30 / 74
第二章
第二十九話 ウキウキと怒りと(セイン視点)
しおりを挟む
魔族は、自らの片翼のために、様々な技術を習得する。生活に役立つ家事から戦闘はもちろんのこと、マッピング技術や、土木作業の技術など、その技術の幅は多岐に渡る。そして……。
デートコースの下見をしておいて、本当に、本当に、良かった!!
初めて訪れる場所や、久々に訪れた場所に来ると、情報収集能力を駆使して、様々なデートコースを検討するのは、もはや片翼を持たない魔族の習性と言っても過言ではない。俺も、片翼が見つかる可能性は低いと頭の中では認識しつつ、それでもデートコースを自然と検討していた口であり、今は、無駄だと思っていた自分のその習性に感謝していた。
「…………!」
現在、リコと訪れているのは、アート通りのスイーツ区画と呼ばれる場所。
獣人達は、確かに自然を愛し、自然と共に生きることを選ぶ者が多い。しかし、だからといって文明的な生活を捨てているわけでも、芸術や美食への関心がないわけでもない。
アート通り、というのは、名前の通り芸術作品が並ぶ通りであり、そうした作品が通りを構成している。その中でも、一つのモチーフに関するものばかりを集めた区画は、そのモチーフにちなんだ関連商品まで並ぶ。スイーツ区画は、スイーツをモチーフとした鮮やかでカラフルな女性に人気の区画であり、おしゃれなカフェや、可愛いお菓子店が立ち並ぶ。
「リコさんは、この場所に来たことはありますか?」
この場所に訪れた途端、ピコピコと黒い耳を動かし、目を輝かせるリコへ、俺は自然と問いかけていた。
「ない、です」
年頃の女性ならば、訪れることの多いこの場所に、リコはまだ一度も訪れていないようで、キョロキョロと辺りを見渡して、今にもどこかの店に突入してしまいそうな勢いがある。
「……その、婚約者とか、とは……?」
微笑ましいその光景に、聞きたくない気持ちと聞きたい気持ちがない混ぜになった状態で、そっと探りを入れる。
バルトラン家が貴族の家だということは、昨日の内に分かっていたことだ。そして、貴族となれば、政略結婚のための婚約だってあり得る。
獣人達に政略結婚は合わないとは言われているものの、貴族階級でそんなことは言っていられない、ということは多い。だから、彼らは番というものの存在をひたすらに隠して、政略結婚へと挑ませる。子供の頃から、番に対する憧れを抱かないように、コントロールする。
リコに、婚約者が居るとしても、リコを渡すことはできないな。
そんな相手が居たとしたなら、どんな手を使ってでも、リコから引き離そう。そんな意思を持ちながら、俺はリコの返事を待つ。
「………………………………婚約者は、居ました」
そう言ったリコの表情を見て、俺は決心する。
よし、そいつを消そう。
先程までとても楽しそうだったリコが、耳を垂らして悲しそうにしている姿を見る限り、婚約者はクズで確定だ。婚約者としての立場を消すのはもちろんのこと、二度とリコと関われないように、どこか遠くの土地にでも事故で旅立ってもらうのが最良だ。ただし……。
「そうでしたか。ですが、ここが初めてならば、今日は俺と一緒に目一杯楽しみましょう!」
それは今すぐではない。情報を集めて、分析して、計画を練ってからのこと。何よりも優先すべきは、リコを笑顔にすることなのだから。
「っ……はいっ」
ピョコンと跳ねたリコの分かりやすい耳。それを見て、俺はひとまずデートに集中することにした。
デートコースの下見をしておいて、本当に、本当に、良かった!!
