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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第三百六十一話 奴隷解放

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 『黒柩くろひつぎ』によって回収された参加者達のことは、ひとまず置いておくことにして、俺達は竜の森のアジトに、ケントの『転移』で向かった。
 ロギーが詰めていたそのレンガ造りのアジトは、ロギーしか使用していなかったらしく、随分と質素だった。暖炉とテーブルに、椅子が一つあるだけの部屋と、ベッドがあるだけの部屋、携帯食が多目の食糧庫になっている部屋以外には何もない。

 そんな場所にいきなり連れて来られた奴隷達は、どうやらちゃんとアジトの中で待機していてくれていたらしい。


「うむ、全員揃っているのだな」


 『転移』した直後、そう言い放ったケントに、そこに居た全員がこちらを振り向き、ケント以外の俺とディアムの存在に警戒心を示す。


「む、彼らはこの度、あなた方を解放するために来た精鋭達なのだ。警戒する必要はないのだ」

「解放って、ちゃんと家に帰してくれるんでしょうね?」

「早く、わたくしを家に戻しなさいっ、戻してくれるなら、お父様に言って褒美を取らせるわっ」

「家に、帰れるっ。帰れるんだっ」

「待てよ、そんなに簡単に信用すんじゃねぇっ。そいつらが何を企んでるかなんて分からねぇだろうがっ」

「帰りたい。お家、帰してくれるの?」


 ケントの言葉に、奴隷だった者達は一斉に話し出す。どうやら、全員帰る場所があるらしいと分かり、俺は面倒事を背負わずにすんで良かったと、一人安堵する。


「あなた方はいったい、何者なんですか?」


 と、そこで、一人の獣人の男の子が質問する。ただ、それは疑っているというよりも、何かを期待するような瞳で、少し困惑してしまう。


「ふむ……どうする?」

「あなたなら正体を明かしても問題ないと思うぞ」


 まだ、ケントが正体を明かすか否かを決めていない段階で名前を呼ぶわけにもいかず、俺はそんな言い回しをする。


「確かに、な。では、私の正体を明かそう。私は、このカレッタ小王国に召喚された勇者、飼主犬斗なのだ」


 仮面を外しながら宣言するケントに、彼らは一気に興奮する。


「勇者!?」

「勇者様が助けてくださったのか!?」

「本当に、助かったんだ」

「うおぉぉぉおっ」


 中には男泣きするような者も居る中、俺とディアムは仮面を被ったまま待機する。


「それでは、これよりそれぞれの家の場所を聞くので、答えてほしいのだ。極力、その近くに『転移』させるようにするのだ」


 そう言って、総勢三十名の奴隷になりかけた者達の解放が始まったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


飼い主の暴走も終わって、平和へ一直線……?

いやいや、欠片の持ち主は、色々と問題を抱えてますから、まだまだ平和は遠いですねっ。

次回、ようやく欠片の持ち主とまともに話すことになりそうです。

それでは、また!
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