我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第三百五十八話 奴隷市(三)

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 それは、奴隷市に潜入した直後のことだった。
 順調に奴隷市へと入り込んだ私は、バルディスと女装姿のディアムを置いて『闇化』で影に潜る。目指すは、奴隷達の元。

 静かに気配を消して奴隷市の裏方へと向かうと、そこには屈強な肉体の護衛達が数人居るのが見受けられた。


(ふむ、全員、女装させて檻に入れてやるのも面白そうなのだ。もしくは、本当ににしてしまうか……)


 そんなことを考えていると、なぜか男達は身震いをして前屈みになる。


「な、何だ? 今、とんでもない悪寒がしたぞ?」

「お、俺もだ」

「……ふっ、俺は大丈夫だったぞ」

「「ブルブル震えてるくせに無理するなっ」」


 ちょっと邪な考えを漏らしただけでこの反応。それに、私は愉快な気持ちになりながら、時間がないことに気づく。


(仕方ないのだ。女装も女にするのも諦めるとしよう)


 引きつった表情で強がっている彼らを、一瞬にして手刀で気絶させると、『軽量化』の魔法をほどこしてズルズルと引きずる。


(ふむ、この気配の持ち主が、欠片の持ち主なのだろうか?)


 奥へと進むにつれ、一つだけ突出した気配があることに気づいた私は、どうやら目的を果たせそうだと安心する。
 何人もの護衛達を倒し、ようやくその扉の前まで来た私は、躊躇いなく扉を開ける。


「んあ? 交代か?」


 トスッと軽い音を立てて眠そうだった見張り役を眠りに就かせた私は、身を寄せ合って怯えた様子を見せる奴隷達に宣言する。


「皆の者。私はあなた方を助けに来た者である。どうか、指示に従って動いてほしいのだ」

「っ、助けが来た!?」

「助、かる、の? 私達っ」

「助けてっ! 助けてっ、お願いっ」

「ちょっと待ちなさいっ! そんな不審な人間の言いなりになるのは危険よっ」

「だったらどうしろってんだ! 俺達は、この人に助けてもらうしかないんだよっ!」


 私の宣言を受けて騒ぎ出す彼らをよそに、私は、一人の獣人の少年を見つける。彼は、私に助けてもらえると信じて、キラキラとした瞳をしていた。


(彼が欠片の持ち主か……)


 不幸の欠片だと言うから、欠片の持ち主はもっと暗い瞳を持っているものだと思っていたが、そうでもないらしい。その事実に内心安堵しながら、私は彼らへと必要な言葉を紡ぐ。


「今から、『転移』魔法であなた方をある場所に送ります。少数精鋭で救出作業に当たっているため、私が行くまでは、その建物からは出ないでいただきたい。それが守れるのであれば、必ず助けるとお約束しよう」


 その言葉で、彼らは全員、大人しく従う道を選んだのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


今日は更新がいつもの時間にできるか怪しかったですが、何とかなりました。

今回は、飼い主視点での奴隷解放作業でした。

次回は、バルディス達の方へ視点を移したいと思っています。

会場がどうなったか、詳しく書いていこうと思います。

それでは、また!
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