240 / 248
二十章 新世界
8.ヒジリ様は分かってない。
しおりを挟む
(side ヒジリ)
「どうすればいいかな~。う~ん。私も分からないから、とりとめもない話でもしましょうか」
マリアンちゃんが笑う。
そして、椅子を俺の横に持って来て、
「愛とは何かなんて、そんな大それたこと考えちゃダメですよ。
そんなの誰もわかりませんよ。
偶然その人の気持ちが自分にも理解できたってだけのことで、それを自分がするかどうかは別問題です。
「許してもらえないじゃあ駆け落ちしようって気持ち理解できる~。分かる~」って思っても、実際にするかと言われると、「いや、明日からのご飯どうするんだ」って考える。
理解できると、その人がそれを実行するかは別なんです。
ヒジリ様は、「それが合理的か」ってことをまず考えて「え? 合理的じゃないよね? なら、やんない方がいいんじゃない」って思い、「やんない方がいいことをやる人の気持ち分からない」ってなった。
そういうだけの話であって、それはヒジリ様が「大勢の人の気持ち分からないマイノリティ」である証明ではないです」
俺の背中をさすりながら言った。
俺がマリアンちゃんを見ると、ニコッと笑って
「大丈夫ですよ」
って言った。
何が? 。って思ったけど、不思議と「無責任なこと言わないでくれ」とは思わなかった。
‥安心まではしなかったが。
きっと、マリアンちゃんは俺のこと心配して、何とかして安心して欲しいって思ってるんだと思う。その結果の「大丈夫」って言葉なんだと思う。‥その気持ちだけで胸いっぱいになる。
「ヒジリ様が不安なのは、この先何かが起きることは分かるけれど、何が起きるか分からないことに対する不安ですか?
何が起きるか分からないことが不安‥そう思っている?
それとも‥
現状把握が十分でないことに対する不満がある‥ですかね? 」
言葉を選びながら、「一緒に考えながら」マリアンちゃんが俺に尋ねる。
なら、俺がすべきことは「今はそんな話してねえよ」って突っぱねるんじゃなくて、一緒に考えることだと思う。
俺は考えてることと違うな、関係ないなって思っても、「そうかもしれない」から、一緒に考える。
「‥両方かなあ。
あと、俺に「この世界」が求めてること、国民が求めてることは何か‥も分からなくって不安」
俺が言うと、マリアンちゃんが「なるほどねえ」って呟く。
「マイノリティな自分がどんなに悩んでもマジョリティ(国民、この世界)の求めてるものは分からないんじゃないか‥って思ったってことですか」
あ、それかも。
俺は頷く。
「‥ちょっと脱線しましょうか。
さっきヒジリ様がおっしゃった「きっかけは些細な出来事」些細だけど、「普通じゃない出来事」によって「常軌を逸した奇想天外な出来事」になったって話です。
そこでヒジリ様が例に挙げられたのが、結婚と出産。
確かに普通なら、結婚も出産も「普通の出来事」ですよね。
普通じゃない結婚や出産は何か‥さっき言った駆け落ちカップルもそう‥。
駆け落ちするカップルについて、その気持ちはわかるって人は多分マイノリティじゃないでしょう。だけど、自分がするかと言われるとそれはNOだろう。だから、する人がマイノリティってことになる」
俺は頷く。確かに、そう。
「例えば友達に「駆け落ちしようと思うんだ」って相談されて「‥その気持ちはわかる~」って理解は示しても、「じゃあ協力して」と言われたら「それは、無理かな~」って言うんなら、理解を示されない方がマシって思いません? 寧ろ「それは良くないことだから止めておいた方がいいよ。アンタの気持ちはわからんよ」っていう友だちの方がいい‥と少なくとも私は思います。
‥何がいいかなんて一概にいえないんじゃないですか? 」
でも‥良いか悪いかじゃなくて、その人の気持ちに寄り添えるか寄り添えないか‥って言われると、理解を示して‥味方になってくれる人の方がいいんじゃないか? 悪いってことはその子だって分かって‥分かってるけど悩んでるわけだし‥。分かってるからもう言わんといて。ちょっとは慰めてよ、友だちでしょ? って思うから‥期待するから相談するって意味もあるんじゃないかな~。友達に同調してもらっても、結局決定‥決行するかしないかは本人なわけじゃん?
でも‥
もしかして、心の奥底で「誰か止めて‥」って思ってるかもしれない。誰かの「止めた方がいい」の声を待ってるのかも‥? そんな時に「応援する」とか言われたら「無責任だな(# ゚Д゚)」って思う‥のかも?
複雑‥やっぱり人間関係って難しいよね。
俺が何も言えず眉を寄せていると、マリアンちゃんは小さく頷いて(まるで「言いたいことは分かります」て言ってるかのようだった)
「一般的には良くないことだって事は分かってるけど‥マジョリティな意見だから、貴女も当たり前に同意してくれるよね? ってその人はそう思っているのかもしれない。嫌な言い方すれば‥「あの時あの人が背中を押してくれたから私は決断したんだ」「私は悩んでたんだけどね‥」って後々‥人のせいにするかもしれない。‥人は弱いからね。「頼りたい」って気持ちと同様に、「誰かのせいにしたい」って思ってる。
これは特異なケースじゃなくて、案外こういうケースって結構あると思いますよ? 」
じっと俺の目を見て、小さく首を傾げる。
はっとした。
確かにそういうこともある。いや、あるっていうか‥ありそう。でもさ~。相談された者からしたら‥たまったもんじゃないな。相談に乗って、その分の時間を割かれて、「寄り添って」、挙句の果てに人のせいにされて責任転嫁!? ‥損しかしてないじゃん‥。
人は弱い。そして‥ズルい。
俺の複雑な表情をするのを見て、マリアンちゃんがふふって笑って「ヒジリ様は考えてることが全部顔に出ますねえ。可愛いです」って言った。
可愛いって何じゃ。子供って言いたいんだろ。どうせ‥。
「‥‥」
俺が(むすっとした顔して)黙っていると、マリアンちゃんが優しい顔で言った。
「何が言いたいのかと言いますとね。
相談する方は案外強かで、「最後の逃げ道」まで用意してるって話です。
でもそれが、自分のこころに折り合いをつけるためだけの言い訳だって事も‥その人は気付いてるんです。
一種の自己防衛ですね。‥もしかしたら、無意識でそうしてるかもしれないですね
でも、それって‥なんか憎めないですよね。本気で「あの子のせい」って思ってないでしょうしね」
‥思ってたらホントクズだよ。ガチ自己ちゅー。そんな奴と友達やだな~。
「‥‥‥」
俺はマリアンちゃんの顔を見た。(やっぱり、むすっとした顔で)
マリアンちゃんは、優しくって、慈愛に満ちた顔で俺に微笑みかけた。
人の弱さを認めて、全部まとめて許してくれそうな‥そんな優しい顔。
「人だから、それでいいんだと思いますよ。
だから、相談された人も、‥その人が思ったように答えたらいいと思います。
さっきも言ったけど‥決断するのはその人であって、相談された側は責任を感じる必要もないんです」
つまり何が言いたいかって?
どうすることがマジョリティなのかって考える必要はない。空気なんて読まなくていい。
マジョリティを意識して、自分の「正しいと思うこと」を曲げる必要はない。
いい人だけ馬鹿を見る世界なんてくそくらえだ。
他人の目を気にして「自分の正しいと思うこと」を見失ってはいけない‥。
人の人生まで責任持つ必要はない。
ってこと。
怒ってるわけでも、説教しているわけでもない。だけど、その口調は‥少し冷たく聞こえた。
まるで‥
甘いこと言っててはダメ。
って言われているようだった。
俺がごくりとつばを飲み込むと、ふふってマリアンちゃんが微笑んで
「‥少なくとも、上の立場の人間というのは民意にだけ振り回されて「人気取り的な」判断してちゃいけない‥と私は思いますよ。
‥すみません。生意気なこと言っちゃって」
って言って小さく肩を竦めた。
俺は首を振って、それから小さく頷く。
そっか‥俺は自分がマイノリティだってことに悩んでいるんじゃなくて、他人の目にどう映るかだけを意識してたのか‥。自分はマイノリティだから、人に意見すべきではないし、‥人の気持ちなんて分からないって端っから諦めていた。
‥人気取り的な判断。
民意が求めている行動‥だけど、人の意見ばかり気にして「人気取り的な」行動になってはいけない。
きっと、どんな行動をとっても反発はある。
その時「俺は自信を持ってこの行動をとった」と胸を張って言える行動を取るべきだ。
俺は‥
マリアンちゃんは首を振る。
「きっと、今ヒジリ様が考えてらっしゃることは私が言いいたいこととは違います。
ヒジリ様はきっと半分しか私の言いたいことを分かっていないと思います」
‥半分?
