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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第三百三十三話 傷ついた猫

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 先代魔王と『邪神の眼』の関係性についてはひとまず保留にし、タロ達と連絡を取り合って情報交換をした後、俺達は、こっそりとルトの街に引き返していた。


「見事に、何もありませんわね」

「あぁ、これならいっそ、本当に竜の森へ向かった方が良かったか?」


 もちろん、ここから竜の森までは数日かかるため、本当にそうするつもりはなかったものの、閑散とした街を見てしまえば、そう言いたくもなる。


「ひとまず、ディアム達と合流するか」


 そろそろ日も暮れてきたところだ。タロとケントは、もしかしたら野宿になるのかもしれないが、俺達は宿屋で休んでも良いだろう。もし、ディアムが手を離せない状態なら、俺やラーミアが手伝いをしても良い。
 特に危険を感じることもなく、俺はラーミアとともに街を歩いていき……ふいに、誰かに呼ばれた気がして立ち止まる。


「バル?」


 いきなり立ち止まった俺に、不思議そうな視線を向けるラーミアだったが、次はラーミアにも聞こえたらしい。


「にゃーっ(バルディスーっ)」


 小さい小さい声ではあったが、それは、タロの鳴き声で間違いなかった。


「……竜の森から、もう戻ってきてたのか」


 ということは、恐らく、竜の森の封印について何か分かったか、上手くいけば、もう一度封印をかけ直すくらいのことはできたのだろう。

 タロとケントが居て、失敗などあるわけがないと思っていた俺は、後から思えば、とんだ愚か者だった。相手は邪神関係の者である可能性だってあるのだ。いつもいつも、タロが無事とは限らない。


「どうやら、タロが戻ってきてるらしい。行ってみよう」

「分かりましたわ」


 そうして、声が聞こえた方向に、俺達は足を進める。その方向は、街の外に繋がる門の方向ではあったものの、竜の出現で集まっていた騎士達は、すでにほとんど居ない。居るのは、せいぜい、警戒のために配置された者くらいだ。


「にゃー(バルディスー)」


 ただ、足を進めるうちに、聞こえてくるタロの声に違和感を覚える。


(何だ? 腹でも減ってるのか? 随分と弱々しい声だが……)

「バル、タロは何を言っているのですか? 何だか、随分と声が物悲しい気がするのですが……」

「とりあえず、俺の名前を呼んでいるだけだが……腹でも減ってるのか? いや、タロのことだから、どこかに挟まって出られなくなっているのかもしれないな」


 そんなバカなことを言っていた俺は、ようやくタロの姿を目に捉えた瞬間、頭の中が真っ白になる。
 そこには、自慢だと言っていた燕尾服をボロボロにし、傷ついた様子のタロが、必死にフラフラと歩いていたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


とりあえず、これでタロとバルディス達は合流できましたね。

後は、飼い主の救出と、邪神教徒関連のあれこれですね。

それでは、また!
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