上 下
50 / 54
第二章 どうして今更……

第十二話 再び来襲

しおりを挟む
 ハリオール家の封印のみを継いで、家の爵位を徐々に上げてもらうことが決まった後は、比較的穏やかな日々が続いていた。
 魔族の中には、片翼を見つけたらその翌日には結婚式を挙げる者も多い。しかしもちろん、ゆっくりと結婚式の準備に時間をかける魔族も居るわけで、オリアナ様の場合、結婚式は色々と準備をしたい方だったらしい。


「ライトさん、式場はどこが良いでしょうか?」

「オリアナ様が良いと思う場所はどこかありますか? 僕は……そうですね、こことここ、あとここは見学に行ってみたいと思いますが」


 そんなふうに、穏やかな時間を過ごしながら、このまま、オリアナ様と結婚できることに喜びを感じていた、そんな時だった。


「見つけましたっ、ライト様っ!!」


 デートで喫茶店に来ていた僕達は、どうにも覚えのある……しかし、完全に忘れてしまいたい人物の声に、一瞬固まる。


 ……無視したいところだけど、そうもいきそうにない、かなぁ……。


 そう思って顔をそちらへ向けてみれば、やはりというか何というか、そこには、ハリオール家の執事であるアバル・シェーザーが居た。
 しかも、なぜか怒りの表情を浮かべている。


「どういうことですかっ! なぜっ、ライト様が後継者になっておられないのですかっ!」


 ……一応、封印の後継者にはなったけど、コイツが言っているのは、ハリオール家の後継者、ということだろうな。


「すみません、オリアナ様。何度も僕の事情に巻き込んでしまって……」

「いえ、問題ありません。……ライトさんの事情であれば、私の事情でもあるのですから、ね」

「オリアナ様……」


 言外に、僕はオリアナ様のものであると言われて、僕は嬉しさに舞い上がる。ただし、ここには無粋な存在が居るわけで……。


「ライト様っ、どうかお答えくださいっ!」


 前回とは違い、今は多くの客が訪れる喫茶店の中。と、なれば、不用意に威圧するわけにもいかない。


「ライト様っ」

「お静かに、ここは、他のお客様もいらっしゃる喫茶店ですよ?」


 しかし、そんな状況を冷静に判断して黙らせられるのがオリアナ様のすごいところだ。
 その言葉だけで、自分が周囲から注目を浴びていると理解したらしき執事は、『す、すみません』と頭を下げる。


「それで? その話はここでしなければならないようなものなのですか?」


 それから、追加で告げられた内容に、執事は黙り込んで、深々と頭を下げる。


「申し訳ありません。少々気が動転しておりました。よろしければ、この後、私に同行していただけないでしょうか?」


 そんな言葉に、僕達は、今後もまたこうして詰め寄られるのも面倒だということで意見が一致して、彼についていくこととなった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

聖女召喚?お断りします!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:121

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:57,801pt お気に入り:3,620

悪役令息の義姉となりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:21,198pt お気に入り:1,512

婚約破棄?私には既に夫がいますが?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:10,273pt お気に入り:846

雨に濡れた犬の匂い(SS短文集)

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:340pt お気に入り:0

落とし穴に落ちたぞ、これは困りましたっすね

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:163pt お気に入り:0

小さなうさぎ

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:958pt お気に入り:1

臆病な犬とハンサムな彼女(男)

BL / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:4

離縁して幸せになります

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,121pt お気に入り:507

先日、あなたとは離婚しましたが?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,711pt お気に入り:719

処理中です...