婚させることも出来ない親なのかって親が悪く言われるのも嫌だし、「どこか悪いんではないか? 」って邪推されるのも嫌だ。
‥ホント、放っておいて欲しい。
だから、今回の城からの要請は私にとって「いい逃げ口実」になるって思ったんだ。
これで結婚話から‥恋愛から逃げられるかもしれないって。
城の給仕係の話は、もともと私に来た依頼ってわけでは無い。
私と私の姉のどちらか。
私と姉の顔はそっくりだから。
どうやら「タツキ様が好きそうな顔」ってことで選ばれたらしい。
‥顔で選ばれたとか‥何それ。
だけど、別に結婚話じゃないしいいか、って思ったんだ。(顔が気に入ったから結婚してほしいなんて言われたら絶対断るよね! )
結婚話にしなきゃいいから、いいかって思ったんだ。
姉さんに確認して姉さんが別に興味を感じてなさそうだったら私が受けようって思った。
両親が私たちにこの仕事を強要してくることはなかった。
「うまくいけば玉の輿に‥」
って言う親戚もいたけど、うまくいくなんて両親は思ってなかったし、望んでなかった。
「身分の釣り合う家柄で、人柄のいい素朴な青年と結婚できたらいいね」
それが両親の望みだった。
身の丈に合わない縁談なんて、誰も幸せにならない‥って思ってたんだ。
両親に野望はなく、‥だけど、城からの要請を突っぱねるだけの(家の)力も度胸もなかった。
城は「ちょっと考えて欲しい」って言ってるだけだったけど、私たち中流の貴族に拒否権なんて初めっからないんだ。
問題は誰が行くか、だった。
姉さんなら何でも「問題なく」こなせただろう。
そう思ったのは、私だけじゃないだろう。
姉さんは、学園の成績は中の上で卒業していたし、社交性にも問題が無かったから。
出しゃばるタイプじゃなかったけど、社交界では友人に囲まれるような‥そんなタイプ。
きっと彼女なら「タツキ様」(← 当時は知らなかったので、ただ「顔だけで人を判断する(嫌な)高位貴族」だと思っていた)だってお気に召すだろう。
だけど、私は姉さんはそんなことしなくていいって思った。
私は一つしか違わない(私と違って)可愛げのある姉に対して、昔から「お姉さん振りたい」って思って行動してきたんだ。
姉さんは私と違って可愛いから、私が守ってあげなきゃって。
(私に限らず)姉には、自然と周りにそう思わせるような雰囲気があった。
頼りないんじゃなくって、頼って欲しいって思わせる‥庇護欲を掻き立てられる‥って感じ?
姉さんは「しっかりしてる」って周りから認められているけど、「でも同時に」自分だけは彼女を守ってあげたいし、自分だけは彼女を甘やかせてあげられる、って思わせる様な‥そんな強さと弱さのバランスが絶妙で‥ドはまりする人続出な(天然の)魔性の女だったのだ。
騙されてる‥とかじゃないよ? そういう魅力があるってこと。そういう魅力もイイ! ってこと。(私もドはまりしている人間の一人なのだ)
「私が行く」
って言ったとき、姉さんは反対した。両親は「マリアンがそういうなら」って言ったのに、だ。
妹が家の為、自分の為に犠牲になろうとしているって思ったんだろう。
だけど、結局、姉を騙すような形で私はここに来た。
だけど、結果はこれだ。
タツキ様はいい人だし、趣味も合う。リバーシなのに、目が痛くなるようなキラキラしたイケメンでもないし、高位貴族だなんて信じられない位フランク。私に対しても、周りに対しても偉そうな態度なんて取ってるの見たこともない。何かを強要されたことなんかないし、結婚話なんて出て来もしない。普通に「お茶飲み友達」をしてるだけだ。
いいことづくめだけど、正直、拍子抜けだ。
拍子抜けって思っちゃってる自分に一番驚く。
驚くし‥呆れる。
だって、ない。
タツキ様はリバーシだし、国で一番の学者さんだし、家名も爵位も分からないけど(そう、今だに知らないんだ。タツキ様が言わないのに聞けるわけもないから聞けないし‥なんなんだろう? )高位貴族なわけだし‥。
私では釣り合わない。
タツキ様は自身の身分の話もされないし、私の家柄の話も聞いてはこられない。
家柄で人を判断する人ではない。
私と彼はただのお茶飲み友達。彼にとって私はそれ以上でもそれ以下でもない。
友達として尊重してくれる(下に見ない)けど、友達以上にはなれない。
‥それがもどかしい。
特別になりたいなんて‥「物語の主人公」になりたいなんて‥初めて思った。
そんな自分に戸惑ってしまっているんだ。
昔から私は恋愛小説が大好きだった。
実際の恋愛は‥だけど苦手だった。
男の人と話すのは緊張するだけだ。何を話していいのか分からない。
女の子同士で好きな小説の話をするのは楽しいのに、実際に‥っていうと、うまくいかない。
だけど、別にうまくいかなくてよかったんだ。
私が「うまくいくこと」を望んでなかったから。
