血の医者〜僕らの仕事は人を殺すことです〜

第一章 英雄の帰還

8 舐めんなよ

　2026年。あれから4年が経った。

　あれから世界は大きく変わった。以前よりヴェロウイルスの感染が広がり、犠牲者が増えた。

　しかしメディクスを従えている【オスピタル】は、とある事件を受け、【理想郷】という制度を作り、ジャナヴァル化からの二次被害は、ほぼゼロとなった。

　だが変わったのは世界だけではない。


　

　「4年間お世話になりました」

　今日、俺アランとユンはメディクス就任試験を受けるため、【オスピタル】の本拠地がある【バリム】の街へ旅立つ。

　「ほぅ……もう合格した気になっておると？」

　キンじぃが冷やかすように笑う。

　「そうだよぉアラン…。僕は心配だよ……ああ……落ちたらどうしょう……」

　ユンは4年経ってもこんな感じだ。

　「いや、俺は受かる。これ以上時間を無駄にできない」

　「無駄って……傷つくぞ？ワシ」

　「いや……」

　そういうわけじゃなくて……。

　「キンじぃには感謝してる。この4年で俺たちは大きく成長した……地獄だったけど」

　「ほぉ……」

　「だけど今も苦しんでいる人がいる。それを見過ごすことにはなりたくない」

　とある事件然り、俺たちが修行していた4年間だけでも、多くの犠牲者がいる。

　「絶対メディクスになる。待ってろキンじぃ」

　「行ってくるね……じぃちゃん」

　俺たちは、メディクス……いや、英雄となって戻ってくる。

　必ず。








　昨日。

　「よし……そろそろメディクス就任試験の話でもするかのう」

　キンバルトが眠たそうな目で話し始めた。

　「は…？そんなのこの4年間俺たちがやってきた戦闘訓練だろ？いまさらいらねーよ」

　アランはキンバルトをあしらい、「早く寝かせろ」と寝室へと向かう。

　「いや、違うぞ？」

　「「え？」」

　「面接じゃぞ」

　「は？ユン、面接ってなんだ？」

　「め、面接って……言葉で自分をアピールする試験だよ……」

　「は？」

　キンバルトが不思議そうな顔で二人を見つめる。

　「ん？どうしたんじゃ？」

　「「な、な……」」

　「なんで早く言わないんだよ！！」

　「なんで早く言わないの！？」

　飛びかかるように2人がキンバルトの元へ駆け寄る。

　「じ、じゃあ今までの訓練意味ないじゃん！」

　「おい！何してくれてんだクソジジィ！！」

　2人が師匠であるキンバルトの胸ぐらを掴む。

　「む？何を言っておる？試験を受けれるのは16になってからじゃろう？だからそれまでの4年間、メディクスになってから役立つ戦闘技術を教えたんじゃ」

　「で…でも落ちたら元も子もないじゃん！」

　「おお、そうじゃな。はぁ…全く呆れるわい。何が面接じゃ…そんなもの自分を上手く嘘で飾り付ければいいだけじゃろう？あの制度に変わってから合格者は2年に1人の割合でしかでてこんし……ましてや一度不合格になると一生受けれんようになるし……ヲルスめ…次会った時、膝をぶっこわしてくれるわ」

　相変わらず眠そうな目でキンバルトが話す。

　「なんだよそれ！？合格者が2年に1人！？」

　「さ…更に一度落ちたら一生受けれないって……」

　2人の顔が青ざめていく。

　「ど、どうするユン！？本番明日だぞ！？とりあえずなんか練習しないと……！」

　「そ、そうだね？どうしよう…」

　あたふたと取り乱す2人。

　「なんじゃおぬしら？まさか落ちると思っとるのか？」

　これまた眠そうで不思議そうな顔を見せるキンバルト。

　「とりあえず真っ直ぐに質問に答えとけ。受かるじゃろ。お前ら……自分自身舐めんなよ？」
　

　




　<メディクス就任試験>

　資格　16歳以上であることのみ。

　内容　面接

　「では……98～100番の3名。面接を開始する」

　メガネをかけた厳格そうな男が話し始めた。