【R18】肉食聖女と七人のワケあり夫たち

千咲

文字の大きさ
81 / 91
第三夜

081.聖女とセルゲイ

しおりを挟む
「すごいねぇ、イズ! もうベアトリーサを見つけたの?」

 セルゲイはすごいすごいとわたしの頭をくしゃくしゃに撫でてくれる。もちろん、全裸だ。彼を縛るものは何もない。
 わたしは、紐のショーツだけ。ベッドの中にいるからと、寝間着はさっさと取り払われてしまった。太腿を撫で、時折揉みながら、セルゲイは微笑む。

「じゃあ、ベアトリーサにイリーナからの手紙を渡してもらえないかな」
「うん、いいよ」

 手紙かぁ。たぶん、セルゲイは読んでいないだろうから、イリーナがテレサにどんな手紙を宛てたのかはわからないだろう。テレサが傷つくようなことが書いてないといいんだけれど。

「イリーナは凄腕の娼婦でね、む」

 思わず、セルゲイの口を手で押さえてしまった。聞きたいような、聞きたくないような。ほら、寝室だし。他の女の話だし。でも、話題を出したのはわたしだし。あぁ、これ、我慢しないといけないのかな!?
 わたしがオロオロしながら夫を見ていると、彼はわたしの手のひらをペロリと舐めて微笑む。

「僕、イズの手のひらよりも太腿のほうに挟んでもらいたいんだけどな」
「……セルゲイ」
「うん、大丈夫。イズが心配するような艶のある話じゃないよ」

 うぅ、くすぐったい。というか、セルゲイにバレバレだったのが恥ずかしい。
 セルゲイは優しくキスをしてくれる。もちろん、太腿に手を這わせながら。

「イリーナは僕の母親代わりだったんだ。両親は仕事で忙しかったからね。イリーナだけじゃない。娼婦は皆、親代わりで、姉妹で、家族だった」

 確かに、テレサとの年齢を考えると、イリーナがセルゲイの親代わりであることに間違いはないだろう。だとすると、イリーナの母親であるテレサは、セルゲイにとっては祖母みたいな存在なんだろうな。

「イリーナには娘がいてね、その娘が結婚して、命の実を授かろうと順番待ちをしているところ。だから、来年にはベアトリーサにとっては曾孫が生まれるんじゃないかと思うんだけど」
「……けど?」
「イリーナは少し体調が悪くてね。もしかしたら、来年までもたないかもしれない」
「えええっ!?」

 なんで、そういうことを、早く言わないのよ! そういう事情があるなら、一番にセックスして、青の国にいっぱい命の実を宿らせてあげたのに!

「手紙はどこ?」
「一応、服のポケットに入っているけど」
「わかった、じゃあすぐにテレサに渡してくるね!」
「えぇー。明日の朝でもいいじゃん?」
「何でそんなのんびりしてるの! テレサだってこの間倒れたんだからね! 時間が惜しいじゃん!」

 ベッドから降りて、セルゲイの脱ぎっぱなしの服を探る。目当ての手紙はすぐに見つかった。まだ四つ時からそんなに時間がたっていないから、テレサもまだ眠っていないはず。……おばあちゃんだから、寝付きは早いかもしれないけど。
 手紙を持って寝室から出ようとしたところで、セルゲイに手を引っ張られる。「ごめん」と謝ろうとしたところで、彼の手に握られていたわたしの寝間着に気づく。

「僕としてはその格好でもいいんだけど。外に出るなら、ね。一応」
「あ、ありがと」

 寝室から出ると、服を羽織ったセルゲイが「僕も行くよ」とついてくる。断る理由もないので、一緒に宮の扉のところまで手を繋いで歩いていく。ランプは夫が持ってくれる。

「イズは結構行動力あるよねぇ。もっとのんびりしていると思っていたけど」
「セルゲイはすごくのんびりしているよね。なんかすごいゆるーい時間が過ぎる感じ」
「そうかなぁ?」

 そうだよ。だいぶ緩いよ。ゆるキャラだよ。
 宮の扉をドンドンと叩き、テレサの名を呼ぶ。そのあたりにいる宮武官とかが気づいてくれたらいいんだけどなぁと気楽に考えていたら、すぐにテレサが扉の近くまでやってきた。「何でございますか? どうかなさったのですか?」と困惑しながら。

「テレサ、今から扉の下から手紙を差し込むね。イリーナからの手紙なの。受け取ってくれる?」

 テレサの返事を待たず、扉の下に手紙を差し入れる。シュッと向こう側から引き抜かれた音を確認して、セルゲイに微笑みかける。ミッションコンプリートだ。

「手紙の返事はいつでもいいよ。でも、早めにお願いしたいかな。僕たちが使える時間は無限にあるわけじゃないからね」
「イリーナが病気だから早めに返事をちょうだいね!」

 セルゲイの言い方だと全然緊急性が伝わらないよ! だから、風情とか風流とか何も考慮せず、直球でテレサに伝えておく。テレサは「病気!? わかりました、ありがとうございます」と慌てて控室のほうへと戻っていった。

「手紙、受け取ってもらえてよかったね。テレサがイリーナへの手紙を書いてくれたら、一緒に聖樹の花も送ってもらおうかな。ほら、疲労回復になるんでしょ……セルゲイ?」

 廊下を帰ろうとして、立ち止まる。セルゲイがこちらに来ない。立ったまま、微動だにしない。床を睨んだまま、名前を呼んでも返事をしない。

「ねぇ、イズ」
「うん?」
「ここで誰に抱かれたの?」

 ……セルゲイって何者? 二日たっていたら、さすがににおいもないし、痕跡だって残っていないはず。精液でも落ちてた?

「廊下かぁ。それもいいな。本当は外でしてみたいけど、出られないもんなぁ。窓もそんなに大きいわけじゃないし。七色の扉のところでも一回ヤッてみたいんだよねぇ」

 あぁ、なるほど、変態セルゲイは開放感のあるセックスに興味を持った、ということね。野外セックス的な? 青姦っていうんだっけ?
 待って。七色の扉の前でするのはちょっとどうかと思うよ。防音できていないし。他の国の夫とか従者に声を聞かれたら……いたたまれない。わたしが。マジ無理。そういう趣味はセルゲイだけだよ。

「ねぇ、イズ、ここで」
「ダメ! おやすみ!」
「えぇー。何も言ってないじゃん」
「セルゲイの言いたいことは何となくわかるから、ダメ!」

 居室のほうへ戻りかけたわたしの腰を、セルゲイが抱きしめる。ひえっ、捕まった! 捕まっちゃった!
 セルゲイはさっさとショーツを取り払って、わたしを廊下の壁に押し付ける。立ったまま、するの? 立ちバック? ……うぅ、嫌いじゃないんだよねぇ、それ。

「イズ、いい?」

 耳元でそうやって求められると、めちゃくちゃ濡れちゃうんだってば。そそり立ったモノを擦り付けられると、もっと濡れてきちゃうんだってば。

「セルゲイの変態っ」
「ふふ。声、我慢しなくてもいいよ。ちょっと乱暴にしちゃうかもしれないけど」
「ん、もう、バカっ」

 まぁ、太腿ならどんなに乱暴にされても構わないんだけど。足フェチセルゲイのことだから、割れ目を往復する肉茎が挿入されることはないよね。ちゃんと濡れているから潤滑油は必要ないみたいだし。今日も素股でしょ。前のは事故だったもん。

「いい? 今日は足じゃなくて、中を犯しても」
「え」
「僕、好きになったみたいなんだ。イズとの、欲の解放」

 うっとりとした声で「気持ちいいよねぇ」なんて言われたら、納得しちゃうじゃん。気持ちいいんだもん。よくわかる。

「僕はどっちも気持ちいいけど、イズは挿れられたほうがいいでしょう?」
「う」
「ふかーく挿れてあげる。ゆーっくり犯してあげる。だから、イズは夫以外に目を向けちゃダメだよ。僕、これでも少しは妬いているんだからね」

 セルゲイは一番わたしに興味がないと思っていたけど、いや、足にしか興味がないと思っていたけど、違うのかもしれない。熱い尖端が、もう挿入ってきている。ほぐされないまま、埋め込まれる。うぅ、痛気持ちいい。

「あっ、んんっ」
「寝台以外で交わるの、なかなか……そそるね」
「セルゲ、あっ」
「書庫もきっとドキドキするよねぇ。ラルスとの情事、バカな男たちに聞かれていたんでしょ? 聞かれながら交わるの、気持ち良かった?」

 最奥まで挿入され、嬌声が漏れ出る。セルゲイの言葉がいちいち変態的でえっち。壁にすがりつきながら、言葉攻めに耐える。

「僕、見られたり聞かれたりしながら交わってみたら、興奮するかも。ねぇ、イズ、どう? 試してみない?」

 より変態度を高めていこうとする夫に、わたしは頭を左右に振りながら「ダメ、試さないっ」と拒絶する。それは、絶対に、無理!
 夫の無茶振りに付き合うのも限度があるのよ、セルゲイ! もうっ!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...