リバーシ!

文月

文字の大きさ
235 / 248
二十章 新世界

3.魔法の発動には原動力が必要。さて、ヒジリの原動力とは? 

しおりを挟む
 ‥頭を整理しよう。

 ビジネスに「出来る」から「する」は良くない。
 そんなの分かってる。だけど、今はそんな「こころの問題」の話してる場合じゃなくない? 
 そもそもね、お見合いで結婚しても一緒に暮らしてたら情が移ってなんだかんだで好きになるもんだ‥って話よく聞くよ? それでよくない? 今は「ええい! 勢いだ! 」で結婚を決めてもその先のことは、そういうのじゃないじゃない? 俺、別に「この人と結婚してよかったのかな‥」とか後悔して過ごす気ないよ?! 「あの人と結婚してたら人生変わってた‥」とかそんな後ろ向きなこと考えないよ!? 
 諦めがいい、とかでもない。‥俺はね、そんなに物事を考えないんだ。
 行き当たりばったり。その時その時出来ることに最善をつくす。その方が人生ずっと有意義だって思う。

 だけどね。結婚は‥そういうものじゃない。今までよりずっと「こころ」が関与してくる。
 想像がつかないってのもある。
 今まで異性(今までは男だって思ってたから女の子? )付き合ったこともないし、好きな人も出来たことなかったから。それどころか多分、性欲すらなかったかも。
「彼女欲しい~! 」
 っていう同級生に同感できなかった。
 今思えば仮の身体だったからかも? って(すべてを知った今なら)思えるけど‥それでさえも想像だ。

 だけど、何とか出来るって思ってた。今までも何事も「何とか」なってたから。

 色々考えたら‥せっかく覚悟を決めたのに、また迷いそうになる。
 結婚は勢いって言うじゃない? 正気に戻ったら‥「でも、遊ぶ時間減るしなあ」「自分の時間が持てないとか‥なあ」とかデメリットバッカリ考えちゃう‥っていうじゃない? 
 俺の折角の決心に水を差さないで欲しい。

「僕はね。別にセクハラや興味本位でこんなことをヒジリに言ってるんじゃない。
 別に‥気持ちが伴わなくてラルシュに対して不誠実とか‥それもどうでもいい。
 ただね。
 ヒジリの場合‥言わないといけないことだから言ったんだ」
 ナラフィス先生が俺を真っすぐに見つめて言った。

 俺の場合? 

「今までヒジリの教師の真似事をしてきてさ、ヒジリが独特だってことが分かったんだ」
 ナラフィス先生の勿体ぶったような言い方が‥もどかしい。
「俺が‥独特? 」
 ナラフィス先生の言葉を反芻すると、
「うん。
 ヒジリは‥本心で思ったことしか出来ないよね? 」
 ナラフィス先生が頷いて言った。
 は?
 思わず首を傾げた。
 いや、さっきアンタ「ビジネスでするな」って言っただろ? 俺は、別に本心ではそう思ってなくても出来るぞ? 寧ろ本心が分からん位だぞ?
 首を傾げたまま「何言ってんのかわからん~」って顔してたら、
「元々はね。ヒジリは単純な人間だったんだよ。
 だから、スキルが使えてた。
 だけどね。色々考えるようになって‥ヒジリはスキルが使えないようになってきた」
 ??
 ホント、何言ってんのかわからん??
 俺は首を傾げ過ぎて首が痛くなってきた。
「魔法やスキルを使うには、魔力だけじゃなくて‥プラス「何か」‥原動力的なものがいる。
 普通であったら、それは誰か個人への愛であったり、博愛心だったり、僕だったら探求心だったり‥ラルシュだったら「国の為」とかかな。それが‥
 ヒジリの場合もある。勿論のことながら」
 う~ん? あるのかな? 
 あるんだろうけど‥
 ‥なんだろ??
「僕はそれが分からなかった。だけど、ずっとヒジリのこと見て来て‥分かったんだ。
 ヒジリの原動力は‥」
 そこで‥
 言葉を区切るな。タメるな。‥勿体ぶるな‥っ!
「ええカッコしたい、だ」
 ええ!? なんだって!? ええカッコしたいって!? 何言っちゃってんの??
「例えば昔全盛期だった時。
 ヒジリは幼馴染のナツミにええカッコしたかった。
 そして、ええカッコするためにヒジリは数々のスキルを開発した。ナツミに「凄い! 」って言われて有頂天になって、またええカッコするためにヒジリは新しいスキルを開発したり、ナツミの魔法もどきの練習に付き合った。
 ‥ナツミはなかなか頭がいい子だな。ヒジリの使い方をよくわかってる。
 まあ‥それはそうと
 本来のヒジリはおだてに弱かった。そして‥ヒジリの原動力はズバリ、「ええカッコしたい」って思う気持ち。
 原動力が「ええカッコしたい」って子供かよ。男の子かよ」
 呆れ顔のナラフィス先生に俺はちょっとイラっと来たのもあった。
「自己顕示欲ってことじゃないの? もしくは承認欲求。自分の存在を認めて欲しいとか、自分を知って欲しいとか‥別にそれは珍しいことじゃないじゃない? 」
 俺も負けずに呆れ顔で言うと、ナラフィス先生は首を振る。
「いいや? ヒジリの場合は自分の存在をアピールしたいとか認めて欲しいとかじゃなくて、‥そのものズバリかっこつけたい。
 アレだな。好きなあの子にカッコイイトコ見せたい。
 だけど、ヒジリは‥昔もそういうところがあったのかは分からないけど‥今のヒジリは誰か一人に対してではなく皆に対してカッコイイトコ見せたいタイプって感じ。誰かの為の犠牲も全部「カッコよければそれで満足」って感じ」
 ええ~?? 
 俺そんな安っちい人間に見られてる?? 不本意~。
「まあ、それで。ヒジリのスキルを復活させる秘訣はズバリ。
 ヒジリの「自分なんてどうせカッコよくない」っていう低くなった自己評価を捨てさせ、本来の「自分カッコイイ! このカッコイイ私を見て! 」なヒジリにもどすことだ」
 ‥ええ~。 
 ドン引きする俺に、
「さあ。ヒジリ。イメージトレーニングだ。
 言ってみろ「私って世界一の美女だし~この美しさで世界は私に屈服するわ~」
 はい、三四! 」
 言ったのは、ミチル。
 一見真剣で親切そうな表情だけど、それ、絶対面白がってるよな!? 
「ヒジリ。言ってみて? 」
 ‥ラルシュ様‥。
「何事も試してみたらいいと思うぞ? 」
 ‥サラージ様も何気に真面目だよね? 
 だけど、ミチルの方法なんか、試す価値もないと思いますよ!?
 盛大にため息をつく俺だった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...