6 / 6
学校帰りに幼馴染と二人で喫茶店ってやっぱりデートですかね?(※本編には関係ありません)
しおりを挟む
菜々との協力関係が始まった日から2日後の 学校終わり。
「あの、これは一体……?」
学校と駅とのちょうど中間にあるコテージ風の喫茶店。 西日が差し込む窓際の席。
俺の目の前には先日俺が書いた小説の原稿、さらに机を挟んだ反対側に初夏にも関わらず制服のシャツの上になぜか薄手のカーディガンを羽織っている美少女が一人。
「見て分かんないの? 文字も読めないほど頭が悪かったのね」
訂正しよう。 立てば芍薬座れば牡丹放つ言葉は彼岸花。 口さえ閉じれば完璧な美少女が一人。
彼女は茜が丘菜々。 『恋を知らないあの日の君へ』の作者で俺の幼馴染だ。
「見ての通りあなたの原稿よ。 とりあえず文法等の間違いや誤字脱字、前後の文脈がおかしい点を上げたから」
菜々の言う通り俺の原稿には赤ペンでチェックや訂正がそれはもう嫌という程入っていた。 その数は優に三桁は超えている。
「え、こんなに?」
「まぁそんなもんよ。 私の新人賞の時もこんな感じだったわ」
菜々は去年の春頃、高校に入学してすぐ新人賞に応募し大賞を受賞した。 新人賞レベルじゃないと話題になりオリコンの文庫部門の週間ランキングトップ10にもランクインしたこともある。 それでもクオリティに差があるとはいえ菜々の新人賞の時も今の俺と同じくらいの量のチェックが入っていたと思うとまだ希望が持てる。
菜々は先ほど頼んでいたアイスの黒蜜ミルクコーヒーを少し口に含む。 黒蜜ミルクコーヒーはコーヒーの苦さに黒蜜の優しい甘さがマッチしたまるでスイーツのようなドリンクだ。
「あなたには来年の7月30日にあるガガーレンの新人賞に応募してもらうわ」
コーヒーをゆっくりと味わうように飲んでから菜々は言う。
「あれ? ガガーレンってお前と同じ文庫だよな?」
「……!! た、たまたまよ!! 自分の出版社の新人賞だから日付知ってて他のとこ調べるのも面倒だったからであって、別に私と同じところを受けてほしいとかじゃないんだから!!」
言っていることが支離滅裂だとかテンプレートなツンデレだとか思うところはあったものの後が怖いから言うのはやめておいた。
「はいはい、たまたまね」
俺の物言いに菜々は睨みを利かせる。 しかし、自分の発言と動揺が相まって顔を赤らめているせいでいつも程の迫力がない。
それでもやっぱ怖いのでその目やめてください……。
菜々の視線から逃れるようにして俺は豆乳オレを一口飲む。 豆乳オレはその名の通りオレのミルクの代わり豆乳を利用したものでまろやかな口当たりですっきりしていることで評判だ。
……でも少し苦いな。 俺はミルクの方が好きかもしれない。
「まぁいいわ。 そんなことより新人賞に向けて決めておかなければならないことがあるの」
いつの間にか菜々はコーヒーを飲み終えて新しくアメリカンコーヒーを注文する。
黒蜜ミルクコーヒーは甘すぎたんだな。
「この小説をベースに改善していくのかそれとも一から新しい小説を書くのかよ。 これはあなたの納得いく方を選びなさい」
この小説ベースにするかどうかか……。 改善していけば新しく設定を一から考え直すこともないしどう直せばいいか菜々に聞くことができる。 でもこの小説の枠から抜け出すことが出来ない。 一方で新しく書き始めればまた一から設定を考え直さなければならない。 でも新しく書けば今の自分の殻を破れるかもしれない。 それに菜々にばかり頼ってもいられない。 なら答えは一つだ。
「俺は新しい小説を書くよ」
菜々はフッと笑って「そう」とだけ短く答えた。 この表情を見る限り菜々もきっと俺と同じように思っていたのだろう。
「ならあなたには今日の5月28日から三か月後の8月末までとにかく量を書いてもらうわ。 新しく書くジャンルを一つに絞って短編でもショートショートでも何でもいいから今はとにかく量を書きなさい」
「量を書くより新人賞用の原稿のストーリーを考えたほうがいいんじゃないか?」
「あんたねぇ、小説の書き方も知らないずぶの素人がいきなり新人賞の原稿を書こうなんてなめてんの?」
菜々が言うには小説の書き方やストーリー構成をより鮮麗にするためにも今は下手に新人賞用のストーリーを考えるよりとにかく量を書いて技量を磨いたほうがいいらしい。
「いや、お前も新人賞の時はずぶの素人だっただろ」
「あ゛ぁ゛?」
「……すいませんでした」
あまりにドスの効いた声だったため条件反射で謝ってしまった。
ほんとに怖すぎんだろこいつ……。
まぁ、今回に関しては菜々の言うことが正しいから素直に謝っておこう。
「今回もでしょ?」
「だからさぁ、勝手に人の心情読むのやめようぜ」
「無理よ。 奏斗をいじめるのは私の趣味だから」
変な趣味持ってんじゃねーよ……
「やることも伝えたし今日はこの辺りでいいかしら」
「そうだな」
そう言って俺と菜々はグラスに残っていた豆乳オレとアメリカンコーヒーを飲み干して立ち上がる。
「あぁ、それから書いた原稿は全部私に見せること。 またチェック入れるから」
分かったと返事を返しレジに向かおうとしてふと気になったことを菜々に問いかける。
「手伝ってくれるのはうれしいけど、お前自分の小説の方大丈夫なのか?」
「……本当にあなただけには言われたくないわね」
「あの、これは一体……?」
学校と駅とのちょうど中間にあるコテージ風の喫茶店。 西日が差し込む窓際の席。
俺の目の前には先日俺が書いた小説の原稿、さらに机を挟んだ反対側に初夏にも関わらず制服のシャツの上になぜか薄手のカーディガンを羽織っている美少女が一人。
「見て分かんないの? 文字も読めないほど頭が悪かったのね」
訂正しよう。 立てば芍薬座れば牡丹放つ言葉は彼岸花。 口さえ閉じれば完璧な美少女が一人。
彼女は茜が丘菜々。 『恋を知らないあの日の君へ』の作者で俺の幼馴染だ。
「見ての通りあなたの原稿よ。 とりあえず文法等の間違いや誤字脱字、前後の文脈がおかしい点を上げたから」
菜々の言う通り俺の原稿には赤ペンでチェックや訂正がそれはもう嫌という程入っていた。 その数は優に三桁は超えている。
「え、こんなに?」
「まぁそんなもんよ。 私の新人賞の時もこんな感じだったわ」
菜々は去年の春頃、高校に入学してすぐ新人賞に応募し大賞を受賞した。 新人賞レベルじゃないと話題になりオリコンの文庫部門の週間ランキングトップ10にもランクインしたこともある。 それでもクオリティに差があるとはいえ菜々の新人賞の時も今の俺と同じくらいの量のチェックが入っていたと思うとまだ希望が持てる。
菜々は先ほど頼んでいたアイスの黒蜜ミルクコーヒーを少し口に含む。 黒蜜ミルクコーヒーはコーヒーの苦さに黒蜜の優しい甘さがマッチしたまるでスイーツのようなドリンクだ。
「あなたには来年の7月30日にあるガガーレンの新人賞に応募してもらうわ」
コーヒーをゆっくりと味わうように飲んでから菜々は言う。
「あれ? ガガーレンってお前と同じ文庫だよな?」
「……!! た、たまたまよ!! 自分の出版社の新人賞だから日付知ってて他のとこ調べるのも面倒だったからであって、別に私と同じところを受けてほしいとかじゃないんだから!!」
言っていることが支離滅裂だとかテンプレートなツンデレだとか思うところはあったものの後が怖いから言うのはやめておいた。
「はいはい、たまたまね」
俺の物言いに菜々は睨みを利かせる。 しかし、自分の発言と動揺が相まって顔を赤らめているせいでいつも程の迫力がない。
それでもやっぱ怖いのでその目やめてください……。
菜々の視線から逃れるようにして俺は豆乳オレを一口飲む。 豆乳オレはその名の通りオレのミルクの代わり豆乳を利用したものでまろやかな口当たりですっきりしていることで評判だ。
……でも少し苦いな。 俺はミルクの方が好きかもしれない。
「まぁいいわ。 そんなことより新人賞に向けて決めておかなければならないことがあるの」
いつの間にか菜々はコーヒーを飲み終えて新しくアメリカンコーヒーを注文する。
黒蜜ミルクコーヒーは甘すぎたんだな。
「この小説をベースに改善していくのかそれとも一から新しい小説を書くのかよ。 これはあなたの納得いく方を選びなさい」
この小説ベースにするかどうかか……。 改善していけば新しく設定を一から考え直すこともないしどう直せばいいか菜々に聞くことができる。 でもこの小説の枠から抜け出すことが出来ない。 一方で新しく書き始めればまた一から設定を考え直さなければならない。 でも新しく書けば今の自分の殻を破れるかもしれない。 それに菜々にばかり頼ってもいられない。 なら答えは一つだ。
「俺は新しい小説を書くよ」
菜々はフッと笑って「そう」とだけ短く答えた。 この表情を見る限り菜々もきっと俺と同じように思っていたのだろう。
「ならあなたには今日の5月28日から三か月後の8月末までとにかく量を書いてもらうわ。 新しく書くジャンルを一つに絞って短編でもショートショートでも何でもいいから今はとにかく量を書きなさい」
「量を書くより新人賞用の原稿のストーリーを考えたほうがいいんじゃないか?」
「あんたねぇ、小説の書き方も知らないずぶの素人がいきなり新人賞の原稿を書こうなんてなめてんの?」
菜々が言うには小説の書き方やストーリー構成をより鮮麗にするためにも今は下手に新人賞用のストーリーを考えるよりとにかく量を書いて技量を磨いたほうがいいらしい。
「いや、お前も新人賞の時はずぶの素人だっただろ」
「あ゛ぁ゛?」
「……すいませんでした」
あまりにドスの効いた声だったため条件反射で謝ってしまった。
ほんとに怖すぎんだろこいつ……。
まぁ、今回に関しては菜々の言うことが正しいから素直に謝っておこう。
「今回もでしょ?」
「だからさぁ、勝手に人の心情読むのやめようぜ」
「無理よ。 奏斗をいじめるのは私の趣味だから」
変な趣味持ってんじゃねーよ……
「やることも伝えたし今日はこの辺りでいいかしら」
「そうだな」
そう言って俺と菜々はグラスに残っていた豆乳オレとアメリカンコーヒーを飲み干して立ち上がる。
「あぁ、それから書いた原稿は全部私に見せること。 またチェック入れるから」
分かったと返事を返しレジに向かおうとしてふと気になったことを菜々に問いかける。
「手伝ってくれるのはうれしいけど、お前自分の小説の方大丈夫なのか?」
「……本当にあなただけには言われたくないわね」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。
数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。
トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。
俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級の美少女たちの攻防戦〜
沢田美
恋愛
「ごめんね、八杉くん」
中学三年の夏祭り。一途な初恋は、花火と共に儚く散った。
それ以来、八杉裕一(やすぎ・ゆういち)は誓った。「高校では恋愛なんて面倒なものとは無縁の、平穏なオタク生活を送る」と。
だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。
• 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。
• 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。
• 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。
• オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。
恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。
教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。
「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」
鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。
恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる