260 / 574
第三章 セイクリア教国の歪み
第二百五十九話 報酬(二)
しおりを挟む
褒美を受け取った俺は、あとは、タロの欠片の回収だけかと考えてグラハムへと視線を移す。すると、何か言いたいことでもあるのか、グラハムは教皇に発言の許可をもらっていた。
何だろうな?
そうのんびり構えていた数秒前の俺を、今は殴りたい気分だ。
「ラーミア殿、私はあなたの力強さに惚れました。どうか、結婚を前提に私とお付き合い願えませんかっ?」
ほんのり頬を赤くして言い切ったグラハムを、俺は言葉もなく見つめる。
コイツ、今、何て言った?
ラーミアに、あろうことか、あの、鮮血のラーミアに、プロポーズをしていなかったか?
あまりにもあり得ない事態に、俺は一言も発することができない。ディアムの方をチラリと見れば、どうやらディアムは放心状態らしい。いつも通りの顔をしているものの、さすがに長い付き合いだからよく分かる。
「あら、力強さに惚れた、だなんて、女の口説き方がなっていませんわね」
「あぁ、申し訳ない。しかし、私はあなたの拳に心を射抜かれたのです。どうか、どうか、お付き合いいただけませんか?」
……不味い、誠実な聖騎士長だと思っていたコイツが、今はドMの変態にしか見えなくなってきた。
「お断りいたしますわ」
「っ、なぜですか? 私はセイクリア教国の聖騎士長です、稼ぎも良いし、自分で言うのも何だが、それなりに顔も整っているはずですっ」
「理由は簡単です。私には、長年の想い人がいますので、あなたはお呼びじゃありませんわ」
「なっ!?」
……ラーミアに想い人? …………そいつは、ご愁傷さまだな。
誰か分からない想い人とやらに、俺は静かに冥福を祈ってやる。きっと、ラーミアは何年かかろうとも諦めたりしない。その想い人は、いずれ、ラーミアの手中に否が応でも落ちることとなる。
「そん、な……」
すっかりうなだれるグラハムに、タロは無言で近づき、テシテシと足を叩いている。
それは、慰めてやってるのか?
タロは忠実に俺の言うことを守って沈黙を貫いているため、推測するしかない。と、そうやって見守っていると、グラハムを淡い光が包み込み、その背中からガラスの欠片のようなものが飛び出し、タロに吸い込まれていく。
欠片の回収も終わったか。
今までに何度か見てきた欠片の回収作業。それが終わったことを確認した俺は、そろそろ引き上げることにする。
「それでは、我々はこれにて失礼させていただきます」
「あ、あぁ……褒美に関しては、そなたらの家に届けさせよう」
「いえ、それは不要です。タロ、『収納』してくれるか?」
「にゃ(分かったのだ)」
タロに『収納』魔法の行使を求めれば、目の前にあった金銀財宝は全て消え去る。
「なんとっ」
「それでは、今度こそ失礼します」
そうして、俺達は教皇庁をあとにするのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
よしっ、後はこの国から撤退するのみ!
その後のプロットはまだ作っていませんので、完全に詰まったらまた、更新をしばらく休ませてもらいますね。
それでは、また!
何だろうな?
そうのんびり構えていた数秒前の俺を、今は殴りたい気分だ。
「ラーミア殿、私はあなたの力強さに惚れました。どうか、結婚を前提に私とお付き合い願えませんかっ?」
ほんのり頬を赤くして言い切ったグラハムを、俺は言葉もなく見つめる。
コイツ、今、何て言った?
ラーミアに、あろうことか、あの、鮮血のラーミアに、プロポーズをしていなかったか?
あまりにもあり得ない事態に、俺は一言も発することができない。ディアムの方をチラリと見れば、どうやらディアムは放心状態らしい。いつも通りの顔をしているものの、さすがに長い付き合いだからよく分かる。
「あら、力強さに惚れた、だなんて、女の口説き方がなっていませんわね」
「あぁ、申し訳ない。しかし、私はあなたの拳に心を射抜かれたのです。どうか、どうか、お付き合いいただけませんか?」
……不味い、誠実な聖騎士長だと思っていたコイツが、今はドMの変態にしか見えなくなってきた。
「お断りいたしますわ」
「っ、なぜですか? 私はセイクリア教国の聖騎士長です、稼ぎも良いし、自分で言うのも何だが、それなりに顔も整っているはずですっ」
「理由は簡単です。私には、長年の想い人がいますので、あなたはお呼びじゃありませんわ」
「なっ!?」
……ラーミアに想い人? …………そいつは、ご愁傷さまだな。
誰か分からない想い人とやらに、俺は静かに冥福を祈ってやる。きっと、ラーミアは何年かかろうとも諦めたりしない。その想い人は、いずれ、ラーミアの手中に否が応でも落ちることとなる。
「そん、な……」
すっかりうなだれるグラハムに、タロは無言で近づき、テシテシと足を叩いている。
それは、慰めてやってるのか?
タロは忠実に俺の言うことを守って沈黙を貫いているため、推測するしかない。と、そうやって見守っていると、グラハムを淡い光が包み込み、その背中からガラスの欠片のようなものが飛び出し、タロに吸い込まれていく。
欠片の回収も終わったか。
今までに何度か見てきた欠片の回収作業。それが終わったことを確認した俺は、そろそろ引き上げることにする。
「それでは、我々はこれにて失礼させていただきます」
「あ、あぁ……褒美に関しては、そなたらの家に届けさせよう」
「いえ、それは不要です。タロ、『収納』してくれるか?」
「にゃ(分かったのだ)」
タロに『収納』魔法の行使を求めれば、目の前にあった金銀財宝は全て消え去る。
「なんとっ」
「それでは、今度こそ失礼します」
そうして、俺達は教皇庁をあとにするのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
よしっ、後はこの国から撤退するのみ!
その後のプロットはまだ作っていませんので、完全に詰まったらまた、更新をしばらく休ませてもらいますね。
それでは、また!
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる