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第三章 セイクリア教国の歪み
第二百六十話 一つの決別
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冒険者ギルド。そこは、私の大切な職場であり、今は片想いをしている相手と会える場所です。どうやら昨日、ミルテナ帝国との戦争があったらしく、冒険者ギルドの方も少し慌ただしいですが、それもしばらくすれば収まるでしょう。そうすれば、今度こそ、あの人をデートに誘ってみせるのです。
様々な書類の整理に奔走し、少し疲れが溜まってきた頃、私は同僚に声をかけられる。
「ホリー、ちょっと良い? ここを発つっていう冒険者があなたに挨拶をしたいって言ってきてるんだけど」
「分かりました。今、行きます」
冒険者は国をまたいで様々な場所に移動する。そうして、力をつけてランクを上げていくのだ。だから、この国を発つ冒険者が居るのは不思議ではありません。縁を大事にする冒険者が、お世話になった人への挨拶として、ただの受付嬢である私に言葉をかけるのだって珍しくはありません。
しかし、バタバタと受付まで走った私が見たのは……私の片想いの人、バルさんでした。
「っ!?」
「あぁ、来たか。この度は世話になった」
しかも、バルさんは妖艶な美女を腕に絡ませています。
「バルさん……あの、そちらの方は?」
聞きたくない、そう思いましたが、気がつけば私はそう尋ねていました。
「あら、私はバルにとって大切な人よ。ねっ、バル?」
「ん? あぁ、そうだな」
何てことでしょう。この美女が、バルさんと恋仲だなんて。どこを取ってもケチがつけられないそのプロポーションに、私は二の句が次げずに呆然としてしまいます。
「多分、もうこの国に来ることはないだろうが、世話になったこと、感謝する」
「は、い……お気をつけて、いってらっしゃいませ」
『この国に来ることはない』。その言葉は、今生の別れも同然で、私の頭はその理解を拒みましたが、身に付いた受付嬢としての受け答えだけは勝手に言葉になっていきます。本当は、行かないでほしいのに、本当は、バルさんに振り向いてほしいのに、もう、それは叶わない。
「それじゃあな」
そう言って去ってしまったバルさんを、私は引き留めることもできませんでした。完全なる、失恋です。
呆然と立ち尽くしたままでいると、ふいに、ポンッと肩を叩かれます。ノロノロと振り返れば、同僚の受付嬢が何とも言えない表情でそこにいました。
「お酒、付き合う?」
「……はい」
今日の午後の予定が、やけ酒に決まった瞬間でした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
受付嬢のホリーちゃん、失恋しちゃいました。
本日は浴びるほどのお酒とともに辛い記憶を流すことでしょう。
わりと気に入ったキャラクターではありましたが、これで出てくるのは最後、のはずです。
それでは、また!
様々な書類の整理に奔走し、少し疲れが溜まってきた頃、私は同僚に声をかけられる。
「ホリー、ちょっと良い? ここを発つっていう冒険者があなたに挨拶をしたいって言ってきてるんだけど」
「分かりました。今、行きます」
冒険者は国をまたいで様々な場所に移動する。そうして、力をつけてランクを上げていくのだ。だから、この国を発つ冒険者が居るのは不思議ではありません。縁を大事にする冒険者が、お世話になった人への挨拶として、ただの受付嬢である私に言葉をかけるのだって珍しくはありません。
しかし、バタバタと受付まで走った私が見たのは……私の片想いの人、バルさんでした。
「っ!?」
「あぁ、来たか。この度は世話になった」
しかも、バルさんは妖艶な美女を腕に絡ませています。
「バルさん……あの、そちらの方は?」
聞きたくない、そう思いましたが、気がつけば私はそう尋ねていました。
「あら、私はバルにとって大切な人よ。ねっ、バル?」
「ん? あぁ、そうだな」
何てことでしょう。この美女が、バルさんと恋仲だなんて。どこを取ってもケチがつけられないそのプロポーションに、私は二の句が次げずに呆然としてしまいます。
「多分、もうこの国に来ることはないだろうが、世話になったこと、感謝する」
「は、い……お気をつけて、いってらっしゃいませ」
『この国に来ることはない』。その言葉は、今生の別れも同然で、私の頭はその理解を拒みましたが、身に付いた受付嬢としての受け答えだけは勝手に言葉になっていきます。本当は、行かないでほしいのに、本当は、バルさんに振り向いてほしいのに、もう、それは叶わない。
「それじゃあな」
そう言って去ってしまったバルさんを、私は引き留めることもできませんでした。完全なる、失恋です。
呆然と立ち尽くしたままでいると、ふいに、ポンッと肩を叩かれます。ノロノロと振り返れば、同僚の受付嬢が何とも言えない表情でそこにいました。
「お酒、付き合う?」
「……はい」
今日の午後の予定が、やけ酒に決まった瞬間でした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
受付嬢のホリーちゃん、失恋しちゃいました。
本日は浴びるほどのお酒とともに辛い記憶を流すことでしょう。
わりと気に入ったキャラクターではありましたが、これで出てくるのは最後、のはずです。
それでは、また!
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