「‥だけど確信が持てないので‥先にこの話をしましょうか」
「え? 」
俺が首を傾げる。
俺は‥マリアンちゃんの話を半分しか理解していないとマリアンちゃんは「現地点で」思った。だけど、それは現地点では「確信が持てない」ので‥
確かめるために別の話をするってこと?
俺はまた眉を寄せて‥首を傾げた。マリアンちゃんが頷く。‥そういうことで間違いないようだ。
「今回の出来事のベースとなる、些細な出来事は何か。まず、それを考えましょうか」
些細な出来事の話? 随分最初に話した話だね。
きっかけは「よくある」些細な出来事なんだけど、ちょっと「普通じゃない」点があったために、その結果「常軌を逸した奇想天外な出来事」に発展するって話。
俺は頷いて
「今回の場合の「些細な出来事」は俺が思うに‥意見の相違ってことだと思う。黒派の意見と白派の意見の相違。意見が違う人たちがいる。それ自体はよくあることだ。だけど、その規模が戦争レベルに大きいってのが、「普通じゃない」ってことだと思う」
俺が言うと、
「私もそこは間違ってないと思います」
ってマリアンちゃんが頷いた。
「だけどきっとその先の展開を‥ヒジリ様は間違って想像している‥様に私には見えるんです」
え?
俺が首を傾げると、マリアンちゃんは真っすぐ俺を見て、
「ヒジリ様は、
上の立場の人間として、自分たちが犠牲になって、この事態を終結させるのが、自分の使命だって思ってるんじゃないですか? そして、それが民意だと。
人がそれを求めているから‥マジョリティの民意だから行動するんじゃなくって、自分で考えて自分の意思で自信を持って‥自分が犠牲になる‥
人気取り的な考えではなく、「自分で考えて」、そうする。‥その決断を人のせいにしない。
私の話を聞いて‥そんな変な風に決意した‥とかだったら、
私、切れちゃいますよ? 」
って言ったんだ。
怖い程真剣な目で俺を見ながら。
「どうすればいいかな~。う~ん。私も分からないから、とりとめもない話でもしましょうか」
マリアンちゃんが笑う。
そして、椅子を俺の横に持って来て、
「愛とは何かなんて、そんな大それたこと考えちゃダメですよ。
そんなの誰もわかりませんよ。
偶然その人の気持ちが自分にも理解できたってだけのことで、それを自分がするかどうかは別問題です。
「許してもらえないじゃあ駆け落ちしようって気持ち理解できる~。分かる~」って思っても、実際にするかと言われると、「いや、明日からのご飯どうするんだ」って考える。
理解できると、その人がそれを実行するかは別なんです。
ヒジリ様は、「それが合理的か」ってことをまず考えて「え? 合理的じゃないよね? なら、やんない方がいいんじゃない」って思い、「やんない方がいいことをやる人の気持ち分からない」ってなった。
そういうだけの話であって、それはヒジリ様が「大勢の人の気持ち分からないマイノリティ」である証明ではないです」
俺の背中をさすりながら言った。
俺がマリアンちゃんを見ると、ニコッと笑って
「大丈夫ですよ」
って言った。
何が? 。って思ったけど、不思議と「無責任なこと言わないでくれ」とは思わなかった。
‥安心まではしなかったが。
きっと、マリアンちゃんは俺のこと心配して、何とかして安心して欲しいって思ってるんだと思う。その結果の「大丈夫」って言葉なんだと思う。‥その気持ちだけで胸いっぱいになる。
「ヒジリ様が不安なのは、この先何かが起きることは分かるけれど、何が起きるか分からないことに対する不安ですか?
何が起きるか分からないことが不安‥そう思っている?
それとも‥
現状把握が十分でないことに対する不満がある‥ですかね? 」
言葉を選びながら、「一緒に考えながら」マリアンちゃんが俺に尋ねる。
なら、俺がすべきことは「今はそんな話してねえよ」って突っぱねるんじゃなくて、一緒に考えることだと思う。
俺は考えてることと違うな、関係ないなって思っても、「そうかもしれない」から、一緒に考える。
「‥両方かなあ。
あと、俺に「この世界」が求めてること、国民が求めてることは何か‥も分からなくって不安」
俺が言うと、マリアンちゃんが「なるほどねえ」って呟く。
「マイノリティな自分がどんなに悩んでもマジョリティ(国民、この世界)の求めてるものは分からないんじゃないか‥って思ったってことですか」
あ、それかも。
俺は頷く。
「‥ちょっと脱線しましょうか。
さっきヒジリ様がおっしゃった「きっかけは些細な出来事」些細だけど、「普通じゃない出来事」によって「常軌を逸した奇想天外な出来事」になったって話です。
そこでヒジリ様が例に挙げられたのが、結婚と出産。
確かに普通なら、結婚も出産も「普通の出来事」ですよね。
普通じゃない結婚や出産は何か‥さっき言った駆け落ちカップルもそう‥。
駆け落ちするカップルについて、その気持ちはわかるって人は多分マイノリティじゃないでしょう。だけど、自分がするかと言われるとそれはNOだろう。だから、する人がマイノリティってことになる」
俺は頷く。確かに、そう。
「例えば友達に「駆け落ちしようと思うんだ」って相談されて「‥その気持ちはわかる~」って理解は示しても、「じゃあ協力して」と言われたら「それは、無理かな~」って言うんなら、理解を示されない方がマシって思いません? 寧ろ「それは良くないことだから止めておいた方がいいよ。アンタの気持ちはわからんよ」っていう友だちの方がいい‥と少なくとも私は思います。
‥何がいいかなんて一概にいえないんじゃないですか? 」
でも‥良いか悪いかじゃなくて、その人の気持ちに寄り添えるか寄り添えないか‥って言われると、理解を示して‥味方になってくれる人の方がいいんじゃないか? 悪いってことはその子だって分かって‥分かってるけど悩んでるわけだし‥。分かってるからもう言わんといて。ちょっとは慰めてよ、友だちでしょ? って思うから‥期待するから相談するって意味もあるんじゃないかな~。友達に同調してもらっても、結局決定‥決行するかしないかは本人なわけじゃん?
でも‥
もしかして、心の奥底で「誰か止めて‥」って思ってるかもしれない。誰かの「止めた方がいい」の声を待ってるのかも‥? そんな時に「応援する」とか言われたら「無責任だな(# ゚Д゚)」って思う‥のかも?
複雑‥やっぱり人間関係って難しいよね。
俺が何も言えず眉を寄せていると、マリアンちゃんは小さく頷いて(まるで「言いたいことは分かります」て言ってるかのようだった)
「一般的には良くないことだって事は分かってるけど‥マジョリティな意見だから、貴女も当たり前に同意してくれるよね? ってその人はそう思っているのかもしれない。嫌な言い方すれば‥「あの時あの人が背中を押してくれたから私は決断したんだ」「私は悩んでたんだけどね‥」って後々‥人のせいにするかもしれない。‥人は弱いからね。「頼りたい」って気持ちと同様に、「誰かのせいにしたい」って思ってる。
これは特異なケースじゃなくて、案外こういうケースって結構あると思いますよ? 」
じっと俺の目を見て、小さく首を傾げる。
はっとした。
確かにそういうこともある。いや、あるっていうか‥ありそう。でもさ~。相談された者からしたら‥たまったもんじゃないな。相談に乗って、その分の時間を割かれて、「寄り添って」、挙句の果てに人のせいにされて責任転嫁!? ‥損しかしてないじゃん‥。
人は弱い。そして‥ズルい。
俺の複雑な表情をするのを見て、マリアンちゃんがふふって笑って「ヒジリ様は考えてることが全部顔に出ますねえ。可愛いです」って言った。
可愛いって何じゃ。子供って言いたいんだろ。どうせ‥。
「‥‥」
俺が(むすっとした顔して)黙っていると、マリアンちゃんが優しい顔で言った。
「何が言いたいのかと言いますとね。
相談する方は案外強かで、「最後の逃げ道」まで用意してるって話です。
でもそれが、自分のこころに折り合いをつけるためだけの言い訳だって事も‥その人は気付いてるんです。
一種の自己防衛ですね。‥もしかしたら、無意識でそうしてるかもしれないですね
でも、それって‥なんか憎めないですよね。本気で「あの子のせい」って思ってないでしょうしね」
‥思ってたらホントクズだよ。ガチ自己ちゅー。そんな奴と友達やだな~。
「‥‥‥」
俺はマリアンちゃんの顔を見た。(やっぱり、むすっとした顔で)
マリアンちゃんは、優しくって、慈愛に満ちた顔で俺に微笑みかけた。
人の弱さを認めて、全部まとめて許してくれそうな‥そんな優しい顔。
「人だから、それでいいんだと思いますよ。
だから、相談された人も、‥その人が思ったように答えたらいいと思います。
さっきも言ったけど‥決断するのはその人であって、相談された側は責任を感じる必要もないんです」
つまり何が言いたいかって?
