リバーシ!

文月

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十六章 ミチル争奪戦!

18.真っすぐ前を向く君の瞳に

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(side ミチル)


「どうしたらいいと思う? 俺には何が出来る? 」
 真っすぐ前を向くヒジリ。

 凛とした‥表情。
 真剣な瞳。
 透き通った‥若草色の宝石みたいな綺麗な瞳。
 いつもはほんわか俺の心を和ませてくれるその瞳に、今俺は映っていない。
 
 否、
 俺たちは映っている。
 視界には入ってる。
 視界に入ってる、と、視線が合ってる‥ってちょっと違うよね。
 ‥そんな感じ。

 ヒジリは今、真剣に前を向き、自分の未来と向き合っている。
 今まではヒジリに確かに感じられた「迷い」は‥もう感じられない。
 それは‥ヒジリの成長の証しだ。
 これからのヒジリのことを考えたら、喜ばしい‥のはわかってるのに、「寂しい」ってまず思ってしまった自分に嫌気がさす。

 俺なら‥俺たちなら支えてあげられる。
 だから、俺たちを頼って‥。
 助けて
 そう言って欲しかったんだ。

 さっきのサラージの言葉、心に響いたよね。
 ‥考えさせられたよね。
 出来ないことは出来ない、仕方が無い、時間の無駄。人に迷惑かけるだけ。って‥厳しい言葉だったけど‥言ってくれてよかった。
 だって、‥ヒジリは苦しそうだったから。
 誰かがいずれは言わなければいけないって思ってたけど‥皆ヒジリに嫌われるのが怖くて言えなかった。
 だって‥ヒジリが頑張ってるのは分かっているから‥。

 サラージはきっと、仕事が出来る奴なんだろう。
 ‥ラルシュが以前、「自分とは違って優秀な‥」って言ってたし。
 サラージの仕事ぶりをみたことは、勿論無いけど、さっきヒジリに言ってたのを聞いて思った。
 効率よく仕事しそうだな‥って。
 常に自分が冷静でいられるために、仕事を抱え過ぎないようにしている。
 時間が常人より多いってのもあるけど‥(リバーシだからね)時間に余裕をもって行動している。
 常人より長い時間を、(長いからと言って)無駄にならないように‥周り(リバーシじゃない人だとか、自分より能率も能力も劣る者たち)にも合わせながら自分で管理している。
 冷静に、効率よく‥周りを気にかけながら‥

 管理職の鑑だよね! 

 きっと忙しいに違いないのに‥ヒジリのことも気にかけたり‥(それどころかきっと)頼まれたら手を貸すことも出来るんだろう。
 (寧ろ)‥頼まれるのを待ってる‥そんな気にすらなった。
 憎いね! カッコイイね! 同性の俺でもキュンと来るね! 「先輩! ついて行きます! 」ってなるね!
 女子だったら、ぽーっとなるね!
「先輩‥好きです‥」「カッコイイ‥」
 ってなるね! きっと!

 でも、ヒジリはならなかったぽい。

 皆の気持ちは受け取った! ありがとう!
 すまなかった! 心配かけたな! 空回りとかして‥カッコ悪いとこ見せたな! 
 これからはそう言う事の無いように精進していくからな!

 ‥叱咤激励にしか聞こえてない‥。
 男っぽ~い。逞し~い。‥打たれ強~い。
 この前言ってた国見君だっけ? 彼にどれ程スパルタ教育受けてるの??

 甘えるな! 立ち上がれ! お前なら出来る! は!? 助けて?! 知るかボケ! 自分で考えて自分でやれ! 俺にお前に貸すような腕はない! 出来ない? ボケ! 勝手に野垂れ死んどけ!
 
 が、骨の髄まで染みてるの??
 俺たちは国見君じゃないよ??
 ここは、「俺のこと‥助けてくれる? 」でしょう? で、共同戦線の先に、愛が生まれたりなんかして‥
「俺‥気付いたんだ‥。ミチルが好き‥! 」
 ってなるんじゃないの??

「自分一人で出来る‥なんてできもしないこと言って、‥言いながら結局人に頼って、手伝ってもらって‥
 でも、出来なくて、落ち込んで‥時に八つ当たりして‥
 俺って最悪だった。
 そうだよな‥「出来る方法」を考えるべきだったんだよな‥」
 情けない、って顔して、ヒジリが自嘲的な微笑を浮かべる。
 ‥そこまでぼこぼこに言ってないと思うよ流石のサラージも。
「‥今まで、ホントにすみませんでした。‥生意気言って‥ホントに‥」
 ‥そんなに落ち込まないで‥? サラージの鬼! ヒジリが可哀そうじゃないか! もうちょっと言い方あったでしょ!! 女の子なんだよ?! 
 俺が駆け寄ろうとしたら、ヒジリは力いっぱいさっき項垂れた頭をあげ、真っすぐと前を‥サラージを‥見つめた。
「だけど! 落ち込んでても時間は待ってくれませんものね! 俺、出来る方法を考えます! アドバイスしてくださ‥いや、俺が間違ってたら「間違ってる」って教えてもらえませんか? 」

 出来ないことを認め、反省する。
 安易に、人に頼らない。
 だけど、分からないことは人に聞き、分からないまま自分の判断で推し進めてはいけない。

 ‥社会人として大切だよね‥。でも、あのね、仲間に協力をもとめろ、ってサラージも言ったでしょ? サラージも助ける気満々だよ? それは、俺たちも一緒だよ?? 寂しいじゃん‥頼って? ‥一緒に苦難を乗り越えなきゃ生まれる愛も生まれないし?

 つり橋効果だろうが、奇跡だろうが、手にすれば勝ち loveチャンス。

 ‥変な川柳(短歌だっけ?? )みたいになっちゃった‥。
「‥お前、人の話聞いてなかったのか? 」
 サラージは‥一瞬「は?? 」って顔をしてから、
 は~と大きく‥呆れたようなため息をついた。
「お前の足りないおつむじゃ考えられないなら、そこの「僕はブレーン」とか抜かしてる奴の頭を使えって言ってるんだ。
 お前に魔法の才能がないならラルシュ兄を頼ればいいし、詮索能力自慢のそこのストーカーも使いようによっちゃ使える。
 俺だって、戦力に位はなるだろう。
 自分で足りないなら、周りの力を借りろって言ったんだ。
 俺たちはお前の力になりたい。‥そういっただろうが。それとも、俺たちの使い方も俺たちが考えなければいけない程お前は俺たちのこと分かってないのか? 俺たちは頼りにならないって思ってるのか? 」
 ‥おお、怖いこと言った。
 俺たちの事知ってるなら、俺たちの使い方位分かるよな? 俺たちの事信用できないのか? と来たか‥。
 ここで、「大丈夫です自分でやります」って言い張ったら「俺たちのこと分かってないんだな‥」ってなる‥。
 どう出る? ヒジリ。
「‥ゴメン‥俺‥今まで頼ろうって思ったことないから‥うん‥
 正直、貴方たちの能力、そんなに分からない!! 」

「「「「え~!?? 」」」」
 のけ反るサラージ、ラルシュ、ナラフィス、と、俺。


 頼られる以前に、‥
 そんなに仲間認識されてなかった‥!?

 まっすぐ前を向く君の瞳には‥俺たちの誰も映ってなかった、って話。
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