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第四章 騒乱のカレッタ小王国
第三百七十一話 飼い主とバルディスと我輩と
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フルルが落ち着くのを待って、我輩達は飼い主から詳しい話を聞く。
「とりあえず、謁見の場でずっと記憶を元に戻すための解析をしておいた。後は、『不協和音』をぶつければすぐに思い出してくれたのだ」
そう、端的に終わらせようとした飼い主を、バルディスが必死に説得して、何があったのかを聞き出すことに成功する。
「うむ、まずは、記憶の異常なのか、フルル自身の異常なのかが分からなかったため、まだフルルが退出する前に『探索能力』で確認をしておいたのだ。結果として、記憶の異常だと分かったため、ルーデルの方を調べ始めたのだがな」
本格的に椅子に腰かけて、どこから出したのか分からない紅茶を啜った飼い主は、そのまま話を続ける。
「解析に時間がかかるらしいということはすぐに分かったので、とにかく時間稼ぎのために会話を続けたのだ。ルーデル自身も、私とは長く話したかったようだから、苦ではなかったしな」
そうして、解析を終えた飼い主は、前振りも何もなしに、いきなりルーデルへと魔法をぶつけたらしい。ちなみに、ルーデルはその魔法を受けた瞬間、事態が理解できずに頬を引きつらせていたらしい。
「しばらくは記憶が混乱していたようだが、ゆっくりとフルルのことを確認してやれば、しっかりと思い出したようで、すぐにフルルに会いに行く運びとなったのだ」
だから、まだ記憶を書き換えた者の正体などは分からないとのことで、我輩達は、すぐにルーデルへと視線を向ける。
「う……それが、余もいつ記憶を書き換えられたのか分からなくてな……役に立てず、すまない」
「ふむ、無理もないのだ。『心術』というのは、遠距離からでもかけられるものらしいのだ」
「にゃっ!? (そうだったのかっ!?)」
「タロ、何事も調べる時は多角的に調べるべきなのだ。この場合、『心術』がどうやって発動させられるのかも確認しておくべきなのだ」
「にゃー……にゃっ! (『たかくてき』……分かったのだ!)」
要するに、相手の立場で考えることが必要ということなのだろう。我輩、新たな言葉にウンウンとうなずきながら、しかし、そうすると手がかりがないぞと首をかしげる。
「今は、相手の正体も目的も不明なのだ。だから、対外的にはまだ、ルーデルにはフルルのことを忘れているように振る舞ってもらい、敵を炙り出すつもりなのだ」
「確かに、それしかなさそうだな。その『心術』に対しての防衛手段は何かあるか?」
「うむ、音には音を。常に何らかの音を耳に入れていれば、『心術』にはかかりにくくなるのだ」
「かからないわけではないのか……」
「『心術』による音が激しいものであれば、どうにもならないのだ。しかし、遠距離から『心術』を行使していることから、相手は慎重な人物と想定できる。ならば、『心術』による音もごく小さなものである可能性が高く、それならば十分に防ぐ手段はあるのだ」
「しかし、常に音を出すものなんて……」
「作れるのだ」
「……あぁ……そうか、分かった」
バルディスと飼い主の話し合いを見守った我輩は、どうやら二人に任せておけば何とかなりそうだと判断し、そこで、ハッと我に返る。
「に、にゃあっ!? (わ、我輩の出番はっ!?)」
このままでは、我輩はただの役立たずだ。そう思って声を上げると、飼い主が珍しくニッコリと我輩に笑いかけてくる。
「大丈夫なのだ。もちろん、タロにはちゃんと役目があるのだ」
その笑顔に、どことなく不安を覚えながらも、我輩、話を聞くのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
飼い主の悪い顔に気づいたタロ。
でも、そこで断れないのがタロでもあります。
次回、多分招かれた食事会になるかなぁと思ってます。
それでは、また!
「とりあえず、謁見の場でずっと記憶を元に戻すための解析をしておいた。後は、『不協和音』をぶつければすぐに思い出してくれたのだ」
そう、端的に終わらせようとした飼い主を、バルディスが必死に説得して、何があったのかを聞き出すことに成功する。
「うむ、まずは、記憶の異常なのか、フルル自身の異常なのかが分からなかったため、まだフルルが退出する前に『探索能力』で確認をしておいたのだ。結果として、記憶の異常だと分かったため、ルーデルの方を調べ始めたのだがな」
本格的に椅子に腰かけて、どこから出したのか分からない紅茶を啜った飼い主は、そのまま話を続ける。
「解析に時間がかかるらしいということはすぐに分かったので、とにかく時間稼ぎのために会話を続けたのだ。ルーデル自身も、私とは長く話したかったようだから、苦ではなかったしな」
そうして、解析を終えた飼い主は、前振りも何もなしに、いきなりルーデルへと魔法をぶつけたらしい。ちなみに、ルーデルはその魔法を受けた瞬間、事態が理解できずに頬を引きつらせていたらしい。
「しばらくは記憶が混乱していたようだが、ゆっくりとフルルのことを確認してやれば、しっかりと思い出したようで、すぐにフルルに会いに行く運びとなったのだ」
だから、まだ記憶を書き換えた者の正体などは分からないとのことで、我輩達は、すぐにルーデルへと視線を向ける。
「う……それが、余もいつ記憶を書き換えられたのか分からなくてな……役に立てず、すまない」
「ふむ、無理もないのだ。『心術』というのは、遠距離からでもかけられるものらしいのだ」
「にゃっ!? (そうだったのかっ!?)」
「タロ、何事も調べる時は多角的に調べるべきなのだ。この場合、『心術』がどうやって発動させられるのかも確認しておくべきなのだ」
「にゃー……にゃっ! (『たかくてき』……分かったのだ!)」
要するに、相手の立場で考えることが必要ということなのだろう。我輩、新たな言葉にウンウンとうなずきながら、しかし、そうすると手がかりがないぞと首をかしげる。
「今は、相手の正体も目的も不明なのだ。だから、対外的にはまだ、ルーデルにはフルルのことを忘れているように振る舞ってもらい、敵を炙り出すつもりなのだ」
「確かに、それしかなさそうだな。その『心術』に対しての防衛手段は何かあるか?」
「うむ、音には音を。常に何らかの音を耳に入れていれば、『心術』にはかかりにくくなるのだ」
「かからないわけではないのか……」
「『心術』による音が激しいものであれば、どうにもならないのだ。しかし、遠距離から『心術』を行使していることから、相手は慎重な人物と想定できる。ならば、『心術』による音もごく小さなものである可能性が高く、それならば十分に防ぐ手段はあるのだ」
「しかし、常に音を出すものなんて……」
「作れるのだ」
「……あぁ……そうか、分かった」
バルディスと飼い主の話し合いを見守った我輩は、どうやら二人に任せておけば何とかなりそうだと判断し、そこで、ハッと我に返る。
「に、にゃあっ!? (わ、我輩の出番はっ!?)」
このままでは、我輩はただの役立たずだ。そう思って声を上げると、飼い主が珍しくニッコリと我輩に笑いかけてくる。
「大丈夫なのだ。もちろん、タロにはちゃんと役目があるのだ」
その笑顔に、どことなく不安を覚えながらも、我輩、話を聞くのだった。
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飼い主の悪い顔に気づいたタロ。
でも、そこで断れないのがタロでもあります。
次回、多分招かれた食事会になるかなぁと思ってます。
それでは、また!
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