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十六章 ミチル争奪戦!
17.会議再開。
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(side ヒジリ)
「‥さ、会議を再開するか」
って、一方的に宣言して、結界をかけなおしたのはナラフィス先生だった。
「いつまでも休憩してられないからな」
なんて言ったけど、
話しを脱線させた犯人はお前だ。
‥ツッコミを入れたいのを全員我慢した。
だって‥言っても無駄だし、時間も無駄だから。
「じゃ、一番大人な僕が仕切っていくね」
ってドヤ顔してる。
なぜ一番大人だなんて主張してるかって?
お前ら全員未婚で「守るべき女」とかいないじゃん? 僕にはいるよ? ‥やっぱさ、守るべきものが出来ると人間強くなれるよね~。覚悟が全然違う‥っていうか~。もし、自分が失敗すると泣く女性がいる‥って考えると、慎重になるしね。
ってことらしい。
(結婚もしてないし、まして婚約すらしてないのにこの男は‥! もうその気だよ‥! )
ウザい。
ウザすぎる。
こほん、と咳ばらいを一つ、
「私たちは国民全員の命を預かってますからね。たった一人を守るってことは‥出来ないですが、国民全員のことを分け隔てなく大事に思ってますよ。それに、結婚はしていませんが、私には私の命より大事な女性はいますからね。
私は、ヒジリの為に死ぬ覚悟はでき出ますよ」
って‥にっこり微笑むラルシュが‥怖い☆
俺の為に死ぬとか‥そんなもん俺は望んでないぞ。
この国の王子様の命とか‥恐れ多い。俺の命の重さの比じゃないと思うぞ??
「おいおい、ラルシュ。ヒジリは自分の為に誰かが死ぬことなんて望んでないぞ? そんなことも分からない様じゃまだまだだ子供だね☆」
ってさわやかスマイルだけど‥目が笑ってないのがミチル。
大人気ないぞミチル。何を張り合ってるんだ??
「守る人もいないとか子供か? 」
って言われたとか思って‥気にしてるのか??
俺は「守る人がいる = 大人」じゃないと思うぞ? 大人ってのは、「自分が大人でなければ」っていう自覚と覚悟、そして責任感だ。守らなければいけないものの有無じゃ決してない。
「‥俺がいるんだ。危険な目になんてあうわけがないだろ? 自信がないなら俺の後ろに隠れてろ。お遊び気分は迷惑だ。‥今回は危険な戦いだからな」
は、サラージ様。
サラージ様は、恋とかそういうのとは無縁って感じ。喧嘩に「そういう事情」は持ち込まない質みたいだ。
凄くシンプル。
君の為に勝つ☆とかじゃなくて、「売られた喧嘩は買う! 」って感じ。
どうせ俺が勝つんだ。それは戦う前から決まってる。負けるかもしれない戦いなんか、俺はしない。負けるかも‥なんて口にした瞬間負けるんだ。
君の為に強くなる? 君の存在が支えになる? そんなチャラついたこと考えてるやつが喧嘩に勝てるわけがない。喧嘩は自分一人でするもんだ。
って前に言ってた気がする。あの時は‥何の話をしている時だったっけか‥。確かメイドさんが「お姫様の為に戦う王子様って素敵ですよね」みたいな話をしてキャッキャ言ってた時だっけか‥? ここのメイドさんたちは皆恋バナが大好きなんだ。まあ‥ラルシュやサラージ様みたいなイケメンの王子様がいたらそういう妄想もしたくなるのかも?
サラージ様はお子様なんだよ。(だから、俺より年上なのに、弟みたいに見えちゃうのかもしれない)
喧嘩っ早い、手のかかる‥でも憎めない「愛すべき弟」
「危険な戦い」なんて言いながらも、ちょっと「ワクワクしたような」顔してるのは‥気のせいか? この王子様は(見掛け通り)ちょっと血の気が多い様だ。
ナラフィス様は?
