我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第三章 セイクリア教国の歪み

第二百五十話 巻き返し

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「さぁ、これから巻き返しじゃ」


 戦場から程近い廃墟の一画で、その中年の男はついこの前まで新サナフ教国に居た、第八番隊の聖騎士団を率いてニヤリと笑う。これまで散々辛酸を舐めさせられた彼は、これぞ好機とばかりに、その魔法を放った。


「支援魔法『身体強化』『加速』『魔力強化』」


 放たれた魔法は、一度空に打ち上がったかと思いきや、流星のごとく四方八方へと散っていく。

 セイクリア教国教皇。彼が、非凡であると評されるものの一つ、大規模支援魔法。それが発動した瞬間だった。


「ワシが居ない間に随分と好き勝手してくれたようじゃからな。さぁ、すぐに戦場へ向かおうぞ」

「「「はっ」」」


 ミルテナ帝国が最も警戒していた教国が動き出した瞬間だった。






 大規模支援魔法の効果は即座に聖騎士達へと届く。まずは、空戦部隊の移動速度が『加速』により跳ね上がり、陸戦部隊は全ての支援魔法の効果によって、戦闘能力そのものが上昇し、蹂躙を開始した。

 レイグ・アルディー大隊長と対峙していたグラハムに至っては、拮抗していた戦いをすぐさま有利なものへと転換する。

 そして、教皇が向かった先、ネクロマンサーが率いる死者の部隊が居る場所では、巨大なメイスを掲げた教皇その人が大暴れしていた。それはもう、常に死体が宙を舞う有り様だった。


「はっはっはっ。死者を愚弄するなど言語道断! さぁ、ネクロマンサーよ。出てくるがいいっ!」


 頭を潰された死体はさすがに動かない。それを考えれば、メイスという武器は適切だった。そして、教皇の呼び声に反応したのか、ついに正体不明の敵が現れる。


「む? ネクロマンサー、か?」


 そこには、白い仮面と黒いフードを被った男らしき者が居た。その手には巨大な戦斧が握られている。
 それは、タロ達がアルトルム王国で出会った仮面の魔族だった。


「教皇様っ、ここは私が」


 まだ魔族だとまで思っていない第八番隊隊長ヤオは、前に進み出てその敵を引き受けようとする。
 圧倒的な強者の気配に怖じ気づきそうになりながら、懸命に前を見据える。


「っ、誰ぞっ、グラハムを呼べっ!」


 教皇自身も、その気配を敏感に感じ取り、セイクリア教国最大戦力であるグラハムを求める。しかし……。


「オ、オォォオッ」

「「っ!?」」


 急に雄叫びを上げた仮面の男は、突如としてその場から消え失せる。そして、その瞬間を境に、死体のまま動いていた者達がパタパタと倒れていく。


「た、助かった、のか?」


 呆然とする教皇達の周りには、すでに、動く者はなくなっていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


教皇組は戦わずして終わっちゃいましたが、ちょっと微妙だったかもしれません。

でも、衝突させてしまえば確実に聖騎士どころか教皇の方にも被害が出るということで、どうしても衝突させるわけにはいかなかったという事情もちょっとあります。

大半は、物語の流れとしてのものなんですけどね。

と、いうわけで、とりあえず戦争の方はこれで終結になります。

次はまたタロ達の方に……いける、はず!

それでは、また!
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