空蝉

pAp1Ko

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海莉side.

俺たちに気を使って、静かに部屋の外に出た二人を見送ってから、氷空に話しかける。
最初は、身体の調子を、少しずつ頭が回ってきたのか、呂律も回ってきているようだった。

「…氷空。」
「…なぁに?」
「…番になってくれないか?」
「…つ、がい?」
「そう、『番の奇跡』っていうのがあるんだって。それがどういう風に起こるかわからないけれど、もしかしたら氷空が元気になるかもしれないんだ。」
「…いい、よ。よくわかんないけど、それで、兄さんが、うれしいなら、灯とか、風吹くんとも、お出かけとかしてみたい。」
「うん、そうだよね。今ね、和都さんと妃璃さんが、もしものときに備えて医療機器を揃えてくれているんだ。俺たちは運がいいね。こんなに恵まれて。」
「…にいさんの、うんが、いいんだよ、きっと。あんなに何も考えられないくらい疲れてたのに、俺、こんなに話せるようになったし、番になったら、…もっと生きられるかもしれないんでしょ?…先生、喜んでくれるといいな。」
「『番の奇跡』で氷空の運も上がるかもしれないよ。先生も、手紙にゆっくり来てって書いてあったからね。番になったら一生を共に過ごすっていうから、死ぬときも一緒かもしれないね。そのときは、二人でゆっくりのんびり行こうね。」
「…一生、一緒?…ずっと一緒かぁ、うれしいな。」
「うん、ずっと一緒。準備ができたらまたそのときいうね。」
「…うん。」


その話をしてから、氷空は再び生きるために、無理のない範囲で食べて動いて、おしゃべりをしてと過ごした。
和都さんが言うには、海外製の医療器具を急ピッチで日本に持ってきているらしい。精密機器だから飛行機はダメで、海外から出荷するのも一苦労だったらしい。船で来ているらしく、1ヶ月程度で届くと言っていた。


番う計画を経ててから、無事に冬を越せた。
少しずつ弱ったり元気になったりを繰り返しているうちに、灯くんと風吹くんの受験が終わって、今日ちょうど、受験の発表で、無事受かったと言いながら帰ってきた。
今日は調子がすこぶる良かった氷空と二人でおめでとうと祝いながら、リビングでお祝いティーをした。
そんな中、和都さん宛に荷物が届き、それが待ちに待った医療機器だった。


翌日、何があってもいいように、みんなに見守られながら氷空の項を噛んだ。それと同時に俺の意識は暗闇に落ちていった。


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