見掛け通り、武闘派じゃないみたい。
「僕はブレーンだよ」
って言ってる。軍師みたいな感じかな? でも、国で一番の学者でも、戦いは専門外じゃない? レオナルドダヴィンチみたいに万能なのかな? ‥そういう風には見えないけど‥。
ラルシュ様は、ああ見えて剣の腕が立つらしい。
あと、国で一番の魔法使い。
だけど、きっと攻撃魔法より、「国の為になる魔法」とかなんだろうな。
‥どんなのか想像つかないけど。
‥気になる。
気になることは聞いといた方がいい。
味方の事知らないより知ってる方がいい。
「ラルシュ様は、どういう魔法を使われるんですか? 」
‥って、聞き方わからんかったから変な聞き方になっちゃった‥。
「私の属性はご存じですよね? 風・土・火・水で、風がメインです。風は、主に意識操作や威圧、情報収集の為に使います。
攻撃魔法も、この四つで使えます」
そうなんだ! なんか意外~。
ミチルも、風属性を情報収集や詮索、あと‥意識混沌の為に使ってたな。
風って「嵐よ吹け! 」ってイメージしかなかった‥。俺ってもしかして、想像力貧困? 魔法って「インスピレーション」って言ってたから‥俺が魔法っぽいものが使えなくなったのって‥地球で暮らしてて「インスピレーション」が枯渇したから‥とかかな。「そんな非現実的なこと、できるわけないだろ」ってまず思っちゃうもんな。
「ラルシュ兄は強いよ。戦いに無駄が無い。敵味方とも被害を最小限に抑える天才なんだ」
ってサラージ様、自分の事みたいに自慢してる。サラージ様って、お兄ちゃん子だよね。
「サラージは、敵に容赦ないよな。ほぼ皆殺しにする。捕虜だとか事情調査の為に何人かを生け捕りにする‥って考えが端っからない」
ってナラフィス先生がため息をつく。
怖! でも‥なんか、想像通り‥。
「口を割らせるとか‥別に捕まえてしなくても、兄ちゃんが(風魔法の「詮索」で)してくれるしな~。面倒じゃない」
ってサラージ様が兄ちゃん・ラルシュを見る。
ラルシュは苦笑いして、
「詮索はミチルの方が得意ですがね」
ミチルを見て、
「俺が戦場になんて行ったら秒で死ぬ予感しかしない! 」
ミチルは何故か自信満々胸を張る。
‥何気に怖い会話だよね。
地球人にとって戦いって無縁だ。
地球人‥っていうか‥戦争を知らない国民にとって‥だ。
自国が戦場にならない限り、この国の国民だってきっと戦争を知らない。
自国が戦場にならないように、ラルシュたち魔法使い(戦闘系)や、サラージたちリバーシ(戦闘系)は時に戦いに向かう。
ラルシュやサラージ様は王子だのに?
俺が眉をしかめて二人を見ると、
「王子だとかそんなこと関係ない。出来るから俺はやる。逆に、出来ない人間はやらなくて‥やれなくて当然なんだ。‥ヒジリはナツミに勝とうと努力してるみたいだけど、‥言いにくいけど、ヒジリにそんな才能は無い。魔力はあるけど、‥ヒジリはそれを戦いに使うセンスはない。
ヒジリは戦闘系のリバーシじゃない。
‥出来ないことをやらないのは、逃げてるわけじゃない。悪いことでは決してない。出来ないことに執着する方が寧ろ悪いことだ。時間の無駄だし、‥周りにも迷惑をかける」
俺の言いたいことが分かったんだろう。サラージが言った。
ちょっと眉を寄せて‥若干言いにくそうに言ったのは、サラージの優しさだろう。
「俺は同じリバーシだけど、俺は戦闘系のリバーシだ。
昔‥子供の頃は力が無かったから、風魔法で情報を集めたりする方ばかり練習していたけど、俺のメインは火だ。‥火の属性をメインにする者は戦闘系が多いんだ。ヒジリは水と土だろう? 」
‥後、時。
俺のメインはきっと時だ。
時はきっと、戦いに使うべきじゃない。
そうなると‥俺は水と土で戦うことになる。あの‥ショボい力でだ。
「だけど‥俺は‥」
俺は‥
ショボかろうと、勝ち目無かろうと、センス無かろうと‥
ナツミから逃げ出したくない。
例え負けようとも‥。負けた結果、死ぬかもしれなくても‥だ。
ナツミに「王子に守られた無力な女」って思われたくない‥。
だけど‥それは俺のただの意地だ。意地で、見栄? そんな‥ただのワタクシゴトの我儘の為に誰かに迷惑を掛けて‥それはサラージが言ったように「時間の無駄で、周りに迷惑を掛ける」行為なだけなんだろう‥。
「出来ないなら、出来る奴に頼ればいいし、出来る奴を使えばいい。
ラルシュ兄もそうだった。
自分一人で抱え込んで苦労して‥。
ヒジリにとって‥
周りはそんなに頼りないか? そんなに信用できないか? 」
そんなことはない‥無いけど‥でも、俺の問題だし‥。
でも、今は‥もはや俺の問題だけじゃなくなってるんだよな。
ミチルの問題でもあるし、国を脅かすような力が働いてるから‥国の問題でもある。
「自分の自尊心も大事だ。だけど、それよりも大事なのは、問題を解決することだし、円滑に業務が進むことだし、‥仲間を信用することだ。努力をすることが無駄だって言ってるわけではない。寧ろ努力は大切だ。
無駄な努力はすべきじゃない、って言ってるんだ。
一人で焦ってたら、例えば能率が悪い方法を使ってることに気付かず、無駄に時間だけを取られたりすることもあるだろう。‥人手があれば数分で終わることもあるだろう。
一人で問題を抱え込んだって、いいことなんて何もないんだ」
だけど‥仕事って自分でやるのが当たり前だし‥
そう心の中で反論しようとした時、国見の顔を思い出した。
ブツブツ言いながらキャッチボールに付き合ってくれた国見。
「データの打ち込みの仕事とデータ解析代わってください」
ってデータの打ち込みを手伝ってくれた中川さん。
「この本、分かりやすかったぞ。読んでみたら」
ってぶすっとした表情で本を差し出してくれた吉川‥。
「ヒジリが努力してないなんて思ってる奴なんていない。
だから、周りに皆が集まって来る。
‥手を貸そうって手伝ってくれる。
ヒジリの頑張りは、周りを勇気づけるし、「自分に出来ることないかな」って周りに自発的に考えさせる。
それって、いい影響だって思う。
ヒジリの顔だとか、立場だとか関係なく、俺もラルシュ兄もナラフィスも、ミチルもヒジリが好きだ。
そんなお前が、お前のちっぽけなプライドを守る為に死んだって構わない‥なんて言うな」
真剣なサラージ様の視線が俺の胸をえぐる。
「何で‥」
なんで分かった? 俺の思ってること‥。
反論しようとした声が出なかった。鼻が‥ツンとする。‥ヤバい、泣きそうだ。
「何でなんて‥お前が考えてることなんて、バレバレだ。‥寧ろ、気付かないって思ってる方が驚きだ」
呆れた様なサラージ様の口調。
‥ナラフィス先生やラルシュ様、ミチルも「うんうん」って頷いてるし。
ぜんぜん、悔しいって思わない。
馬鹿だって言われてるし、思ったこと全部顔に出る単純な奴だって言われてるのに‥だ。
ただただ、‥嬉しい。
皆が居てくれて嬉しい。
‥今まで皆に散々心配かけて、無駄な時間かけさせて、ホントにゴメン。
こんな俺なのに、見捨てず、キレずに‥傍に居てくれてありがとう。
この日、
「‥どうしたら、いいと思う? ‥俺には何が出来る? 」
俺は、今更初めて、‥でも、一番大事な話を「大事な仲間たち」に聞いたのだった。
「‥さ、会議を再開するか」
って、一方的に宣言して、結界をかけなおしたのはナラフィス先生だった。
「いつまでも休憩してられないからな」
なんて言ったけど、
話しを脱線させた犯人はお前だ。
‥ツッコミを入れたいのを全員我慢した。
だって‥言っても無駄だし、時間も無駄だから。
「じゃ、一番大人な僕が仕切っていくね」
ってドヤ顔してる。
なぜ一番大人だなんて主張してるかって?
