我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第三章 セイクリア教国の歪み

第二百四十九話 空戦部隊、陸戦部隊

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「何とか凌いだか」


 マルス率いる部隊、第一番隊、第二番隊のそれぞれの部隊は、マルスが咄嗟に叫んだ指示に従い、結界を張ったことでどうにか濁流を耐えきっていた。流された者は、恐らく一人も居ないであろうその状況に、マルスはひとまず安堵する。


「第一番隊、第二番隊に告ぐ。これより、降下作戦を行う! 即座にペアを組み、進行せよ! 目的は、セイル・ホージャ及び、水の魔術部隊!」


 そう叫ぶように指示を出すマルスに、部隊の者達はすぐ行動を開始する。

 第二番隊、別名、空戦部隊は、それぞれが単独で飛行するだけの魔力を持つ強力な部隊だ。対して、第一番隊、別名、陸戦部隊は、陸上における剣での勝負ならば誰にも負けないとされる部隊だ。
 敵は魔術部隊。空戦部隊にも陸戦部隊にも対応できる相手ではあるものの、セイル・ホージャがこれまで功績を上げてきた中に、空からの奇襲に対応したものはない。あくまでも、遠距離からの攻撃による遊撃に特化した部隊が、セイル・ホージャの魔術部隊だった。


「極力接近戦に持ち込めっ! 行くぞっ!」

「「「はっ」」」


 これより、セイクリア教国聖騎士団による、理不尽な強襲が始まろうとしていた。







「セイル様っ! 敵影、確認致しました! 奇襲を耐え凌ぎ、現在こちらに接近中ですっ!」

「ほっほっ、ならばもう一度濁流で呑み込むまでよっ。今度は、より強力な魔力でな」


 騎士の報告に大きくうなずくのは、デップリとした巨体と、パッチリおめめの大男、セイル・ホージャだ。

 今回の戦争は、教皇不在、聖騎士長不在、そして、聖騎士団もガタガタな状況であるという密偵の報告によって、簡単に片がつくものだと思われていた。特に、陸戦部隊、空戦部隊と呼ばれる部隊はほぼ壊滅状態だとの報告から、勝利は確実だと信じて疑わなかった。しかし……。


「ほ、報告します! 敵は、空から攻めてきていますっ! あれは……空戦部隊ですっ!」

「なんとっ!?」


 どこをどう間違えたのか、今、敵対しているのは最も警戒していた部隊、空戦部隊だという。こちらの水の魔術部隊は、陸上でこそ力を発揮する。様々なものを巻き込む濁流によって、敵を押し流し、行動不能にすることこそが基本なのだ。空から襲撃され、接近戦に持ち込まれればたまったものではない。


「てっ、撤退! とにかく空戦部隊とかち合うなーっ。まろはまだ死にたくないっ」


 素晴らしいほどの嗅覚で、己の死を予兆したセイルは、すぐさま撤退の指示を出す。今ならまだ間に合う。そう信じて、行動に出る。しかし……。


「っ! 空戦部隊の移動速度が上昇! まもなく接触しますっ!」


 なぜか速度を増した空戦部隊を前に、セイル・ホージャ自慢の魔術部隊はほとんど役に立たず、ただただ蹂躙されるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次回、空戦部隊の速度上昇の秘密を書けたらなぁと思ってます。

『私、異世界で監禁されました!?』の影響か、こちらの作品を読んでくれる人が出てきたみたいでちょっと嬉しいです。

どちらも更新を頑張っていきますね。

それでは、また!
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