71 / 74
第二章
第七十話 素直に
しおりを挟む
詳しいことは分からないが、ゼラフ達とは、私はもう関わらなくとも良い、ということをお父様から伝えられ、体も驚異的な回復力で翌日には元通りに戻っていた。
そして……今日も、セインさんが来てくれる、ということを知って、現在、ジーナから生温かい視線を受けながら、そわそわしていた。
「ジーナ、私、おかしく、ない?」
「えぇ、お嬢様はとっても可愛らしいですよ」
「そうじゃ、なくて……」
「自信を持ってください。お嬢様は、かの方の片翼なのでしょう?」
「う、ん……」
そう、片翼。私は、セインさんの片翼なのだ。つまり、もう障害などどこにもない。
「旦那様なんて、『リコが、お嫁に行ってしまう』と朝からずっと嘆いていますし、奥様は、『リコが運命の番と結ばれるなんて、こんなに喜ばしいことはないわ!』と喜んでおられるのですよ? もう、お嬢様が想い人と結ばれるのは確実なのですから、お嬢様自身もしっかりと自信を持って挑まなければなりませんっ」
「う、ん……。頑、張る!」
ちなみに、弟であるレノは、『姉様、幸せになってくださいね!』と私をいち早く祝ってくれている。
そんなわけで、家族公認でのセインさんとの逢瀬。もちろん、病み上がりだからと、遠慮されるであろうことは分かってはいるものの、セインさんをどうにか説得して、家の外には連れ出すつもりだ。
そうしなきゃ、全部、筒抜けになっちゃうっ。
前回の二の舞は、何としてでも避けたい。
そうして、しばらくそわそわしながら待っていると、とうとう、セインさんが家に訪ねてきてくれた。
「こんにちは。リコさん。体調はどうですか?」
「こん、にちは。体調、は、大、丈夫、です。……もう、元に、戻り、ました」
セインさんと早く二人っきりになりたい。
セインさんがお見舞いにと持ってきた花や果物を嬉しいと思うのは確かだったが、それよりも今は、セインさんとの時間が欲しい。
「まだ、事件が起きてさほど時間は経っていません。しっかりと休んでください」
しかし、そんな思いが伝わるわけもなく、セインさんからは、普段ならば、至極真っ当な言葉が飛び出す。
そうじゃない、けど、どうすれば……。
と、その時、レレ様という頼もしい味方のアドバイスが蘇る。
『あなたは、素直なその言葉に力があることを自覚すべきですわ! あなたから素直に告げられる言葉は、何よりも大きな力を持つのですから、それを活用なさいっ』
素直に言葉を口にする、というのは、とても難しいことのように思える。しかし、セインさんの片翼が私なのだと判明した今なら、怖くはない。
「セインさん……二人で、話したい、です」
だから、私は、本当に素直な言葉を伝えることにした。
そして……今日も、セインさんが来てくれる、ということを知って、現在、ジーナから生温かい視線を受けながら、そわそわしていた。
「ジーナ、私、おかしく、ない?」
「えぇ、お嬢様はとっても可愛らしいですよ」
「そうじゃ、なくて……」
「自信を持ってください。お嬢様は、かの方の片翼なのでしょう?」
「う、ん……」
そう、片翼。私は、セインさんの片翼なのだ。つまり、もう障害などどこにもない。
「旦那様なんて、『リコが、お嫁に行ってしまう』と朝からずっと嘆いていますし、奥様は、『リコが運命の番と結ばれるなんて、こんなに喜ばしいことはないわ!』と喜んでおられるのですよ? もう、お嬢様が想い人と結ばれるのは確実なのですから、お嬢様自身もしっかりと自信を持って挑まなければなりませんっ」
「う、ん……。頑、張る!」
ちなみに、弟であるレノは、『姉様、幸せになってくださいね!』と私をいち早く祝ってくれている。
そんなわけで、家族公認でのセインさんとの逢瀬。もちろん、病み上がりだからと、遠慮されるであろうことは分かってはいるものの、セインさんをどうにか説得して、家の外には連れ出すつもりだ。
そうしなきゃ、全部、筒抜けになっちゃうっ。
前回の二の舞は、何としてでも避けたい。
そうして、しばらくそわそわしながら待っていると、とうとう、セインさんが家に訪ねてきてくれた。
「こんにちは。リコさん。体調はどうですか?」
「こん、にちは。体調、は、大、丈夫、です。……もう、元に、戻り、ました」
セインさんと早く二人っきりになりたい。
セインさんがお見舞いにと持ってきた花や果物を嬉しいと思うのは確かだったが、それよりも今は、セインさんとの時間が欲しい。
「まだ、事件が起きてさほど時間は経っていません。しっかりと休んでください」
しかし、そんな思いが伝わるわけもなく、セインさんからは、普段ならば、至極真っ当な言葉が飛び出す。
そうじゃない、けど、どうすれば……。
と、その時、レレ様という頼もしい味方のアドバイスが蘇る。
『あなたは、素直なその言葉に力があることを自覚すべきですわ! あなたから素直に告げられる言葉は、何よりも大きな力を持つのですから、それを活用なさいっ』
素直に言葉を口にする、というのは、とても難しいことのように思える。しかし、セインさんの片翼が私なのだと判明した今なら、怖くはない。
「セインさん……二人で、話したい、です」
だから、私は、本当に素直な言葉を伝えることにした。
64
あなたにおすすめの小説
公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています
六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった!
『推しのバッドエンドを阻止したい』
そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。
推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?!
ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱
◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!
皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*)
(外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
『えっ! 私が貴方の番?! そんなの無理ですっ! 私、動物アレルギーなんですっ!』
伊織愁
恋愛
人族であるリジィーは、幼い頃、狼獣人の国であるシェラン国へ両親に連れられて来た。 家が没落したため、リジィーを育てられなくなった両親は、泣いてすがるリジィーを修道院へ預ける事にしたのだ。
実は動物アレルギーのあるリジィ―には、シェラン国で暮らす事が日に日に辛くなって来ていた。 子供だった頃とは違い、成人すれば自由に国を出ていける。 15になり成人を迎える年、リジィーはシェラン国から出ていく事を決心する。 しかし、シェラン国から出ていく矢先に事件に巻き込まれ、シェラン国の近衛騎士に助けられる。
二人が出会った瞬間、頭上から光の粒が降り注ぎ、番の刻印が刻まれた。 狼獣人の近衛騎士に『私の番っ』と熱い眼差しを受け、リジィ―は内心で叫んだ。 『私、動物アレルギーなんですけどっ! そんなのありーっ?!』
私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい
鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。
家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。
そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。
いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。
そんなふうに優しくしたってダメですよ?
ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて――
……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか?
※タイトル変更しました。
旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」
番が逃げました、ただ今修羅場中〜羊獣人リノの執着と婚約破壊劇〜
く〜いっ
恋愛
「私の本当の番は、 君だ!」 今まさに、 結婚式が始まろうとしていた
静まり返った会場に響くフォン・ガラッド・ミナ公爵令息の宣言。
壇上から真っ直ぐ指差す先にいたのは、わたくしの義弟リノ。
「わたくし、結婚式の直前で振られたの?」
番の勘違いから始まった甘く狂気が混じる物語り。でもギャグ強め。
狼獣人の令嬢クラリーチェは、幼い頃に家族から捨てられた羊獣人の
少年リノを弟として家に連れ帰る。
天然でツンデレなクラリーチェと、こじらせヤンデレなリノ。
夢見がち勘違い男のガラッド(当て馬)が主な登場人物。
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?
甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。
……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。
※不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる