我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第三百十話 脱出なのだっ

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 ひとしきり、飼い主に文句を言った我輩は、いつの間にか洞窟の形状が元の広さに戻っていることに気づく。そして、行われたのは、タマとシロからの警告。


《お話中、申し訳ありません。このままここに居ては危険です。すぐに脱出を開始してください》

《早くしないとー、崩れちゃいますよー》


 そんな言葉に、我輩と飼い主は互いに顔を見合わせて、一斉に走り出す。そして、その直後、ゴゴゴゴゴッと何かが……いや、洞窟が、崩れる音を耳にして、なおのこと慌てる。


「にゃーっ(早く脱出なのだーっ)」

「確かに、ダンジョンものは、攻略すれば崩れるのが相場と決まってはいるが、何もそれを忠実に再現することはなかろうっ!」


 飼い主は何やら文句を言いながら、それでも我輩と同じくらいのスピードで走っていく。


「にゃっ(出口なのだっ)」

「よしっ、駆け抜けるのだっ」


 ガラガラと洞窟が崩れる音は、すでに背後の程近い場所から聞こえてくる。もはや、一刻の猶予もない。


「にゃあぁぁぁあっ(ふぬぅぅぅうっ)」

「ぬおぉぉぉおっ」


 ラストスパートを一気にかける我輩達は、出口の光に向かって、勢い良く飛び込む。そして、直後、洞窟は完全に崩れ去る。


「にゃあぁっ! (着いたのだっ!)」

「ふぅ、間一髪、だったのだ」


 お互い、呼吸を乱すような状態にはなっていないものの、今までそこにあった大穴が消えていく様を見て、間に合わなかった時のことを考えてしまう。ヒヤリとしたものが背を伝う中、ぼんやりと大穴があった場所を見ていると、その場所に流れ落ちていた水が、元の流れに戻っていくのに気がつく。


「ふむ、これで水の問題は解決なのだ」

「にゃ(うむ、良かったのだ)」


 きっと、これでカレッタ小王国では酒造りに困ることはなくなるだろう。ついでに、魔王にかけられた冤罪も晴れれば言うことなしなのだが、こればっかりはどうなるか分からなかった。


「ただ、気になるのは、大穴を作った者達の存在だな」

「にゃあ? (『大穴を作った者達』?)」


 今回は大きな事件に巻き込まれることもなく、めでたしめでたしで終わったと考えているところに、飼い主から不穏な情報が入ってくる。


「うむ、あの大穴は、邪神教徒達が生け贄を捧げて作ったものだったのだ。だから、まだ邪神教徒がどこかに居るはずなのだ」

「にゃあ……にゃにゃ? (まさか……またあの洞窟ができる可能性があるというのか?)」

「うむ、そうであるな」


 絶望的な情報に、我輩、飼い主の大技を思い出して身震いする。


「にゃあぁっ(すぐに止めに行くのだっ)」

「うむ、私も共に行こう」

《邪神教徒のことならー、バルディスさん達が情報を掴んでますから、合流することをお勧めしまーす》


 そうして、シロからもたらされた情報を信じ、我輩と飼い主はバルディス達の元へと急ぐのであった、


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


とりあえず、ここで視点変更になります。

次回は、バルディス達のお話です。

それでは、また!
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