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十六章 ミチル争奪戦!
月夜のボタンの今後の予定
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「人はね、行動に意味を求めすぎる。
意味があるのだけが重要じゃないって思う」
ポツリ、と国見が言った。
「母さんは俺にいつも言ってた。
「そんなことしても意味がないでしょ」
って」
ヒジリは顔を上げて、国見の横顔を見た。
「大学進学する奴らが多い中で俺が就職を選ぶって言ったら「高卒で仕事を選んでもいい仕事に就けないわよ」って言って反対した。‥頭ごなしに反対されると、なんか意地でも就職してやるって気持ちになるっていうのにね。で、就職先をおじさんの印刷会社にした時は‥「なんでそんな人生無駄にすることを‥! 」って怒った。おじさんも反対したけど、俺の意思は変わらなかったから最後には母さんの説得に回ってくれた。
俺はね、‥確かにここじゃなきゃ嫌だって思ってたわけじゃないんだけど‥ここに入らなきゃっておもってたんだ」
変な言い回しに首を傾げていると、
「小さい頃に約束したんだ。俺ってオジサンっ子だったから。「俺が大きくなったらオジサンの会社手伝うよ! 」って‥それから、「大人になったらオジサンの会社に入るもの」だって自然に考えてた。‥ほら、なんか「思い込んで、何故かそれをしないといけない気持ちになる」ことってあるだろ? 」
‥それは‥あるかも。
母さんが昔ぽそりと「これおいしいわね。母さんこれ好きだわ」って言ったプリン、なんか見たらつい「買ってやるか」って思うもんな。いつもそんなこと言わない母さんが言ったこと、てのになんか‥特別感があった‥っていうか「俺は母さんの隠してる気持ち知ってるんだぜ、父さんと違ってな」っていう対抗心があった‥というか‥。
兎に角「ぼそっと言った言葉」が思いのほか(言った本人にそれほど深い意味はなかったとしても)言われた本人の頭に残る‥ってことは割とよくあるわけで(国見の場合は、自分の言った言葉に囚われてるんだな)
俺が頷くと
「‥そんな感じで俺は、当たり前におじさんの会社に行くつもりでいたんだ。その時丁度、おじさんは身体の調子が良くなくって、「今こそ俺が! 」って高校卒業したタイミングで就職したんだ。俺の指導やなんかで、手伝える戦力になるまでおじさんに余計に負担かけたなって‥今考えたら「頭悪い‥」って感じなんだけど」
って笑った。
でも、俺は国見と一緒でおじさんの気持ちはきっと前向きになっただろうなって思うんだ。
国見は凄い良い奴だから‥。
ああ、国見にとっておじさんとの約束も「月夜のボタン」だったんだ。
捨てるに忍びない‥月夜のボタン。
それ(月夜のボタン)は、特別ではあるが、重要では決してない。
「でもさ‥結局、すぐつぶれちゃって、俺はおじさんの取引先の会社に拾ってもらった。それが橋本さんと一緒だった会社」
‥ああ、倒産したっていう会社ね?
お前、疫病神なんじゃないか? この会社はつぶさないでね‥。
ヒジリはこっそり苦笑いした。
「そしたら、母さん怒る怒る。「アンタの時間無駄になったじゃないの! 新卒っていう貴重な時期を棒に振って! 」って。だけど、別に遊んでたわけじゃないから無駄にはなってないのにね~」
って、だけど、国見の母親に対する怒りは見られなかった。
寧ろ「そんなこと言っても仕方ないのにね」って言うような表情。
国見の母親にしたって、それは分かってただろう。だけど、言わずにいられなかった。‥その気持ちもわかる。
ヒジリは頷いた。
「ま‥母さんの気持ちもわかるんだけどな」
って国見は肩をすくめた。
そこで初めて、コーヒーを一口‥
ヒジリの
ブラックコーヒーの方を
「苦!! 」
くすくすと笑って極甘コーヒーを差し出してくれたのは、中川さんだった。
「‥休み時間終わるから早く事務所に入ったら? 」
見ると、事務所の皆が生暖かい顔で‥国見とヒジリを見ていた。
「よ! 国見。学生のデートか? 色気ないな~。逢引きってのは、せめて喫茶店でやれよ! 」
「落ち込む先輩慰めてやるなんて、お前も大人になったよな~」
ガハハハッって笑う先輩たち。
吉川は‥呆れた顔して見てるだけ。
「‥俺のお金で買ったコーヒーですけどね」
ってツッコミ入れる器が小さい男・ヒジリ。
「‥児嶋君、細かいわよ。たかがコーヒー代で‥」
は、中川さん。
「はあ‥ソウッスネ」
って、器が極小で人間的に「アレ」なヒジリ。
「そんな細かく小さい男を慰める俺。大人は辛いっすっよ」
国見がはは、って笑って先に一人で事務所に入って行った。‥中川さんを追うために‥。
「‥ありがとな」
ヒジリは小声で国見に礼を言い、席に着いた。
俺の前に「投げられた」月夜のボタン。
確かに俺は受け取りました。
それを拾って役立てることは‥俺には出来そうにないですが、
俺はそれを捨てないでもっておきます。
メレディア王の気持ち、桔梗さんの気持ち‥
カタルの想い、
あの国の事
‥これからの俺のこと
気になること、何ともできないこと‥
全部まとめて、俺は袂に入れて大事に持っておきます。
