我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第二百九十六話 一触即発?

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 いったい、何なのだ? この空気は?


 会った途端に臨戦態勢に入る二人を見て、我輩、疑問符ばかりが頭に浮かぶ。そして、そんな二人の様子に、マギウスもラーミアもディアムも、全員が緊張した面持ちだ。


「ふむ、なるほど、あなたは魔王であったか」

「っ!? なぜ、それを?」


 チラリと我輩とマギウスに視線を向けたバルディスだったが、我輩達、話していないのだ。


「話してないよっ」

「にゃあ(我輩もなのだ)」

「あぁ、確かに、マギウスとタロからは何も聞いていないのだ。ただ、私には、それを知るための能力があったというだけのこと。驚かせてすまなかったのだ」

「にゃ? (もしかして、『探索能力』?)」


 飼い主が話す内容に心当たりがあった我輩は、そう当たりをつけて言ってみると、途端に飼い主に抱き上げられて頭を撫で撫でされる。


「正解なのだ。私も、タロと同じように、『探索能力』を有しているのだ」

「タロと同じ能力……しかも、タロと、話せるのか?」

「うむ、この世界に来るにあたって、『言語理解』の能力ももらったのでな」


 何やらショックを受けた様子のバルディスと、どこか勝ち誇ったように見える飼い主に、我輩、やはり疑問符が浮かぶ。


「私とタロは、四年という年月をともに過ごした親友なのだ」

「俺は、時間こそ一年にも満たないが、タロとともに戦ってきた。今では立派な戦友だ」


 そう言うと、二人はじっとお互いをにらみ会う。不穏な空気が流れる中、マギウスはまだオロオロとしていたものの、ラーミアとディアムは普段通りに戻っていた。


「杞憂だったようですね」

「同意」

「にゃあ? (何がなのだ?)」


 何が何だか、分からない。しかし、ラーミアとディアムは何かに納得したらしい。我輩、教えてほしいとねだるものの、通訳が居ない今、二人に通じることはない。


「ふっ、よかろう。バルディス殿のことは認めるのだ」

「っ、そうか。俺も、あんたのことを認めよう」


 そうして、なぜか二人は、ガッシリと握手を交わす。


「にゃあぁっ!? (いったい何だったのだっ!?)」

「むっ? 分からなかったのか?」

「決まってるだろう。タロ、お前を巡っての争いに、今、決着がついたんだ」

「にゃっ!? (我輩っ!?)」


 全く分からなかったそれに、我輩、とにかく驚く。


「あぁ、こんなところは、やはり可愛いのだ」

「そうだな。どこか抜けていて、それでも憎めないんだよな」


 先ほどまでの空気は何だったのかと言いたくなるほどに、飼い主とバルディスは打ち解ける。それも、我輩の話題でだ。


「ふむ、このままタロを愛でていたいが、そろそろ本題に入っても良いであろうか? 魔王殿?」

「あぁ、俺も、そう提案しようと思っていたところだ。勇者殿?」


 そうして、和やかな雰囲気のまま、話し合いは始まるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


臨戦態勢に入った魔王と勇者。

それなのに、戦いが起こらないのは……タロのおかげ?

次回は、ちゃんとまともな回の、はずです。

それでは、また!
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