我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第二百七十二話 竜の森(八)

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「ラーミア、いったい何をそんなに怒っているのだ?」


 残酷に殺された恐竜を前に、我輩、さすがにラーミアの様子がおかしいことに気づく。てっきり、マギウスに操られたことを腹に据えかねているだけだと思っていたのだが、これはやりすぎだ。


「……何でもありませんわ」


 しかし、尋ねてみても、ラーミアはプイッと顔を逸らして答えようとしない。バルディスやディアムであれば、きっと、ラーミアのその態度に聞くのを止めるという選択をしただろう。ただ、我輩、どうにもこれは放っておけない気がした。それは、猫としての勘だった。


「我輩、最初はマギウスに操られたことを怒っていて、八つ当たりしているのかと思っていたのだ。しかし、それは違うのだろう?」

「えっ? そうなのかっ!?」


 マギウスも自分がしたことが原因でつらく当たられているのだと思い込んでいたらしく、我輩の言葉に意外だと声を上げる。


「我輩、このままは良くないと思うのだ。何か協力できることがあるのであれば、何でも言ってほしいのだ」


 そこまで言うと、ラーミアはじっと黙り込み、何かを考えているようだった。そして……。


「他言無用でお願いします。もし他言した場合は、私、容赦しませんので」


 そう、恐ろしい瞳で前置きをしたラーミアは、ポツリと話し出す。


「私、操られたんです。……酷い目にあったんです。もうディアムに会えないのではないかと、本気で怖かったんです」


 ……む? やはり、操られたこと、だったのか?


 話が見えない我輩は、ラーミアの思わぬ告白にただただじっとしていることしかできない。


「『操術』から解放されて、ようやくディアムに会えたというのに、なぜかあまり心配をしてくれた様子がないんです」


 話の雲行きが怪しくなってきて、我輩、必死に考えを巡らせる。


 ディアムが女心を分かっていなかったことが原因? いや、それを言うなら、バルディスや我輩も同罪だったはずなのだ。いったい、何が……?


「好きな相手に心配されたかったのにっ、全く堪えていなかったことを知った時の私の気持ちが分かりますかっ!?」

「え、えぇっ? ラーミアって、ディアムのことが好きだったのかっ!?」

「他言は、無用ですよ?」

「は、はいっ!」


 ふむ、要するに、ラーミアはディアムに心配してもらえなかったことが悔しくて八つ当たりをしていた、と? ……これは、ディアムに頑張ってもらう方向で何かしなければなるまいな。


「分かったのだ。では、作戦を考えるのだっ!」


 そう言えば、ラーミアは久しぶりに、明るい笑みを見せるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ラーミアの最近の鬼畜具合は、ディアムのせいでした。

きっと、とってもイライラしていたんでしょうね。

次回は、タロ達の作戦になる、はずです。

それでは、また!
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