ヒジリは目を瞑り、深くため息をついて午後からの仕事にと気持ちを切り替えるのだった。
意味があるのだけが重要じゃないって思う」
ポツリ、と国見が言った。
「母さんは俺にいつも言ってた。
「そんなことしても意味がないでしょ」
って」
ヒジリは顔を上げて、国見の横顔を見た。
「大学進学する奴らが多い中で俺が就職を選ぶって言ったら「高卒で仕事を選んでもいい仕事に就けないわよ」って言って反対した。‥頭ごなしに反対されると、なんか意地でも就職してやるって気持ちになるっていうのにね。で、就職先をおじさんの印刷会社にした時は‥「なんでそんな人生無駄にすることを‥! 」って怒った。おじさんも反対したけど、俺の意思は変わらなかったから最後には母さんの説得に回ってくれた。
俺はね、‥確かにここじゃなきゃ嫌だって思ってたわけじゃないんだけど‥ここに入らなきゃっておもってたんだ」
変な言い回しに首を傾げていると、
「小さい頃に約束したんだ。俺ってオジサンっ子だったから。「俺が大きくなったらオジサンの会社手伝うよ! 」って‥それから、「大人になったらオジサンの会社に入るもの」だって自然に考えてた。‥ほら、なんか「思い込んで、何故かそれをしないといけない気持ちになる」ことってあるだろ? 」
‥それは‥あるかも。
母さんが昔ぽそりと「これおいしいわね。母さんこれ好きだわ」って言ったプリン、なんか見たらつい「買ってやるか」って思うもんな。いつもそんなこと言わない母さんが言ったこと、てのになんか‥特別感があった‥っていうか「俺は母さんの隠してる気持ち知ってるんだぜ、父さんと違ってな」っていう対抗心があった‥というか‥。
兎に角「ぼそっと言った言葉」が思いのほか(言った本人にそれほど深い意味はなかったとしても)言われた本人の頭に残る‥ってことは割とよくあるわけで(国見の場合は、自分の言った言葉に囚われてるんだな)
俺が頷くと
「‥そんな感じで俺は、当たり前におじさんの会社に行くつもりでいたんだ。その時丁度、おじさんは身体の調子が良くなくって、「今こそ俺が! 」って高校卒業したタイミングで就職したんだ。俺の指導やなんかで、手伝える戦力になるまでおじさんに余計に負担かけたなって‥今考えたら「頭悪い‥」って感じなんだけど」
って笑った。
でも、俺は国見と一緒でおじさんの気持ちはきっと前向きになっただろうなって思うんだ。
国見は凄い良い奴だから‥。
ああ、国見にとっておじさんとの約束も「月夜のボタン」だったんだ。
捨てるに忍びない‥月夜のボタン。
それ(月夜のボタン)は、特別ではあるが、重要では決してない。
「でもさ‥結局、すぐつぶれちゃって、俺はおじさんの取引先の会社に拾ってもらった。それが橋本さんと一緒だった会社」
‥ああ、倒産したっていう会社ね?
お前、疫病神なんじゃないか? この会社はつぶさないでね‥。
ヒジリはこっそり苦笑いした。
「そしたら、母さん怒る怒る。「アンタの時間無駄になったじゃないの! 新卒っていう貴重な時期を棒に振って! 」って。だけど、別に遊んでたわけじゃないから無駄にはなってないのにね~」
って、だけど、国見の母親に対する怒りは見られなかった。
寧ろ「そんなこと言っても仕方ないのにね」って言うような表情。
国見の母親にしたって、それは分かってただろう。だけど、言わずにいられなかった。‥その気持ちもわかる。
ヒジリは頷いた。
「ま‥母さんの気持ちもわかるんだけどな」
って国見は肩をすくめた。
そこで初めて、コーヒーを一口‥
ヒジリの
ブラックコーヒーの方を
「苦!! 」
くすくすと笑って極甘コーヒーを差し出してくれたのは、中川さんだった。
「‥休み時間終わるから早く事務所に入ったら? 」
見ると、事務所の皆が生暖かい顔で‥国見とヒジリを見ていた。
「よ! 国見。学生のデートか? 色気ないな~。逢引きってのは、せめて喫茶店でやれよ! 」
「落ち込む先輩慰めてやるなんて、お前も大人になったよな~」
ガハハハッって笑う先輩たち。
吉川は‥呆れた顔して見てるだけ。
「‥俺のお金で買ったコーヒーですけどね」
ってツッコミ入れる器が小さい男・ヒジリ。
「‥児嶋君、細かいわよ。たかがコーヒー代で‥」
は、中川さん。
「はあ‥ソウッスネ」
って、器が極小で人間的に「アレ」なヒジリ。
「そんな細かく小さい男を慰める俺。大人は辛いっすっよ」
国見がはは、って笑って先に一人で事務所に入って行った。‥中川さんを追うために‥。
「‥ありがとな」
ヒジリは小声で国見に礼を言い、席に着いた。
俺の前に「投げられた」月夜のボタン。
確かに俺は受け取りました。
それを拾って役立てることは‥俺には出来そうにないですが、
俺はそれを捨てないでもっておきます。
メレディア王の気持ち、桔梗さんの気持ち‥
カタルの想い、
あの国の事
‥これからの俺のこと
気になること、何ともできないこと‥
全部まとめて、俺は袂に入れて大事に持っておきます。
ヒジリは目を瞑り、深くため息をついて午後からの仕事にと気持ちを切り替えるのだった。
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