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第一章 幼少期編
第四十六話 メリーに相談
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「ユミリアお嬢様。お呼びと伺い、参りました」
「めりーっ」
メリーが来てくれたことで、私は少しだけ安心する。これできっと、お父様と話すための打開策が浮かぶはずだ。
私はすぐさま、メリーに事情を説明して意見を求める。
「そう、ですね……ユミリアお嬢様は、旦那様のことをどう思っていますか?」
てっきり、メリーの体験談や具体的なアドバイスが来るかと思っていた私は、そんなメリーの言葉に考え込む……。
「みゅ……やしゃしい? (みゅ……優しい?)」
「そうですね、優しい、以外は? 思いつく限り、どんな方なのか挙げてみてください」
そう言われて、まだ数えるほどしか接してこなかったお父様のことを必死に思い浮かべる、
「むくち(無口)」
「はい」
「おおちい(大きい)」
「はい」
「ちらちら(キラキラ)」
「はい」
「かっこいい(格好良い)」
「はい」
「……あまいもにょ、しゅち(甘いもの、好き)」
「さようでございますね」
「みゅう……あっちゃかい? (みゅう……温かい?)」
「はい」
挙げられた数は、さほど多くはない。しかし、それでもこれだけ挙げられたことに、私は自分自身でも感心していた。
「それで、ユミリアお嬢様は旦那様のことが怖いですか?」
一通り挙げて、もう言葉が出なくなったところで、メリーはそう声をかけてくる。
「しょんにゃことにゃいにょ(そんなことないの)」
実際、怖がる理由など一つもない。ただ、お父様を前にすると緊張するだけで……。
「みゅ?」
「では、旦那様の前だと緊張しますか?」
ちょうど、『緊張する』ということに疑問を覚えた私に対して、メリーは的確にそれを突いてくる。
(緊張……あれ? 何で、緊張してたんだっけ?)
メリーと話す前までは、確かにお父様のことが良く分からなくて戸惑っていたのだが、今はそれほどでもない。
「ちなみに、旦那様は一時期私と冒険者パーティーを組んでおりまして、『剛剣のガイ』と呼ばれていました」
そして、唐突に始まったお父様の昔話に、私は戸惑いながらもうなずく。
「剣を使わせれば右に出る者は居ないと言われるほどの使い手で、当時は知らなかったのですが、この国の騎士団長でも旦那様には敵わないほどなのだとか」
そんなお父様の知らない一面を知って、また一つ、心が軽くなったような気がした。
「甘いものには目がなくて、でも、一人で喫茶店に入るのは中々ハードルが高いからと、私は良くパートナーとして連れ出されました」
甘いものが好きらしいことは、一度、一緒にケーキを食べた時から知っていたのだが、どうやら想像以上だったようだ。
「お互い、別々に好きな人が居たので、旦那様とは悪友と呼べる関係でしたが、中々に行動力のあるお方で、私達はいつも振り回されていました」
いつも、私に合わせてくれるお父様。歩幅はもちろん、私の全ての行動に対して、私をしっかりと待ってくれるお父様が、昔は人を振り回していたというのは中々に想像しにくい。
「あぁ、ちなみに、私達のパーティーは五人でして……そのうち、彼らを紹介することもあるかもしれませんね」
その後、私はお父様がどれだけ人を振り回して暴れてきたのかをしっかりと聞かされた。恐らくは、お父様の黒歴史であろう事柄までしっかりと……そうするうちに、私の中では不思議と、お父様へ構えていた感覚がなくなっていくのが分かる。
(そっか……私は、知らないから、余計に構えていたのかも……)
前世、私は特に男性恐怖症だったとか、大人が苦手だとか、そんなことはなかった。むしろ、普通に男の子と話すことはあったし、大人の男性なら、先生なんかと話すことだってあった。つまりは、あんな風に構えてしまう状況自体が不自然だったのだ。
「少しは、ユミリアお嬢様のお力になれましたか?」
「みゅっ、おかげでちゃんとはにゃしぇしょーにゃにょっ。ありあちょっ、めりーっ! (みゅっ、おかげでちゃんと話せそうなのっ。ありがとっ、メリーっ!)」
本当に、メリーのおかげで、私はしっかりとお父様に向き合えそうだった。
「それはようございました。しかし、一つだけ……ユミリアお嬢様は、誰が何と言おうとまだまだ子供なのです。気負う必要も、我慢する必要もないのですよ?」
全てを見透すようなその瞳に、私は声を詰まらせる。
(……そっか、私は、気負って、我慢してた、のか……)
自分でも気づかなかったその感覚。確かに、私くらいの幼女が乳母を助けるために奔走したり、母親に呪われたことへの恨み言も言わず、良く知りもしない父親と距離を詰めようとするのは尋常ではない。しかし……。
「にゃら、わちゃしがむりをしてりゅっておもっちゃら、とめてちょうだい? (なら、私が無理をしてるって思ったら、止めてちょうだい)」
体と心がチグハグな状態の私は、きっと私にできることを考えてすぐに行動してしまう。自分の幼さなど二の次で、どんどん先へと進んでしまう。だから、メリーに、私の大切な乳母には私を甘やかしてほしい。止めてほしい。
そんな身勝手な頼みごとに、メリーは『仕方ないですね』と言わんばかりに眉を下げる。
「分かりました。では、私はユミリアお嬢様を目一杯甘やかしてみせましょうっ」
「……ほどほどに、おにぇがい(……ほどほどに、お願い)」
力強く拳を握るメリーに、一抹の不安を覚えながらも、私はメリーに頼むのだった。
「めりーっ」
メリーが来てくれたことで、私は少しだけ安心する。これできっと、お父様と話すための打開策が浮かぶはずだ。
私はすぐさま、メリーに事情を説明して意見を求める。
「そう、ですね……ユミリアお嬢様は、旦那様のことをどう思っていますか?」
てっきり、メリーの体験談や具体的なアドバイスが来るかと思っていた私は、そんなメリーの言葉に考え込む……。
「みゅ……やしゃしい? (みゅ……優しい?)」
「そうですね、優しい、以外は? 思いつく限り、どんな方なのか挙げてみてください」
そう言われて、まだ数えるほどしか接してこなかったお父様のことを必死に思い浮かべる、
「むくち(無口)」
「はい」
「おおちい(大きい)」
「はい」
「ちらちら(キラキラ)」
「はい」
「かっこいい(格好良い)」
「はい」
「……あまいもにょ、しゅち(甘いもの、好き)」
「さようでございますね」
「みゅう……あっちゃかい? (みゅう……温かい?)」
「はい」
挙げられた数は、さほど多くはない。しかし、それでもこれだけ挙げられたことに、私は自分自身でも感心していた。
「それで、ユミリアお嬢様は旦那様のことが怖いですか?」
一通り挙げて、もう言葉が出なくなったところで、メリーはそう声をかけてくる。
「しょんにゃことにゃいにょ(そんなことないの)」
実際、怖がる理由など一つもない。ただ、お父様を前にすると緊張するだけで……。
「みゅ?」
「では、旦那様の前だと緊張しますか?」
ちょうど、『緊張する』ということに疑問を覚えた私に対して、メリーは的確にそれを突いてくる。
(緊張……あれ? 何で、緊張してたんだっけ?)
メリーと話す前までは、確かにお父様のことが良く分からなくて戸惑っていたのだが、今はそれほどでもない。
「ちなみに、旦那様は一時期私と冒険者パーティーを組んでおりまして、『剛剣のガイ』と呼ばれていました」
そして、唐突に始まったお父様の昔話に、私は戸惑いながらもうなずく。
「剣を使わせれば右に出る者は居ないと言われるほどの使い手で、当時は知らなかったのですが、この国の騎士団長でも旦那様には敵わないほどなのだとか」
そんなお父様の知らない一面を知って、また一つ、心が軽くなったような気がした。
「甘いものには目がなくて、でも、一人で喫茶店に入るのは中々ハードルが高いからと、私は良くパートナーとして連れ出されました」
甘いものが好きらしいことは、一度、一緒にケーキを食べた時から知っていたのだが、どうやら想像以上だったようだ。
「お互い、別々に好きな人が居たので、旦那様とは悪友と呼べる関係でしたが、中々に行動力のあるお方で、私達はいつも振り回されていました」
いつも、私に合わせてくれるお父様。歩幅はもちろん、私の全ての行動に対して、私をしっかりと待ってくれるお父様が、昔は人を振り回していたというのは中々に想像しにくい。
「あぁ、ちなみに、私達のパーティーは五人でして……そのうち、彼らを紹介することもあるかもしれませんね」
その後、私はお父様がどれだけ人を振り回して暴れてきたのかをしっかりと聞かされた。恐らくは、お父様の黒歴史であろう事柄までしっかりと……そうするうちに、私の中では不思議と、お父様へ構えていた感覚がなくなっていくのが分かる。
(そっか……私は、知らないから、余計に構えていたのかも……)
前世、私は特に男性恐怖症だったとか、大人が苦手だとか、そんなことはなかった。むしろ、普通に男の子と話すことはあったし、大人の男性なら、先生なんかと話すことだってあった。つまりは、あんな風に構えてしまう状況自体が不自然だったのだ。
「少しは、ユミリアお嬢様のお力になれましたか?」
「みゅっ、おかげでちゃんとはにゃしぇしょーにゃにょっ。ありあちょっ、めりーっ! (みゅっ、おかげでちゃんと話せそうなのっ。ありがとっ、メリーっ!)」
本当に、メリーのおかげで、私はしっかりとお父様に向き合えそうだった。
「それはようございました。しかし、一つだけ……ユミリアお嬢様は、誰が何と言おうとまだまだ子供なのです。気負う必要も、我慢する必要もないのですよ?」
全てを見透すようなその瞳に、私は声を詰まらせる。
(……そっか、私は、気負って、我慢してた、のか……)
自分でも気づかなかったその感覚。確かに、私くらいの幼女が乳母を助けるために奔走したり、母親に呪われたことへの恨み言も言わず、良く知りもしない父親と距離を詰めようとするのは尋常ではない。しかし……。
「にゃら、わちゃしがむりをしてりゅっておもっちゃら、とめてちょうだい? (なら、私が無理をしてるって思ったら、止めてちょうだい)」
体と心がチグハグな状態の私は、きっと私にできることを考えてすぐに行動してしまう。自分の幼さなど二の次で、どんどん先へと進んでしまう。だから、メリーに、私の大切な乳母には私を甘やかしてほしい。止めてほしい。
そんな身勝手な頼みごとに、メリーは『仕方ないですね』と言わんばかりに眉を下げる。
「分かりました。では、私はユミリアお嬢様を目一杯甘やかしてみせましょうっ」
「……ほどほどに、おにぇがい(……ほどほどに、お願い)」
力強く拳を握るメリーに、一抹の不安を覚えながらも、私はメリーに頼むのだった。
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