リバーシ!

文月

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十四章 デュカとリゼリア

1.ナラフィス先生の顔を初めてしげしげ見たんです。

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(side ヒジリ)


 今日はナラフィス先生に瞳の色の話を聞いている。
 初めは普通に魔法の話をしてたんだけど脱線したんだ。そういうことって結構よくある。そういうは、ナラフィス先生が博識でしかも話し好きなのが原因であって、決して俺が不真面目だから‥では無い。

「瞳の色は魔力に関係するんだ。ヒジリやミチルは風の属性の魔力が強いから緑っぽい。僕もそうだね」
 言われて‥
 初めて、しげしげとナラフィス先生の瞳を見た。
 ‥緑っぽいか?
 どちらかというと、黄色っぽい‥? いや、微かに青っぽいようにも見える。
 緑と黄色が混じって緑‥的な感じで魔力を使う時だけ緑っぽくなる的な感じ? 俺のことはよくわかんないけど、ミチルが魔力を使う時目の色がちょっと明るい緑になる‥あんな感じでちょっと色が変わるのかもしれない。
 ミチルの瞳の色はいつもはオリーブ色をしてるのに魔力を使っている時は、明るく澄んだ丁度‥ペリドットみたいな色になるんだ。
 あれ、綺麗だよね。
 いや、ミチルはいつでも綺麗なんだど。
 余計に‥神聖さが混じるって感じ? いつものオリーブ色は地球に馴染んでるけど、あのペリドットの目はこの国の空気に馴染んでる‥って感じがするんだ。

「どうしたの? なんか顔赤いけど? ‥僕の顔に見惚れたとか? 」
 ふふ、ってナラフィス先生がいたずらっ子みたいな笑みを浮かべる。‥もしかしてナラフィス先生渾身のジョークかもしれない。
 ‥すいません、ナラフィス先生‥反応に困ります。
 ‥と言うわけにもいかず微妙な顔して(きっとそうなっているだろう)黙っていると、ナラフィス先生が肩をすくめる。
「‥冗談だよ。あからさまに冷めた目にならないでよ‥。なんか別の事考えてた? 」
「‥すみません。なんか‥初めてナラフィス先生の目をしげしげ見たな~って思って。‥ちょっと照れてました」
 ちょっと胡麻化したけど‥まあ全部嘘ってわけでもない。
 目をしげしげ見るとかって普段することないから照れるよね。普通は「顔を見て話す」って言っても、だいたい鼻のあたり見るよね。社会人は顔を見て話さなければいけない、って言ってもあからさまに不躾にしげしげ‥ってのはかえってマナー違反だもんな。
 ‥それに、取引先のおっさんの顔なんて凝視できないよ‥。キモチワルイ‥。
 だけど、ナラフィス先生って‥今まで気付かなかったけど「至近距離の凝視に耐えられる」顔なんだ~。普通だったら若い子って「あ、肌荒れてる」とか「髭剃り跡が」「ニキビ跡あるね」とかなるけど、ナラフィス先生にはそんなの全然ないの。「お手入れされてます」って感じじゃなくて「まだ若いからお肌つるつるね」って感じの肌。
 つまり、美形とはいえないけど、清潔感のある好感の持てる顔ってやつだな。
 短く切りっぱなされたサラサラの明るいブラウンの髪の毛は、特別に手入れされてるってわけでもなさそうだけど、痛んでる感はまるでない。ブラウンはブラウンでも、金茶みたいに金寄りじゃなくって、もっとライトなブラウンって感じ。俺の髪の色(ハニーブラウン)よりももう少しブラウン寄りって感じの色かな。(俺はそんなに色の名前に詳しくないから何色って言えばいいのか分かんないんだけど)※ 調べてみたら「ヘーゼル」が一番近いんじゃないかと思いました。
 う~ん。
 そうか~。普段ナラフィス先生のことを眼鏡かけた茶色っぽい兄ちゃん‥としか認識してなかったけど、しげしげ見ると「読モ」クラスのイケメンだった。学校だったら、隣のクラスから(マジ恋してる)女子が休み時間にこっそり覗きにくるって感じのポジションかな。(ミチルだったら他校からも女子が校門で出待ちってレベルだな)
 ミチルは「スーパーモデル」クラスだから、別格なんだよ。ラルシュ様たちは‥神かな。うん、今まで見たことないレベル。
「身過ぎ見過ぎ」
 ナラフィス先生が苦笑いして、俺も苦笑いする。
 ‥おお、ちょっと気持ち悪いよな。‥気をつけよう‥。
 だけど、なんか距離が近くなったって感じ。俺の勝手な考えだけどね。
 人の顔って見てるようで見てないんだね。ラルシュ様の侍従さんも‥そういえばしげしげみたことってないや。

 お茶を淹れにきてくれた侍従さんの顔をこっそり見てみた。
 侍従さんは、金髪に青い目の「ざ、貴族さん」って顔してました。ノ~ブル~って感じ。
 以上! それ以上でもそれ以下でもないって感じ。ナラフィス先生よりはイケメンの部類に入るかもしれないけど、そもそも種類が違うって感じ。でも、まぁ‥やっぱりミチルの敵じゃない。(なかなかね)
 ってか~。
 男の顔なんて見ても面白くないや! それに、なんか「見るなよ、キモイな」って思うじゃん? 多分、今も思われたと思う。だって、じっと一秒凝視したら、視線が一瞬だけど確実にこっち向いたもん。いつもは、絶対視線なんて合わさない人なのに!
 きっと、
 見るなよ。キモイ。
 っていう視線だよ。あれ。後でラルシュ様づてに謝ってもらおう‥。

「ナラフィス先生は、風と水の属性ってことですか? 」
 お茶を飲みながらナラフィス先生に聞くと、
「そうだねそれもあるね。でも、僕が一番強い属性は土だよ」
 ナラフィス先生はお茶を飲む手を止めて軽く頷くと、俺に見えやすいように眼鏡を外して目を見せてくれた。 
 ナラフィス先生の瞳は瞳孔が青っぽいシトリンだった。
 お~なんか、綺麗。地球では間違いなく珍しい目の色だよね。(こっちではどうなのかな? 城の外に出ることがないからわからないや)
  っていうか‥黄色。そして、ナラフィス先生の主な属性は土。何となく黄色は風かと思ってたけど‥そういえば、風は緑だな‥。ミチルも緑だもんな。
 俺も緑っぽいっていうより黄色っぽい。俺の主な属性って土なんだ。考えたことなかったけど。父さんがあれ(この間の災害級の庭)だから納得‥かも。

 ナラフィス先生のオーラ、この前見たときは、俺のオーラとよく似た黄色い光だった。(オーラって言っていいのかな。魔法使う時に術者の周りにぽわぽわで出る光。でも、オーラって言うのが一番分かりやすいって気もする)
 ラルシュ様は紫。

「じゃあ、紫は? 」
「紫は王族の色だ。王族は使える属性が多いし、一つ一つの属性の力が強い。だからどれが強いって言うものがなくって‥混じったような色になる。
 ‥って言われてるけど、ホントの理由は分からない。
 水の属性と炎の属性を同時に持っている者は普通いない。王族はそれらを当たり前に持っているような強いの子孫だから、それらが混じった紫の瞳が出るようになった‥っていう説も有力だ。これは説得力ある。水と炎は特に強い属性なんだ」
 ナラフィス先生の口調に熱がこもる。
 ってことは、ナラフィス先生にとってこの話は「興味がある話」なんだろう。(興味がない話をしてる時のナラフィス先生の口調はもう、殆ど「棒読み」みたいだから)ナラフィス先生って学者としては素晴らしいけど、先生に向いてるか‥って言われると微妙なんだ。(おもしろいけどね)
 それはそうと‥さっきなんか変なことを言ったな。
「強い属性? 属性にも強いとか弱いとかがあるの? 」
 個人差、とかじゃなく?
 俺が首を傾げると、ナラフィス先生は大きく頷いた。
「あるよ。順番に炎、水、風、土だ。順番にって言ったけど、炎と水は風と土よりずっと力が強い。‥周りに与える影響力が強い力だ。昔は、炎の属性持ちと水の属性持ちが権力争いをしていた」
 自然災害として考えた時、人間に影響を与える力‥って考えたらいいのかな? でも、火事と水害(津波は海がないこの国にはないらしい)台風、土砂崩れ‥どれも影響力大だけどな? 
「あと、弱い炎と水の属性を持っている人は多いけど、攻撃魔法ではなく攻撃性のある火と水の属性を持っている人は少ない。少ないゆえに貴重で、‥なにより、得体が知れない」
 なるほど。

「つまり、王族の紫は、「攻撃性のある火と水」の色ってこと? 」

 俺が頷いて、何となく呟いた言葉にナラフィス先生の目が光る。
「まさにそれだ! 」

 あ~話長くなりそ~う‥。
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