我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第二百八十三話 白い空間(二)

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「つまりは、貴方のせいでタロはこの世界から帰れなくなり、今もまださまよっている、と?」

「えぇっと、その、神珠の欠片を集めてもらったりとか、邪神の痕跡を探ってもらったりとかもしてます」


 現在、セイクリアと名乗る神を正座させ、私は状況を整理していた。
 タロが行方不明になったのも、死体すら見つからなかったのも、全て、このバカが原因というわけだ。


「なるほど、それで? タロを拐った貴方が、次は私に何の用なのだ?」


 このまま怒っていても話が進まないため、ようやくセイクリアにとっての本題へと入ると、ホッとした表情で説明を始める。

 曰く、タロでは邪神と戦っても勝てるかどうかが五分五分である。
 曰く、邪神の痕跡である生け贄の儀式の場を破壊することは、タロだと邪神を刺激してしまうため難しい。
 曰く、邪神を討伐してもらうために、私を喚んだ。

 とのことだった。ついでに、タロと合流することがあれば、神珠の欠片回収に協力してやってほしいということも聞き出し。私は凄みを効かせて獰猛に笑う。


「良いだろう。引き受けるのだ。しかし、もちろん、それ相応の力はもらえるのだろうな?」

「も、もちろんっ。貴方には、『サポートシステム』、世界の知識、探索能力、適応力、言語理解、頑強な肉体、魔力量三億、身体能力の向上と精神能力の向上、武神の加護を与えます」

「それぞれの説明を頼むのだ」

「『サポートシステム』は、困った時のヘルプみたいなものです。意思を持ち、飼主さんの問いかけに答えてくれます。また、魔法発動の補助もしてくれます。次に、世界の知識は、ナーガにおける常識を植え付けるというものです。探索能力は、そちらの世界では鑑定能力とでも言った方が分かりやすいかもしれません。じっと見つめて、ほしいと思った情報を念じながら『探索』と唱えると、その情報が見られます。適応力は……魔力のある世界に適応するためのものを想定していますが、上手く使えば、海の中を息継ぎせずに探検できるくらいのことはできます。言語理解は、意思ある生き物の言葉は理解できるというものです」

「何!? ならば、タロとも話せるのか!?」

「えぇ、可能ですよ」


 つらつらと続く説明を聞いていた私は、途中で思わず声を上げる。タロと話せるのであれば、きっと楽しいことは間違いない。


「続けますね。頑強な肉体は、禁忌魔法くらいなら食らっても無傷でいられるだけの肉体を授けるというものです。禁忌魔法は、大災害くらいのものを想定してもらえると分かりやすいかと。そして、魔力量三億は、そのままです。魔法を使うために必要な魔力が、貴方には三億備わっていることになります。後、身体能力や精神能力の向上はそのままの意味ですので、力み過ぎてドアノブを破壊しないよう注意してください。最後に、武神の加護は、あらゆる武に精通し、達人の動きができるようになる加護です。以上ですが、何か質問はありますか?」

「ふむ……ならば、タロはどのような力をもらったのだ?」


 一通りの説明を聞いて、後は実践すれば良いと判断した私は、セイクリアへと気がかりなことを告げる。


「そうですね。『サポートシステム』、世界の知識、探索能力、適応力、言語理解、頑強な肉体、身体能力の向上と精神能力の向上までは同じで、魔力量は一億、それと、悪食の能力と、欠片を集め終えるまでの不老不死、飼主さんの近況報告を我々から受けられる権利を持っていますね」

「タロが、私のことを?」

「えぇ、随分と気にかけていましたよ」


 可愛い飼い猫が、自分のことを知りたいと思ってくれていた。その事実が何とも嬉しい。


「飼主さんがこれから行く世界では、きっと困り事を押し付けられることでしょう。ただし、その件に魔王は関係していません。それを忘れることなく、事にあたってくださいね」

「分かったのだ」


 そうして、私は白い世界からナーガ世界へ、カレッタ小王国へと向かったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


駆け足での説明になったような気がしますが、とりあえずこれで飼主が来た経緯の説明は終了です。

ついでに、元の世界で自分がどうなっているのかの質問は、そのうち飼主自身が気づいた頃にすることになりそうです。

ところで……またプロットが詰まってきましたので、一週間くらい更新をお休みしようかと思います。

続きは、しばらくお待ちくださいね。

それでは、また!
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