お話のような素敵なロマンスはお話だから素敵なのだ。私は、空想の世界に遊ぶのが好きで、「私が主人公のお話」を望んでいるわけではないのだ。
出来れば一生このままこうしていたい。
‥貴族だからそんなこと出来ないのは分かっている。結婚しない娘なんて外聞が悪い。娘を結婚させることも出来ない親なのかって親が悪く言われるのも嫌だし、「どこか悪いんではないか? 」って邪推されるのも嫌だ。
‥ホント、放っておいて欲しい。
だから、今回の城からの要請は私にとって「いい逃げ口実」になるって思ったんだ。
これで結婚話から‥恋愛から逃げられるかもしれないって。
城の給仕係の話は、もともと私に来た依頼ってわけでは無い。
私と私の姉のどちらか。
私と姉の顔はそっくりだから。
どうやら「タツキ様が好きそうな顔」ってことで選ばれたらしい。
‥顔で選ばれたとか‥何それ。
だけど、別に結婚話じゃないしいいか、って思ったんだ。(顔が気に入ったから結婚してほしいなんて言われたら絶対断るよね! )
結婚話にしなきゃいいから、いいかって思ったんだ。
姉さんに確認して姉さんが別に興味を感じてなさそうだったら私が受けようって思った。
両親が私たちにこの仕事を強要してくることはなかった。
「うまくいけば玉の輿に‥」
って言う親戚もいたけど、うまくいくなんて両親は思ってなかったし、望んでなかった。
「身分の釣り合う家柄で、人柄のいい素朴な青年と結婚できたらいいね」
それが両親の望みだった。
身の丈に合わない縁談なんて、誰も幸せにならない‥って思ってたんだ。
両親に野望はなく、‥だけど、城からの要請を突っぱねるだけの(家の)力も度胸もなかった。
城は「ちょっと考えて欲しい」って言ってるだけだったけど、私たち中流の貴族に拒否権なんて初めっからないんだ。
問題は誰が行くか、だった。
姉さんなら何でも「問題なく」こなせただろう。
そう思ったのは、私だけじゃないだろう。
姉さんは、学園の成績は中の上で卒業していたし、社交性にも問題が無かったから。
出しゃばるタイプじゃなかったけど、社交界では友人に囲まれるような‥そんなタイプ。
きっと彼女なら「タツキ様」(← 当時は知らなかったので、ただ「顔だけで人を判断する(嫌な)高位貴族」だと思っていた)だってお気に召すだろう。
だけど、私は姉さんはそんなことしなくていいって思った。
私は一つしか違わない(私と違って)可愛げのある姉に対して、昔から「お姉さん振りたい」って思って行動してきたんだ。
姉さんは私と違って可愛いから、私が守ってあげなきゃって。
(私に限らず)姉には、自然と周りにそう思わせるような雰囲気があった。
頼りないんじゃなくって、頼って欲しいって思わせる‥庇護欲を掻き立てられる‥って感じ?
姉さんは「しっかりしてる」って周りから認められているけど、「でも同時に」自分だけは彼女を守ってあげたいし、自分だけは彼女を甘やかせてあげられる、って思わせる様な‥そんな強さと弱さのバランスが絶妙で‥ドはまりする人続出な(天然の)魔性の女だったのだ。
騙されてる‥とかじゃないよ? そういう魅力があるってこと。そういう魅力もイイ! ってこと。(私もドはまりしている人間の一人なのだ)
「私が行く」
って言ったとき、姉さんは反対した。両親は「マリアンがそういうなら」って言ったのに、だ。
妹が家の為、自分の為に犠牲になろうとしているって思ったんだろう。
だけど、結局、姉を騙すような形で私はここに来た。
だけど、結果はこれだ。
タツキ様はいい人だし、趣味も合う。リバーシなのに、目が痛くなるようなキラキラしたイケメンでもないし、高位貴族だなんて信じられない位フランク。私に対しても、周りに対しても偉そうな態度なんて取ってるの見たこともない。何かを強要されたことなんかないし、結婚話なんて出て来もしない。普通に「お茶飲み友達」をしてるだけだ。
いいことづくめだけど、正直、拍子抜けだ。
拍子抜けって思っちゃってる自分に一番驚く。
驚くし‥呆れる。
だって、ない。
タツキ様はリバーシだし、国で一番の学者さんだし、家名も爵位も分からないけど(そう、今だに知らないんだ。タツキ様が言わないのに聞けるわけもないから聞けないし‥なんなんだろう? )高位貴族なわけだし‥。
私では釣り合わない。
タツキ様は自身の身分の話もされないし、私の家柄の話も聞いてはこられない。
家柄で人を判断する人ではない。
私と彼はただのお茶飲み友達。彼にとって私はそれ以上でもそれ以下でもない。
友達として尊重してくれる(下に見ない)けど、友達以上にはなれない。
‥それがもどかしい。
特別になりたいなんて‥「物語の主人公」になりたいなんて‥初めて思った。
そんな自分に戸惑ってしまっているんだ。
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