我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第三章 セイクリア教国の歪み

第二百五十五話 直視したくない現実

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「おいっ、僕に何をしたっ? なぜ肩を震わせているっ」


 簀巻きになったマギウスは、『炎縛えんばく』で縛られた間から覗くフリフリ衣装に気づくことなくラーミアとディアムに向けて抗議する。


 うむ、確かに、二人の肩が震えているのだ。体調でも悪いのだろうか?


 なぜかプルプルと震えながらうつむく二人を心配していると、二人はバルディスに向けて念話を放つ。


《……バル。タロが危険物を精製してしまいましたわ》

《はっ? 危険物?》

《有害。目に……猛毒》

《猛毒っ!?》

《主に腹筋が鍛えられますわね》

《ちょっと待て。本当に何なんだっ?》

《ある意味、生物兵器》

《タロっ、説明してくれっ!》


 ラーミアとディアムが交互にバルディスへと報告する様を聞いていると、バルディスは助けを求めるかのように我輩を頼ってくる。


 ふむ、とりあえず事実を伝えれば良いのだな?


《にゃにゃ(魚屋の大将をイメージして『幻術』をかけたのだ)》

《はっ? それで何で二人の報告が壊れるんだ?》

《にゃあ(さぁ、分からないのだ)》

《バル? タロは何と言っていますか?》

《ん? 魚屋の大将をイメージして『幻術』を使っただけだと言ってるぞ?》


 そう、バルディスが告げた瞬間、ラーミアとディアムは同時に呻く。


「おいっ、本当に何なんだっ? 説明してくれっ」

「……大丈夫です。そう、大丈夫」

「大丈夫、大丈夫……大丈夫っ」

「こんなに不安になる『大丈夫』は初めて何だがっ!? 本当に何をしたんだっ!」


 震える声で『大丈夫』だけを繰り返すラーミアとディアムに、マギウスはとうとう涙目になる。 


 うむ? 我輩、イメージがしやすい魚屋の大将を『幻術』で再現したのだが……何か、不味いことでもあったのだろうか?


《バル、良いですか? 絶対に、マギウスの『幻術』をかけた姿と会ったことがあると言ってはいけませんよ? むしろ、仲間ではあるものの、初対面だということにしておいてください》

《何がどうなったらそうしなきゃならなくなるんだ?》


 どこか疲れたようなバルディスの言葉に、ディアムがすかさず返事をする。


《腹筋崩壊、免れない、タロ、恐ろしい》

《……会うのが怖くなってきたんだが!? どんな姿にしたんだよっ!》

《今からマギウスには現実を直視してもらいますわ。……とても過酷なことではありますが、きっと乗り越えてくれると信じています》

《そんなにかっ!?》

《俺達も、予想外》


 会話に置いてきぼりにされた我輩は、未だにわめいているマギウスに絡みにいく。姿は魚屋の大将でも、その匂いまでは同じではない。それがちょっぴり残念に思えながらも疲れた体をスリスリする。


「おいっ、おいって」

「……分かりましたわ。今、お見せいたしましょう」


 少し眠たくて落ちそうになるまぶたをどうにか持ち上げつつ、我輩、まだ震えているラーミアを見上げる。


「『水鏡』」


 そして、ラーミアがマギウスの前に鏡を形成する。


「……………………えっ? …………はあぁぁぁあっ!!?」


 それからしばらくして、マギウスの絶叫が響き渡ったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


前回に引き続き、ってところですね、今回は。

いやぁ、マギウスはきっと、直視したくない現実を直視してしまって大ショックでしょうねっ。

次回はちゃんと話が進みますので、よろしくお願いします。

それでは、また!
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