私、異世界で獣人になりました!

星宮歌

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第二章

第四十七話 魔族の就職事情(セイン視点)

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「片翼? あなたが、ですか?」


 近衛騎士、という職業は、魔族に限って言えば、条件がある。
 一つは、国内で片翼を伴侶にしていること。これを満たしていれば、後は実力さえあれば近衛騎士になるのも夢ではない。
 もう一つは、二百歳から三百歳までの年齢で、片翼が見つかっていない者。俺の場合はこちらに当てはまる。
 大抵の魔族は、百歳までに片翼を見つける。多少オーバーすることがあっても、二百歳までには九割方の魔族が片翼を見つけるのだ。そして、二百歳から三百歳の間は、まだかろうじて片翼を見つけている魔族が居る。しかし、三百歳を超えてから片翼を見つけたという魔族は、ほとんど居ない。つまりは、片翼を見つけられないまま三百歳を超えた魔族は、もう片翼に会えないのだと絶望することとなる。当然、精神状態とてよろしくはない。

 近衛騎士に求められるのは、愛国心と忠誠心。
 その国で片翼を伴侶としているのであれば、片翼を守るために、魔族は必死に国を守ろうとする。厳しい教育の末、国を第一に考える王へと、忠誠を誓う。だから、一つの条件として、国内で片翼を伴侶としていることが挙げられる。
 二百歳から三百歳の魔族は、まだまだ働き盛りで、名誉とて、当然求める。しかも、片翼を得ていないのであれば、少しでも片翼に良いイメージを持ってほしいと願うのは、魔族として当然のことだ。
 二百歳から三百歳で片翼を見つけられなければ、実質、今後も片翼を得ることは叶わない。その危機感によって、魔族であるならば、必死に捜す。もちろん、ただの旅人となってさすらうのも有りなのだが、この年齢で無職というのは、あまりにも印象がよろしくない。
 出張が多く、様々な国や場所を巡ることが多い職業や、出張はそれなりでも、名誉のある職業というのは、無翼に片足を突っ込みかけた者達にとって、魅力的なものだ。
 俺や、目の前の補佐官は、無翼に片足を突っ込みかけた者同士であり、そこそこ仲も良い。ただ、俺の片翼が見つかった直後に、彼も片翼を見つけるとは思っていなかった。


「団長の任務のおかげですっ。ようやく、俺の片翼、ミーナに会えましたっ!」


 嬉しそうに報告する彼の姿に、俺は、別のことを考える。


 これは、上手くすれば一泡吹かせられるかもしれませんね。


 リコの元婚約者の運命の番であり、目の前の補佐官の片翼である女性。応援するのはもちろん、補佐官の方に決まっている。


「彼女が片翼でしたか。おめでとうございます。そして、そういうことであれば、一つ、聞いておいた方がいい話もありますので、しばらく、時間をもらいますよ」


 そうして、俺は、そっとリコの元婚約者についての情報を補佐官へ渡した。
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