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第一章
02.オルガと狂気の王子
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最奥に熱杭が突き立てられ、私は悲鳴を上げる。膣内が震える感覚に、セドリックは「またか」と笑う。何度達したのかはわからない。数えていないし、忘れられるものなら忘れておきたいもの。
「気持ちいいか? ん?」
「っあ、いい……あぁ!」
「もっと欲しいか?」
気持ち悪いことを気持ちがいいと思えるのは、薬のおかげだ。ちゃんと濡れるのも、妊娠しないのも、薬のおかげ。
好きでもない男に抱かれ、聖教会や政治の道具として利用されることを、私はすべて受け入れたわけじゃない。こんな気持ちが悪いだけの行為、弟のことがなければ受け入れられるはずもない。
「セドリック様、来て……私の奥に、来てください」
潤んだ瞳で見上げ、彼の上気した頬に指先を添えれば、セドリックは簡単にその気になり腰を振る。私の最奥を穿つ。
苦しいほどに膣内を掻き回すのは、朝からずっと太さと硬さを維持したままの肉の棒だ。もう宵の刻だというのに、萎えることがない。
だるくて仕方ない。しんどくてたまらない。けれど、私からこの行為を拒否することはできない。彼は王族。聖教会内でも国内外でも大きな権力を持つ高貴な人。弟の去就を簡単に扱うことができるのだから、逆らうことなんてできるわけがない。
「もっと欲しがれ」
「セドリック、様、意地悪しないでくださ、っあ」
「ほら、もっと」
「私の、中に、っん、セド、リック様のを、んんっ」
演じることは苦ではない。馬鹿らしいとは思うけれど、薬のおかげでずっと潤ったままだし、恥じらいながらいやらしい言葉を口にすると相手は大抵達してくれるからだ。演じることは、私を楽にしてくれる。
「セドリック様ので、もっと、満たしてくださ、いっ」
「私の、何だ?」
「セドリック様の、種を……っ」
「芽吹くことのない種を、か?」
「あっ、酷いこと、言わな、いでっ」
もちろん、妊娠なんてしたくない。セドリックだって妊娠させたくないはずだ。彼には妻子がある。愛人もいるだろうけれど、王子という職業上、身綺麗なままでいたいはずだ。隠し子なんてとんでもない醜聞、彼が望むことはないだろう。
だから、これは演技。避妊薬を飲んだあとの、孕ませたい孕みたい、という趣味の悪い遊び。
「可愛いな、お前は」
耳元で聞こえた低音に、ぞくりと背が粟立つ。
「そんなに私の子が欲しいか?」
そんなわけあるか。
遊び。ひどく歪んだ遊びなのだから、これは。
だから、演じる。
「そんな、畏れ多い……」
「ならば、次来るときは薬を飲ませないでやろうか?」
それは困る。
濡れもしない、避妊もできない、そんな行為は嫌だ。そんな状態でこの男を受け入れたくはない。絶対、嫌だ。
もし、そんなことをされたら――首を括ってやる。死んだほうがマシだ。聖教会では自死を禁じているけれど、そんなの関係ない。私の尊厳の問題だ。
「私の子を、孕んでみるか?」
一瞬、セドリックと視線が絡む。リュカと同じ色の瞳が憎らしくてたまらない。彼は私の思いを知っている。だから、笑う。
「……冗談だ。そう睨むな。私の欲を受け止める女がいなくなるのは、困る」
「ひと、でなしっ」
「そう。お前は私を憎みながら、私に自由を奪われながら、昇りつめるんだ」
萎えることのない肉杭に、奥を抉られる。私が悲鳴を上げると、セドリックは笑う。笑いながら、奥へ奥へと腰を打ちつける。
そうして、私をひとしきり啼かせたあと、セドリックは額に汗を浮かべながら、何度目かの精を放った。芽吹くことのない種を、何度も、何度も。
「従順な女を演じるのは楽しいか?」
私はもうベッドから起き上がることができないというのに、セドリックは風呂場で温い湯を浴び、テキパキと着替え始める。私より十は歳上であるはずなのに、どれだけ体力があるのか。道理で欲求が高いはずだ。月に一度の間隔で私を抱き潰す最低最悪な男。
「私以外の男の前で従順な女のふりをするのは構わんが、私の前ではその下手な演技はやめておけ。舞台女優の足元にも及ばん」
逆らうよりは、従うほうが楽だもの。私が一年で覚えた処世術だというのに、セドリックはそれを否定する。ほんと、腹立たしい。あんたに私の何がわかると言うの。
「その目」
セドリックは笑う。何がおかしいのかわからない。
「私はお前のその目を気に入っている」
笑いながらやってきて、セドリックは私の上に乗る。そして、乱暴に私の両腕を押さえ、唇の中に舌を侵入させる。足をばたつかせ、腕に力を入れて拒否を示すけれど、セドリックは構うことなく私の口内を蹂躙する。
「いつかお前を屈服させてやろう」
首筋に噛みつかれ、吸い上げられる。赤い痕がついてしまう。十日ほども消えることがないそれを、他の男は嫌うというのに。
「絶対に、そんな日は来ないわ」
「濡らしているくせに、強がるな」
「そ、それは、ちが」
「ハハッ。私の種だと? 試してみるか?」
セドリックは舌で私の乳首をころりと転がし、歯を立てた。
「いっ、た」
「忘れるな。勇者殿の命は我が国の手の中にある。後ろ盾を失えば、食うものにも体を休める場所にも苦労するだろう。領地を侵す者として、聖教会に属さないどこぞの領主に処刑されるやもしれんな」
「人でなし!」
「ふ。お前の弟を生かすも殺すも、お前次第だということだ」
セドリックを睨みつけても、彼は不敵に笑うだけだ。腹立たしくて仕方ない。「また来る」と言いおいて出ていった彼を睨み、「もう来るな!」と叫ぶ。それしかできない。情けない。
静寂の中、私はただ願う。弟の無事だけを。こんなろくでもない世界で、彼だけが私の希望なのだから。
「気持ちいいか? ん?」
「っあ、いい……あぁ!」
「もっと欲しいか?」
気持ち悪いことを気持ちがいいと思えるのは、薬のおかげだ。ちゃんと濡れるのも、妊娠しないのも、薬のおかげ。
好きでもない男に抱かれ、聖教会や政治の道具として利用されることを、私はすべて受け入れたわけじゃない。こんな気持ちが悪いだけの行為、弟のことがなければ受け入れられるはずもない。
「セドリック様、来て……私の奥に、来てください」
潤んだ瞳で見上げ、彼の上気した頬に指先を添えれば、セドリックは簡単にその気になり腰を振る。私の最奥を穿つ。
苦しいほどに膣内を掻き回すのは、朝からずっと太さと硬さを維持したままの肉の棒だ。もう宵の刻だというのに、萎えることがない。
だるくて仕方ない。しんどくてたまらない。けれど、私からこの行為を拒否することはできない。彼は王族。聖教会内でも国内外でも大きな権力を持つ高貴な人。弟の去就を簡単に扱うことができるのだから、逆らうことなんてできるわけがない。
「もっと欲しがれ」
「セドリック、様、意地悪しないでくださ、っあ」
「ほら、もっと」
「私の、中に、っん、セド、リック様のを、んんっ」
演じることは苦ではない。馬鹿らしいとは思うけれど、薬のおかげでずっと潤ったままだし、恥じらいながらいやらしい言葉を口にすると相手は大抵達してくれるからだ。演じることは、私を楽にしてくれる。
「セドリック様ので、もっと、満たしてくださ、いっ」
「私の、何だ?」
「セドリック様の、種を……っ」
「芽吹くことのない種を、か?」
「あっ、酷いこと、言わな、いでっ」
もちろん、妊娠なんてしたくない。セドリックだって妊娠させたくないはずだ。彼には妻子がある。愛人もいるだろうけれど、王子という職業上、身綺麗なままでいたいはずだ。隠し子なんてとんでもない醜聞、彼が望むことはないだろう。
だから、これは演技。避妊薬を飲んだあとの、孕ませたい孕みたい、という趣味の悪い遊び。
「可愛いな、お前は」
耳元で聞こえた低音に、ぞくりと背が粟立つ。
「そんなに私の子が欲しいか?」
そんなわけあるか。
遊び。ひどく歪んだ遊びなのだから、これは。
だから、演じる。
「そんな、畏れ多い……」
「ならば、次来るときは薬を飲ませないでやろうか?」
それは困る。
濡れもしない、避妊もできない、そんな行為は嫌だ。そんな状態でこの男を受け入れたくはない。絶対、嫌だ。
もし、そんなことをされたら――首を括ってやる。死んだほうがマシだ。聖教会では自死を禁じているけれど、そんなの関係ない。私の尊厳の問題だ。
「私の子を、孕んでみるか?」
一瞬、セドリックと視線が絡む。リュカと同じ色の瞳が憎らしくてたまらない。彼は私の思いを知っている。だから、笑う。
「……冗談だ。そう睨むな。私の欲を受け止める女がいなくなるのは、困る」
「ひと、でなしっ」
「そう。お前は私を憎みながら、私に自由を奪われながら、昇りつめるんだ」
萎えることのない肉杭に、奥を抉られる。私が悲鳴を上げると、セドリックは笑う。笑いながら、奥へ奥へと腰を打ちつける。
そうして、私をひとしきり啼かせたあと、セドリックは額に汗を浮かべながら、何度目かの精を放った。芽吹くことのない種を、何度も、何度も。
「従順な女を演じるのは楽しいか?」
私はもうベッドから起き上がることができないというのに、セドリックは風呂場で温い湯を浴び、テキパキと着替え始める。私より十は歳上であるはずなのに、どれだけ体力があるのか。道理で欲求が高いはずだ。月に一度の間隔で私を抱き潰す最低最悪な男。
「私以外の男の前で従順な女のふりをするのは構わんが、私の前ではその下手な演技はやめておけ。舞台女優の足元にも及ばん」
逆らうよりは、従うほうが楽だもの。私が一年で覚えた処世術だというのに、セドリックはそれを否定する。ほんと、腹立たしい。あんたに私の何がわかると言うの。
「その目」
セドリックは笑う。何がおかしいのかわからない。
「私はお前のその目を気に入っている」
笑いながらやってきて、セドリックは私の上に乗る。そして、乱暴に私の両腕を押さえ、唇の中に舌を侵入させる。足をばたつかせ、腕に力を入れて拒否を示すけれど、セドリックは構うことなく私の口内を蹂躙する。
「いつかお前を屈服させてやろう」
首筋に噛みつかれ、吸い上げられる。赤い痕がついてしまう。十日ほども消えることがないそれを、他の男は嫌うというのに。
「絶対に、そんな日は来ないわ」
「濡らしているくせに、強がるな」
「そ、それは、ちが」
「ハハッ。私の種だと? 試してみるか?」
セドリックは舌で私の乳首をころりと転がし、歯を立てた。
「いっ、た」
「忘れるな。勇者殿の命は我が国の手の中にある。後ろ盾を失えば、食うものにも体を休める場所にも苦労するだろう。領地を侵す者として、聖教会に属さないどこぞの領主に処刑されるやもしれんな」
「人でなし!」
「ふ。お前の弟を生かすも殺すも、お前次第だということだ」
セドリックを睨みつけても、彼は不敵に笑うだけだ。腹立たしくて仕方ない。「また来る」と言いおいて出ていった彼を睨み、「もう来るな!」と叫ぶ。それしかできない。情けない。
静寂の中、私はただ願う。弟の無事だけを。こんなろくでもない世界で、彼だけが私の希望なのだから。
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