297 / 574
第四章 騒乱のカレッタ小王国
第二百九十六話 一触即発?
しおりを挟む
いったい、何なのだ? この空気は?
会った途端に臨戦態勢に入る二人を見て、我輩、疑問符ばかりが頭に浮かぶ。そして、そんな二人の様子に、マギウスもラーミアもディアムも、全員が緊張した面持ちだ。
「ふむ、なるほど、あなたは魔王であったか」
「っ!? なぜ、それを?」
チラリと我輩とマギウスに視線を向けたバルディスだったが、我輩達、話していないのだ。
「話してないよっ」
「にゃあ(我輩もなのだ)」
「あぁ、確かに、マギウスとタロからは何も聞いていないのだ。ただ、私には、それを知るための能力があったというだけのこと。驚かせてすまなかったのだ」
「にゃ? (もしかして、『探索能力』?)」
飼い主が話す内容に心当たりがあった我輩は、そう当たりをつけて言ってみると、途端に飼い主に抱き上げられて頭を撫で撫でされる。
「正解なのだ。私も、タロと同じように、『探索能力』を有しているのだ」
「タロと同じ能力……しかも、タロと、話せるのか?」
「うむ、この世界に来るにあたって、『言語理解』の能力ももらったのでな」
何やらショックを受けた様子のバルディスと、どこか勝ち誇ったように見える飼い主に、我輩、やはり疑問符が浮かぶ。
「私とタロは、四年という年月をともに過ごした親友なのだ」
「俺は、時間こそ一年にも満たないが、タロとともに戦ってきた。今では立派な戦友だ」
そう言うと、二人はじっとお互いをにらみ会う。不穏な空気が流れる中、マギウスはまだオロオロとしていたものの、ラーミアとディアムは普段通りに戻っていた。
「杞憂だったようですね」
「同意」
「にゃあ? (何がなのだ?)」
何が何だか、分からない。しかし、ラーミアとディアムは何かに納得したらしい。我輩、教えてほしいとねだるものの、通訳が居ない今、二人に通じることはない。
「ふっ、よかろう。バルディス殿のことは認めるのだ」
「っ、そうか。俺も、あんたのことを認めよう」
そうして、なぜか二人は、ガッシリと握手を交わす。
「にゃあぁっ!? (いったい何だったのだっ!?)」
「むっ? 分からなかったのか?」
「決まってるだろう。タロ、お前を巡っての争いに、今、決着がついたんだ」
「にゃっ!? (我輩っ!?)」
全く分からなかったそれに、我輩、とにかく驚く。
「あぁ、こんなところは、やはり可愛いのだ」
「そうだな。どこか抜けていて、それでも憎めないんだよな」
先ほどまでの空気は何だったのかと言いたくなるほどに、飼い主とバルディスは打ち解ける。それも、我輩の話題でだ。
「ふむ、このままタロを愛でていたいが、そろそろ本題に入っても良いであろうか? 魔王殿?」
「あぁ、俺も、そう提案しようと思っていたところだ。勇者殿?」
そうして、和やかな雰囲気のまま、話し合いは始まるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
臨戦態勢に入った魔王と勇者。
それなのに、戦いが起こらないのは……タロのおかげ?
次回は、ちゃんとまともな回の、はずです。
それでは、また!
会った途端に臨戦態勢に入る二人を見て、我輩、疑問符ばかりが頭に浮かぶ。そして、そんな二人の様子に、マギウスもラーミアもディアムも、全員が緊張した面持ちだ。
「ふむ、なるほど、あなたは魔王であったか」
「っ!? なぜ、それを?」
チラリと我輩とマギウスに視線を向けたバルディスだったが、我輩達、話していないのだ。
「話してないよっ」
「にゃあ(我輩もなのだ)」
「あぁ、確かに、マギウスとタロからは何も聞いていないのだ。ただ、私には、それを知るための能力があったというだけのこと。驚かせてすまなかったのだ」
「にゃ? (もしかして、『探索能力』?)」
飼い主が話す内容に心当たりがあった我輩は、そう当たりをつけて言ってみると、途端に飼い主に抱き上げられて頭を撫で撫でされる。
「正解なのだ。私も、タロと同じように、『探索能力』を有しているのだ」
「タロと同じ能力……しかも、タロと、話せるのか?」
「うむ、この世界に来るにあたって、『言語理解』の能力ももらったのでな」
何やらショックを受けた様子のバルディスと、どこか勝ち誇ったように見える飼い主に、我輩、やはり疑問符が浮かぶ。
「私とタロは、四年という年月をともに過ごした親友なのだ」
「俺は、時間こそ一年にも満たないが、タロとともに戦ってきた。今では立派な戦友だ」
そう言うと、二人はじっとお互いをにらみ会う。不穏な空気が流れる中、マギウスはまだオロオロとしていたものの、ラーミアとディアムは普段通りに戻っていた。
「杞憂だったようですね」
「同意」
「にゃあ? (何がなのだ?)」
何が何だか、分からない。しかし、ラーミアとディアムは何かに納得したらしい。我輩、教えてほしいとねだるものの、通訳が居ない今、二人に通じることはない。
「ふっ、よかろう。バルディス殿のことは認めるのだ」
「っ、そうか。俺も、あんたのことを認めよう」
そうして、なぜか二人は、ガッシリと握手を交わす。
「にゃあぁっ!? (いったい何だったのだっ!?)」
「むっ? 分からなかったのか?」
「決まってるだろう。タロ、お前を巡っての争いに、今、決着がついたんだ」
「にゃっ!? (我輩っ!?)」
全く分からなかったそれに、我輩、とにかく驚く。
「あぁ、こんなところは、やはり可愛いのだ」
「そうだな。どこか抜けていて、それでも憎めないんだよな」
先ほどまでの空気は何だったのかと言いたくなるほどに、飼い主とバルディスは打ち解ける。それも、我輩の話題でだ。
「ふむ、このままタロを愛でていたいが、そろそろ本題に入っても良いであろうか? 魔王殿?」
「あぁ、俺も、そう提案しようと思っていたところだ。勇者殿?」
そうして、和やかな雰囲気のまま、話し合いは始まるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
臨戦態勢に入った魔王と勇者。
それなのに、戦いが起こらないのは……タロのおかげ?
次回は、ちゃんとまともな回の、はずです。
それでは、また!
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる