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第一章 保護されました

第十八話 あの日の裏側(ケイン視点)

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 ミオのお見合いの席では、我ながらよく乗り越えられたなと思った。
 ミオがお見合いをする前日、僕はミオのお見合い相手に会って話をしていたのだ。
 内容はもちろん、ミオから手を引いて欲しいというもの。
 本来であれば、こんな子供の言葉など受け入れられるわけがない。


「なるほど、あなたは、見合い相手であるミオさんを取られたくないのですね」


 終始にっこりと、何を考えているのか分からない顔で問う彼は、どう考えても厄介な相手であることに間違いはない。しかし……。


「良いでしょう。私も、好んで馬に蹴られたくはありせんしね。それに、あなたの様子を観察するのも面白そうです」

「は……?」


 受け入れてもらえたことは、純粋に喜ばしい。しかし、その後の言葉はどういうことだと、ついついそんな声が出てしまう。


「何、簡単なことですよ。あなたの恋路を観察したいので、文通しませんか、というお誘いです」


 馬に蹴られたくないと言いつつもこの提案。絶対に碌でもないとは思うのだが、断ることも難しいかもしれない。


「それは、もし、断ったら?」

「その時は、あなたがミオさんの片翼だと思ったのは見当違いだったと判断させていただいて、ミオさんに決めてしまいましょう」


 分かっていた反応ではあるものの、やはり断れそうにないという状況を突きつけられて、覚悟する。


「分かりました。文通相手くらいにはなりましょう」

「えぇ、よろしくお願いします。ぜひとも、仲良くしてください」


 ニコリと笑う食えない男。こんな相手と文通しなければならないとなると今から頭が痛くなりそうだが、ミオのためなら仕方ない。


 少なくとも、弱みを見せることはないようにしないと……。


「そうそう、今、私は持っていませんが、この世の中には様々な魔術薬品が開発されていまして、例えば、一時的に大人の姿になれる、なんて薬も存在します。ご興味、ありませんか?」

「っ……」


 弱みを見せない、という決断をした瞬間に、僕はガッツリと揺さぶられてしまう。


 大人の姿……それなら、ミオに、異性として見てもらえる、のか?


「そのご様子ならば、興味はおありのようですね。この薬品は、私の先祖が開発したものですので、販売権も私にあります。文通が楽しいものとなれば、そのうち紹介もできるかもしれませんね」


 そう言われてしまえば、僕に抵抗の術などなかった。
 ただの文通相手。そう思い込んで、どうにかこの難題を乗り越えようとした僕は、これから数十年先の未来、この男と腐れ縁になることなど思いもしなかった。
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