我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第三百十八話 英雄誕生

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 竜を倒した。その事実に、俺達が乱入するまで、全く攻撃が通じずに絶望の表情を浮かべていた騎士達は、徐々に『勝った……?』『やった、のか?』『あの、竜を?』と勝利への実感を深めていく。そして……。


「うおぉぉっ、やったぞ!」

「生きてるっ、俺達、生きてるっ」

「竜殺しを果たしたんだっ!」


 歓声が上がり始める中、俺とラーミアはそれに紛れて退散……しようとした、のだが……。


「待ってくれっ! 英雄のお二方っ!」


 目ざとくそんな俺達を見つけた指揮官によって、引き留められる。


「ありがとうっ! ありがとうっ! 英雄様っ」

「俺達を救ってくれてありがとうっ! 英雄様」


 しかも、指揮官が『英雄』などと呼んだせいで、それが周りにも伝搬していく。


《どうしますか? バル?》

《……とりあえず、竜がここに来た原因を調べたい。騎士達を味方にできるかどうか、やってみよう》


 俺達を英雄と讃える者の中に、少し前に騎士舎を案内してくれた騎士が居ることに気づきながら、俺は観念して指揮官へと向き直る。


「この度は、我々を救ってくださり、ありがとうございます。ここに居る王立騎士団を代表として、団長のクルジア・セイラスがお礼を申し上げる。本当に、ありがとうございましたっ」


 ……どうやら、大物を釣り上げたらしいな。


 まさか指揮官がカレッタ小王国の王立騎士団団長だとは思わなかった俺は、少しばかり遠い目になる。しかし、ここで協力を得られれば、騎士団全体から協力を得られたも同然。これは、覚悟を決めるしかなさそうだ。


「まさか、王立騎士団団長とは知らず、失礼した。そして、我々は街を守ったに過ぎない。礼を言われる筋合いはない」


 あまりにも深々と頭を下げてきたクルジアに、俺はお礼のために何かしたいとあれこれ言われないために、とりあえずそう告げてみるが……なぜか、クルジアは感動していた。


「何と謙虚なっ! 英雄様方っ、私はあなた方に惚れ直しましたぞっ」


 ……男に惚れられても嬉しくないんだが……。


 頬が引きつるような感覚を覚えつつも、俺は本題に入る。


「それより、俺達は竜の森に調査へ向かおうとしていたところなんだ。具体的には、『宵闇の一日』より前から起こっている不審な出来事について。もしかしたら、今回の竜の襲撃も無関係ではないかもしれないからな。何か話せることがあれば、教えてもらえないだろうか?」

「むむっ、英雄様方も調査を……? しかし、今回はまだ不明だとして、水の件は魔王の仕業なのではないのですか?」


 ふむ、もしかしたら、ここで誤解を解くことができる、か?


「今代の魔王は、平和主義だと聞く。そして、それを利用しようとする勢力が、魔王の評判を落とす何かしらの現象を起こし、敵意が魔王に集中するのを待っているという報告を俺達は受けている。そのため、今回の件も、何者かが魔王を貶め、このカレッタ小王国を狙っているものだと考えている」

「何と!?」


 騎士達がざわつく様子に、俺は作戦の成功を確信する。『まさか』という声や、『でも、確かに即位したての魔王がこっちに仕掛けてくる理由って何だ?』など、少なくとも水が出なくなった原因が魔王ではないのかもしれないと思わせることには成功した。


「そのお話は、個人的にも話し合いたいが、それは可能でしょうか?」

「竜の森の調査の後ならば」


 そう答えると、クルジアは、俺達にここだけの話だと前置きをしながら、有力な情報を提供してくれたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


何かと権力者に縁があるバルディス達。

今回は英雄として担ぎ上げられましたが……正体をバラさないまま、どこまで通用するんでしょうね。

次回は、ディアム視点にするか、バルディス視点にするかちょっと悩み中。

主人公不在の回が続きますが、よろしくお願いします。

それでは、また!
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