我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第二百七十話 竜の森(六)

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 恐竜達を全て掃討し、一息吐いたところで、水の鎖は徐々に下へと下がっていき、ようやく恋しかった地面と対面する。


「生きてる……? 僕、生きてるっ!」

「うむ、我輩達は頑張ったのだ。地獄を抜けきったのだ」


 おいおいとむせび泣く魚屋の店主……ではなく、マギウスに、我輩、背中を軽く叩いて慰め合う。同じ地獄を分かち合った者として、今は奇妙な連帯感が生まれていた。


「あら、だらしがないですね。男がそんなに泣くものではありませんわよ?」

「ラーミア、今回ばかりは、泣いても仕方ないと思うのだ」


 一人だけ安全に水の鎖を用いてゆっくり下りてきたラーミアに、我輩、とりあえず反論する。これで泣くなという方が不憫というものだ。我輩だって、涙目だ。


「あら、ですが、ディアムならば泣くような無様は晒しませんわ。ですから、やはり、マギウスには根性が足りないのです」


 ……もしかして、ディアムも似たような目に……? うむ、今度、たっぷり我輩のプリティーボディで癒すのだ。


 妙に確信を持って告げるラーミアに嫌な想像をして、我輩、ディアムのためにも頑張ることを決意する。


「さて、それでは……まず、解体作業を終えて、食料を十分に確保してから動きましょうか」


 恐竜達の死骸を前に、ラーミアは大きくうなずく。


「分かったのだ。いつも通り、臭いは遮断しているから、他のものを誘き寄せることはないのだ」

「ありがとうございます。タロ。それでは、さっさと解体してしまいましょう。マギウスっ、貴方もですからね」

「うぅ、了解」


 そうして解体を始めるラーミアとマギウス。我輩は、今まで解体をしたことがないため、二人に指示をされるままに恐竜の体を切り開いていく。そうして、ある程度の肉が集まったところで、遠くから恐竜の鳴き声が聞こえてくる。


「ううむ、そろそろ撤退した方が良いかもしれないのだ」

「そうですか? 何かありましたか?」


 恐らくこちらの方向へと向かってきているだろう恐竜の気配を、我輩、ラーミアとマギウスに伝える。どうやら、二人の耳ではそのような音が聞こえていなかったらしい。


「なら、他は捨て置くの?」

「いえ、持っていきましょう。途中で身代わりにするのもありです」


 そうして、我輩は『収納』を使わされて、そこに全ての恐竜を収める。


「良いですか? 解体したものは食用、それ以外のものは囮用です。もし、間違えて使ったら……分かりますわね?」

「わ、分かったのだ」


 ラーミアに恐ろしい笑顔で告げられて、我輩、プルプル震えながら承知する。


 絶対に間違えないのだっ。


 ラーミアの恐ろしさは、つい先ほど味わったばかりだ。もう二度と、あんな恐怖体験はしたくない。


「僕は、どうすれば……?」

「そうですわね。とりあえず、『操術』なんて今は使えな……いえ、良いことを思い付きましたわ」


 大きな体を縮こまらせて尋ねたマギウスに、ラーミアはニタリと笑う。とっても嫌な予感がするのは、きっと、我輩だけではない。マギウスは、我輩に助けを求めるように、涙目の視線を送ってきていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ラーミアの鬼畜はまだまだ続く?

この『竜の森』はわりと長くなりそうです。

それでは、また!
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