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第三夜
077.聖女とウィルフレド(三)
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ぬるぬると熱の尖端が花弁の合間を滑る。何度も往復するだけで、挿入ってくる気配はない。挿れてほしいのに、酷い。ここが廊下であることをすっかり忘れて、いつも通りの声量で話してしまう。
「ウィル、欲しい」
「どこに何が欲しいのですか?」
「……意地悪っ」
「ふふ。言ってくれないとわかりませんよ」
……今わかった。ウィルフレドの本性は割とS寄り。先日までの可愛い感じは一切ない。どっちがいいかと聞かれても、答えられないんだけど。
「あっ、あ、挿れて、キスして……っ」
「イズミ様は欲張りですね」
「だって、欲しいっ」
蜜が溢れる。卑猥な音をさせながら濡れたあわいを往復する熱杭が、花芽をくすぐり、蜜口をつつくたび、飲み込みたくて仕方がなくなる。
手を動かそうとすると、押さえつけられる。腰を動かそうとすると、ウィルフレドは体を引きながら苦笑する。
「ダメですよ。ほら、何が欲しいのか言ってみてください」
「やっ、あ」
「いらないのですか?」
「やだ、ほし、いっ」
ここ何日も、欲しかったのに夫たちは皆挿れてくれなかったんだもん。わたしの体を心配してくれる皆の優しさが、逆につらかった。しんどかった。
「ウィル、おねが、っ」
「どこに、何を?」
ちょっと涙を浮かべながら、ウィルフレドを睨む。その視線を受けても、夫は妖艶な笑みを浮かべるだけだ。酷い。酷いけど、もう無理。
「わたしの奥に、ウィルのおっきくて硬いの、ちょうだい」
ウィルフレドは少し考えて「まぁ、いいでしょう」と微笑んだ。瞬間、肉杭が無遠慮に挿入ってくる。
「ダメ、ウィル、イッちゃ、っ」
「いいですよ。達するならどうぞ」
「あっ、あ」
イッていいと言われると、すぐイッちゃう。ぎゅっとウィルフレドの熱杭を締め上げて、わたしは夫にキスをねだる。
「……すごい、熱い」
「あ、奥、んんっ」
「ふふ、届きましたね」
ウィルフレドが深いところを穿つたび、長椅子がガタガタ揺れる。不安定な場所でのセックスは、やっぱり少し不安だから夫の体を抱きしめる。
「ウィル、あっ、気持ちい」
「ええ、ボクも……でも、ちょっと狭いですね」
「ベッド、行く?」
「我慢できますか?」
二人で顔を見合わせ、「無理」「無理ですね」と同時に呟き、笑い合う。何十メートルかが惜しい。ずっと触れ合っていたい。ずっと繋がっていたい。
けれど、ウィルフレドはわたしと同意見ではなく「後ろから犯したい」と舌なめずりをして、獰猛な獣のように笑う。彼にバックを取られるとちょっと危うい気がするんだけど、「お願い、イズミ様」と可愛く言われると断れない。
……マジ、この緩急のつけ方、只者じゃないよね。演技派だな、ウィルフレド。
一度熱杭を抜いて、ウィルフレドは長椅子から降りる。わたしも降りて、長椅子に手をつき、おしりだけ夫に向ける。……あぁ、どうか、ウィルフレドがそちらに興味を持ちませんように!
「イズミ様、可愛い。犯してもいいですか?」
「いいよ、来て」
ぬるぬるとした肉杭が花弁を往復する。ぐちゅぐちゅと卑猥な音をさせながら、夫は「ふふ」と笑う。あぁぁ、嫌な予感がする。
「こちらは使えないんでしたっけ?」
「使えませんね!」
「どうしても?」
「はい!」
そうですか、としおらしく言いながら、ウィルフレドは蜜口に指を挿れる。ダメ、ダメ、指をそんなふうに濡らしてそっちの穴に挿れようとしちゃダメ!
「ウィ、ル、フ、レ、ド」
「……そんなに怒らなくてもいいじゃありませんか」
「そっちはダメ!」
「わかりました。では、少しずつ慣らしていきましょうね」
だから、慣らさなくてもいいんだってば!
わたしが頑なに拒否をするのを楽しそうに眺めていた夫は、ようやく蜜口に尖端を宛てがった。そうして、「時間はたっぷりあるのですから、ゆっくり覚えていきましょうね」と微笑みながら、尖端を押し込んでくる。
「あっ、ああっ」
「もっと大きな声で啼いてもいいんですよ」
「ダメ、ここ、廊下」
「別にいいじゃないですか。聞かれても。そういう場所なんですから」
尖端が最奥を何度も穿つ。そのたび、長椅子が軋み、わたしの体が悦びに震える。深いところに当たって、気持ちいい。
「ここは聖女宮。聖女を愛し、世界に命を授ける場所です。欲を解放することで命の実が育っていく。イズミ様が淫らな声で啼けば啼くほど、命が増えるんですよ」
穿たれるたび、深いところを揺すられるたび、声が漏れる。堪らなく気持ちいい。
「ウィルっ、う」
「ここにいますよ」
ぐ、と強く腰を打ちつけられて、体が跳ねる。どうしよう、またイッちゃいそう。
「あっ、あ、ウィル、イキそ」
正常位と違って触れ合える面積が少ないから、物足りなくて背後のウィルフレドに手を伸ばす。握ってくれると嬉しかったのだけれど、夫はわたしの手首を掴んで勢いよく奥をいじめる。
あぁ、違うんだけど、違わない。それ気持ちいい。激しくされるの、堪らなく気持ちいい。
「イズミ様、出ます」
「わた、しもっ」
ウィルフレドがたぶん先にイッて、わたしがちょっとあとに達した。ダメだ、気持ちいい。久しぶりだから、めっちゃ気持ちいい。
夫は何度か膣内を往復したあと、ゆっくりと熱杭を引き抜く。
「すぐ抜くの、やだ」
「濡れている間にこちらを使おうと思ったのですが」
「それはもっとやだ!」
油断も隙もありゃしない! わたしは、アナルセックスはしないの! もう!
わたしはぐったりしながら長椅子に横たわる。ウィルフレドは涼し気な顔をして、わたしのボタンを留め、衣服の乱れを直していく。
「何が本当で、何が嘘なのか、知りたかったんだけど……どうでも良くなっちゃった」
「答えられる範囲でお答えしますよ」
「じゃあ、大主教に虐待されていたのは、嘘?」
「ふふ。イズミ様は本当に単純で騙しやすい人ですよねぇ」
嘘かぁ。わたし、めっちゃラルスに文句言っちゃったじゃん! 恥ずかしい! めっちゃ恥ずかしい!
「じゃあ……むぐ」
「イズミ様の質問のあとはボクの質問。交代ですよ」
唇に人差し指を押しつけられ、頷く。わたし、彼より優位に立てる気がしない。そりゃ、そうだろうなぁ。年下だけど、彼は第二王子なんだもの。たぶん、この宮の中で一番権力と威厳を持っている高貴な人なんだもの。絶対的な支配者側だ。
「では、質問です。イズミ様」
熱い唇が触れ合う。何度も何度も触れて、薄明かりの下、夫が笑みを零す。
「あなた、ラルスを愛していますね?」
……え?
夫を呆然と見上げ、自問する。
わたしが、ラルスを愛している?
「答えをいただけたら、次の質問を許可します。いつになっても構いませんので、じっくり考えてお答えください」
そう微笑んで、ウィルフレドは立ち上がる。しっかりとした足取りで廊下を歩いていく後ろ姿を追いかけながら、わたしは、「違う、愛していない」と即答できなかった理由を考える。
わたしは、ラルスを愛しているんだろうか。
夫たちと同じように?
