リバーシ!

文月

文字の大きさ
178 / 248
十六章 ミチル争奪戦!

2.今までの思い込みを捨てる。

しおりを挟む
(side ミチル)


 普通はこうだろう。
 世間一般の常識なら‥

 今まで思って来たこと、信じてきたこと。
 正しいって思って疑わなかったこと。
 でも、それらがみんな‥ただの「思い込み」だったのかも‥そういうこともあるってこと。
 さっきのナラフィスの「カタル像」だって、「無いわ~」って言いきれない。もしかしたら、そうかもしれない。‥勿論違うかもしれない。
 いくら考えたって他人のことは分からない。

 でも、
 今までのこと、考え直す機会にはなった‥かなぁ‥って。思い込みは捨て去らないといけないのかな‥って。

 勿論ね。
 全部がそう(つまり、思い込み)ってわけでは無い。
 人を殺すな盗むな犯すなは、全人類の常識って言っていいと思う。
 だけど、人の気持ちってことについては、そうだって言わざるを得ない。

 人の気持ちは、「理解しよう」「話を聞いてみよう」って気持ちがなきゃ「思い込みが邪魔して」できないし、‥話を聞いてみても、考えてみても理解できないこともある。
 理解できても、
 共感できるかどうかは別問題だけどね。

 カタルのこと、俺だけじゃなく(面白半分にだけど)俺以外の人間も一緒になって考えて予測して、理解しようと努めて‥理解できたような気がした。

 俺のこと心から‥「純粋に」求めていて、でもそれは、利用できるから「欲しい」んじゃないってこと。
 ‥その気持ちはヒジリには分からないみたいだ。(俺にもだけど)
 
 何かを心から欲しいって思ったことない。
 恋しい、触れたい‥ならわかる。だけど、そうではなく、「心がその人を求めている」って感覚‥。そういうの、分からない。

「ロマンかあ‥」

 その人について、見えてる部分と見えていない部分。
 ホントのその人と、他人が思い込みの目で見ているその人。
 
 カタルは純粋で本能に忠実。そしてそれは「自分の利益」に基づいている。あまりたくさんのもの(魔力)を持っていないから「これがやりたい」ということを熟考する必要があり、その実現のために手段を選ばず努力・実行する。
 ヒジリはただ、自分の感情に忠実。「自分の大事な人が」喜ばせたい。たくさんのもの(魔力)をもっているから無意識に心が広くなり(気が大きくなり)自分のちょっとでも知っている人なら施し(という言い方もどうかと思うが‥)の対象となる。そして、基本的に誰も信用していない。
 だから、
 「人にとって自分が価値がない」と自分の価値はない‥と思いがち。(簡単に言えば、人にものをあげることで人に好かれたい‥って思っている。友人についても、心を完全に許しているわけでは無く、何かをあげているから人は(義理で)自分と一緒にいてくれっているんだろう‥と位しか思っていない)
 そのうえ、
 喜ばせる=お礼を言われる。
 承認欲求が強めで、だけど、「自分にはそれが出来る力がある」と、プライドは高い。
 一方でカタルの方は自分の力の無さを自分で自覚している為、無理なことをしようという気がない。そして、自分の出来ることにのみ尽力し、その事に対しては自信がある。また、他人については「信頼している小数の人間にしか心を許していない。仲間以外のことはどうでもいい‥とすら思っている。

 これは多分、白のインフルエンサーと黒のインフルエンサーの本質だ。

「白は皆平等をよしとする「神様みたいな人たち」黒は、自分の利益が一番の心が狭い人たち‥って思われてたけど、‥そう単純じゃないんだよな~。そりゃ人間だもんな‥」

 にしても、
 白のインフルエンサーと黒のインフルエンサーは極端なんだよ。
 普通は、そんな傾向にある‥ってことはあってもそんな極端にこういう性格!! にはならないだろう。

「王様が、リバーシでも魔法使いでもなくって、お后様が異世界人ってのは‥こういうところに関係してるんだろうな」
 新しい風を入れる‥じゃないけど、「冷静に第三者の目で判断する」ってことだ。

 王様って‥どんな人なんだろう。
 ラルシュが昔
 リバーシでも魔法使いでもない、魔力量が半端じゃないが魔法が使えない「普通の人」だって言ってた。
 そして、リバーシと違い、魔石からも魔力が補充でき、また「自分の容量を超えて」魔力を保有することが出来る‥って。

「なんで使えもしない魔力があるの? 」
 って聞いたら
「王様の魔法使いの為かなあ。有事の際には王様が「王様の魔法使い」の魔力供給源になるからね。その時に備えて王様は常に大量の魔力を保有していないといけない。有事はいつ来るか分からないからね。王様は結構「すぐ作り出せる」んだけど、あれね、普段から保有してないと、急に作り出したら身体がびっくりして魔力酔い起こしちゃうんだ。
 リバーシは普段から魔力を保有してるからそういう「備え」の面では問題ないけど、性格上「あるだけ使ってしまう」ところがあるんだ。
 王様は魔法が使えない‥ってのもあるけど、ホントに「使わない」。日常で使う「状態異常」位だったら、魔力を使わなくても発動させられるしね」
 って言ってた。
 (今思ったら、リバーシって浪費癖のあるダメな奴みたいだな‥。あの時は気にもならなかったけど‥)
「なんで魔法が使えないの? ‥使えない人が王様なの? 魔法が一番使える人が魔力を一番保有している人を魔力供給源にして傍に仕えさせてる方がいいんじゃないの? 」
 って俺が聞くと
「魔法使いは「自分」の為にしか力を使わないから。自分もしくは自分より大事って認めた者‥だね」
 ってラルシュは苦笑いした。
 ってことは‥ラルシュもそうなのか~。
「魔法使いは、個人差はあるけど、割と薄情なんだ。博愛主義の対極にあるタイプって言える」
 まあ‥ラルシュは親切でいい奴だけど、別に博愛主義者ではない‥かも。国の為に「こうすべきであろう」という行動をしているから博愛精神があるように見えてるだけで、根っからの博愛主義者って感じではない。
 俺が頷くと、ラルシュが
「まあ‥単純にね。
 魔法使いもリバーシも「癖が強い」から、人の上に立つ‥トップには向いてないんだよ。この国はリバーシでも魔法使いでもない「普通の人」が多い。だから、彼らには魔法使いやリバーシの「癖の強い」考え方は理解できない」
 そういって肩をすくめた。

 だから、「普通の人」側の王様がリバーシやら魔法使いの力を利用しながら国を治めてるってことなんだろう。

「思った以上にこの国は単純で、‥思った以上に怖い国なんだ」

 俺が好奇心で関わることではないのだろう。
 異世界の知識でこの国を救う‥とかそういう「異世界チート」はない。
 ああいうのってさ、「異世界って地球より文明的にも精神的にも遅れてますよね~」っていう奢った気持ちだよ。
 ‥よくないよね。そういうのは‥。
 そういう気持ちで俺はこの国に関わっているわけでは無い。
 誰かの為とか、俺に出来ることをしたい‥とか‥そういう‥大層な気持ちじゃない。
 俺はね。ただ、ここに来たいから来てるんだ。
 昔は単純に「寂しいから」だった。そして、ラルシュと会って「ここに来るのが楽しみ」になって、今はヒジリとの共通の話題の為に‥ここにきている。
 自分の為なんだ。
 ラルシュのことは一番の友達だって思ってるし、
 ヒジリのことは真剣に好きだ。唯一無二って程ではないにしろ、だ。薄情だって? それは「真実の愛じゃない」って? 逆にそれはどういうものなのか知りたい。そのうち出会う? ‥俺はそうは思えない。こればっかりは俺の性格の問題だから。
 ‥今まで「薄情なんだろうか」って密かに悩んでいたこの性格も「そういうもんだから仕方ない」って思えるようになったのは、俺のこと以外には驚くほどビジネスライクなカタルを見たから‥だろう。
 俺に対する執着振りだけを見たらアイツは凄く「ハートフルな人間」みたいで、人に執着しない俺は「人に対する愛情に欠けたクールガイ」みたいに感じるけど‥実際は俺の方がよっぽど社交的だし、「人全般に対する関心」もある。
 愛情の深さが人間の厚みの全てではない。(それにしても‥ぷぷっ、ハートフルカタルとか‥笑える! ‥ちょっと顔がにやけちゃった‥)
 そんな「哲学的なこと」などなど‥を考えてしみじみしてると、ふいに
「なんか楽しそうだね? あの時、ヒジリと何かいいことあった? 」
 ふふっと
 ラルシュにいつもの「王子様然とした微笑み」を向けられた。例の‥俺とヒジリ以外の地球人が見たらもれなく恋に落ちるであろうあの微笑だ。
 俺はため息をつき
「‥あるわけないだろ。ヒジリとloveハプニング♡なんて、それこそ「枯れ木に花が咲く」くらい‥在り得ないよ」
 力なく苦笑いするのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...