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二十章 新世界
9.誰かの犠牲の上にある平和とか‥ホントの平和じゃない。
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(side ヒジリ)
「自分たちだけが、この事態の当事者だって思ってませんか?
民意は、ヒジリ様が犠牲になることを望んでいる‥そう思ってませんか? 」
真剣な顔でマリアンちゃんが俺を見ている。
怒ってる。
「ヒジリ様は私たちを何だって思ってるんですか。
人でなしですか?
考えなしですか?
ヒジリ様に丸投げして、ヒジリ様を当たり前に人柱にする‥そんな酷い奴らだって思ってますか? 」
え‥いや‥でも‥それが普通‥
それが‥俺の使命だと思ってるけど‥。
「またそれが普通だから仕方がないとか思ってる! 何なんですか! ヒジリ様の中の私たちはどんだけヤバい人たちなんですか! 」
「いや、マリアンちゃん‥とかじゃなくって、一般的に‥」
「ヒジリ様みたいなマイノリティが普通を語らないでください! 」
がーんっっ
そんな言い方‥しなくてもいいじゃないかぁ‥(涙)
「それにですねえ。
あまりにも怠慢ですよ。
犠牲になって‥巻き込んで自爆して‥。
って‥悲劇のヒロインヤメテください。
敵って‥相手のこといってますけどねぇ? 乙女ゲームにはライバルキャラだけど実は隠れ攻略者だった‥とか結構定番なんですよ!? 」
「え? 乙女ゲーム‥? 何? 」
え?? 何急に。ゲームの話? 乙女ゲームって何??
俺が首を傾げると、ふふんとマリアンちゃんがドヤ顔で、
「ヒジリ様は何も知らないんですね! 」
って言った。
‥え?? 俺が責められる感じ???
乙女ゲームって常識なの??
ポカンとしていたら、後ろからぶあははははは‥という派手な笑い声が聞こえた。
「マリアンにはかなわないなぁ」
‥ナラフィス先生の大爆笑初めて見た。
いつもはシニカルなふって感じの笑顔なのにさ~。
ナラフィス先生‥そんな優しい顔するんですね。マリアンちゃんの前では。
ってか、なんでこんなところに?
って‥ああ帰ってきただけですよね。ここ、貴方のお家でしたね。忘れてました。
あんまりにもマリアンちゃんの色に染まってるから、マリアンちゃんの家だと思ってました。
結構本気で。
「ただいま」
驚いて無言になっちゃってる俺の前で、二人は(俺なんていないかのように)「ただいまのチュー」なんてしてる。マリアンちゃんが
「タツキ様♡ お帰りなさい♡ 今日はとても早かったですね」
ってナラフィス先生を見上げて、「好き好き大好き! 」って顔をしている。
‥この二人ってこんなにラブラブだっけ? ‥でもまあ、今更だけど、この二人新婚さんだったよな。そんなお家‥新婚さん宅‥にご主人が留守の時間帯に男が訪問するとか‥悪いことしたなあ。
‥って、俺女だった。
それに‥まあ、心は男と言いながらも、男女どちらに対しても恋愛感情なんて起こらないしねえ‥。
まあ‥許してもらいましょう。
ってか‥またチューしてるよ。
大丈夫? 俺がいること忘れてない?
「今日は、ヒジリが恋愛相談に来るって聞いてたから、そんな面白いこと見に行かない理由はないでしょうって思ってね? 」
相変わらず俺をチラリとも見ずに、ナラフィス先生がハンガーにジャケットを掛けながらマリアンちゃんに話し掛けた。マリアンちゃんが嬉しそうに頷く。
‥見せ物か俺は。
しかし‥よくもまあ‥俺の存在無視しまくってくれるよなあ‥。
見えてないのか? ってレベルだぞ‥。普通「あ、ヒジリいらっしゃい」とか、言わん? で俺が「お邪魔してます。帰ります」とか言って「イイのいいの。ゆっくりしてってて」とか‥そういうのないんかな??
って思ってたら
「ああ。ヒジリ。いらっしゃい」
って、営業用スマイルされた。‥今更~!?
‥もしかして、今気づいた感じですか‥。(※ ヒジリの顔がそう言って欲しそうだったから、「一応言っておくか‥」って感じで言っただけ。別に気付いてたさ‥初めから。でも、毎日会ってるんだし、今更「ヒジリ来てたの」とか‥ないでしょ‥ とナラフィスは思った)
しかし、さっきのマリアンちゃんに対する笑顔見ちゃったら、見慣れた「いつもの優しい笑顔」が「作りもの」だったって気付いちゃったなあ‥。
そうか‥随分親しくなったと思ったけど‥そう思ってたのは俺だけだったんかあ‥。
俺の扱いって‥悪くはないとは思ってたけど、‥別によくもなかったんですね。
あれですね、その他大勢よりはちょっとマシレベルだっただけだったんですね。
‥まあいいですけど‥
その後、マリアンちゃんがパンを焼いて、俺が来る前に仕込んでおいたらしい肉と野菜のスープを温め直して俺にも出してくれた。家庭菜園で育てた野菜サラダ付きだ。
木の器がお洒落。なんか、しゃれたカフェみたい。
そして、シンプル。
そうだよね。日本の食卓って何か凝り過ぎてるよね。日本のお母さん、多くを求められ過ぎてるよ。メイン・バン!、野菜・バン!パン(ご飯! )ドーン!、でいいよね。俺はそう思うぞ。
スープをすくって口に運ぶ。
ほぅ‥
「美味し‥。マリアンちゃんお嫁に来て欲しい‥」
しみじみ呟いたら、
「マリアンは僕の奥さんだ」
ナラフィス先生の「コイツアホだな」の表情。余裕だな。そこは、「やらんぞ」って敵意丸出しにするとこでしょうが。俺、こう見えて結構男前よ? ‥はい、すみませんでした。ラルシュ様やサラージ様見慣れてる人にとっては俺なんかそこら辺の「へのへのもへじ」と変わらないですよね。
「そうそう‥さっきの話の続きね」
ナラフィス先生がマリアンちゃんを振り返る。
因みに今ナラフィス先生が座ってんのは、マリアンちゃんの横だ。椅子は、予備の椅子を急遽持ってきたみたい。因みに俺が今座ってる椅子は普段はナラフィス先生の席らしい。
全然「旦那様の椅子には他の男は座らせません! 」じゃないのね。けけ! ‥考え過ぎか。
こっちが上座だから、俺に上座を譲った位の感じなんだろう。
それはそうと‥
近いぞ、ナラフィス先生。
マリアンちゃん困ってんじゃん。‥いや、全然困っちゃいなかった。ラブラブしてた。
け!
「そうだね。
隠れキャラかもしれないネルやカタルのことを知らないといけないねぇ。
そうしないと、ヒロイン・ヒジリの乙女ゲームは完成しないねえ」
なんじゃその、ニヤニヤ全開「めちゃおもろい」って顔。喋り方変わっちゃってんじゃん!
目の前でイチャイチャやめてもらおう!!
‥ってか、「ヒロイン・ヒジリの乙女ゲーム」って何!? アンタも乙女ゲームの話すんの?? 知らないの俺だけ?? まさか、ラルシュ様とかも知ってる?? ‥いや、それはない気がする。この夫婦の間で流行ってるなんかだろう。共通の趣味、仲良しですね!
「よし、
今度二人に会いに行こう。
ええと‥僕が行ったら相手も警戒しちゃうだろうから‥ヒジリと‥あと、カタルへの手土産にミチルで行って来たらいいよ! 大丈夫、ちゃんと護衛もつけて、事前に、「もし二人に変なことしたら、ただじゃ置かない」って釘もさしとくから! 」
目の前に居る俺を無視して、俺のスケジュール勝手に組むのやめてもらえませんかね!?
「ってことで、よろしくね。ヒジリ」
‥俺に発言権及び拒否権はないんだろうなあ‥。
俺はふう‥とため息をついて、
「会ってくれますかね」
ってナラフィス先生に聞く。
ナラフィス先生は首をコテンと傾げて
「会ってもらうよ。ってか、会うだろうよ。
あっちだって、別に戦争が目的じゃない。
でも、ラルシュやなんかが出て行ったら大事にせざるを得なくなるから、ミチル位がちょうどいいんだ。カタルは特にミチルが大好きだしね。
でも、ミチル一人だったら絶対行かないでしょ? (ミチルが)」
なんと! まさかのオマケは俺!?
「ミチル一人は‥行かないでしょう‥ねえ」
カタルに誘拐されかけたしね。
俺もミチル一人では行かせられないなあ。
まあ‥俺じゃミチルのボディーガードとしては不十分だけどね? ‥弱々だから。
「そこは、護衛騎士さんにお任せして」
って言ったのは、イイ笑顔のマリアンちゃん。
く~また顔に出てた!?
「俺要らないんじゃ!? 護衛騎士さんとミチルでいいんじゃ!? 」
「いや、表向きは「和平の話合いに行く」だから。ヒジリがいかないと意味ないじゃない。だけど、ヒジリじゃ全然役に立たないしね。それこそ、ガキの使いになっちゃうよ。行っただけ、じゃ行く意味無いでしょ。
相手と交渉するにはミチルがいる」
‥散々な言われよう‥。
俺‥そんなダメですかね。そうですよね。‥ダメですよね。
「表向きは‥ヒジリ位の雑魚キャラだと、相手も警戒しないでいいからね。‥そういう、丁度いいポジションなんだよヒジリは」
「‥‥‥」
‥盛大にディスられた‥。
しかし‥
選択肢(若手のみ。ここで国の役職持ちが行くと余計にややこしくなるから、問題外)
ラルシュ → 優秀、きっと一番交渉が上手。だけど、王子だから相手が警戒する。
サラージ → 効率厨で交渉に向いているとはいい難い。そして、こいつも王子。
ナラフィス → 交渉には自信がある。だけど、国の有名人物で相手の警戒度は王子に次ぐ。
ヒジリ → お飾り的存在。だけど、ラルシュの婚約者。人質としては欲しい人材。
ミチル → 国のポジションとしてはそう高くない。交渉に向いてそう。カタルのお気に入り。人質に向いてる人材。
‥思えば、持ち駒少ない。
その中で、俺、ダントツのポンコツ‥。
「相手に威圧感を与えない。ヒジリ様のキャラはとてもいいと思いますよ? 」
‥マリアンちゃんなんじゃそのフォロー。
「いや~。出来るもんなら、僕も行きたいよ。ホント。カタルがどんなこと考えてるか、知りたいじゃない。
しかも、僕ね、ネルとはまだ会ったことないんだ。ホントはすっごい興味あるんだけどねえ‥」
あ~あ。また研究モード入ってるよ。こうなると、もう手が付けられないんだよねえ。
目が‥もう、ランランだ。きっと、このまま徹夜コースなんだろうなあ。俺には出来ないけど、ナラフィス様クラスだったら、身体を休めながら頭だけフル回転で同じ場所で朝までコース可能らしいじゃない? (ただし、単純作業しかできない)俺には出来ないってか、したいとも思わないよ。
因みに‥
リバーシのレベル。
初級編 本体:ベッドで寝る 精神:気分転換に適当なスポットに飛ばされる。ただし、その間、「寝る」前に考えていたことを継続して考えることはできない。
中級編 本体:ベッドで寝る 精神:気分転換に自分の決めたスポットに行く。その間も、「寝る」前に考えていたことを継続して考えることはできる。 (ヒジリとミチルもこれ)
上級編 本体:椅子に座ったり、体勢は自由。ただし、他人に「抜け殻の身体」を動かされると、精神は二度と肉体に戻れなくなる。
精神:その場で作業を続けることが可能。ただし、手位しか自由に動かすことはできない。「常に書類仕事」「常に本を読み続ける」位の作業しかできない。
しかし、本体の疲労回復は100%ではないため、この徹夜コースは連続ですることは不可能。
伸びをしたりすることもないらしい。
瞬きもせず、ずっと書類を書き続ける、変なロボット。しかも、この場合も触ったらめちゃ身体冷たいらしい。
中級→上級は訓練で進化が可能だけど、初級→中級は努力で何とかなるもんじゃない。中級になれる人ってのは、生れた時から決まってるらしい。その他は皆初級止まり。初級クラスの人が一番多い。
‥余談だった。
マリアンちゃんも大変だ。
この、好奇心旺盛研究馬鹿と一生添い遂げるとか、‥ちょっとした試練だよねえ。
「‥何を考えてるか分かってるぞ、ヒジリ‥」
ほわっつ! この夫婦。妖怪サトリみたいだな! 俺の気持ち読みすぎでしょ! (← ヒジリが「考えてること
全部表情に出過ぎちゃってるタイプ」なだけ)
苦笑いして‥だけど、ほんわり気持ちが温かくなった。
‥やっぱり、マリアンちゃんに相談してよかったなあ‥。
「自分たちだけが、この事態の当事者だって思ってませんか?
民意は、ヒジリ様が犠牲になることを望んでいる‥そう思ってませんか? 」
真剣な顔でマリアンちゃんが俺を見ている。
怒ってる。
「ヒジリ様は私たちを何だって思ってるんですか。
人でなしですか?
考えなしですか?
ヒジリ様に丸投げして、ヒジリ様を当たり前に人柱にする‥そんな酷い奴らだって思ってますか? 」
え‥いや‥でも‥それが普通‥
それが‥俺の使命だと思ってるけど‥。
「またそれが普通だから仕方がないとか思ってる! 何なんですか! ヒジリ様の中の私たちはどんだけヤバい人たちなんですか! 」
「いや、マリアンちゃん‥とかじゃなくって、一般的に‥」
「ヒジリ様みたいなマイノリティが普通を語らないでください! 」
がーんっっ
そんな言い方‥しなくてもいいじゃないかぁ‥(涙)
「それにですねえ。
あまりにも怠慢ですよ。
犠牲になって‥巻き込んで自爆して‥。
って‥悲劇のヒロインヤメテください。
敵って‥相手のこといってますけどねぇ? 乙女ゲームにはライバルキャラだけど実は隠れ攻略者だった‥とか結構定番なんですよ!? 」
「え? 乙女ゲーム‥? 何? 」
え?? 何急に。ゲームの話? 乙女ゲームって何??
俺が首を傾げると、ふふんとマリアンちゃんがドヤ顔で、
「ヒジリ様は何も知らないんですね! 」
って言った。
‥え?? 俺が責められる感じ???
乙女ゲームって常識なの??
ポカンとしていたら、後ろからぶあははははは‥という派手な笑い声が聞こえた。
「マリアンにはかなわないなぁ」
‥ナラフィス先生の大爆笑初めて見た。
いつもはシニカルなふって感じの笑顔なのにさ~。
ナラフィス先生‥そんな優しい顔するんですね。マリアンちゃんの前では。
ってか、なんでこんなところに?
って‥ああ帰ってきただけですよね。ここ、貴方のお家でしたね。忘れてました。
あんまりにもマリアンちゃんの色に染まってるから、マリアンちゃんの家だと思ってました。
結構本気で。
「ただいま」
驚いて無言になっちゃってる俺の前で、二人は(俺なんていないかのように)「ただいまのチュー」なんてしてる。マリアンちゃんが
「タツキ様♡ お帰りなさい♡ 今日はとても早かったですね」
ってナラフィス先生を見上げて、「好き好き大好き! 」って顔をしている。
‥この二人ってこんなにラブラブだっけ? ‥でもまあ、今更だけど、この二人新婚さんだったよな。そんなお家‥新婚さん宅‥にご主人が留守の時間帯に男が訪問するとか‥悪いことしたなあ。
‥って、俺女だった。
それに‥まあ、心は男と言いながらも、男女どちらに対しても恋愛感情なんて起こらないしねえ‥。
まあ‥許してもらいましょう。
ってか‥またチューしてるよ。
大丈夫? 俺がいること忘れてない?
「今日は、ヒジリが恋愛相談に来るって聞いてたから、そんな面白いこと見に行かない理由はないでしょうって思ってね? 」
相変わらず俺をチラリとも見ずに、ナラフィス先生がハンガーにジャケットを掛けながらマリアンちゃんに話し掛けた。マリアンちゃんが嬉しそうに頷く。
‥見せ物か俺は。
しかし‥よくもまあ‥俺の存在無視しまくってくれるよなあ‥。
見えてないのか? ってレベルだぞ‥。普通「あ、ヒジリいらっしゃい」とか、言わん? で俺が「お邪魔してます。帰ります」とか言って「イイのいいの。ゆっくりしてってて」とか‥そういうのないんかな??
って思ってたら
「ああ。ヒジリ。いらっしゃい」
って、営業用スマイルされた。‥今更~!?
