リバーシ!

文月

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二十一章 平和的交渉

5.新しい風を起こす会議

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 新しい風を起こすための会議。
 記念すべき第一回! 
 会議方式:ブレスト
 あ、ブレストってのは、ブレーンストーミングの略で、会議の方法の一つなんだ。
 三人寄れば文殊の知恵っていうよね? 一人より大勢のブレーンを合せていい案だしてこうぜ! って方法だと俺は理解してる。
 皆で自由に発言してくのが目的なんだけど、その会議にはいくつかルールがある。
 中でも一番重要なのが、誰かの意見を否定してないってことだな。
 否定したり、非難したりするのNG! そんなことされちゃ、委縮しちゃって新しいアイデア出せない人だって出てきちゃうかもじゃん? そういうの、一番困るんだ。
 否定しない。自由に発言。あと‥質より量。いっぱいアイデアを出した方がいい。でも、時間はちゃんと決めとく。いつまでもダラダラ喋ってちゃダメ。(ダレルからかな? )
 メンバーの選出も大切。
 まず、一番重要なのは会議の進行役。(ファシリテーターというらしい)俺は前回「会議の司会」って言ったけど、ブレストにおける進行役は、一般的な会議を進行する司会とは違う。
 一般的な司会は、スケジュール通り何かを進行するのが役割なんだけど、ブレストの司会(進行役)は、発言を促すのが一番の仕事なんだ。
 その場の雰囲気づくりも重要になるから、進行係の選出が一番の鍵になるといっても過言じゃないだろう。
 次に、メンバー。
 年齢、性別、立場、考え方やなんかが様々な人たちを集める。
 ‥集まらないな。それ‥無理だな。
 ブレスト開催の危機だな。
 そんなことをあれこれ考えていたら、
「国宝派も同じ意見の人間ばっかりじゃないし、カタルたちも一枚板じゃないと思うぞ」
 ってナラフィス先生が言った。
 ‥どうやら、口に出ちゃってたみたいだ。
 で、カタルには
「新しい国の方向性を考えていきたいから、ネル、カタルの盲目的な信者‥とかじゃなくて、なるべく柔軟な意見が言えるような人間に来て欲しい」
 って伝えるってことにきまった。
 伝達方法は、アレだ。魔法の『伝書バト』。通常の鳩と同じ様に、目的の相手まで手紙を届けることができ、通常の鳩と違って、目的の相手以外手紙を受け取ることが出来ない。そして、目的の相手に届けたら、返事を受け取るまで帰らない。
 偽造不可能だし、妨害不可能のミラクル・マジカル鳩なんだ! (ブラボー!! )
「任せた! ドーちゃん! 」
 俺が手紙を足に括りつけて飛ばすと、
「何? デルミニオンをド~ちゃんって呼んでるの‥? dove(鳩)だからドーちゃんとか‥センスなさすぎない? 」
 ってナラフィス先生に呆れられた。
 ‥申し訳ありません。まさか名前があるとは思っておりませんでした‥。ないだろうから俺が付けようと‥(だって、ナラフィス先生伝書バトに名前つける様なタイプじゃないじゃん? ‥でもその予想は間違ってなくて、この名前を付けたのは、サラージ様とのことでした)
「カタル側には「いろんな意見を言えるような人間を‥」って言ったけど、俺たちの方は果たしてだいじょうぶだろうか? やっぱり、国民側の人間の意見も聞いた方がいいんじゃないだろうか? 」
 俺がそう言うと
「僕は別に国王側の人間じゃない。
 僕にとって一番大事なのは自由に学問が出来る環境であって、別に城での確固たるポジションとかじゃない」
 ってナラフィス先生が「心外」って顔した。
 ‥って言ってもなあ‥
 俺がまだ納得しない顔をしていたからだろう、ナラフィス先生は「ふむ」と頷いて
「それに、ヒジリは城の事何にも知らないから、別に国王側の人間とはいえないんじゃないか? 」
 って言った。 
 まあ‥そうだな。
 俺は、「王子妃教育」を受けているとはいえ、今はまだ「この国の歴史」を学んだだけで、一般人と何ら変わりない。ここでの学歴が「小学卒」なのが‥嫌だな。でもま、海外の大学を卒業したって感じかな。(ハーバード卒みたいな感じだな! 実際は地球の地方国大卒だけど)
 あ。あと、脱線しまくって、裏歴史みたいなもんも学んだよ! 
 魔法使いとリバーシが産まれる切っ掛けになった禁断の近親婚・デュカとレゼリアの話とか、新しい風を入れる為の異世界婚の走りとなった桔梗とメレディア王の話とか‥。桔梗とメレディア王なんて実際に見たしな~。
 でも‥これって王子妃教育に関係ないな (-"-)
 普通の王子妃教育とはどんなものを学ぶもんなんだろうか? (はて‥? )
 まあ‥なあ。俺はアレ‥普通の王子妃とは違う「何かあったら即監禁」な取り扱い注意妻だから、別に通常の王子妃教育とか要らないんだろうな。
「‥ならいいか」

 で、当日。
 メンバーはこんな感じ。
 ファシリテーター: ミチル(一応国王派。だけど、がちがち国王派ってわけではなく、王子の友だちってだけ)リバーシ。地球出身の地球人。未婚。男。20代後半から30代前半。
 話し合いというより、意見交換会だけど、一応司会。
 書記: ネル(革命派)リバーシ。未婚。男。20代前半から20代後半。
 (メンバー 普通の)
 カタル(革命派)魔法使い。未婚。男。20代後半から30代前半。
 マルセー(革命派)貴族ではない。魔法使いでもリバーシでもない。前代表時代から反政府団体にいる。総ての国民が平等な社会を目指す理想主義者。過激派ではない。妻帯者。男性。50代後半から60代前半。
 ミント(革命派)貴族ではない。カタルが代表になった後に反政府団体に参加し始めた。未婚。女。10代後半から20代前半? (見掛け年齢不明。因みに年齢は「非公開♡」らしい)
 ヒジリ(一応国王派。だけど、がちがち国王派ってほど、国のことをしらない)夜の国生まれ地球育ち。女。20代前半から20代後半。
 ナラフィス(国王派)貴族だけど、一般市民として生活してきた。一応国王派だけど、ガッチガチってわけじゃない。リバーシ。妻帯者。男。30代。 
 サラージ(国王派)王族。だけど、別に父親をめちゃ支持しているとかじゃない。リバーシ。未婚。男。30代。

 ざっと、カタルたちを見た時、ナツミがメンバーに入ってないことに一番に目が行った。
 ‥俺に会いたくなかったから? って思ったら胸が痛かったけど、カタルが(俺の気持ちを知ってかどうかは分からないが‥)
「ナツミは俺やネルに肩入れしすぎてるから今回はお留守番してもらった」
 って説明してくれた。
 う~ん。なんか納得。確かにそんな感じだったかも。でも‥さっき自己紹介を聞いた感じだと、ミントちゃんも「カタルlove」って感じで‥今回の「カタル、ネル信者はちょっと‥」って基準から外れてるんじゃ? って思ったんだけど‥
 また、カタルが俺の気持ちを読んだのか
「ミントは確かに僕loveだけど、狂信者とは違う。自分の思想をちゃんと持ってる奴だから連れて来た」
 って言われた。
 凄いぞカタル。お前‥サトリ(人の気持ちを読む妖怪)か? (※ 何度か言ったが、ヒジリは考えてることが全部顔に出るタイプで、しかも悪いことに本人にその自覚がない)
「お初にお目にかかります。マルセーと申します」
 にこりと人好きする笑顔で自己紹介をしたのは、マルセーさんだった。
 結構こっちのメンツ凄いの(王族のサラージ様とか)揃ってるのに、物おじしないのって結構凄い。
 細い目を線みたいにして笑う顔に好感が持てる。
 因みに‥
「ブレストの司会をして欲しい」
 と言った俺に、ミチルが苦笑いして
「‥またヒジリが先走ってる。はじめっからそんなに走らなくていいから。
 まずは、この国について話しませんか~意見交換しませんか~位からでいいと思うぞ。
 どうせ、俺たちにこの国を変えることなんてできないんだから。
 でも、この国について皆がどう考えてるか。どう変えていきたいかってのを話し合うのはいいことだと思う。
 ‥あと、人が増えるのは大歓迎だ(← 切実)」
 って言ったんだ。
 ‥また空回りしてた。
 確かに俺たちが「国の今後」の話し合いなんて出来ないね。生徒会のメンバーが「今後の学校について考えよう」っていうのとはわけが違うもんね‥。
 気付いた俺は赤面したんだけど、‥ちょっとほっとしたかも。
 「この国の未来」っていう‥あまりにも大きなテーマを前に、責任感で押しつぶされそうになって‥知らないうちに肩に力がはいって、カチカチになってたから。
 でも、まあ雑談とはいえ、俺たちが国王派代表なのには変わんないんだけどね~。
 発言には十分気をつけないとね。
 しかしホント‥
 ‥ホントに俺は情けなく、ミチルは頼りになる。‥同じ「同世代の人間」とは思えないくらい。王家の人たちはね「そういう育ちしてるんだろうな~」「生まれつき違うよ」って思えるけど、同じラインなはずのミチルとこうも違ったら‥ねえ、‥ねえ。
 その後、ミチルがナラフィス先生に意見交流会を開きたいというようなことを伝えると、ナラフィス先生は、何も言わずふふって笑って‥きっと微妙な顔をしていたであろう俺の頭をぽんぽんって叩いた。
「城でやるとあっちも緊張するだろうし、適当に場所も考えておいて」
 って侍従さんに言った。
 いつもより「平坦な」口調。なんか出来る人の口調って感じ。
 こうしてさらっと人に指示を伝えてるところを見ると、やっぱナラフィス先生って高位貴族なんだな~って感じがする。
 なんかカッコイイ。(異性としてじゃないぞ)
 俺も、こういう「大人な」対応できるようになりたい。(せめて、国見に舐められっぱなしって状況から脱出したい)
 あと、俺たちのやり取りも見てただろうに、そのことを言わないでいてくれたのにも‥感謝。なんかさ~俺の周りの人間って皆「人間が出来てる」って感じする。
 俺も‥頑張らないとナ。
「私はミントです。平民です」
 ミントちゃんは~
 髪の毛の色が青くって、ちょっと吊り目で「クール」って感じする外見だけど、声が可愛い。
 話す時にニコって笑って、カタルを見ながら話すのが‥めちゃ可愛い。
 はは、
 ‥ナツミ嫌いそう。
 今は知らんけど。(※ 今もです)昔のナツミは女の子女の子した子‥ってか、あざとぶりっ子なめちゃ嫌いだったもんな~。
「可愛い顔してたら、世の中勝ち組だと思ってる奴、マジ嫌い」
 って誰より可愛い顔で言うから面白かったんだよね。
 ナツミは、あんなに可愛かったのに、絶対誰かに媚びたりすることなかった。そういうとこもカッコよかった。
 ‥でも、そんなナツミでも好きな人が出来たりしたら、可愛さアピールするのかな。‥なんか、ジェラシー。
 け。でも、誰よりも俺はナツミの事知ってるんだからな!
 ‥昔の、だけど。
 でもさっきカタルはミントはナツミと違って狂信者じゃないって言ってた。(カタルloveだともいってたけど)
 え~?? カタルloveの狂信者だと思うけど?? 少なくともナツミよりずっと。
 そこら辺は‥でも、今日初めましての俺には分からないことなのかな。‥もしかして、分かってないの俺だけで皆には分かるみたいな感じなのか?
 
 すぐ意見の交換をしてくのかなって思ったけど、今日は結局自己紹介で終わった。
 ‥皆自己紹介で脱線しすぎだ‥と思う。
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