初めて訪れる場所や、久々に訪れた場所に来ると、情報収集能力を駆使して、様々なデートコースを検討するのは、もはや片翼を持たない魔族の習性と言っても過言ではない。俺も、片翼が見つかる可能性は低いと頭の中では認識しつつ、それでもデートコースを自然と検討していた口であり、今は、無駄だと思っていた自分のその習性に感謝していた。
「…………!」
現在、リコと訪れているのは、アート通りのスイーツ区画と呼ばれる場所。
獣人達は、確かに自然を愛し、自然と共に生きることを選ぶ者が多い。しかし、だからといって文明的な生活を捨てているわけでも、芸術や美食への関心がないわけでもない。
アート通り、というのは、名前の通り芸術作品が並ぶ通りであり、そうした作品が通りを構成している。その中でも、一つのモチーフに関するものばかりを集めた区画は、そのモチーフにちなんだ関連商品まで並ぶ。スイーツ区画は、スイーツをモチーフとした鮮やかでカラフルな女性に人気の区画であり、おしゃれなカフェや、可愛いお菓子店が立ち並ぶ。
「リコさんは、この場所に来たことはありますか?」
この場所に訪れた途端、ピコピコと黒い耳を動かし、目を輝かせるリコへ、俺は自然と問いかけていた。
「ない、です」
年頃の女性ならば、訪れることの多いこの場所に、リコはまだ一度も訪れていないようで、キョロキョロと辺りを見渡して、今にもどこかの店に突入してしまいそうな勢いがある。
「……その、婚約者とか、とは……?」
微笑ましいその光景に、聞きたくない気持ちと聞きたい気持ちがない混ぜになった状態で、そっと探りを入れる。
バルトラン家が貴族の家だということは、昨日の内に分かっていたことだ。そして、貴族となれば、政略結婚のための婚約だってあり得る。
獣人達に政略結婚は合わないとは言われているものの、貴族階級でそんなことは言っていられない、ということは多い。だから、彼らは番というものの存在をひたすらに隠して、政略結婚へと挑ませる。子供の頃から、番に対する憧れを抱かないように、コントロールする。
リコに、婚約者が居るとしても、リコを渡すことはできないな。
そんな相手が居たとしたなら、どんな手を使ってでも、リコから引き離そう。そんな意思を持ちながら、俺はリコの返事を待つ。
「………………………………婚約者は、居ました」
そう言ったリコの表情を見て、俺は決心する。
よし、そいつを消そう。
先程までとても楽しそうだったリコが、耳を垂らして悲しそうにしている姿を見る限り、婚約者はクズで確定だ。婚約者としての立場を消すのはもちろんのこと、二度とリコと関われないように、どこか遠くの土地にでも事故で旅立ってもらうのが最良だ。ただし……。
「そうでしたか。ですが、ここが初めてならば、今日は俺と一緒に目一杯楽しみましょう!」
それは今すぐではない。情報を集めて、分析して、計画を練ってからのこと。何よりも優先すべきは、リコを笑顔にすることなのだから。
「っ……はいっ」
ピョコンと跳ねたリコの分かりやすい耳。それを見て、俺はひとまずデートに集中することにした。
66
あなたにおすすめの小説
『えっ! 私が貴方の番?! そんなの無理ですっ! 私、動物アレルギーなんですっ!』
伊織愁
恋愛
人族であるリジィーは、幼い頃、狼獣人の国であるシェラン国へ両親に連れられて来た。 家が没落したため、リジィーを育てられなくなった両親は、泣いてすがるリジィーを修道院へ預ける事にしたのだ。
実は動物アレルギーのあるリジィ―には、シェラン国で暮らす事が日に日に辛くなって来ていた。 子供だった頃とは違い、成人すれば自由に国を出ていける。 15になり成人を迎える年、リジィーはシェラン国から出ていく事を決心する。 しかし、シェラン国から出ていく矢先に事件に巻き込まれ、シェラン国の近衛騎士に助けられる。
二人が出会った瞬間、頭上から光の粒が降り注ぎ、番の刻印が刻まれた。 狼獣人の近衛騎士に『私の番っ』と熱い眼差しを受け、リジィ―は内心で叫んだ。 『私、動物アレルギーなんですけどっ! そんなのありーっ?!』
私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい
鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。
家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。
そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。
いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。
そんなふうに優しくしたってダメですよ?
ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて――
……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか?
※タイトル変更しました。
旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」
前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~
高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。
先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。
先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。
普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。
「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」
たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。
そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。
はちみつ色の髪をした竜王曰く。
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」
番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!
数多の想いを乗せて、運命の輪は廻る
紅子
恋愛
愛する者を失った咲李亜は、50歳にして異世界へ転移させられた。寝耳に水だ。しかも、転移した先の家で、訪ねてくる者を待て、との伝言付き。いったい、いつになったら来るんですか?
旅に出ようにも、家の外には見たこともないような生き物がうじゃうじゃいる。無理無理。ここから出たら死んじゃうよ。
一緒に召喚されたらしい女の子とは、別ルートってどうしたらいいの?
これは、齢50の女が、異世界へ転移したら若返り、番とラブラブになるまでのお話。
16話完結済み 毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付きで書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
番は君なんだと言われ王宮で溺愛されています
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私ミーシャ・ラクリマ男爵令嬢は、家の借金の為コッソリと王宮でメイドとして働いています。基本は王宮内のお掃除ですが、人手が必要な時には色々な所へ行きお手伝いします。そんな中私を番だと言う人が現れた。えっ、あなたって!?
貧乏令嬢が番と幸せになるまでのすれ違いを書いていきます。
愛の花第2弾です。前の話を読んでいなくても、単体のお話として読んで頂けます。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?
甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。
……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。
※不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる