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第四章 騒乱のカレッタ小王国
第三百六十六話 フルルの記憶(三)
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店に入った瞬間、僕は何だかゾクリとする視線を感じた。
クリーム色の壁に、光沢のある木材の床、甘い匂いが立ち込め、可愛らしくラッピングされたお菓子類が陳列されている店内で、鋭い目付きで僕達の方を見つめている男が一人居た。
客らしきその男は、暗い茶髪に、赤く爛々と光る瞳を持ち、痩せこけて、顔色も悪かった。全体的に黒い服装で、どこか盗賊を思わせる出で立ちだ。全くもって、この店の雰囲気に合わない男のギラついた視線に、僕は思わずミアト兄様の袖を掴む。
「大丈夫。でも、買い終わったら、すぐに出ようね」
ミアト兄様も、男の異様な姿を確認して、小声で僕にそんなことを言ってくれる。僕は、男から目を話さないまま、ミアト兄様の言葉にうなずき、ぎこちないながらもミアト兄様と一緒に歩き出す。
「ほら、これが欲しかったマカロンだろう?」
「っ、うんっ! ありがとう、ミア兄さん!」
六個入りのマカロンの箱を見つけてくれたミアト兄様に、僕は男から視線を外し、お礼を言う。しかし、きっとそれがいけなかった。
「っ!」
「わっ!」
笑顔から一転、急に青ざめたミアト兄様に、僕は無言で押し倒されて、そのまま尻餅をつく。
「いたっ、ミア、兄さん?」
何をするんだと思って顔を上げると、そこには、あの男がミアト兄様の側に立っていた。
「っ!?」
「に、げろ。ルル……」
苦しそうにそう言ったミアト兄様は、そのまま崩れ落ち、赤いそれを床に落とす。
「……えっ?」
何が起こったか分からずに、呆然と声を出すと、男がこちらに向き直るのを確認して、そして、その手に赤く濡れたナイフを発見してパニックになる。
「ひっ」
恐怖で引きつった声を上げて、僕は必死に後退りをするが、腰が抜けてしまったらしく、全く立てない。
「お客様!」
と、その時、店の奥で僕達の様子を確認していた屈強な肉体を持つ狐の獣人の男性が割り込んできた。
「お客様! どうか、騎士達を呼んできてくださいっ! ここは、私めが引き留めますゆえっ!」
黄色の髪と瞳を持つ勇敢な店員に促されて、僕はようやく、その場所から逃げ出すという選択をする。
すぐ近くには、ザルト兄様が居るはずだ! 早く、早く、助けを呼ばなきゃ!
自分がここに居ても足手まといなことくらい、重々承知だ。ミアト兄様の様子は気になるものの、僕にできることは、助けを呼ぶことだけだった。
フラフラしながらも何とか立ち上がり、男と店員がナイフとダガーで戦い始めるのを横目に、僕は勢い良く店から飛び出した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今回で、奴隷になりかけた経緯を最後まで書けるかなぁと思っていたら、そうでもなかったです。
次回はきっと、最後までいくと思います。
それでは、また!
クリーム色の壁に、光沢のある木材の床、甘い匂いが立ち込め、可愛らしくラッピングされたお菓子類が陳列されている店内で、鋭い目付きで僕達の方を見つめている男が一人居た。
客らしきその男は、暗い茶髪に、赤く爛々と光る瞳を持ち、痩せこけて、顔色も悪かった。全体的に黒い服装で、どこか盗賊を思わせる出で立ちだ。全くもって、この店の雰囲気に合わない男のギラついた視線に、僕は思わずミアト兄様の袖を掴む。
「大丈夫。でも、買い終わったら、すぐに出ようね」
ミアト兄様も、男の異様な姿を確認して、小声で僕にそんなことを言ってくれる。僕は、男から目を話さないまま、ミアト兄様の言葉にうなずき、ぎこちないながらもミアト兄様と一緒に歩き出す。
「ほら、これが欲しかったマカロンだろう?」
「っ、うんっ! ありがとう、ミア兄さん!」
六個入りのマカロンの箱を見つけてくれたミアト兄様に、僕は男から視線を外し、お礼を言う。しかし、きっとそれがいけなかった。
「っ!」
「わっ!」
笑顔から一転、急に青ざめたミアト兄様に、僕は無言で押し倒されて、そのまま尻餅をつく。
「いたっ、ミア、兄さん?」
何をするんだと思って顔を上げると、そこには、あの男がミアト兄様の側に立っていた。
「っ!?」
「に、げろ。ルル……」
苦しそうにそう言ったミアト兄様は、そのまま崩れ落ち、赤いそれを床に落とす。
「……えっ?」
何が起こったか分からずに、呆然と声を出すと、男がこちらに向き直るのを確認して、そして、その手に赤く濡れたナイフを発見してパニックになる。
「ひっ」
恐怖で引きつった声を上げて、僕は必死に後退りをするが、腰が抜けてしまったらしく、全く立てない。
「お客様!」
と、その時、店の奥で僕達の様子を確認していた屈強な肉体を持つ狐の獣人の男性が割り込んできた。
「お客様! どうか、騎士達を呼んできてくださいっ! ここは、私めが引き留めますゆえっ!」
黄色の髪と瞳を持つ勇敢な店員に促されて、僕はようやく、その場所から逃げ出すという選択をする。
すぐ近くには、ザルト兄様が居るはずだ! 早く、早く、助けを呼ばなきゃ!
自分がここに居ても足手まといなことくらい、重々承知だ。ミアト兄様の様子は気になるものの、僕にできることは、助けを呼ぶことだけだった。
フラフラしながらも何とか立ち上がり、男と店員がナイフとダガーで戦い始めるのを横目に、僕は勢い良く店から飛び出した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今回で、奴隷になりかけた経緯を最後まで書けるかなぁと思っていたら、そうでもなかったです。
次回はきっと、最後までいくと思います。
それでは、また!
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