‥もしかして、今気づいた感じですか‥。(※ ヒジリの顔がそう言って欲しそうだったから、「一応言っておくか‥」って感じで言っただけ。別に気付いてたさ‥初めから。でも、毎日会ってるんだし、今更「ヒジリ来てたの」とか‥ないでしょ‥ とナラフィスは思った)
しかし、さっきのマリアンちゃんに対する笑顔見ちゃったら、見慣れた「いつもの優しい笑顔」が「作りもの」だったって気付いちゃったなあ‥。
そうか‥随分親しくなったと思ったけど‥そう思ってたのは俺だけだったんかあ‥。
俺の扱いって‥悪くはないとは思ってたけど、‥別によくもなかったんですね。
あれですね、その他大勢よりはちょっとマシレベルだっただけだったんですね。
‥まあいいですけど‥
その後、マリアンちゃんがパンを焼いて、俺が来る前に仕込んでおいたらしい肉と野菜のスープを温め直して俺にも出してくれた。家庭菜園で育てた野菜サラダ付きだ。
木の器がお洒落。なんか、しゃれたカフェみたい。
そして、シンプル。
そうだよね。日本の食卓って何か凝り過ぎてるよね。日本のお母さん、多くを求められ過ぎてるよ。メイン・バン!、野菜・バン!パン(ご飯! )ドーン!、でいいよね。俺はそう思うぞ。
スープをすくって口に運ぶ。
ほぅ‥
「美味し‥。マリアンちゃんお嫁に来て欲しい‥」
しみじみ呟いたら、
「マリアンは僕の奥さんだ」
ナラフィス先生の「コイツアホだな」の表情。余裕だな。そこは、「やらんぞ」って敵意丸出しにするとこでしょうが。俺、こう見えて結構男前よ? ‥はい、すみませんでした。ラルシュ様やサラージ様見慣れてる人にとっては俺なんかそこら辺の「へのへのもへじ」と変わらないですよね。
「そうそう‥さっきの話の続きね」
ナラフィス先生がマリアンちゃんを振り返る。
因みに今ナラフィス先生が座ってんのは、マリアンちゃんの横だ。椅子は、予備の椅子を急遽持ってきたみたい。因みに俺が今座ってる椅子は普段はナラフィス先生の席らしい。
全然「旦那様の椅子には他の男は座らせません! 」じゃないのね。けけ! ‥考え過ぎか。
こっちが上座だから、俺に上座を譲った位の感じなんだろう。
それはそうと‥
近いぞ、ナラフィス先生。
マリアンちゃん困ってんじゃん。‥いや、全然困っちゃいなかった。ラブラブしてた。
け!
「そうだね。
隠れキャラかもしれないネルやカタルのことを知らないといけないねぇ。
そうしないと、ヒロイン・ヒジリの乙女ゲームは完成しないねえ」
なんじゃその、ニヤニヤ全開「めちゃおもろい」って顔。喋り方変わっちゃってんじゃん!
目の前でイチャイチャやめてもらおう!!
‥ってか、「ヒロイン・ヒジリの乙女ゲーム」って何!? アンタも乙女ゲームの話すんの?? 知らないの俺だけ?? まさか、ラルシュ様とかも知ってる?? ‥いや、それはない気がする。この夫婦の間で流行ってるなんかだろう。共通の趣味、仲良しですね!
「よし、
今度二人に会いに行こう。
ええと‥僕が行ったら相手も警戒しちゃうだろうから‥ヒジリと‥あと、カタルへの手土産にミチルで行って来たらいいよ! 大丈夫、ちゃんと護衛もつけて、事前に、「もし二人に変なことしたら、ただじゃ置かない」って釘もさしとくから! 」
目の前に居る俺を無視して、俺のスケジュール勝手に組むのやめてもらえませんかね!?
「ってことで、よろしくね。ヒジリ」
‥俺に発言権及び拒否権はないんだろうなあ‥。
俺はふう‥とため息をついて、
「会ってくれますかね」
ってナラフィス先生に聞く。
ナラフィス先生は首をコテンと傾げて
「会ってもらうよ。ってか、会うだろうよ。
あっちだって、別に戦争が目的じゃない。
でも、ラルシュやなんかが出て行ったら大事にせざるを得なくなるから、ミチル位がちょうどいいんだ。カタルは特にミチルが大好きだしね。
でも、ミチル一人だったら絶対行かないでしょ? (ミチルが)」
なんと! まさかのオマケは俺!?
「ミチル一人は‥行かないでしょう‥ねえ」
カタルに誘拐されかけたしね。
俺もミチル一人では行かせられないなあ。
まあ‥俺じゃミチルのボディーガードとしては不十分だけどね? ‥弱々だから。
「そこは、護衛騎士さんにお任せして」
って言ったのは、イイ笑顔のマリアンちゃん。
く~また顔に出てた!?
「俺要らないんじゃ!? 護衛騎士さんとミチルでいいんじゃ!? 」
「いや、表向きは「和平の話合いに行く」だから。ヒジリがいかないと意味ないじゃない。だけど、ヒジリじゃ全然役に立たないしね。それこそ、ガキの使いになっちゃうよ。行っただけ、じゃ行く意味無いでしょ。
相手と交渉するにはミチルがいる」
‥散々な言われよう‥。
俺‥そんなダメですかね。そうですよね。‥ダメですよね。
「表向きは‥ヒジリ位の雑魚キャラだと、相手も警戒しないでいいからね。‥そういう、丁度いいポジションなんだよヒジリは」
「‥‥‥」
‥盛大にディスられた‥。
しかし‥
選択肢(若手のみ。ここで国の役職持ちが行くと余計にややこしくなるから、問題外)
ラルシュ → 優秀、きっと一番交渉が上手。だけど、王子だから相手が警戒する。
サラージ → 効率厨で交渉に向いているとはいい難い。そして、こいつも王子。
ナラフィス → 交渉には自信がある。だけど、国の有名人物で相手の警戒度は王子に次ぐ。
ヒジリ → お飾り的存在。だけど、ラルシュの婚約者。人質としては欲しい人材。
ミチル → 国のポジションとしてはそう高くない。交渉に向いてそう。カタルのお気に入り。人質に向いてる人材。
‥思えば、持ち駒少ない。
その中で、俺、ダントツのポンコツ‥。
「相手に威圧感を与えない。ヒジリ様のキャラはとてもいいと思いますよ? 」
‥マリアンちゃんなんじゃそのフォロー。
「いや~。出来るもんなら、僕も行きたいよ。ホント。カタルがどんなこと考えてるか、知りたいじゃない。
しかも、僕ね、ネルとはまだ会ったことないんだ。ホントはすっごい興味あるんだけどねえ‥」
あ~あ。また研究モード入ってるよ。こうなると、もう手が付けられないんだよねえ。
目が‥もう、ランランだ。きっと、このまま徹夜コースなんだろうなあ。俺には出来ないけど、ナラフィス様クラスだったら、身体を休めながら頭だけフル回転で同じ場所で朝までコース可能らしいじゃない? (ただし、単純作業しかできない)俺には出来ないってか、したいとも思わないよ。
因みに‥
リバーシのレベル。
初級編 本体:ベッドで寝る 精神:気分転換に適当なスポットに飛ばされる。ただし、その間、「寝る」前に考えていたことを継続して考えることはできない。
中級編 本体:ベッドで寝る 精神:気分転換に自分の決めたスポットに行く。その間も、「寝る」前に考えていたことを継続して考えることはできる。 (ヒジリとミチルもこれ)
上級編 本体:椅子に座ったり、体勢は自由。ただし、他人に「抜け殻の身体」を動かされると、精神は二度と肉体に戻れなくなる。
精神:その場で作業を続けることが可能。ただし、手位しか自由に動かすことはできない。「常に書類仕事」「常に本を読み続ける」位の作業しかできない。
しかし、本体の疲労回復は100%ではないため、この徹夜コースは連続ですることは不可能。
伸びをしたりすることもないらしい。
瞬きもせず、ずっと書類を書き続ける、変なロボット。しかも、この場合も触ったらめちゃ身体冷たいらしい。
中級→上級は訓練で進化が可能だけど、初級→中級は努力で何とかなるもんじゃない。中級になれる人ってのは、生れた時から決まってるらしい。その他は皆初級止まり。初級クラスの人が一番多い。
‥余談だった。
マリアンちゃんも大変だ。
この、好奇心旺盛研究馬鹿と一生添い遂げるとか、‥ちょっとした試練だよねえ。
「‥何を考えてるか分かってるぞ、ヒジリ‥」
ほわっつ! この夫婦。妖怪サトリみたいだな! 俺の気持ち読みすぎでしょ! (← ヒジリが「考えてること
全部表情に出過ぎちゃってるタイプ」なだけ)
苦笑いして‥だけど、ほんわり気持ちが温かくなった。
‥やっぱり、マリアンちゃんに相談してよかったなあ‥。
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