我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第三百三十八話 飼い主を救うために(四)

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 ピシッという音に、我輩は一瞬だけ期待を抱いたものの、すぐにそれが間違いだと気づく。


「『多重結界』がっ!」


 ラーミアの叫びで、我輩、攻撃を受けたラーミアの『多重結界』にひびが入ったことを知る。


「にゃあっ(張り直しなのだっ)」

「『多重結界』を破ってくるなんて、とんだ化け物だなっ」


 そう言いながら、バルディスもディアムの『多重結界』が綻びたのを見て、すかさず我輩と同じように張り直す。


「にゃあ(こっちは破れないのだ)」

「どんな硬さなんだよ」


 そして、我輩もバルディスも連撃を繰り返すのだが、一向に泉の結界にダメージが通った様子はない。


《結界の解析、及び、分解作業を同時並行で行いたいと思いますが、許可をいただけますか?》

「にゃーっ(この結界が破れるなら、何でも良いのだっ)」


 まだ、飼い主は泉の中央に立っている。だから、無事ではあると思うのだが、とにかく早く助け出したい。タマからの要請に、我輩、素早く答えると、直後、魔力が引き出される感覚に陥る。


 これは、あまり長くはもたないのだ。


 ただでさえ、『変化』を使ってここまで駆けてきた我輩に、残されている魔力はそう多くはない。それでも、我輩、飼い主を助けるために死力を尽くす。


「にゃおーんっ! にゃおーんっ! にゃおーんっ! (猫流奥義、ガリガリプラスっ! ガリガリプラスっ! クルクルアタックっ!)」

「くっ、『火焔竜』っ!」


 何度も『多重結界』の修復をしながら、そして、泉の結界に攻撃を加えながら、我輩達は、ジリジリと疲弊していく。


「にゃおーんっ! (ガリガリプラスっ!)」

「はぁっ、はぁっ、く、そ……」


 とうとう、バルディスは魔力の底が尽きたらしく、その場で膝をつく。もしかしたら、もう撤退しなければならないのかもしれない。そう、考えた直後、我輩の攻撃が、なぜか当たらず、予想外の事態にもんどりをうつ。


「にゃっ!? (にゃ、にゃにごと!?)」

「結界が、消えた……?」

「っ、バル、木々が動きを止めましたわっ」

「こっちも、止まった」


 いきなり消えた結界と、木々の停止。正直、限界が近かったためありがたいといえばありがたいのだが、飼い主の無事を確認しなければどうにもならない。


「にゃあっ! (飼い主っ!)」

「っ、待て、タロ!」


 未だ、泉の中央に佇む飼い主のために、我輩、嫌いな水の中をバシャバシャと進む。バルディスからは止められたものの、そんなのは関係ない。


「にゃあっ、にゃあっ、にゃあっ(飼い主っ、飼い主っ、飼い主っ)」


 飼い主の手には、少し前まであったはずの光輝く球体がなく、代わりに泉全体が輝いている。ただ、飼い主自身は、目を閉じていて、意識があるのかどうかも分からない。


「う、む? タロ……?」

「がぶぶっ(飼い、主っ)」


 返事をしようとして、盛大に水を飲んだ我輩は、それでも必死に飼い主の元へと向かう。


「タロ!? っと、むっ? なぜ、私は、こんな場所に居るのだ?」


 我輩の様子に、飼い主はすぐに駆け寄って、抱き上げてくれた。びしょ濡れで、体が気持ち悪いが、飼い主が目の前に居るという事実だけが今は重要だった。


「にゃあ、にゃーん(飼い主、飼い主ぃ)」

「バルディス達も居るのか? いったい……いや、とにかく心配かけたようなのだ。すまなかったな、タロ」

「にゃーっ(飼い主ぃぃいっ)」


 飼い主の胸にグリグリと頭を埋めた我輩は、それでホッとしたのだろう。抱かれて歩いているうちに、深い眠りの中に落ちるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


飼い主、救出成功(?)

とりあえず、タロは無事な飼い主を確認して気が抜けた模様。

次回は、飼い主視点辺りになるかなぁと思っています。

それでは、また!
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