私、異世界で獣人になりました!

星宮歌

文字の大きさ
52 / 74
第二章

第五十一話 いちゃもん

しおりを挟む
 アスレチック広場で遊ぶのは、とても楽しかった。
 それというのも、セインさんは魔法を併用することで、私の身体能力にもついてこれるだけの実力を持っていたのだ。だから、セインさんと様々な遊びをする中で、私の中に渦巻く狂気は、少しだけ、鎮火してくれた。


「楽しかったですね。リコさん」

「は、い……」


 汗を流しながら爽やかな笑顔を浮かべるセインさん。その姿にドキリとしながら、また、狂気が渦巻くのを感じる。


 誰にも、渡したくない……。


 とはいえ、運動である程度発散したからか、まだ、独占欲の範囲内だろう。


「そろそろお腹も空いた頃でしょうし、汗を流した後は、早めの昼食にしましょうか」

「はい……。えっと……セインさん、は、何が、好きです、か?」


 今は、お昼ご飯を考えなければと、強制的に思考を誘導して、そんな質問をしてみる。


「そうですね……肉料理も魚料理も好きですが、肉料理の方が好んで食べますね」

「わ、たしも、肉料理、好き、です。その……お肉なら、美味しいお店が、この、近くにあり、ます」

「リコさんのおすすめですか! それはぜひ、行きましょう!」


 セインさんの笑顔は、心臓に悪い。ついつい、この場で襲いかかりたくなるような威力がある。


「……リコさん、その……いえ、やはり、後にしましょう。では、汗を流したら、ここにもう一度集合、ということでお願いします」

「? は、い」


 セインさんが何を言いかけたのか気になりはしたものの、後で話してくれるようだったので、追求せずに一度、セインさんと分かれて預けておいた服を受け取り、シャワールームへと向かう。その際、化粧をもう一度してもらえるサービスも頼んでおいて、ゆっくり汗を流してから、化粧ルームへと向かう。その途中で……。


「ちょっとあんた、顔貸しなっ」


 狼獣人らしい少女が一人と、人間の少女が三人、私の目の前に立ちはだかった。


 誰、だろう……?


 四人の少女は、明らかに私へ敵意を向けてきている。実力からすれば、私一人でも簡単に対処できる程度の小物ではあるものの、今は、時間を取られることそのものが嫌だった。


「知らない人に、着いていこうと思わない。お引き取りを」


 セインさんとのお出かけを邪魔するならただじゃおかない。そう思って睨めば、狼獣人らしい少女だけは実力差を理解できたのか青ざめる。しかし……。


「何よっ、貴族でもないくせに、お高くとまっちゃって!」


 いや、私、貴族……。


「それに、黒髪って不吉の象徴なんでしょー? ありえなーいっ」


 いや、黒髪は、他の国では分からないけど、ここでは吉兆の象徴……。


「アン、こんな小娘、さっさと伸しちゃってよっ!」


 いや、その子、もう戦意喪失してるけど……?


 突っ込みどころ満載の人間の少女達の言葉。そして、アンと呼ばれた狼獣人の少女は、どうやら彼女達のリーダーらしかった。


「も、もも、もちろん、よっ!」


 震えながらでも、対抗しようとするその姿勢は、普段ならば評価できた。ただし……。


「「失せろ」」


 今は無理、と思って声を出したところ、それは、もう一つの声と重なった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

『えっ! 私が貴方の番?! そんなの無理ですっ! 私、動物アレルギーなんですっ!』

伊織愁
恋愛
 人族であるリジィーは、幼い頃、狼獣人の国であるシェラン国へ両親に連れられて来た。 家が没落したため、リジィーを育てられなくなった両親は、泣いてすがるリジィーを修道院へ預ける事にしたのだ。  実は動物アレルギーのあるリジィ―には、シェラン国で暮らす事が日に日に辛くなって来ていた。 子供だった頃とは違い、成人すれば自由に国を出ていける。 15になり成人を迎える年、リジィーはシェラン国から出ていく事を決心する。 しかし、シェラン国から出ていく矢先に事件に巻き込まれ、シェラン国の近衛騎士に助けられる。  二人が出会った瞬間、頭上から光の粒が降り注ぎ、番の刻印が刻まれた。 狼獣人の近衛騎士に『私の番っ』と熱い眼差しを受け、リジィ―は内心で叫んだ。 『私、動物アレルギーなんですけどっ! そんなのありーっ?!』

私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい

鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。 家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。 そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。 いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。 そんなふうに優しくしたってダメですよ? ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて―― ……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか? ※タイトル変更しました。 旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」

数多の想いを乗せて、運命の輪は廻る

紅子
恋愛
愛する者を失った咲李亜は、50歳にして異世界へ転移させられた。寝耳に水だ。しかも、転移した先の家で、訪ねてくる者を待て、との伝言付き。いったい、いつになったら来るんですか? 旅に出ようにも、家の外には見たこともないような生き物がうじゃうじゃいる。無理無理。ここから出たら死んじゃうよ。 一緒に召喚されたらしい女の子とは、別ルートってどうしたらいいの? これは、齢50の女が、異世界へ転移したら若返り、番とラブラブになるまでのお話。 16話完結済み 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付きで書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

番は君なんだと言われ王宮で溺愛されています

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私ミーシャ・ラクリマ男爵令嬢は、家の借金の為コッソリと王宮でメイドとして働いています。基本は王宮内のお掃除ですが、人手が必要な時には色々な所へ行きお手伝いします。そんな中私を番だと言う人が現れた。えっ、あなたって!? 貧乏令嬢が番と幸せになるまでのすれ違いを書いていきます。 愛の花第2弾です。前の話を読んでいなくても、単体のお話として読んで頂けます。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?

甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。 ……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。 ※不定期更新です。

処理中です...