リバーシ!

文月

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十六章 ミチル争奪戦!

4.こういう時って、男の方がロマンチストですよね? 

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(side ミチル)


「ほんっと腹立つ! 」
 ‥毛を逆立たせた猫みたいなヒジリ。
 俺の為に怒ってくれてるのってわかって嬉しい。
 ねえ、ヒジリ
 君は
 
 俺のことどうおもってるの?

 そこんとこ‥重要なんだけど。

 ラルシュは、今回のことを上の人に相談しに行ってて今ここにいない。上の人ってつまり、王様と次期王様のお兄さんだけ。
 ‥ラルシュって王子様なんだよなって‥改めて思ったりした。
 そりゃ、普段からラルシュは国のことで忙しい。国のことはよくやってるって思う。だけど、態度っていうか‥多分俺たちに対してだけなんだろうけど‥そういうのが、王子らしくなくて、つい忘れてた。
 会社の「親しい先輩」みたいに思ってた。
 
 改めて、この国が異世界なんだな~って思ったり。

 ラルシュはその国の王子様で、それは国が違うって理由で「じゃあいいか」にはならない。(地球でもそうでしょ? 他国の王様だからっていって「わが国には貴方の国の身分制は関係ないですから」にはならないでしょ? )
 でも‥だからといって、ラルシュに対する態度を変えようとは思わないんだけど‥。
 それは‥違う国どころか‥異世界人だからってことで大目に見て欲しい。

 ラルシュたちの会議‥大臣さんも含めて今後のことを話し合う大事な会議‥は、昼から今までずっと続いてるらしい。
 思った以上に大ごとで、昨日、自分の身に起こったこと以上に戸惑ってる。
 だけどそれ以上に‥
 俺はヒジリの俺に対する気持ちの方が気になる。
 だけどね、ここでは聞けない。
 傍に穏やかな振りして‥俺たち二人の様子を見張ってるナラフィスがいるから。
 ナラフィスはもちろんだけど、ヒジリとラルシュが結婚することを望んでいる。
 まあ‥この国の人間なら当たり前だろう。それが、この国にとってbestな選択だからだ。だけど、ナラフィスにとっては、ラルシュの為ってのが一番‥なんだろう。
 だって、ラルシュの友達だから。
 ナラフィスを見てたら、サラージも含めた友情‥みたいなのを強く感じるよ。
 「羨ましいな」って思うし、俺もラルシュの友達だから、頼もしいって思う。
 ‥こと、ヒジリのことじゃなかったら、だ。
 ヒジリのことについては‥でも、「ちょっと邪魔だな」って感じは‥正直、ね‥。

 ラルシュとは友達だけど、ヒジリのことまで「お友達だから」で済ませる気はない。
 ‥だって、「見込みなし」の恋じゃない。

 それなりの時間一緒に過ごして来たし、俺しか知らないヒジリをいっぱい見て来た。俺のヒジリに対する気持ちも変わってきた。
 きっと、ヒジリもそうだって思ってる。

「俺は‥嫌だ! ミチルがカタルの味方になるなんて‥絶対に嫌だ‥! 」
 今だって、俺の為に怒ってくれるヒジリに期待をもっちゃったりする。
 ズルい。ヒジリは‥ズルい。
 俺の気持ちにきっと気付いてるのに(← 実は気付いていない)、気付かない振りして、‥だけど、「思わせぶり」な態度をとる。

「どうして? 」
 つい、口から零れ落ちた言葉に、ナラフィスがぎょっとした顔をして‥俺を見る。

 どうしてって何がだ。
 そりゃ、嫌だろ。
 カタルはラルシュの‥国の敵sideだぞ。
 ってことだろう。

 ‥そうだな。間違った。つい、‥ついね。ナラフィスは正しいよ‥。

「いや‥」
 言い直そうとしたら
「だって‥嫌だもん‥」
 ヒジリが消え入るような声で呟いた。
 顔が真っ赤だ。
 この顔、このセリフ‥!
 ‥反則だろう。
 どうして嫌なの? 何が嫌なの? 俺がカタルの味方になるのが‥どうしてそんなに嫌なの? 

 ‥俺のこと、好きだから?

 だけど、
「‥どうしてそんなに嫌なの? 」
 って聞いたのは、ナラフィスだった。
「ナツミが大犯罪に巻き込まれるから? 」
 って何気なく論点を変えようとしてる。
 
 「俺」との、恋愛の話にしないように、しないように‥方向転換しようとしてる。

 ヒジリは、でも「え? 」って顔して‥
「だって、嫌でしょう。普通に。なんか‥あの人、変な感じだったし。「俺の友達を変な目で見るな! 」って思った。‥ああ、思い出したらまたむかむかしてきた。
 あの目! 
 ‥そりゃ、恋愛に性別は関係ないって思うけど‥思うんだけど‥ああ‥俺は‥偏見だらけのダメな奴だな‥」

 すごい、
 鈍器で頭を殴られたような衝撃。

 「俺の友達」‥。
 カタルに嫉妬したんじゃなくて、
 いや‥嫉妬には違いないけど‥

「‥そ‥そうか」
 ナラフィスも困っちゃってるよ‥。
「特別な相手って、魔力の問題だのに、あの目は‥そんなもんじゃなかった」
 力説するヒジリに、ナラフィスは
「‥そもそも、魔法使いにとっての「特別な相手」と、リバーシにとっての「特別な相手」って全然存在が違うらしいから‥ここでリバーシ同士が集まってあれこれ議論しても分かんないわな」
 って返して、‥ちょっと俺を「お気の毒さま‥」って顔で見た。
 ‥安い同情はやめてもらおうか‥。
「まあ‥ねえ、魔法使いにとって魔力はそれ程必要なんだろうけど‥。
 特別な相手から魔力を補充するのが一番効率が良くて、自分の魔力に馴染む‥。それって重要なことなんだろうな。
 だけど、契約を結んじゃったら、他の人から魔力がもらえないとか‥不便じゃないのかなあ」
「それ程、キープしとかなきゃ! って思うんじゃない? 」
 俺が睨むと、ナラフィスは一瞬「ヤレヤレ」って顔して、肩をちょっとすくめると‥ヒジリとの話に戻った。
「‥成程」
 ナラフィスの「キープ」って言葉にヒジリが「納得した」って顔をする。

 君たち、「運命を感じるほど相性のいい」魔力‥っていう「ちょっとロマンがある話」してるんだよね? 
 なんか‥献血かなんかの話してるみたい‥。もしくは‥バーの酒?
 ロマンのかけらもない「色気ない話」だよね‥。

「そうか! じゃあ、ミチルと契約だけさせちゃえば? で、ミチルと一生会わせないの! そしたら、カタルの奴、他から魔力貰えないから魔力枯渇間違いなし! 一瞬ぬか喜びさせて、「裏切られた‥」ってのも、いいよね! 」
 って‥悪役の発想。
 ‥てか、俺は囮ですか‥?
 そんなヒジリにナラフィスは「呆れた」って顔して(で、俺の方にまた「お気の毒」って視線をよこして‥)
「‥契約したら、「カタルの契約者」って国の魔法使いに認識されて、ミチルは攻撃されると思うぞ‥」
 肩をすくめて「ヤレヤレ」って顔をする。
「ミチルのこと快く思ってない輩からしたら「いい攻撃理由」だよね。「じゃあ、ミチルは殺さねば! しかもカタルの戦力も削れて一石二鳥! 」ってなるよね。確実に」
 ‥殺人確定!!
「だめか‥」
 ‥ヒジリ、その落胆した顔‥本気だったのか??

 恋バナ‥じゃなかったの? ヒジリ‥。
 俺のこと好きだから嫉妬して‥じゃなかったどころか、俺のこと利用してカタル潰そう‥とか‥
 酷過ぎない??

 カタルに対する恐怖以上に‥俺のハートはもうガタガタだよ‥。
 ヒジリのロマンチックに期待した俺が馬鹿だった。

 ってか‥こういう時、男の方が恋愛脳で、ロマンチストですよね。
 (泣)
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