お前ら全員未婚で「守るべき女」とかいないじゃん? 僕にはいるよ? ‥やっぱさ、守るべきものが出来ると人間強くなれるよね~。覚悟が全然違う‥っていうか~。もし、自分が失敗すると泣く女性がいる‥って考えると、慎重になるしね。
ってことらしい。
(結婚もしてないし、まして婚約すらしてないのにこの男は‥! もうその気だよ‥! )
ウザい。
ウザすぎる。
こほん、と咳ばらいを一つ、
「私たちは国民全員の命を預かってますからね。たった一人を守るってことは‥出来ないですが、国民全員のことを分け隔てなく大事に思ってますよ。それに、結婚はしていませんが、私には私の命より大事な女性はいますからね。
私は、ヒジリの為に死ぬ覚悟はでき出ますよ」
って‥にっこり微笑むラルシュが‥怖い☆
俺の為に死ぬとか‥そんなもん俺は望んでないぞ。
この国の王子様の命とか‥恐れ多い。俺の命の重さの比じゃないと思うぞ??
「おいおい、ラルシュ。ヒジリは自分の為に誰かが死ぬことなんて望んでないぞ? そんなことも分からない様じゃまだまだだ子供だね☆」
ってさわやかスマイルだけど‥目が笑ってないのがミチル。
大人気ないぞミチル。何を張り合ってるんだ??
「守る人もいないとか子供か? 」
って言われたとか思って‥気にしてるのか??
俺は「守る人がいる = 大人」じゃないと思うぞ? 大人ってのは、「自分が大人でなければ」っていう自覚と覚悟、そして責任感だ。守らなければいけないものの有無じゃ決してない。
「‥俺がいるんだ。危険な目になんてあうわけがないだろ? 自信がないなら俺の後ろに隠れてろ。お遊び気分は迷惑だ。‥今回は危険な戦いだからな」
は、サラージ様。
サラージ様は、恋とかそういうのとは無縁って感じ。喧嘩に「そういう事情」は持ち込まない質みたいだ。
凄くシンプル。
君の為に勝つ☆とかじゃなくて、「売られた喧嘩は買う! 」って感じ。
どうせ俺が勝つんだ。それは戦う前から決まってる。負けるかもしれない戦いなんか、俺はしない。負けるかも‥なんて口にした瞬間負けるんだ。
君の為に強くなる? 君の存在が支えになる? そんなチャラついたこと考えてるやつが喧嘩に勝てるわけがない。喧嘩は自分一人でするもんだ。
って前に言ってた気がする。あの時は‥何の話をしている時だったっけか‥。確かメイドさんが「お姫様の為に戦う王子様って素敵ですよね」みたいな話をしてキャッキャ言ってた時だっけか‥? ここのメイドさんたちは皆恋バナが大好きなんだ。まあ‥ラルシュやサラージ様みたいなイケメンの王子様がいたらそういう妄想もしたくなるのかも?
サラージ様はお子様なんだよ。(だから、俺より年上なのに、弟みたいに見えちゃうのかもしれない)
喧嘩っ早い、手のかかる‥でも憎めない「愛すべき弟」
「危険な戦い」なんて言いながらも、ちょっと「ワクワクしたような」顔してるのは‥気のせいか? この王子様は(見掛け通り)ちょっと血の気が多い様だ。
ナラフィス様は?
見掛け通り、武闘派じゃないみたい。
「僕はブレーンだよ」
って言ってる。軍師みたいな感じかな? でも、国で一番の学者でも、戦いは専門外じゃない? レオナルドダヴィンチみたいに万能なのかな? ‥そういう風には見えないけど‥。
ラルシュ様は、ああ見えて剣の腕が立つらしい。
あと、国で一番の魔法使い。
だけど、きっと攻撃魔法より、「国の為になる魔法」とかなんだろうな。
‥どんなのか想像つかないけど。
‥気になる。
気になることは聞いといた方がいい。
味方の事知らないより知ってる方がいい。
「ラルシュ様は、どういう魔法を使われるんですか? 」
‥って、聞き方わからんかったから変な聞き方になっちゃった‥。
「私の属性はご存じですよね? 風・土・火・水で、風がメインです。風は、主に意識操作や威圧、情報収集の為に使います。
攻撃魔法も、この四つで使えます」
そうなんだ! なんか意外~。
ミチルも、風属性を情報収集や詮索、あと‥意識混沌の為に使ってたな。
風って「嵐よ吹け! 」ってイメージしかなかった‥。俺ってもしかして、想像力貧困? 魔法って「インスピレーション」って言ってたから‥俺が魔法っぽいものが使えなくなったのって‥地球で暮らしてて「インスピレーション」が枯渇したから‥とかかな。「そんな非現実的なこと、できるわけないだろ」ってまず思っちゃうもんな。
「ラルシュ兄は強いよ。戦いに無駄が無い。敵味方とも被害を最小限に抑える天才なんだ」
ってサラージ様、自分の事みたいに自慢してる。サラージ様って、お兄ちゃん子だよね。
「サラージは、敵に容赦ないよな。ほぼ皆殺しにする。捕虜だとか事情調査の為に何人かを生け捕りにする‥って考えが端っからない」
ってナラフィス先生がため息をつく。
怖! でも‥なんか、想像通り‥。
「口を割らせるとか‥別に捕まえてしなくても、兄ちゃんが(風魔法の「詮索」で)してくれるしな~。面倒じゃない」
ってサラージ様が兄ちゃん・ラルシュを見る。
ラルシュは苦笑いして、
「詮索はミチルの方が得意ですがね」
ミチルを見て、
「俺が戦場になんて行ったら秒で死ぬ予感しかしない! 」
ミチルは何故か自信満々胸を張る。
‥何気に怖い会話だよね。
地球人にとって戦いって無縁だ。
地球人‥っていうか‥戦争を知らない国民にとって‥だ。
自国が戦場にならない限り、この国の国民だってきっと戦争を知らない。
自国が戦場にならないように、ラルシュたち魔法使い(戦闘系)や、サラージたちリバーシ(戦闘系)は時に戦いに向かう。
ラルシュやサラージ様は王子だのに?
俺が眉をしかめて二人を見ると、
「王子だとかそんなこと関係ない。出来るから俺はやる。逆に、出来ない人間はやらなくて‥やれなくて当然なんだ。‥ヒジリはナツミに勝とうと努力してるみたいだけど、‥言いにくいけど、ヒジリにそんな才能は無い。魔力はあるけど、‥ヒジリはそれを戦いに使うセンスはない。
ヒジリは戦闘系のリバーシじゃない。
‥出来ないことをやらないのは、逃げてるわけじゃない。悪いことでは決してない。出来ないことに執着する方が寧ろ悪いことだ。時間の無駄だし、‥周りにも迷惑をかける」
俺の言いたいことが分かったんだろう。サラージが言った。
ちょっと眉を寄せて‥若干言いにくそうに言ったのは、サラージの優しさだろう。
「俺は同じリバーシだけど、俺は戦闘系のリバーシだ。
昔‥子供の頃は力が無かったから、風魔法で情報を集めたりする方ばかり練習していたけど、俺のメインは火だ。‥火の属性をメインにする者は戦闘系が多いんだ。ヒジリは水と土だろう? 」
‥後、時。
俺のメインはきっと時だ。
時はきっと、戦いに使うべきじゃない。
そうなると‥俺は水と土で戦うことになる。あの‥ショボい力でだ。
「だけど‥俺は‥」
俺は‥
ショボかろうと、勝ち目無かろうと、センス無かろうと‥
ナツミから逃げ出したくない。
例え負けようとも‥。負けた結果、死ぬかもしれなくても‥だ。
ナツミに「王子に守られた無力な女」って思われたくない‥。
だけど‥それは俺のただの意地だ。意地で、見栄? そんな‥ただのワタクシゴトの我儘の為に誰かに迷惑を掛けて‥それはサラージが言ったように「時間の無駄で、周りに迷惑を掛ける」行為なだけなんだろう‥。
「出来ないなら、出来る奴に頼ればいいし、出来る奴を使えばいい。
ラルシュ兄もそうだった。
自分一人で抱え込んで苦労して‥。
ヒジリにとって‥
周りはそんなに頼りないか? そんなに信用できないか? 」
そんなことはない‥無いけど‥でも、俺の問題だし‥。
でも、今は‥もはや俺の問題だけじゃなくなってるんだよな。
ミチルの問題でもあるし、国を脅かすような力が働いてるから‥国の問題でもある。
「自分の自尊心も大事だ。だけど、それよりも大事なのは、問題を解決することだし、円滑に業務が進むことだし、‥仲間を信用することだ。努力をすることが無駄だって言ってるわけではない。寧ろ努力は大切だ。
無駄な努力はすべきじゃない、って言ってるんだ。
一人で焦ってたら、例えば能率が悪い方法を使ってることに気付かず、無駄に時間だけを取られたりすることもあるだろう。‥人手があれば数分で終わることもあるだろう。
一人で問題を抱え込んだって、いいことなんて何もないんだ」
だけど‥仕事って自分でやるのが当たり前だし‥
そう心の中で反論しようとした時、国見の顔を思い出した。
ブツブツ言いながらキャッチボールに付き合ってくれた国見。
「データの打ち込みの仕事とデータ解析代わってください」
ってデータの打ち込みを手伝ってくれた中川さん。
「この本、分かりやすかったぞ。読んでみたら」
ってぶすっとした表情で本を差し出してくれた吉川‥。
「ヒジリが努力してないなんて思ってる奴なんていない。
だから、周りに皆が集まって来る。
‥手を貸そうって手伝ってくれる。
ヒジリの頑張りは、周りを勇気づけるし、「自分に出来ることないかな」って周りに自発的に考えさせる。
それって、いい影響だって思う。
ヒジリの顔だとか、立場だとか関係なく、俺もラルシュ兄もナラフィスも、ミチルもヒジリが好きだ。
そんなお前が、お前のちっぽけなプライドを守る為に死んだって構わない‥なんて言うな」
真剣なサラージ様の視線が俺の胸をえぐる。
「何で‥」
なんで分かった? 俺の思ってること‥。
反論しようとした声が出なかった。鼻が‥ツンとする。‥ヤバい、泣きそうだ。
「何でなんて‥お前が考えてることなんて、バレバレだ。‥寧ろ、気付かないって思ってる方が驚きだ」
呆れた様なサラージ様の口調。
‥ナラフィス先生やラルシュ様、ミチルも「うんうん」って頷いてるし。
ぜんぜん、悔しいって思わない。
馬鹿だって言われてるし、思ったこと全部顔に出る単純な奴だって言われてるのに‥だ。
ただただ、‥嬉しい。
皆が居てくれて嬉しい。
‥今まで皆に散々心配かけて、無駄な時間かけさせて、ホントにゴメン。
こんな俺なのに、見捨てず、キレずに‥傍に居てくれてありがとう。
この日、
「‥どうしたら、いいと思う? ‥俺には何が出来る? 」
俺は、今更初めて、‥でも、一番大事な話を「大事な仲間たち」に聞いたのだった。
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