どうすることがマジョリティなのかって考える必要はない。空気なんて読まなくていい。
マジョリティを意識して、自分の「正しいと思うこと」を曲げる必要はない。
いい人だけ馬鹿を見る世界なんてくそくらえだ。
他人の目を気にして「自分の正しいと思うこと」を見失ってはいけない‥。
人の人生まで責任持つ必要はない。
ってこと。
怒ってるわけでも、説教しているわけでもない。だけど、その口調は‥少し冷たく聞こえた。
まるで‥
甘いこと言っててはダメ。
って言われているようだった。
俺がごくりとつばを飲み込むと、ふふってマリアンちゃんが微笑んで
「‥少なくとも、上の立場の人間というのは民意にだけ振り回されて「人気取り的な」判断してちゃいけない‥と私は思いますよ。
‥すみません。生意気なこと言っちゃって」
って言って小さく肩を竦めた。
俺は首を振って、それから小さく頷く。
そっか‥俺は自分がマイノリティだってことに悩んでいるんじゃなくて、他人の目にどう映るかだけを意識してたのか‥。自分はマイノリティだから、人に意見すべきではないし、‥人の気持ちなんて分からないって端っから諦めていた。
‥人気取り的な判断。
民意が求めている行動‥だけど、人の意見ばかり気にして「人気取り的な」行動になってはいけない。
きっと、どんな行動をとっても反発はある。
その時「俺は自信を持ってこの行動をとった」と胸を張って言える行動を取るべきだ。
俺は‥
マリアンちゃんは首を振る。
「きっと、今ヒジリ様が考えてらっしゃることは私が言いいたいこととは違います。
ヒジリ様はきっと半分しか私の言いたいことを分かっていないと思います」
‥半分?
「‥だけど確信が持てないので‥先にこの話をしましょうか」
「え? 」
俺が首を傾げる。
俺は‥マリアンちゃんの話を半分しか理解していないとマリアンちゃんは「現地点で」思った。だけど、それは現地点では「確信が持てない」ので‥
確かめるために別の話をするってこと?
俺はまた眉を寄せて‥首を傾げた。マリアンちゃんが頷く。‥そういうことで間違いないようだ。
「今回の出来事のベースとなる、些細な出来事は何か。まず、それを考えましょうか」
些細な出来事の話? 随分最初に話した話だね。
きっかけは「よくある」些細な出来事なんだけど、ちょっと「普通じゃない」点があったために、その結果「常軌を逸した奇想天外な出来事」に発展するって話。
俺は頷いて
「今回の場合の「些細な出来事」は俺が思うに‥意見の相違ってことだと思う。黒派の意見と白派の意見の相違。意見が違う人たちがいる。それ自体はよくあることだ。だけど、その規模が戦争レベルに大きいってのが、「普通じゃない」ってことだと思う」
俺が言うと、
「私もそこは間違ってないと思います」
ってマリアンちゃんが頷いた。
「だけどきっとその先の展開を‥ヒジリ様は間違って想像している‥様に私には見えるんです」
え?
俺が首を傾げると、マリアンちゃんは真っすぐ俺を見て、
「ヒジリ様は、
上の立場の人間として、自分たちが犠牲になって、この事態を終結させるのが、自分の使命だって思ってるんじゃないですか? そして、それが民意だと。
人がそれを求めているから‥マジョリティの民意だから行動するんじゃなくって、自分で考えて自分の意思で自信を持って‥自分が犠牲になる‥
人気取り的な考えではなく、「自分で考えて」、そうする。‥その決断を人のせいにしない。
私の話を聞いて‥そんな変な風に決意した‥とかだったら、
私、切れちゃいますよ? 」
って言ったんだ。
怖い程真剣な目で俺を見ながら。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる