私、異世界で獣人になりました!

星宮歌

文字の大きさ
56 / 74
第二章

閑話 恋に落ちて(とあるオオカミ獣人視点)

しおりを挟む
 私は、極々平凡な狼獣人だ。年は、恋に憧れる乙女、ということで何となく理解してほしい。
 そんな私は、人間の子分三人を誘って、アスレチック広場に来ていた。


「アン、すごーいっ!」

「もう、見えないよ……」

「アンって、獣人の中でも素早いのねぇ」


 とはいえ、人間には、このアスレチック広場は危険だ。基本的に獣人向けに作られたこの場所は、よほど鍛えた人間でもない限り、獣人が動き回るこの場所に混ざれば怪我をすることとなる。
 彼女達も、それを理解して見学用に設けられた柵の外で私を見ていた。


「ふぅ、良い汗かいた。あんた達は、人間用のアスレチック広場には行かなくて良いの?」

「「「無理!」」」

「……そう」


 彼女達は、確かに気安い仲ではあるものの、運動能力は遥かに劣る。もちろん、その分、私が守ってあげれば良いのだが、時々不安になることもある。


「それより、さ……あれ、見てよ」


 ピンクのモフモフタオルで汗を拭いていると、子分の一人がそう声をかけてくる。そして……私は、恋に落ちた。


「っ……」

「あれ、多分獣人じゃないよね」

「人間? それか魔族、かなぁ?」

「魔族の方が有り得そうじゃない?」


 身体能力もさることながら、魔法によって足りない部分を補う能力は凄まじい。そして何より、その美しい金髪とアメジストの瞳が強烈に私の心を掴んだ。


「……好き」

「「「え?」」」


 話に聞く運命の番との出会いというのは、こんな感覚なのだろうか?
 そんな疑問を覚えつつも、惹かれることは確かで……だからこそ、側にその男を凌駕する身体能力を発揮している女の獣人が居ることに苛立った。


「アンが……あのアンが、恋に落ちた!?」

「嘘っ、あのアンが!?」

「アン、だよね? えっ? 嘘!」

「……おい、私が恋するのがそんなに不思議か?」

「「「うんっ」」」

「……お前ら……」


 全員に肯定されてしまえば、怒る気力もない。


「……あいつら、番なのかなぁ?」


 そして、どうしても彼らに視線を向けて、そんなことを呟けば、子分達はササッと目配せをする。


「アン、それなら、確認してみれば良いじゃない!」

「そうそう、女の子の方なら、きっとシャワールームに行くだろうし、その後にでも、話をしたいって言えば良いんじゃない?」

「だよね! もし、付き合ってないなら、紹介してほしいって言えば良い訳だし」

「「「さぁ、行こう!」」」

「いや、でも……」

「「「さぁさぁさぁっ」」」


 ……そういうわけで、私はあの獣人の女の子、リコと呼ばれていた女性の元へ向かって、見事に撃沈することとなる。当然、失恋だ。
 どう考えても糖分過多の雰囲気に、私だけでなく、子分達も撃沈していたように思える。しかし……。


「あんな風な、素敵な番に出会えたら良いなぁ……」


 ピンチの時に颯爽と駆けつけてくれる、そんな、格好良くて頼れる番がほしい。
 この出来事で、私は運命の番に特に憧れを抱くようになった。
 この願いが叶うのは、あと数年後、のことだった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

『えっ! 私が貴方の番?! そんなの無理ですっ! 私、動物アレルギーなんですっ!』

伊織愁
恋愛
 人族であるリジィーは、幼い頃、狼獣人の国であるシェラン国へ両親に連れられて来た。 家が没落したため、リジィーを育てられなくなった両親は、泣いてすがるリジィーを修道院へ預ける事にしたのだ。  実は動物アレルギーのあるリジィ―には、シェラン国で暮らす事が日に日に辛くなって来ていた。 子供だった頃とは違い、成人すれば自由に国を出ていける。 15になり成人を迎える年、リジィーはシェラン国から出ていく事を決心する。 しかし、シェラン国から出ていく矢先に事件に巻き込まれ、シェラン国の近衛騎士に助けられる。  二人が出会った瞬間、頭上から光の粒が降り注ぎ、番の刻印が刻まれた。 狼獣人の近衛騎士に『私の番っ』と熱い眼差しを受け、リジィ―は内心で叫んだ。 『私、動物アレルギーなんですけどっ! そんなのありーっ?!』

私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい

鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。 家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。 そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。 いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。 そんなふうに優しくしたってダメですよ? ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて―― ……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか? ※タイトル変更しました。 旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」

数多の想いを乗せて、運命の輪は廻る

紅子
恋愛
愛する者を失った咲李亜は、50歳にして異世界へ転移させられた。寝耳に水だ。しかも、転移した先の家で、訪ねてくる者を待て、との伝言付き。いったい、いつになったら来るんですか? 旅に出ようにも、家の外には見たこともないような生き物がうじゃうじゃいる。無理無理。ここから出たら死んじゃうよ。 一緒に召喚されたらしい女の子とは、別ルートってどうしたらいいの? これは、齢50の女が、異世界へ転移したら若返り、番とラブラブになるまでのお話。 16話完結済み 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付きで書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

番は君なんだと言われ王宮で溺愛されています

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私ミーシャ・ラクリマ男爵令嬢は、家の借金の為コッソリと王宮でメイドとして働いています。基本は王宮内のお掃除ですが、人手が必要な時には色々な所へ行きお手伝いします。そんな中私を番だと言う人が現れた。えっ、あなたって!? 貧乏令嬢が番と幸せになるまでのすれ違いを書いていきます。 愛の花第2弾です。前の話を読んでいなくても、単体のお話として読んで頂けます。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?

甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。 ……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。 ※不定期更新です。

処理中です...