ラルスを助けたかったのは、わたしのせいで彼が捕まったからではなくて、愛しているからなのだろうか。
この責任感は、実は愛情だったのだろうか。
……わからない。
答えが見つからないまま、わたしは聖樹を見上げる。真っ暗に塗りつぶされた、闇。そこに答えが書いてあるわけでもないのに、見上げずにはいられなかった。
「ウィル、欲しい」
「どこに何が欲しいのですか?」
「……意地悪っ」
「ふふ。言ってくれないとわかりませんよ」
……今わかった。ウィルフレドの本性は割とS寄り。先日までの可愛い感じは一切ない。どっちがいいかと聞かれても、答えられないんだけど。
「あっ、あ、挿れて、キスして……っ」
「イズミ様は欲張りですね」
「だって、欲しいっ」
蜜が溢れる。卑猥な音をさせながら濡れたあわいを往復する熱杭が、花芽をくすぐり、蜜口をつつくたび、飲み込みたくて仕方がなくなる。
手を動かそうとすると、押さえつけられる。腰を動かそうとすると、ウィルフレドは体を引きながら苦笑する。
「ダメですよ。ほら、何が欲しいのか言ってみてください」
「やっ、あ」
「いらないのですか?」
「やだ、ほし、いっ」
ここ何日も、欲しかったのに夫たちは皆挿れてくれなかったんだもん。わたしの体を心配してくれる皆の優しさが、逆につらかった。しんどかった。
「ウィル、おねが、っ」
「どこに、何を?」
ちょっと涙を浮かべながら、ウィルフレドを睨む。その視線を受けても、夫は妖艶な笑みを浮かべるだけだ。酷い。酷いけど、もう無理。
「わたしの奥に、ウィルのおっきくて硬いの、ちょうだい」
ウィルフレドは少し考えて「まぁ、いいでしょう」と微笑んだ。瞬間、肉杭が無遠慮に挿入ってくる。
「ダメ、ウィル、イッちゃ、っ」
「いいですよ。達するならどうぞ」
「あっ、あ」
イッていいと言われると、すぐイッちゃう。ぎゅっとウィルフレドの熱杭を締め上げて、わたしは夫にキスをねだる。
「……すごい、熱い」
「あ、奥、んんっ」
「ふふ、届きましたね」
ウィルフレドが深いところを穿つたび、長椅子がガタガタ揺れる。不安定な場所でのセックスは、やっぱり少し不安だから夫の体を抱きしめる。
「ウィル、あっ、気持ちい」
「ええ、ボクも……でも、ちょっと狭いですね」
「ベッド、行く?」
「我慢できますか?」
二人で顔を見合わせ、「無理」「無理ですね」と同時に呟き、笑い合う。何十メートルかが惜しい。ずっと触れ合っていたい。ずっと繋がっていたい。
けれど、ウィルフレドはわたしと同意見ではなく「後ろから犯したい」と舌なめずりをして、獰猛な獣のように笑う。彼にバックを取られるとちょっと危うい気がするんだけど、「お願い、イズミ様」と可愛く言われると断れない。
……マジ、この緩急のつけ方、只者じゃないよね。演技派だな、ウィルフレド。
一度熱杭を抜いて、ウィルフレドは長椅子から降りる。わたしも降りて、長椅子に手をつき、おしりだけ夫に向ける。……あぁ、どうか、ウィルフレドがそちらに興味を持ちませんように!
「イズミ様、可愛い。犯してもいいですか?」
「いいよ、来て」
ぬるぬるとした肉杭が花弁を往復する。ぐちゅぐちゅと卑猥な音をさせながら、夫は「ふふ」と笑う。あぁぁ、嫌な予感がする。
「こちらは使えないんでしたっけ?」
「使えませんね!」
「どうしても?」
「はい!」
そうですか、としおらしく言いながら、ウィルフレドは蜜口に指を挿れる。ダメ、ダメ、指をそんなふうに濡らしてそっちの穴に挿れようとしちゃダメ!
「ウィ、ル、フ、レ、ド」
「……そんなに怒らなくてもいいじゃありませんか」
「そっちはダメ!」
「わかりました。では、少しずつ慣らしていきましょうね」
だから、慣らさなくてもいいんだってば!
わたしが頑なに拒否をするのを楽しそうに眺めていた夫は、ようやく蜜口に尖端を宛てがった。そうして、「時間はたっぷりあるのですから、ゆっくり覚えていきましょうね」と微笑みながら、尖端を押し込んでくる。
「あっ、ああっ」
「もっと大きな声で啼いてもいいんですよ」
「ダメ、ここ、廊下」
「別にいいじゃないですか。聞かれても。そういう場所なんですから」
尖端が最奥を何度も穿つ。そのたび、長椅子が軋み、わたしの体が悦びに震える。深いところに当たって、気持ちいい。
「ここは聖女宮。聖女を愛し、世界に命を授ける場所です。欲を解放することで命の実が育っていく。イズミ様が淫らな声で啼けば啼くほど、命が増えるんですよ」
穿たれるたび、深いところを揺すられるたび、声が漏れる。堪らなく気持ちいい。
「ウィルっ、う」
「ここにいますよ」
ぐ、と強く腰を打ちつけられて、体が跳ねる。どうしよう、またイッちゃいそう。
「あっ、あ、ウィル、イキそ」
正常位と違って触れ合える面積が少ないから、物足りなくて背後のウィルフレドに手を伸ばす。握ってくれると嬉しかったのだけれど、夫はわたしの手首を掴んで勢いよく奥をいじめる。
あぁ、違うんだけど、違わない。それ気持ちいい。激しくされるの、堪らなく気持ちいい。
「イズミ様、出ます」
「わた、しもっ」
ウィルフレドがたぶん先にイッて、わたしがちょっとあとに達した。ダメだ、気持ちいい。久しぶりだから、めっちゃ気持ちいい。
夫は何度か膣内を往復したあと、ゆっくりと熱杭を引き抜く。
「すぐ抜くの、やだ」
「濡れている間にこちらを使おうと思ったのですが」
「それはもっとやだ!」
油断も隙もありゃしない! わたしは、アナルセックスはしないの! もう!
わたしはぐったりしながら長椅子に横たわる。ウィルフレドは涼し気な顔をして、わたしのボタンを留め、衣服の乱れを直していく。
「何が本当で、何が嘘なのか、知りたかったんだけど……どうでも良くなっちゃった」
「答えられる範囲でお答えしますよ」
「じゃあ、大主教に虐待されていたのは、嘘?」
「ふふ。イズミ様は本当に単純で騙しやすい人ですよねぇ」
嘘かぁ。わたし、めっちゃラルスに文句言っちゃったじゃん! 恥ずかしい! めっちゃ恥ずかしい!
「じゃあ……むぐ」
「イズミ様の質問のあとはボクの質問。交代ですよ」
唇に人差し指を押しつけられ、頷く。わたし、彼より優位に立てる気がしない。そりゃ、そうだろうなぁ。年下だけど、彼は第二王子なんだもの。たぶん、この宮の中で一番権力と威厳を持っている高貴な人なんだもの。絶対的な支配者側だ。
「では、質問です。イズミ様」
熱い唇が触れ合う。何度も何度も触れて、薄明かりの下、夫が笑みを零す。
「あなた、ラルスを愛していますね?」
……え?
夫を呆然と見上げ、自問する。
わたしが、ラルスを愛している?
「答えをいただけたら、次の質問を許可します。いつになっても構いませんので、じっくり考えてお答えください」
そう微笑んで、ウィルフレドは立ち上がる。しっかりとした足取りで廊下を歩いていく後ろ姿を追いかけながら、わたしは、「違う、愛していない」と即答できなかった理由を考える。
わたしは、ラルスを愛しているんだろうか。
夫たちと同じように?
ラルスを助けたかったのは、わたしのせいで彼が捕まったからではなくて、愛しているからなのだろうか。
この責任感は、実は愛情だったのだろうか。
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